遺留分って何のこと?
遺留分とはどのような権利ですか?その権利の内容について教えて下さい。
弁護士からのアドバイス
1.父親が死亡した後、遺言が発見されたところ、「遺産の全てを長男に相続させる」と書いてあって、私(二男)の相続分が無いのですが、相続はできないのでしょうか。
あなたには、遺言でも奪うことのできない相続分(これを「遺留分(いりゅうぶん)」と呼びます。)があるので、本来の相続分の2分の1は確保することができます。
亡くなった方の配偶者、子供、直系尊属には、遺留分として一定の相続分が確保されます。
例えば、子供であれば、結婚して家を出て行った娘、家を出てしまいほとんど帰っていない息子であっても遺留分が認められます。
これに対して、兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
ですから、兄弟姉妹が「財産を全て団体に寄付する。」というような遺言を書いた場合にも、何も文句は言えません。
では、配偶者、子供、直系尊属は、どの程度の遺留分を主張できるのでしょうか。
整理してみると以下のとおりとなります。
遺留分の割合
-
原則・・・亡くなられた方の遺産の1/2×あなたの法定相続分
- 例外(相続人が直系尊属だけの場合)・・・亡くなられた方の遺産の1/3×あなたの法定相続分
※現実に遺留分を計算する場合には、遺産から債務を引いたり、被相続人が死亡する直前になされた贈与を遺産に加えたりします。
どの程度の遺留分があるか確認されたい方は、弁護士にご相談ください。
遺留分の問題が生じる遺言の例
-
「一緒に住んでいた長男に、自分の財産を全部相続させる。」
-
「妻以外の女性に財産を全て与える。」
- 「福祉団体や宗教団体などに遺産を全て与える。」
2.もし、長男や長女に全ての財産を相続させるという遺言がされてしまった場合、二男や二女はどうすれば、遺留分(いりゅうぶん)を確保することができるのでしょうか。
遺留分侵害額請求(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう)という請求を行います(なお、2019年6月30日までに相続が開始した事案では、旧法が適用され「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」と呼びます)。
これは、遺言で遺産を多く取得しすぎた人に対して「自分の権利(遺留分)を侵害しているから、その分は金銭で取り戻させてもらいます。」という意思表示をするものです。
つまり、
-
遺言で遺産を多く取得した相続人に対して、
-
侵害額請求の対象を明示して、
- 遺留分に基づく請求であることを示して意思表示をしていく必要があります。
特に注意しなければならないのは、以下の2点です。
-
1年以内に行うこと
この意思表示は、遺留分を有する人が、
ア.相続の開始(相続される人が亡くなったこと)
及び
イ.遺留分を侵害する贈与・遺贈があったこと(問題となる遺言があること)
を知った時から1年間を経過すると、時効で消滅してしまいます。
また、相続開始から10年間経過すると無条件で時効消滅してしまいます。
-
その意思表示は内容証明郵便で行うこと
普通の手紙の形式で行うこともできますが、制限期間の1年以内にしっかりと意思表示を行ったことを後で証明するために、内容証明郵便で行うべきでしょう。
それでも、遺留分について分け方が定まらない場合には、遺留分侵害額請求の調停や訴訟を起こして解決していくことになります。
【内容証明郵便とは】
誰が、誰に対して、いつ、どんな内容の郵便を送ったのかを郵便局で証明してくれる郵便です。
遺留分の場合に限らず、例えば損害賠償の請求などの様々な法的な請求を行う場合に使われます。
裁判になった場合には、強力な証拠になりますが、それ自体には法的な効力はありません。
郵便局(本局など大きな郵便局)の窓口でも出せますし、インターネット上で「電子内容証明郵便」という方法を使えば24時間いつでも申し込むことができます。
字数・行数や作成枚数などについて決まりがありますので、詳しくは、日本郵便㈱にお問い合わせください。
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