「ブラックリスト」っていう名簿があるの?

私の事務所から裁判所へは歩いて15分弱です。

 

その途中に、駿府城跡が公園になっているところ(駿府公園)を良く通っていきます。

 

内堀の全部が公園になっているので、結構大きな公園で、イベントなどが良く行われています。

 

公園内では桜が終わって、ツツジが花盛りです。

 

さて、借金の問題でご相談にこられる方の多くは、毎日の請求の電話に悩まれています。

 

そこで、弁護士がその方の債務処理をお引き受けすると決めたら、すぐに債権者に事件の受任を知らせる通知を出します。

 

以前、ご説明した「受任通知じゅにんつうち)」「介入通知かいにゅうつうち)」です。

 

この通知には

「今後は弁護士代理人なので、ご本人への請求・連絡はご遠慮いただきたい

との要請文を必ず入れます。

 

以前にもお話したと思いますが、ヤミ金でない限り、この通知で請求を止めることができます。

 

ただ、この通知を送った場合、良いことばかりではないんです。

 

護士借金の処理に入ったことを、「信用情報機関」へ通知されてしまうという不利益があります。

 

これを「ブラックリストにのる」などと言われたりします。

 

この「信用情報機関」って何でしょう?

 

お金を貸してくれる銀行・貸金業者など正規の業者は、それぞれの「信用情報機関」に加盟しています。

 

例えば、

① 銀行であれば銀行協会が運営する「全国銀行個人信用情報センター

② 消費者金融会社であれば「日本信用情報機構JIC)」

 

③ 信販クレジット)会社であれば「CICシー・アイ・シー)」

といった団体がそれにあたります。

 

このような団体は、業界で出資しあうなどして作られたもので、お金を借りる人債務者)の情報を収集して、各業者に提供しているんです。

 

お金を借りたり、クレジットを利用したりすると、その信用情報機関には借入の金額や時期などがデータとして提供されます。

 

つまり、しっかりお金を返していても、借りたり、クレジットを利用した人は、信用情報機関のリストにはのっているわけです。

 

私もクレジットは使いますから、私もリストにはのっていることになります。

 

そして、弁護士からの受任通知が来たり、返済が一定期間遅れたりするなど、何らかの問題の情報事故情報)があると、これをリストの一項目に記入することになります。

 

これを「ブラックリストにのる」と言ったりします。

 

特別に「ブラックリスト」という名簿があるわけではないんですね。

 

そして、このような記入がされると、それ以降、5年~7年間お金を借りたり、クレジットを利用することができなくなります

 

銀行や貸金業者などは、お金を貸す時、クレジットを利用させるときには、信用情報機関へ調査を入れます。

 

そして、信用情報機関同士は、情報を提供しあっている所が多いです。

 

なので、どこか一信用情報機関事故情報がのっていると、その調査で借入やクレジットカードの利用をストップされてしまうんです。

 

ですから、弁護士が受任通知を債権者に送る前に、この点を依頼者の方にしっかり説明する必要があります。

 

このように、ご本人に大きな不利益を生ずるので、直接お会いして、ご本人を確認する必要があると言えます。

 

ご本人に会いもしないで、電話だけで受任する弁護士や司法書士がいるとしたら、この点でも大きな問題があると思います。

 

借金問題ご解決方法についてはこちらをご参照ください。

 

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借金問題解決に向けて弁護士がまず考えること

今日は借金の問題を解決するはじめの段階に、弁護士が検討することについてお話をしていきます。

 

借金の問題は、弁護士の仕事で様々な形で関わります。

 

 債務整理破産再生はもちろん

 手形貸金債権回収の場面

 相続の問題で、亡くなった方が借金を残していた場合の処理

 離婚の際に夫婦の一方名義の借金の負担をどう処理するか

などなど、借金問題を適切に処理できないと、色々な場面で困ることになります。

 

今回は、借金問題の典型的な場合として、上のの場合について考えていきます。

 

弁護士が、「借金が多くて返せないんです・・・」と相談を受けたとします。

 

この時、まず、何をお聞きして、何を説明しなければならないんでしょうか?

 

債権者名・借金の総額・返済状況はもちろんですが、私が特に注意していることは、次のことです。

 

まず、借入時期利率をお聞きします。

 

利率について、覚えていない方もいますが、債権者借入時期を聞くと、だいたい推測ができたりします。

 

なぜこれを気にするかというと、利息制限法より高い利率で、長い間(5~10年以上)借入と返済を繰り返していると、

借金の額が大幅に減ったり、払いすぎた利息返してもらえたり(これを「過払い」と言います。)できる

からです。

 

どうしてそうなるんでしょう?

 

利息制限法では、利率限度を次のように定めています。

 

☆借りた額が10万円未満→年20%

☆   〃  10万円以上~100万円未満→年18%

☆   〃  100万万円以上→年15%

 

ですから、例えば、50万円を貸した時に、年25%で貸し付けていると7%オーバーになります。

 

この7%分についての返済を、借りたお金(「元本」と言います。)に入れていくと、借金がどんどん減って、最後には払いすぎ(過払い)になっていくのです。

 

借金の整理をするには、このオーバー分がどの程度なのかが非常に大事になるんですね。

 

弁護士としては、まず

ご相談者の債務どれだけ減る可能性があるのか?

過払いになる可能性があるのか?

を推測してから、借金の整理の仕事に取り掛かるというわけです。

 

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この子には遺産を絶対に相続させたくない!~廃除とは?(後編)

前回の廃除はいじょ)のお話の続きです。

 

以前お話した相続欠格(そうぞくけっかく)では、「相続人が遺産を得るために被相続人を殺す」というようなひどい行為でした。

 

そこまでいかなくても、相続人(前編の例では長男)が、被相続人(相続される人、前編では父親)にひどいことをする場合があります。

 

このような場合に、被相続人(例えば父親)の意思家庭裁判所の審判で、相続人(例えば長男)から相続権を奪うことを認めました。

 

それが、廃除という制度です。

 

民法では以下のように定めています。

 

 被相続人に対する虐待ぎゃくたい)もしくは重大な侮辱ぶじょく

 その他の著しい非行

がある場合に、被相続人から家庭裁判所に廃除の請求をすることができる。

 

つまり、ドラ息子・娘には遺産をやらないことができるという制度です。

 

もっとも、廃除というのは、相続人から一切の相続権を失わせるものですから、裁判所も簡単には認める審判をしません

 

認められなかった例としては次のようなものがあります。

 

息子が、転職や借金をくりかえして、家族名義でもお金を借りてしまいました。

 

結局、その息子は、その300万円弱もの借金を返済しようとしなかったのですが、父親からの廃除の請求を認めませんでした。

 

では、どのような事例では認められるんでしょうか?

 

例えば、よく出てくる裁判例ですが、娘が中学校から高校にかけて、家出、退学、犯罪性のある者等との交友などをして、少年院にも入れられて親にとても迷惑をかけました。

 

その後、娘は、様々な男性との交際・同棲などを経て、複数の前科のある元暴力団員と結婚してしまいました。

 

あげくの果てには、父母が婚姻に反対なのに、父の名を勝手に使用して披露宴の招待状を出してしまったという事例です。

 

この事例で、裁判所は最終的に父親からの廃除請求を認めました

 

ただ、これでも、最初の審判では廃除は認められず、東京高裁に抗告(最初の審判への異議)をしてやっと認められた事案です。

 

つまり、ちょうどボーダーになる事案ということですね。

 

廃除を認めてもらうためには、相続人に相当のひどい行動が必要で、裁判でその証明もしっかりやっていかなければならないということなんですね。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

 

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この子には遺産を絶対に相続させたくない!~「廃除」とは?(前編)

静岡では、ぐずついた天気が続いています。

 

全国的にもそうでしょうか。

 

今回は、財産を持っている方が、子供や兄弟姉妹などの相続人財産を相続させたくない場合のお話です。

 

例えば、年老いた父親の世話を、長男夫婦がいやがって全くせず、長女がしていたとしましょう。

 

父親の子は、この二人だけだったとします。

 

長男は、世話をしないばかりか、父親に暴力をふるったり、勝手にお金を持って行ってしまったりしました。

 

この場合に、父親は、長男に財産を一切相続させないということができるでしょうか?

 

まずその方法の一つとして、父親が次のような遺言書書くことが考えられます。

 

「私の不動産・預金・その他一切の財産を、私の世話をしてくれた長女に相続させる。」

 

このような遺言有効です。

 

ただ、一つ問題があります。

 

長男には遺留分いりゅうぶん)という取り分があることです。

 

つまり、遺言によっても長男の取り分の全てを奪うことはできず、最低限の取り分(このケースでは遺産の1/4)は相続させなければならないんですね。

 

では、この長男の遺留分ですら相続させないようにすることはできるでしょうか?

 

実は「廃除はいじょ)」という制度によって、長男の相続分を奪うことができます。

 

この手続については次回に。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

 

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相続争いは常に裁判ザタ?

静岡では、日曜日、月曜日と暖かい天気に恵まれていますが、春だからといって、もう油断しません(笑)

 

引き続き、遺産の分け方に関するお話をしていきますね。

 

相続についての主張が食い違う場合、弁護士に相談すると、常に、調停訴訟などの裁判手続になるのでしょうか?

 

実はそうではありません。

 

遺産について争いがあるといっても、程度は色々です。

 

私が受任した事件についても、ケースによって裁判所の手続を申し立てるかどうかを考えていきます

 

例えば、親から子への相続でケースを大まかに分けると次の4つに分けられます。

 

① 法律で定められた相続分(法定相続分)をそれぞれが取得すれば良いという場合

 

② 長男が遺産を受け継ぐのはしょうがないが、兄弟姉妹としては、遺産を渡すのに同意する代わりにいくらかの取り分(いわゆる「ハンコ代」)が欲しいという場合

 

③ 長男が親の面倒を見た、子供たちの誰かが親から特別に利益を受けているなどで、法定相続分とは違った取り分が争われている場合

 

 相続人(子供たち)の誰かが勝手に親の預金をおろしたとか土地の名義は長男名義だが実は親が全てお金を出しているので親の遺産だとか遺産の範囲自体に争いがある場合

 

上のうち、私が事件をお引き受けした場合、の場合には、まずは、話し合いで解決できないかトライするようにしています。

 

どうしても、裁判所で遺産分割調停や訴訟を起こすと、長い期間争いが続くこと、双方の怒りや恨みが大きくなることが多いです。

 

なので、話し合いで解決できれば、それに超したことはないんですね。

 

これに対して、のような争いになってしまうと、双方の主張が折り合うことが難しくなります。

 

交渉をして折り合えれば良いのですが、どうしても折り合えない場合には、遺産分割調停訴訟手続に進まざるを得ません

 

このような場合には、弁護士に依頼して、裁判所の手続で解決するのが良いでしょう。

 

もし、皆さんや知り合いの方で、相続の問題で悩まれている方がいれば、のいずれにあたるのか、まずは、確認してみると良いと思います。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

 

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相続問題の始まりと交渉の相手は?

また、急に寒くなりましたね。

 

昨日は、久しぶりに控訴審があって、東京高裁に行ってきました。

 

帰りには、東京の弁護士会館にある法律専門書店で、色々と参考になりそうな本を買ってきました。

 

今、東京方面の裁判手続がいくつかあるので、機会があれば写真などをアップしたいと思います。

 

さて、本題ですが、相続の問題というのは、どのように始まるのでしょうか?

 

事件は、相続人の一人から通知が出されることで始まります。

 

多いのは、親と同居する長男から、他の兄弟姉妹に対して通知がされるケースです。

 

通知の内容は様々ですが、以下の3つの内容が良くあります。

 

① 遺産分割を○○の形で行いたいので、実印の押印印鑑証明書が欲しい

② 自分(長男)が、遺産を全て相続するので、相続放棄の申請をする書面に印鑑を押して欲しい

③ 「自分(長男)に全て財産を譲る」との遺言があるので、そのとおりにしたい

 

そして、このような通知に納得できない相続人から、それぞれの主張や反論などがあって、交渉や調停手続きが始まることになります。

 

(1) まず、誰が合意すれば遺産の分割は有効に成立するのでしょうか?

 

上のの通知が、相続人の一人から来た場合には、その人とだけ話をすれば良いのでしょうか?

 

実は、遺産分割の合意は、相続人全員でしなければ無効です。

 

最終的な書面には、相続人全員の署名と実印が必要になるんですね

 

ですから、上の事例で、長男の立場に立って言えば、相続人全員を戸籍を取り寄せて調査して、その全員に通知を出さなければなりません。

 

意外と、この相続人の調査が面倒くさいし、知らない人が相続人として現れたりしてビックリすることも多いです。

 

相続人調査の詳しいお話は、また別の機会にしたいと思います。

 

2) 次に、代理人には、どのような人がなれるのでしょうか?

 

上のの通知が、相続人の一人から来る場合もありますが、ある程度の交渉が必要な場合には、弁護士からの通知が来ることも多です。

 

その他、遺産分割協議書の作成や登記手続きを引き受けたとして、司法書士から連絡が来ることもあるかもしれません。

 

ただ、遺産の総額が140万円をこえる場合には、遺産の分け方についての代理交渉は、弁護士しかできません。

 

そして、争いになるような場合には、間違いなく遺産の総額は140万円は超えているでしょう。

 

権限の無い人と交渉してしまうと、せっかく合意しても、後で「無効だ!」と訴訟で争われたり弁護士法違反の刑事事件に巻き込まれることもあるので、ご注意ください。

 

もし、交渉の権限疑いがあったら、お近くの弁護士にご相談されることを、おすすめします。

 

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うっかり遺言書を捨ててしまったら?

遺言を捨てたり、隠したりすると相続人の資格を失うというお話をしました。

 

そうすると、「自分に全財産を譲る」などの有利な遺言、「相続人どうしの話し合いができたから、もういらない」と思って捨ててしまった場合、相続人の資格を失ってしまうんでしょうか。?

 

結論から言うと、失いません

 

平成9年に最高裁で判決が出ています。

 

この裁判例では、次のような事案でした。

 

6人いる相続人のうちの1人(「Aさん」とします。)が遺言を、被相続人(亡くなって相続される人)からあずかっていました(この事実には争いなし)。

 

その後、遺産の分割の話し合いが行われた際に、Aさんがあずかった遺言書の内容が問題となりました。

 

しかし、遺言書をあずかったはずのAさんは遺言書を、他の相続人に示すことができませんでした。

 

そこで、相続人の一部の人たちが、Aさんが相続人の資格を有しないとして争ったんです。

 

判決では、相続人の行為が「相続に関して不当な利益を目的とするものではなかったときは」「相続欠格者には当たらない」と判断しました。

 

つまり、Aさんが、「Aにほとんどの財産を相続させる」というような有利な遺言を捨ててしまった場合には、遺言を捨てることの認識はあっても、自分が不当な利益を得ることが目的はありません。

 

このような場合には、Aさんは相続権を失わないんですね。

 

遺言を捨てることの認識があれば、故意に遺言を捨てたといえます。

 

しかし、それだけでは足りなくて、「不当な利益を得る目的」が、さらに必要だとしているんですね。

 

このような考え方では、

① 捨てることの認識

② 不当な利益を得る目的

二つの心理が必要となり、これを二重の故意にじゅうのこい)と呼びます。

 

それまで争いはありましたが、判例は二重の故意必要説にたつことを明らかにし、実務ではそのような取り扱いとなりました。

 

ですから、遺言をあずかっていた人が、うっかり遺言書を紛失した場合はもちろん、自分に有利な遺言を、不要だと誤解して捨ててしまった場合にも、相続権は失わなんですね。

 

とはいえ、遺言はしっかり保管しておくことが大原則ですが・・・

 

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自分に不利な遺言をみつけちゃった・・・捨てても大丈夫?

今日は引き続き、相続人の資格がなくなる場合相続欠格そうぞくけっかく)について、お話をしていますね。

 

民法で定めている相続欠格の事情の中で、実際に、世の中で一番多く行われているのは何だと思いますか?

 

私の経験では、遺言書を隠したり破いたりする行為ではないかと思います。

 

民法は「遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」は相続人となれなと定めています。

 

たとえば、父親が亡くなって、一緒に暮らしていた長男が遺品を整理していたところ、遺言書がみつかったとしましょう。

 

中をこっそり読んでみると、「長男が暮らしている実家の土地・建物も含めて、兄弟姉妹4人で均等に分けること」などと書いてあります。

 

「冗談じゃない。親父のめんどうを最後までみたのは誰なんだ!」

 

「今、住んでいる家まで、どうしてやらなければならないんだ。」

 

長男の実感はこんなところでしょう。

 

そこで、長男は、その遺言書をこっそりと破って捨ててしまいました。

 

このような場合、後に、長男の行為がばれると、長男は相続人としての資格を失ってしまいます。

 

相続の問題で、「遺言者があったはず」と言いつつ見つからず、誰かが隠したか、捨ててしまったかが予測されるケースは結構あります。

 

相談を受けていても、遺言書を、破いて棄てることがそんなに重い責任になるとは思っていない方も多いようです。

 

手書きの遺言書をみつけたら、必ず、相続人全員に明らかにして、家庭裁判所検認けんにん)という手続きを受けましょう(検認についてはまた別の機会にご説明しますね)。

 

逆に、遺言を書かれる方は、せっかく書いた遺言書を隠されたり、捨てられたりしたくなければ、

① 公正証書で遺言を書いて、

② 弁護士に遺言とおりに財産分けをしてもらう(これそ「遺言執行」と言います。)よう依頼する

とよいと思います。

 

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読者への挑戦状~相続欠格

突然ですが、エラリークイーンという名前を聞いたことがある方もいると思います。

 

1930年~1970年頃に活躍した推理小説作家(二人の共同のペンネーム)で、「Xの悲劇」「Yの悲劇」「オランダ靴の謎」あたりが有名でしょうか。

 

この作家は、本の最後の方で「読者への挑戦状」を、例えば次のようにすることがありました。

 

「今までのストーリーで犯人を見つけるのに必要な情報はすべて読者の皆さんに伝えてあります。」

 

「探偵に負けないよう犯人を発見して下さい。」

 

「これは読者への挑戦状です。」

 

例えば、犯人は、昔からひそかに憎んでいた兄に、どうしても父親の事業を継がせたくなくて、殺害してしまったとしましょう。

 

皆さんは、犯人を見事発見、警察に引き渡しました。

 

犯人は

「自分が刑務所から出てくる頃には、父親も亡くなっているだろうが、父親の莫大な遺産でゆっくり暮らすよ」

と言いながら部屋を出て行きました。

 

犯人は、本当に父親の財産を相続できるか考えてみて下さい。

 

「読者への挑戦状」です(笑)。

 

実は、犯人は全く相続することができないんです。

 

民法では、「故意に(わざと)、被相続人や先順位・同順位の相続人を殺害したり、殺害しようとして、刑罰を受けた者は相続権を失う」と定められています。

 

例えば、父親の遺産を(できるだけ多く)相続しようとして、父親を殺したり、兄弟を殺したりした人には、全く相続権が無いことになるんですね。

 

これを相続欠格そうぞくけっかく)と言います。

 

推理小説を読んでいると、時々、この相続欠格を見落としているものがあったりします。

 

こんなところも見ながら、推理小説を読んでみるとおもしろいかもしれませんね。

 

相続欠格になる事由は、他にもあります。

 

これはまた次回に。

 

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遺言と民法、どっちが強い?

昨日から今朝にかけての天気はひどかったですね。

 

静岡だけでなく、関東地方も同じような天気だったようです。

 

今朝は、雨風が強くて、傘が壊れてしまった方も多く見かけました。

 

もうすこし、春らしく穏やかな天気になってもらいたいものです。

 

では、今回から、また相続のお話です。

 

民法で定める相続分法定相続分)と

遺言の内容

が食い違うことがよくあります。

 

たとえば、母親が「自分の財産のうち2/3を長男に相続させ、長女には1/3を相続させる。」という遺言を書いてあったとします。

 

父親が既に死亡しているとして、法定相続分では、長女の取り分は1/2ですが、遺言では1/3と少なくなっています。

 

どちらが優先するのでしょうか?

 

民法の規定遺言どっちが強いのかという問題です。

 

結論から言うと、遺言の方が強いです。

 

つまり、遺言に従って、長男が2/3を、長女が1/3を相続することになります。

 

どうして、遺言の方が強いとしたのでしょうか。

 

ちょっと難しい言葉ですが、私たち、個人(私人)同士の関係を定める法律(民法や商法など)では「私的自治の原則してきじちのげんそく)」があると言われています。

 

私的自治の原則とは、例えば、

 

自分自身の契約(例えば、コンビニでおにぎりを買うなど)をするかしないかその契約内容なについては、私たち自信が原則として自由に決めていくことができる

とする考え方です。

 

遺言も、人間の最後の意思表示です。

 

ここについても、まずは、財産を持っている人の意思を最優先して、遺言で自由に処分を認めます。

 

その上で、その意思が無い場合にだけ法律(法定相続分)で補充しようとしているんですね。

 

日本では、遺言を書く意識があまり強くないので、なんとなく法定相続分の方が原則になっていました。

 

ただ、弁護士として仕事をしていると、最近では、遺言を書かれる方が、確実に昔よりも増えている実感はあります。

 

意外と兄弟姉妹でも、相続人それぞれの親子関係の受けとめ方や考え方が違っていることが多いです。

 

なので、財産がたくさんある方は、遺言を書いておくと良いとは思います。

 

なお、「全財産を長男に相続させる」というような遺言になると、長女の最低限の取り分(これを遺留分いりゅうぶん)と言います。)さえ侵害していることになるので、この場合には、別の対抗手段があります。

 

これは、また後々お話いたしますね。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

 

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