関東地方で梅雨が明けたという報道と、九州や関西での大雨被害の報道にギャップを感じます。
静岡でも天候不順で急に大雨が降ったかと思うと、太陽が出てきたりしているので日本全体の天候がおかしくなっているように思えます。
地球温暖化の影響があるのでしょうか。
さて、夫婦が離婚するときには、その前に別居することが多いです。
妻が出て行く場合もあれば、夫が出て行く場合もあります。
そのときに、勝手に子供を連れて行って良いのか?と悩むことが多いようです。
弁護士にアドバイスを求めれば、ほぼ「親権をとりたいのであれば、連れて行くべきです。」と答えるでしょう。
それ自体は正しいのですが、連れて出て行ったからといって親権がとれるわけではないことにも注意が必要です。
離婚後もどうしても子供と一緒に暮らしたい配偶者は、離婚にあたって親権を取得する必要があります。
そして、親権者を判断するにあたって、現在、子供と一緒に暮らしていることは大きな強みです。
なぜなら、裁判所で判断されるとき、「子供の生活環境を大きく変えて不安定にしたくない」という要素が入ってくるからです。
そのため、弁護士は家を出るときに子供を一緒に連れて行くことをすすめるというわけです。
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しかし、昨年、子供(保育園児)を連れて出て行った父親に対して、母親からの子の引き渡し請求を認める判決が出されました(東京高等裁判所)。
母親も離婚後に子供と一緒に暮らしたかったのでしょう。
母親から依頼を受けた弁護士は、離婚調停で話し合いをしたのでは、その間に父親との同居期間が増えて、子供の世話をしたという実績を作られてしまうと判断したのだと思います。
そこで、まず、子供を依頼者である母親の元に取り戻す裁判を考えたのでしょう。
子供を連れ出した日から28日目に裁判申立がなされている(弁護士が引き受けてからは数日しかなかったかもしれません)ので、緊急で資料を集めて申立をしたことがうかがわれます。
このように適切な手段を選択できるか?、事件の先を見て緊急性の程度を判断できるか?に弁護士の腕の差が出ると思います。
同業者からみると、この母親側の弁護士の腕が良いことが推測できます。
裁判所が、母親による子供の引き渡し請求を認めるか判断するにあたって主に検討した要素は次のとおりです。
① 同居中における子供との関わりの程度や養育態度
② 別居に至るにあたって子供の生活に配慮したか?
③ 別居後における子供の世話のしかたや生活環境
④ 子供が同居するのにどちらの親の方が子供の養育に適切か
まず、①の点については、母親が専業主婦の間は母親が主に子供の世話をしていて、母親が仕事をするようになってからは、両親で協力して子供の世話をしていたと認定しました。
父親は、「母親が子供の前で自分に対して暴言を吐いたり暴力を振るったりしていた」と主張しましたが、証拠がないため認められませんでした。
やや、母親有利という感じですね。
次に②の点については、夫婦に喧嘩が絶えないなかで、全く子供についての話し合いもなく子供を連れてアパート暮らしをしたことには問題があるとしています。
せめて、前から子供が行ったことがある実家に連れて行ったのであれば、生活の変化についてもそこまで問題視はされなかったでしょう。
父親が不利になってきました。
更に③の点については、父親が子供と同居している間、虐待のような問題はありませんでしたが、近隣の住民から「たびたび子供の泣き声と男性の怒鳴り声が聞こえ、今日も聞こえる」という通報がありました。
児童相談所が実際に訪問しましたが、虐待の事実などは認められませんでした。
もっとも、児童相談所に通報されていたという事実だけでも、父親に大きなマイナスポイントがついたことが推測されます。
最後に④の点では、父親には近くに子育てを手伝ってくれる親族がいなくて、離れた所にいる祖父もまだ働いていたので養育の援助は難しい情況でした。
これに対して、母親側の両親(子供からみると祖父母)は、子供との関係が良好であり、母親は裁判のときにはその両親のいる実家に戻っていたので、子供をひきとったら実家で両親と生活して、子供に適切な養育環境を用意できるとしました。
別居後の子供の生活環境としては、母親に軍配があがりますね。
その結果、裁判所は主に4つの要素を考慮して、子供の健全な生育のためには、母親とその実家で暮らすことが望ましいとして、母親からの子の引き渡し請求を認めたわけです。
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この裁判がある以上、離婚調停や離婚訴訟で戦っても父親が親権をとることは難しいでしょう。
つまり、離婚で親権を争う前に勝負はついてしまうということです。
事件の先読みができる弁護士かどうかは、依頼する方にとって大きな問題だということですね。
これは判断力・洞察力があるかということなので、法律相談でちょっとした日常会話をして弁護士の洞察力・判断力の程度を推測して選ぶのも一つの方法だと思います。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。