中国ギョーザ~後編

昨日は、「みぞれ」から「雪あられ」へと変わるという、静岡では珍しい天気となりました。

 

県内でも、御殿場の方はさらに大雪だったようです。

 

桜の花の上に雪が積もるという面白い風景が報道されていました。

 

では、中国ギョーザのお話の続きです。

 

今後は、逮捕された元従業員を被疑者として、取調べをしていくことになります。

 

そして、その元従業員の行為には日本の刑法の適用があります

 

ところが、報道では、「その元従業員を逮捕して日本に連れてきて、取調をする。」という話は全く出ていません。

 

逆に、中国で「代理処罰」をするという報道がなされています。

 

いったいどのような意味なんでしょうか?

 

まず、前提として、次のお話を理解しておく必要があります。

 

法律の分類では、

① 実体法(じったいほう)

② 手続法(てつづきほう)

という区別を理解する必要があります。

 

① 実体法というのは、法律関係の内容について定めている法律です。

 

その例としは、刑法があります。

 

刑法は、どのような犯罪を犯すと、どのような刑罰を国家から受けるかという、私たちと国家との法律関係の内容について定めていますよね。

 

ですから、刑法は、実体法になります。

 

これに対して、

 

手続法というのは、その実体法が定める法律関係について、実現する手続を定めている法律です。

 

その例としては、刑事訴訟法(けいじそしょうほう)という法律があります。

 

この法律では、どのような場合に逮捕・勾留ができるか、取調の手続、起訴や裁判の手続などについて定めています。

 

ですから、刑法を実現していく手続法ということになります。

 

今回の事件には、刑法という実体法が適用されることは、前編でお話しました。

 

しかし、刑事訴訟法という手続法によって、被疑者を逮捕するためには、まずは中国政府から被疑者の引き渡しを受けなければなりません。

 

そして、引き渡しを受けるためには、「犯罪人引き渡し条約」によって、国家間で被疑者の引き渡しが定められていないといけません。

 

ところが、犯罪人引き渡し条約が日本と中国との間には結ばれていないんですね。

 

そのため、中国が自主的に、日本に被疑者を引き渡してくれない限り、取調も、裁判もすることができません

 

そこで、せめて、日本で起きた殺人未遂罪なども含めて、中国で代わりに処罰するよう求めているんですね。

 

これが「代理処罰」です。

 

現在、中国では、この事件を「危険物質混入罪」の疑いで捜査しています。

 

その犯罪の刑罰を日本風に言うと

原則として「死刑又は無期もしくは10年以上の懲役」

だそうです。

 

もし、日本に引き渡しを受けて殺人未遂が認められても

「死刑又は無期もしくは5年以上の懲役」

です。

 

そうすると、日本で裁判をする(当然、裁判員事件です。)よりも、中国で殺人未遂罪も考慮した代理処罰をしてもらった方が刑は重くなるかもしれません。

 

とはいっても、

①元従業員が本当に真犯人か

②共犯者や組織的背景は無いか

③動機は何か

など、事件の全容を明らかにしないまま重い処罰だけをしても、再犯の防止にはつながりません

 

中国で対応するにしても、日本の政府(警察)が対応するにしても、きっちりと捜査して欲しいものですね。

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中国ギョーザ~前編

中国ギョーザへの毒物混入についてのニュースがありました。

 

ある食品会社の元臨時従業員が逮捕されたとのことです。

 

もし、この元従業員が真犯人だった場合、この犯罪に日本の刑法が適用されるのでしょうか?

 

日本の刑法では、一番最初(1条1項)に次のような規定があります。

 

「この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。」

 

でも、今回の事件で疑われているのは、「中国国内」の会社で、中国人が毒物を混入したというものです。

 

とすると、「日本国内」ではないから、刑法の適用は無いようにも見えます。

 

しかし、

実行行為(じっこうこうい~犯罪を行う行為)が国外で行われても、

犯罪の結果が日本国内で発生すれば、

「日本国内において罪を犯した」ことになるとされています。

 

ですから、今回の事件のように、

「毒物をギョーザに入れる行為」(実行行為)が中国で行われても、

その被害(犯罪結果)が日本で発生すれば、日本の刑法が適用されることになります。

 

この事件では、日本では、食べた方々がひどい中毒になり、意識不明になった方もいました。

 

ですから、日本では、少なくとも中毒という傷害スーパーでの業務妨害という被害結果が生じていると言えるでしょう。

 

刑法では、殺人未遂罪又は傷害罪業務妨害罪が適用される事案です。

 

でも、日本の警察が逮捕するなどの話は出ていないですね。

 

逆に、中国での「代理処罰」などと言われています。

 

これはどういうことなんでしょうか?

 

これはまた、後編で。

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笑ゥそぅぞくにん

もう、金曜日です。

 

今日がんばれば、少しはお休みできますね。

 

私は、日曜は仕事になりそうですが・・・

 

皆さんは笑う相続人」って言葉を聞いたことがあるでしょうか?

 

タイトルでは、「笑ゥせぇるすまん」風に書いてみました。

 

民法の勉強をすると、不法行為(違法な行為で人の権利を侵害すること)や相続の分野で出てくる言葉です。

 

これは一体なんでしょう?

 

まず、前提として、説明しておかなければならないことがあります。

 

前回は相続人を4種類だけあげましたが、実は他にも相続人になるケースがあります。

 

それは、被相続人ひそうぞくにん亡くなって相続される人)、よりも先に相続人が死亡してしまった場合です。

 

つまり、

(1)  被相続人(相続される人)である親より先に、子供が死亡してしまった場合

(2)  兄弟姉妹で、被相続人である兄姉よりも、弟妹の方が先に死亡してしまった場合

などです。

 

(1) の場合には、被相続人(親)から見ると、子はすでに死亡しています。

 

しかし、孫がいれば、子が相続するはずだった分を孫が相続できまるんです。

 

また、(2) の場合には、被相続人(兄姉)から見て、弟妹はすでに死亡しています。

 

でも、それに代わって甥や姪相続できることになります。

 

このように、相続人(例えば子)が、被相続人(例えば親)より先に死亡した場合に、相続人の分を引き継いで相続すること代襲相続だいしゅうそうぞくと言います。

 

そして、代襲相続する人(例えば孫)のことを、代襲相続人(だいしゅうそうぞくにん)と言います。

 

そうすると、かなり遠い関係にある人から相続する場合があることになります。

 

例えば、こんなストーリーはどうでしょう?

 

皆さんのお父さんが早く亡くなってしまったので、お父さん方の親戚とはほとんど付き合いがなかったとします。

 

なので、皆さんには、一度も会ったことが無くて、存在すら知らない「おじさん」(お父さんの弟)がいます。

 

その「おじさん」も、結婚もせず、子供もいなかったので、もともと親戚付き合いなどせずに遠くで暮らしていました。

 

一人暮らしで、特にぜいたくもせず、大きな会社で働いていたので、不動産や預金を合わせると1億円を超える財産残して死亡しました。

 

その時には、もちろん皆さんの祖父母も亡くなっていました。

 

この場合、皆さんは甥姪(おい・めい)として、第三順位ですが、ただ一人の相続人として「おじさん」の財産を相続することになります。

 

ある日いきなり、弁護士から、「相続のお知らせ」などという書面が皆さんに届き、その中には「1億円を超える財産をあなたが相続することになります」となっているんですね。

 

まさに笑いがとまりません。

 

そうです。

 

この場合の皆さんが「笑ゥそぅぞくにん」になるんですね。

 

民法で「笑う相続人」と言う場合には、皮肉・批判的な意味合いが入っています。

 

つまり、本当は相続によって、被相続人から利益を受ける強い結びつきが無いのに、いきなり大きな利益を受けるのはどうかという問題意識が入っているんです。

 

とはいえ、今の民法では、「笑う相続人」を完全に排除することは難しいんです。

 

ただ、あぶく銭にあまり喜びすぎると、マンガのような結末になりかねませんのでご注意を。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

 

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誰が相続できるの? ~ 法定相続人について

桜が東京でも開花というニュースがありましたね。

 

静岡も同じくらいの咲き始めだと思います。

 

今週末から、花見が始まりそうです。

 

今日から相続のお話です。

 

相続の時には、「子どもの取り分」が「2分の1」とか「4分の1」とかの話が出てきます。

 

一体何でしょう?

 

民法では、

① 相続できる人(これを相続人(そうぞくにん)と言います。)は誰か

② そのそうぞくできる分(法定相続分(ほうていそうぞくぶん))はどれくらいか

を定めています。

 

まず、相続人ですが、基本的には次の4種類です。

 

 配偶はいぐうしゃ~夫や妻のことです。

 

① 子供

 直系尊属ちょっけいそんぞく)~自分の直系の目上の人、つまり父母や祖父母などです。

 兄弟姉妹

 

配偶者だけ◎となっているのは、順位に関係なく常に相続人となるからです。

 

これに対してとなっている相続には、この順番で優先順位があります。

 

①子供がいれば、②父母や祖父母(直系尊属)③兄弟姉妹は相続人となりません。

 

また、②父母や祖父母が生きていれば、③兄弟姉妹は相続人となりません。

 

そして、その法定相続分は、との組み合わせによって変わります。

 

それは次のようになります。

 

(1)  配偶者と子供が相続する場合には、配偶者1/2、子供全員で1/2

 

(2)  配偶者と父母や祖父母(直系尊属)が相続する場合には、配偶者2/3、直系尊属は1/3

 

(3)  配偶者と兄弟姉妹が相続する場合には、配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

 

亡くなって相続される人(これを被相続人ひそうぞくにん)と言います。)と関係が薄い相続人ほど取り分が少なく、それに応じて、配偶者の取り分が多くなっていくということです。

 

ここらへんの関係は、下のリンク「相続の一般的なご説明」の方が、表を使ったりして分かりやすいと思いますので、良かったらご覧ください。

 

「相続の一般的なご説明」についてはこちらをご参照ください。

 

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カテゴリー: 相続のお話 |

「悪い人」は永遠に「悪い人」?

あちこちで、桜が咲いたというニュースを聞きます。

 

静岡では、まだ寒いせいか、時々花がひらいている桜はありますが、まだ、つぼみのままの花の方が多いようです。

 

さて、今回は、「悪い人」を弁護する理由を異なる側面から考えてみましょう。

 

私たちが、子供の頃、「悪いと知りながらやってしまったこと」を怒られた場合を例にしてみます。

 

テストの直前、「勉強をしなけれあいけない!」と先生にも親にもうるさく言われたことは、多くの方が経験していると思います。

 

でも、遊びたい気持ちに負けて、こっそり遊びに行ってしまい、テストでひどい点数をとったとしましょう。

 

次のどちらの場合の方が、「次のテストはしっかり勉強しよう!」という気持ちになるでしょうか。

 

① 「テスト前に勉強をサボったこと」についてだけとりあげて、とてもひどく責められた場合。

 

② 「遊びたい気持ちはわかる」と理解を示しながら、どうして勉強しないといけないか説教をされた場合。

 

どっちも、決して楽しくはありませんね(笑)。

 

ただ、よほどファイトのある方でない限り、「の方がガンバれる!」とは言えないのではないでしょうか。

 

刑事事件被疑者被告人にも同じことが言えると思います。

 

今の日本の刑法などでは、よほどひどい犯罪でないと死刑になりません。

 

犯罪を犯した人であっても、そのほとんどの人は、刑務所からまた出てくることになります。

 

出所した人に、「もう二度と犯罪は犯さないようにしよう」と思ってもらうためには、どちらが良いのでしょうか。

 

 世間・マスコミ・警察・検察官・裁判官から、とにかく「悪いことをした」と責める

 

 検察官の主張に対して、弁護人がついて、「理解できる事情・やむを得ない事情もある」と、ある程度の理解を示してあげた上で、裁判官から犯罪行為の悪いところを示して説諭(せつゆ~悪いところを改めるよう言い聞かせること)する

 

結論はおわかりですよね。

 

そういう意味では、罪を犯した人に、もう一度犯罪を犯させないこと(「再犯防止(さいはんぼうし)」と言います。)は、検察官・裁判官・弁護人の協同作業という面があるような気がします。

 

次の被害を出さないために

 

これは刑事弁護人の中には常にある気持ちだとおもいます。

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。

 

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犯行を認めた「悪い人」までどうして弁護しなければならないの?

よく新聞の記事で、「犯罪事実否認した」とか「認めている」とか書いてあることがありますね。

 

「否認した」というのは、警察や検察官が疑っている犯罪について、「自分はやっていない」と認めないことです。

 

このような事件を「否認事件」と呼ぶことがあります。

 

「認めている」というのは、逆に、疑われている事実を認めていることです。

 

このような事件を「自白事件」と呼んだりします。

 

実際の刑事事件においては、「自白事件」の方がずっと多いです。

 

そうすると、自白している被疑者・被告人は「悪い人」なので、特に弁護しなくても、法律のとおり刑罰を決めていけば良いとも思えます。

 

でも、日本の刑法(けいほう~刑罰について定めている法律)は、とても刑の幅が広いので、犯罪事実を認めれば、刑罰も自動的に決まるというものではありません。

 

例えば、窃盗(せっとう~ドロボウのことですね)の場合、刑罰は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。

 

そうすると、一番重い場合には、10年間も刑務所に行かなければならず(加重される事情があると上限はもっと重くなります)、一番軽い場合には1万円の罰金もあり得るわけです。

 

実際には、そんなに極端に重かったり、軽かったりすることはありませんが、犯罪をしたときの事情情状~じょうじょう)によって、大幅に刑罰の重さが変わることは事実です。

 

そして、警察や検察官は、まずは被疑者・被告人の悪いところをあぶり出すのが仕事です。

 

なので、そこで作成された調書や証拠には、被疑者・被告人の「やむを得なかった面」や「この点は理解できる」という部分が現れないことが多いのです。

 

そのまま、裁判に突入して判決をもらうことにすると、その悪い事情だけをもとにして、刑罰の重さ(これを「量刑りょうけい」と言います。)がさだめられてしまうことになります。

 

そうならないように、弁護人がついて、警察署などに接見に行って話しを聞いたり、調書を読み込んだりして、より量刑を軽くする事情に見落としが無いかさがしていきます

 

そして、裁判でその事情を裁判官や裁判員に説明していくんですね。

 

この弁護人の活動があってこそ、適正な量刑ができるとも言えます。

 

皆さんが裁判員になられたら、是非、弁護人の説明や主張にも耳をかたむけていただければうれしいです。

 

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弁護人はHEROになれない?

今日の静岡は、昨日の強風と寒さがウソのような暖かい良い天気になっています。

 

今回は、刑事事件の冤罪えんざい)のお話しを。

 

私は、刑事事件の取扱いは特に多い方ではなく、静岡では平均的な数ではないかと思います。

 

普通に国選弁護人を中心に、時々私選弁護を行うという程度です。

 

その普通の刑事弁護人から見た刑事事件の感想だと思って聞いて下さい。

 

どうしても、刑事事件の話になると、弁護人は悪役っぽくなります。

 

少なくとも「HERO」とは呼ばれないですね・・・

 

私も、「悪い人をどうして弁護しなければならないんですか?」と聞かれたことは何度もあります。

 

おそらく絶対の正解というものは無いんでしょうが、私の理解している範囲でお話を。

 

3つのことをご説明したいと思いますが、まずは、何と言っても冤罪(えんざい)の防止のためでしょう。

 

冤罪(えんざい)とは、本当は(神様の目で見れば)その犯罪を犯していないのに、裁判でその犯罪を犯したとの判決がなされてしまうことです。

 

例えば、最近大きく報道された足利事件(あしかがじけん)が典型です。

 

1990年5月に、栃木県足利市内のパチンコ店から行方不明になった4才の女の子が、行方不明の翌日に近くの河川敷で、遺体で発見されたという事件です。 

 

 この事件では、犯人だと疑われた菅家さんは、実は犯罪を全く犯していなかったのに、犯罪事実を認めてしまいました自白)。

 

 また、「遺体があった現場に残されていたもの(遺留物~いりゅうぶつ)と菅家さんの血液型DNA型矛盾がない」との鑑定かんてい)も重要な証拠になりました(DNA型の鑑定)。

 

当然、マスコミ報道も菅家さんを真犯人だと報道しました。

 

ここでの問題は、

 取調担当の警察官が菅家さんにひどい取調をしてウソの自白を言わせたこと

 不正確なDNA型鑑定を担当裁判官が有罪の証拠として採用してしまったこと

のように見えます。

 

それも問題の一つの側面でしょうが、背景には他にも問題があるのではないかと思います。

 

そもそも、菅家さんはどうして、やってもいない犯罪を認めてしまったのでしょうか?

 

まず、重大な犯罪事件が起きると、世論は、「早く犯人をつかまえて!」と、マスコミなどを通じて相当なプレッシャーを警察にかけます。

 

すると、その事件を早期に解決できるかどうかは、警察官(特にエラい人)の出世に大きくかかわってきます。

 

そこで、捜査する警察官たちに、早期の犯人発見と逮捕を強く命令されます。

 

もともと、警察の組織は強い体育会系の組織ですから、その意思は、普通の会社よりもずっと強く伝わるんですね。

 

その結果、菅家さんの取調では、15時間近く連続して、何度も同じことを聞いたり、相当の暴行がなされたと言われています。

 

「この取調を何とかやめてほしい」との一心で、捜査官の言うことをそのまま認めてしまった結果、事実と違う自白ができあがったんですね。

 

こう見ると、冤罪(えんざい)のスタートは、「とにかく犯人をつかまえろ!」と突っ走る私たち世論とマスコミのような気もします。

 

事件が起きた時には、私たち自身が被害者やその家族でない限り、事件から一歩引いて、「本当にこの人は犯人だろうか?」って考えてみることが重要かなと思っています。

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。

 

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弁護士がよく聞かれること

静岡は、昨日とは、うって変わって春のような晴れ日です。


今回は、弁護士として良く聞かれる質問をいくつかご紹介を。


皆さんも仕事の関係での質問を受けることがあろうかと思いますが、弁護士も仕事や試験の関係で、よく受ける質問があります。


質問と私なりの回答(感想?)をご紹介します。


① 法廷ものの映画・ドラマ・小説・漫画を読んだりするんですか?


どちらかというと、私は、けっこう好きな方だと思います。

  

一般にはいろいろな弁護士がいて、「弁護士だから見る」「見ない」というのは無いように思えます。


映画が好きな弁護士であれば、評判の高い法廷映画はきっと興味がそそられるでしょうし、漫画が好きな弁護士(私はけっこう好きです。)は裁判ものの漫画を読んだりするのだと思います。


② 「行列のできる法律相談所」に出たいですか?


これは、先日、ある中学校で模擬裁判をやった後、中学生から受けた可愛らしい質問です。


私は「TV映りが悪いから」としか答えようがありませんが・・・


バラエティ、報道番組、事件での撮影など、多くの弁護士がテレビに出てくれれば、親しみやすいとともに、「弁護士にも色々いるな~」と分かってもらえて良いと思います。


ただ、TVへ出ること、面白いコメントを言うことだけが目的になってしまう危険性もあるような怖さを感じます。


③ 弁護士になるには、子供の頃から勉強でトップクラスにいないとダメなんでしょうね?


そういう弁護士も多いとは思います。


もっとも、私自信は、学校の成績にとってもムラがあったので、「トップクラスです!」と胸をはっては言えませんが・・・


司法試験(弁護士・裁判官・検察官になるための試験)に合格すると、司法研修所というところに入りますが、学歴をみると、トップクラスだった人が多いのかなとも思います。


でも、学校での勉強ではトップクラスでは全然ないのに、法律のことになるとすごい切れ味を見せる人もいましたので、絶対とは言えません。


「学校での成績はイマイチだけど、法曹(弁護士・裁判官・検察官)を目指すんだ!」という方も、気後れすることなく、自信と勇気をもって、がんばってください。


そのほかにも色々な質問を受けることがありますので、またの機会にご紹介しますね。


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無料法律相談の使い方

静岡では、2月終わりに暖かくなったと思ったら、今日は、急激に冷え込んでいます。

 

暖かくなって花粉が飛んだようで、急いで薬をもらってきました。

 

最近、仕事や委員会が忙しくて、休日もなかなかゆっくりする時間がとれません。

 

ありがたいことだとは思いますが・・・

 

では、本題です。

 

今日は、市町村法テラスなどでやっている、無料法律相談についてお話したいと思います。

 

皆さんが、無料相談で、弁護士に相談される際、何を持って行けば、弁護士から良いアドバイスをもらえるでしょうか?

 

弁護士から、良いアドバイスを得るためには、次の2つが大切だと私は思っています。

 

① 問題となっている事実関係を、できるだけ早く弁護士に理解させること

 

② その事実を証明できる資料証拠)を見せること

 

事務所で相談を受ける場合と違って、市町村の法律相談では、次の相談者が常に待っていますし、市町村の職員時間の仕切りを行います。

 

また、時間も20分~30分という本当に短い時間です。

 

そのため、弁護士に要領よく時間を使わせたかどうかで、相談者の得られる利益が大きく変わってきます。

 

そこで、

では、事案の関係図などがあると、弁護士の理解が早いです。

 

例えば、相続の問題だったら、簡単な家系図ですね。

 

また、「口ではうまく伝えられない」と言って書面に書いてご持参される方もいます。

 

もっとも、その書面が何枚にもわたる長い文章の場合、相談を受ける弁護士にとっては、かえって口頭の方が分かりやすいということも珍しくありません。

 

確かに、的確な書面であれば早く伝わるのですが、普通の相談者の方は、何を書いたら弁護士にとって的確なのかは判断が難しいと思います。

 

そこで、おすすめなのが、A4の表面1枚だけに要点を書くこと、しかも箇条書きにして書くことです。

 

1枚だと分かると相談を受ける弁護士もしっかりと読む気持ちになりますし、箇条書きにすると、意外と事実関係のポイントが自動的に絞られやすいのですね。

 

関係図があれば、口頭だけでも十分理解は早いこともありますので、まずは関係図をご用意ください。

 

は、意外と忘れる方が多いです。

 

遺言の効力の相談をしにきているのに、遺言やそのコピーを持参されなかったりすることも良くあります。

 

もっとも、たとえば、業者からの借金の相談では、明細などが残っていないことがほとんどで、調べれば分かることなので、これは無くても大丈夫です。

 

結局、関係ありそうな書類・物で、保存してあるものは一応、全部持って行くというのが、楽だし、間違いがないのではないかと思います。

 

また、ご要望や疑問点をはっきりと言うと、弁護士からもはっきりとした回答をもらいやすいと思います。

 

逆に、事務所で相談を受ける時には、本や判例など色々な調査資料が弁護士の手元にあるうえ、次の相談者が常に待っているわけでもありません。

 

継続の相談や事件を引き受ける場合には、「また、次回○○を持参してください」とお願いできます。

 

なので、どの弁護士でも、事務所で相談を受ける時の方が、有料・無料を問わず確実なアドバイスをしやすいのではないかと思います。

 

そういう意味では、市町村や法テラスでの法律相談は、「弁護士試し」と「問題解決への方向性を確認できれば良い」程度の気持ちで行かれるのが良いと思います。

 

「弁護士のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

 

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相手の離婚請求を棄却すれば、幸せが戻ってくる?

離婚の裁判で、「絶対に離婚したくない」という夫(妻)が勝った場合に、得られる者は何でしょうか?

 

「離婚したくない!」と裁判で主張して、勝った場合には、請求棄却せいきゅうききゃく)」という判決が出されます。

 

つまり、「相手からの離婚の請求を認めない」という判決が出るんですね。

 

これには、全面勝訴!という印象を受けられるかもしれません。

 

しかし、忘れてはいけない点がいくつかあります。

 

① 決して相手の愛情が戻ってきたわけではなく、同居して暮らす夫婦生活は決して戻っては来ないこと

 

② 離婚したくない妻が、夫から生活費婚姻費用)をもらう場合、その金額は同居して生活をしている夫婦のように多くの額には決してならないこと。

 

 逆に、夫にとっては意味の無い負担がずっと続くこと。

 

 出て行ってしまった夫(妻)と別居している期間長期になってしまうと、それ自体が「結婚生活が壊れている」ことにあたるとして、何年か後にもう一度裁判を起こされると、結局、離婚が認められてしまう場合もあること

どです。

 

この①~③の点について、見ていきましょう。

 

まず、です。

 

以前、離婚したくない場合の調停として、夫婦関係円満調整の調停があると言いました。

 

この調停で話をして、お互いにゆずりあえる段階であれば、夫婦関係の修復は可能でしょう。

 

しかし、全ての調停で合意できずに、裁判になってしまった場合には、そこまで争っている相手(夫・妻)に離婚の意思を変える気持ちがないことは明かです。

 

そうすると、離婚の裁判で離婚が認められなかったからといって、相手が帰ってきて夫婦として生活していくことは、ほとんど期待できないのです。

 

次にについての説明です。

 

離婚が認められない場合には、夫(妻)は夫婦として子供を含めて他方の生活を助けなければなりませんから、生活費(婚姻費用)を支払う義務があります。

 

この生活費の金額を、以下の例で考えてみましょう。

・14才以下の二人の子供がいる

・夫の年収(額面)は600万円

・妻の年収は、パート(額面)60万円程度

この場合に、争って、審判になった場合、夫が妻に支払うべき生活費は、月額12万円程度が相場となっています。

 

(もっとも、高額な医療費・学費などがかかる場合には、加算されるケースはあるので、その主張が必要です。)

 

とすると、妻は、例えば、幼稚園と小学生の子供二人を、自分のパート収入5万円+12万円=17万円で育てていかなければならないわけです。

 

家賃や光熱水費など必要経費をはらったら、10万円を切ってしまい、その中から、食費・教育費などを出すので、相当きつい生活となります。

 

最後に、についてです。

 

ここでの裁判例というのは、東京高等裁判所での判決です。

 

6年以上別居が続いた夫婦(小さな子供がいない場合)で、夫から妻へ相当額の財産をゆずること前提に、夫からの離婚請求を認います。

 

このケースは、夫には、裁判の時点で浮気の確定的な証拠がありましたが、妻には過去に浮気の疑惑があったという微妙な夫婦関係でした。

 

色々な条件で折り合わないために和解できず、離婚事由(離婚事由の回で書いた①~⑤の事由です。)があるのか争いになりました。

 

結局、「既に夫婦関係は壊れている」(⑤の事由がある)として、浮気をした夫からの離婚請求が認められてしまいました。

 

こうなると、「絶対に離婚しない!」といって、離婚の裁判で勝訴した場合に得られるものって何でしょうか?

 

例えば、子供の親権をどうしても譲りたくない父親であれば、お金の問題ではないので、最後まで争うことに意味はあるとは思います。

 

ただ、そのような特別の事情がない場合には、十分な財産分与・養育費・慰謝料などの支払いを受けて、和解により離婚をして、新生活に踏み出すというのも一つの選択として考えることは必要だと思います。

 

離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

 

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