賃貸借契約を解除できる場合とは?
借りている人が、家賃(地代)をもう1年間も滞納しています。
出て行ってもらうためにはどうすれば良いのでしょうか?
弁護士からのアドバイス
賃貸借契約を解除して、立ち退きを請求することができます。
まず、賃料の支払いが1~2ヶ月遅れた程度のように、貸主と借主の信頼関係が壊れていないような場合には、契約を解除して明け渡せとは言えません。
しかし、この例のように、1年近くも賃料を滞納して何の連絡もないような場合には、大家(地主)さんは、借主のことを全く信頼できないでしょうから、信頼関係は壊れているといえます。
また、借主が賃料支払を拒絶しているような場合も信頼関係は壊れていると言えます。
本来は一度賃料の請求をしてから解除しなければならないのですが、このようなケースでは、事前の賃料請求をすることなく、いきなり契約を解除して「出て行って欲しい。」と言える可能性があります。
この考え方は裁判例によって積み重ねられていましたが、民法(令和2年4月1日施行)でも明文化されました。
規定としては、賃料の不払いが「契約及び取引上の社会通念に照らして軽微なであるとき」には、そもそも解除できないとされています。
そのため、うっかりと賃料の支払をわすれたような「軽微な」賃料不払いでは解除できません。
これに対して、借主が支払を拒絶していたり、貸主が賃料請求をしたけれども支払の見込がない場合には、信頼関係が破壊されるので、事前の賃料請求なく解除できると定められています。
なお、法律の解釈にせよ、裁判例にせよ、「建物や土地の賃貸借契約は、相当長い期間、大事な物を貸して、その対価として相当額の賃料をもらうという関係にあるので、貸す人と借りる人との相互の信頼関係がないと成り立たない」という考えが前提にあります。
賃借人(借りている人)はその信頼関係のもとに、住むところや営業するところを借りて生活しているのですから、家賃の振り込みを1ヶ月忘れただけで、いきなり「出て行け!」と言われては困るでしょう。
これに対して、賃借人が、契約を守らずに1年間も賃料を支払わずに、大家(地主)さんに何の連絡もしてこないような場合には、賃借人と大家(地主)との信頼関係は既に壊れてしまっているので、賃貸借関係を続けることはできず、「すぐに出て行って欲しい。」と言えるということになるのです。
出て行ってもらう場合には、土地建物明渡の請求を内容証明郵便で催告(さいこく)したり、土地建物明渡訴訟を提起して明渡を請求したりします。
このとき、相手が法律を守って自主的に出て行くような場合には問題ありませんが、居座ったり、引っ越し費用が現実に無くて出ていかないという場合もあります。
このような場合には、相手に非があるようなケースでも、裁判より交渉で対応して経費を節約した上で、一定の引っ越し費用や解決金を支払って出て行ってもらうということも現実にはあります。
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