売主の契約不適合責任と瑕疵担保責任とは?|花みずき法律事務所

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土地・建物のトラブル

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売主の契約不適合責任と瑕疵担保責任とは?

売買した土地や建物に契約のときには気づかなかった欠陥がありました。売主に責任を追及できると聞いたので、その内容を説明してください。

弁護士からのアドバイス

令和2(2020)年3月31日までに締結された売買契約~旧法の瑕疵担保責任の追及

1 旧法の「瑕疵担保責任」を追及する

不動産については、その物の現状で売買の対象としているため、売買契約で特定された不動産について所有権移転登記をして引き渡せば「売主の仕事は終わり」となりそうです。

しかし、買主が払う代金は、契約時に通常の注意では見つけられない欠陥は考慮に入れない金額です。

買主としては、代金を全額支払うのに、買った不動産に欠陥が発見されたのでは納得できないでしょう。

そこで、その不公平をなくすために民法は、「不動産に隠れた欠陥(瑕疵)がある場合には、一定の条件の下に、買主が売主に損害賠償請求や解除をすることができる」と定めました。

 

2 瑕疵担保責任の要件

(1)「瑕疵」があったことが必要

「瑕疵」とは、売買の目的である土地や建物について、その物が通常有すべき品質、性能を欠いていることを言います。

例えば、建物にシロアリが発生していて、基礎部分が食われていたような場合です。

 

(2)「隠れた」瑕疵であることが必要

売買契約の時点で、買主が通常の注意をしてもその欠陥が隠れていて発見できなかったことが必要です。

例えば、中古車のエンジンの欠陥は素人が外から見ても分からないので「隠れた」瑕疵と言えます。

これに対して、中古車のボディの大きな凹みなど一目で分かるような欠陥は「隠れた」ものではないので、売主の責任を後で追及できません。

このような場合には、買主は売買契約時にボディの凹みを見て買わない決断をするか、買うとしたら値引き交渉をすべきということでしょう。

(3)買主が瑕疵を知った時から原則として1年以内であることが必要

瑕疵担保責任を売主に請求できる期間は、民法で買主が瑕疵を知ってから1年以内に行わなければならないとされています。

もっとも、不動産については、重要な物件であることから、買主保護の法律が定められています。

まず、宅地建物取引業法により、売主が宅地建物取引業者(不動産業者)だったときには、当事者の特約で1年より短い期間を定めることはできません。

もし、特約を定める場合には、「土地又は建物を引き渡した時から2年以上」という民法より長い期間で買主に有利なものしか認められません。

また、住宅品質確保法により、新築住宅の売主の瑕疵担保責任は、住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵については、建物引渡のときから10年の間負うことが定められています。

 

3 売主からの解除権の要件

上記2項でご説明した要件に加えて「契約をした目的を達することができないとき」であることが必要です。

不動産の場合には、建物の基礎部分がシロアリに食われてしまっていれば、補強での対応は難しいでしょうし、怖くて住宅に住めないでしょうから、建物を買った目的を達成できません。

このような重大な欠陥がある場合にのみ買主は売買契約を解除することができ(あわせて損害賠償請求をすることもできます)。

それ以外の場合には損害賠償請求だけをしていくことになります。

 

令和2(2020)年4月1日以降に締結された売買契約の場合~契約内容不適合責任

令和2(2020)年4月1日(基準日)から改正民法が適用されるため、その基準日以降に契約した場合には、「瑕疵」ではなく「契約内容不適合」という言葉で扱われ、また、請求できる内容も変わりました。

 

1 目的物の契約不適合(旧瑕疵担保責任)の趣旨

当たり前のことですが、売主は種類・品質・数量に関して売買契約に定めた内容に合っている不動産を引き渡す債務を負っています。
 
そのため、引き渡された不動産が、売買契約の内容に適合しない場合には、まだ契約上の約束は果たされていないため、その場合に買主を救済する手段として担保責任を定めました。
 
 
 
2 追完請求
    
買主は、不動産について、契約内容に適合しない部分について修繕や不足分の追加をするよう請求ができます。
 
例えば、建物の屋根が破損していれば修繕をし、土地に土壌汚染があれば浄化するよう請求していくことになります。
 
このような請求を「履行の追完請求」といいます。
 
仮に、売主に過失がなくても、買主は追完請求をすることができます。
 
もともと、契約で定められていた内容を請求しているだけだから、敢えて、売主の過失を要件とする必要はないのです。
 
追完の内容は第一次的には買主が選択することになりますが、買主に不相当な負担を課さないときには、売主は、買主が選択した方法と異なる追完ができます。
 
例えば、買主は建物の建て替えを請求してきた場合に、売主の側で建物の修繕は容易で費用も定額ですみ、買主の利用にも問題がないときには、売主の選択した修繕で対応することができるのです。
 
なお、契約内容の不適合が、買主の責任による場合には、買主は追完請求はできません。
 
例えば、建物の破損が買主が建物に取り付けたアンテナが飛んで生じたような場合には、売主に修繕させるのは不当だということです。
 
 
3 代金減額請求
 
買主は、相当の期間を定めて履行の追完の催告をして、追完がないときには不適合の程度に応じて代金減額請求をすることができます。
 
売主に過失がなくても、買主は代金の減額を請求できます。
 
売った物の価値に相当する代金に減らすだけであり、売主もそれは認めるべきだからです。
 
また、追完の催告をしても意味がないような場合、例えば売主が建物の修繕という追完を拒絶している場合には、修繕を請求しても意味はないので、最初から修繕代金分の減額を請求することができるのです。
 
代金減額の請求も、買主に責任がある場合にはできません。        
     
 
4 損害賠償請求・解除
 
売買契約で定められた品質の土地・建物を引き渡すことができず、その不適合が軽いものではなく修繕などに多くの費用がかかる場合には買主は契約を解除して、代金の返還を請求することができます。
 
損害が発生しているときには、損害賠償請求をしていくことができますが、代金の返還を受けられれば、通常は損害はないことになると思われます。
 
 
5 買主の権利の期間制限
 
土地・建物の引渡しがあった場合に、買主がその物に契約に適合しない箇所(修理が必要な破損など)があることを知ってから年以内にその旨を売主に通知しないと、担保責任の追及ができなくなります
 
もっとも、売主が引渡しのときに、「目的物が契約の内容に適合しないことを知り又は重大な過失により知らなかったとき」には、この期間制限は適用はありません。
 
また、売主に過失がある場合には、買主は、通常の債権の消滅時効期間内(5年間)であれば、債務不履行責任を追及していくことができます。
 
 
※ 売主の担保責任の規定や債務不履行の規定により損害賠償請求していくのは、専門的な法律知識が必要なため、弁護士に相談された方が良いと思います。

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