無料求人広告トラブル~消費者被害に準ずる問題|花みずき法律事務所

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消費者被害の取り戻し

無料求人広告トラブル~消費者被害に準ずる問題

無料求人広告を勧誘されてFAXで申し込んでしばらくしたら、「有料期間に入っている」と広告料の請求が来ました。支払わなければならないのでしょうか。

弁護士からのアドバイス

無料求人広告トラブルとは

2019年の春頃から、無料求人広告のトラブルが増えています。

個人で経営している商店、小さな会社に電話で無料で求人広告を掲載するという勧誘の電話が来ます。

その電話では、相手会社の担当者は

「お試しで無料で求人の広告をお引き受けします。」

「同業者の皆さんも、有効に活用されていますよ。」

「無料ですから、損になることはありませんから。」

などと、もっともらしいことを言ってきます。

求人の広告はハローワークなど公共的な媒体を使わない場合には、費用がかかります。

この被害にあう企業の方は、その前からハローワークや新聞・雑誌などで求人広告を出していることが多いです。

おそらく、勧誘してくる会社(加害者)は、ハローワークで求人票を取ったり、メディアで求人をしている情報を取得して、相手を決めているのだと思います。

求人している方から見れば、「無料で広告を出せる=経費なしで求人ができる」という点は、すごくおトクな感じがしますよね。

でもウマい話には裏があるのです。

お金につられて罠にかかる人のイラスト

この手の無料求人広告はFAXで申し込むこととされています。

そのFAXを送信して無料だと思って申し込むのですが、一定期間を過ぎると自動的に有料期間に入る形の契約となっています。

そして、有料期間に入って数日してから、突然、有料期間の前払料金(だいたい16万円~30万円)を請求してくるのです。

申し込んだ企業は無料だと思っているのでビックリします。

ただ、よくよく自分が申し込んだ申込書のFAXやホームページ画面に、内容を判別しにくい文字で一定期間には自動的に有料になる旨が書かれています。

深く考えないでチェックマークを入れる欄にも、分かりにくい形で有料化に同意することが書かれていることもあります。

そこを指摘して、相手は「ここに書いてあることを前提に申し込んでいるのだから、有料化は有効だ!」と言って、強く広告料を請求してくるというわけです。

 

広告料の請求にはどう対応したらよいか

このようなケースで、申し込んだのが消費者であれば、消費者契約法、特定商取引法、電子消費者法などで保護されるので、契約の効力を争う手段は多いです。

ところが、この無料求人広告トラブルの場合、求人をしているという性質から、求人広告を申し込んでいるのは消費者ではなく、企業(個人事業主、会社、その他の法人)です。

経営をしているという時点で、その事業に関係することについては消費者よりも高い判断能力があるとみなされるので、消費者保護のための法律が適用されないのです。

もちろん、無料求人広告の勧誘をする企業はそれを承知して、狙いをつけています。

中小企業や個人商店などの担当者の知識は消費者と変わらないことが多いので、大企業にはそのような勧誘はせず、小さなところに勧誘をしてきます。

このような個人事業や小さな会社の知識不足を利用するトラブルは、昔から様々な形で行われています。

例えば、高額なビジネスフォンを個人商店や中小企業に何のメリットもないのに、あたかも大きな経費節減になるかのように誤解させてリース契約をする「電話機リース契約トラブル」が流行った時期もありました。

それが形を変えて、2019年からは、就職売り手市場を背景に、分かりにくい無料求人広告契約を利用して、請求をする業者が出てきているというわけです。

求人募集の広告のイラスト(男性)

全ての無料お試し求人広告をしている業者が悪質というわけではありませんが、無料から有料への変更にあたって、しっかりと説明をして意思を確認しない業者は怪しいと思って良いでしょう。

では、消費者保護の法律が適用されない以上、お手上げなのでしょうか?

必ずしもそういうわけではありません。

① 無料期間の広告の効果

② 有料期間についての十分な説明の有無

③ 業者の資料の内容や書き方

④ その業者(名称の変更をしているケースも含めて)が全国で同様のトラブルをおこしていないか

などから契約の取消をしたり、有効性を争うことは可能です。

このトラブルは、全国の契約トラブルに詳しい弁護士の間でも問題意識は共有されており(2020年8月時点)、情報交換をしています。

それらの情報を見ていると、弁護士が支払拒絶をすれば終了するケースが多いようです。

私(谷川)自身も、上記の情報交換をして何件もこの種の事件を担当していますが、今のところ裁判で争ったケースはありません。

数は少ないですが、簡易裁判所で争うケースも報告されており、その場合には徹底的に争っている弁護士が多いです。

その場合、勧誘業者の方は、有利な事情がある場合を除いては、訴えの取下をすることもあるようです。

判決が下されれば、興味深いモデルケースになるのでしょうが、業者も請求額からして弁護士に依頼していないので、判決まで争うケースは少ないです。

経営者の方は、是非、無料でお試しの無料求人広告の話には乗らずないようご注意いただければと思います。

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