結婚して長くたった夫婦の間での贈与は戻さなくていいの?|花みずき法律事務所

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結婚して長くたった夫婦の間での贈与は戻さなくていいの?

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用の土地・建物を贈与などした場合に、相続のときに特別の制度があると聞いたのですが?

弁護士からのアドバイス

婚姻期間20年以上の夫婦間における持ち戻し免除の推定

例えば、夫が死亡して、妻子が相続人となった場合、生前に妻が贈与を受けていたり、遺言で特別に遺産を多くもらったりしていた場合には、これを特別受益として公平を図ります。

つまり、妻が贈与又は遺贈されていた分を特別受益として一旦、遺産に戻し(持ち戻し)て、合計総額を遺産分割の対象として、相続人の法定相続分の割合で分けることになります。

しかし、結婚している期間が長い夫婦の間で、例えば夫が、夫婦で居住していた土地・建物を妻に生前贈与したり、遺言で贈ったりするとき、それを特別受益とするのは夫の通常の意思ではないと思われます。

また、婚姻期間が長い場合(この改正法では20年)には、配偶者は高齢化していて収入も年金だけという場合も珍しくありません。

そこで、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が、その配偶者に居住している建物と敷地生前贈与したり、遺言で贈った場合には、たとえ特別受益であっても持ち戻しの免除の意思が推定されるとしました(民法903条4項)。

これにより、居住している土地・建物を取得した配偶者は、これを除外した残りの遺産について、法定相続分である2分の1を取得することができます。

 

この制度が適用されるための要件

1 婚姻期間が20年以上の夫婦であること

(1)事実婚、内縁は婚姻期間に含まれるか

戸籍上の届出をしない事実婚、内縁は、この規定の「婚姻」には含まれません。

そのため、事実上夫婦として5年間暮らしてから籍を入れて15年経過した場合であっても、婚姻期間は15年とみるため、この持ち戻し免除の制度は適用されません。

 

(2)離婚、結婚を繰り返した場合は通算できるか

同じ相手と結婚→離婚→結婚というように複数回結婚する場合もあります。

この場合には、全ての婚姻期間を通算して20年以上となっていれば、この規定が適用されると解釈されています。

 

2 居住の用に供する建物と敷地であること

建物と敷地は居住の用に供されていなければいけません。

そのため、例えば、会社経営を行っている夫が、その事業用に所有している建物と敷地を妻に贈与・遺贈しても、この規定は適用されません。

問題になるのは、個人事業をしている場合で、会社事務所と居住用建物が同一の場合や居住用建物でお店をやっている個人商店のような場合です。

まだ裁判例がないので、明確にはいえませんが、法律の趣旨に照らして考えていくことになるとされています。

ここから先は、推測になりますが、例えば、会社事務所と住居が一緒であっても、事務所は一部屋だけで、ほどんどが居住用の建物であれば、この規定が適用される可能性はあると思われます。

また、個人商店を夫婦でやっていて、1階が店舗、2階が住居というような場合には、実質的には全体を生活のために使っていたと見ることも可能なので、配偶者としては、この規定の適用を主張していくべきでしょう。

改正法の場合、裁判実務が積み重ねられないと明確にならないことも多いので、専門家にご相談されることをお勧めします。

 

施行された時期

この規定の施行日は、2019(令和元)年7月1日です。

そのため、この日より前になされた遺贈や贈与には適用されません。

相続開始日(死亡日)が令和元年7月1日以降であれば、この規定の適用の可能性があります。

もっとも、それ以前になされた贈与には適用されないとされているので、死亡日が施行日以降であっても、贈与がそれ以前の場合には、この規定の適用はないことになります。

もっとも、このような贈与についても、個別の事情によっては、この規定の類推適用や持戻し免除の意思を柔軟に解釈する可能性もあると思われますので、これも専門家である弁護士にご相談されると良いでしょう。

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