遺産分割の対象となる財産は?
例えば、兄が父親の投資信託を勝手に解約してお金にかえて取得してしまった場合、そのお金は遺産分割の中で話し合いができるのでしょうか?
弁護士からのアドバイス
遺産分割の対象となる財産
相続で、遺産を分けるときには、次の3つの条件を満たすことが必要です。
つまり
① 相続開始時に存在すること
② 実際に遺産を分ける時にも存在すること
③ 未分割であること
が必要となります。
当たり前に感じられるかもしれませんが、意外と私たちの常識と違う場合もあるので注意が必要です。
① 相続開始時に存在すること
まず、相続開始の時、質問の例で言うとお父さんが亡くなった時に、お父さん名義で存在する財産だけが対象となります。
例えば、生前にお父さんの口座から他の兄弟姉妹が勝手に投資信託を解約してしまったような場合には、お父さんが亡くなった時点ではお父さん名義の資産ではありません。そのため、この投資信託は遺産分割の対象とはなりません。
では、勝手に投資信託を解約した兄弟姉妹が得をしてしまうのか?というと、そういう訳ではありません。
この場合には、話し合いができなければ、通常の民事訴訟で解決することになります。
遺産を分ける紛争が家庭裁判所で扱われるのと異なり、通常の民事訴訟は簡易裁判所又は地方裁判所で行われ、窓口が違うのでお気をつけ下さい。
② 実際に遺産を分ける時にも存在すること
遺産は、相続開始のときだけでなく、実際に遺産を分けるときにも存在することが必要です。
たとえば、
・相続の対象となっていた家屋が遺産を分ける前に火事で燃えて無くなってしまった場合
・投資信託をこっそりと(書類を偽造するなどして)解約してしまった場合
には、遺産分割の対象はないことになります。
なお、上の例で、
・家屋が火事で燃えてしまった場合でも、その家屋に被相続人(亡くなった人)名義での火災保険がかけられていた場合には、保険金請求権が相続人に分割して相続されることになります。
また
・勝手に投資信託を解約した相続人に対しては、上記の①でご説明したのと同じように、民事訴訟で返還を請求していくことになります。
③ 未分割であること
「遺産分割」という以上、分割がまだ終わっていないことが必要です。
ですから、既に相続人全員で全ての遺産について合意して、遺産分割協議書が作成されている場合には、もう遺産分割は出来ません。
また、遺産に貸金債権などの金銭債権しか残っていない場合にも、相続開始とともに相続人に法定相続分に従って自動的に分割されますので、相続人全員が遺産分割で話し合うことに合意しない限りは分割は終了していると扱われます。
これらの場合には、遺産分割調停を申し立てても、「既に分割済み」ということで、話し合いをせず、終わってしまうので、調停での解決もできません。
これに対して、同じ金銭債権でも預貯金債権(預金は銀行に対する預金債権という意味で金銭債権です)については、平成28年の最高裁判所の決定により遺産分割の対象となることになりました。
このことについては、「遺産分割調停や審判での預貯金の取り扱い」という項目
→https://www.hanamizuki-law.com/succession00019.htmlに書いてありますので、よろしかったらご覧下さい。
※ なお、遺産分割の話し合いがまとまらなくても、その前に預貯金を一定の限度で払い戻すことができる制度もあります。
その制度のご説明はこちらへ → https://www.hanamizuki-law.com/succession00024.html
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