インターネットの掲示板に会社の悪口を書いたら罪になるの?

ここにきて、急激に寒さが増してきました。

 

皆さんも、風邪などひかないように十分お気をつけください。

 

さて、インターネットが普及するようになって、自由に書き込みができる掲示板が数多くできました。

 

その最たるものが「2ちゃんねる」でしょう。

 

それら、色々な掲示板に、ある会社の悪口を書き込んでしまった場合、罪になるのでしょうか。

 

たとえばAさんが、「B社の食製品には体に悪い○○という物質が混入されているらしい」と掲示板に書いたとしてます。

 

この場合、それがウソだった場合には、どうでしょう?

 

この場合には、信用毀損罪業務妨害罪名誉毀損罪になってしまいます。

 

刑事責任だけでなく、民事上も多額の損害賠償請求をされるおそれがあります。

 

ちょっとした会社への悪感情から、掲示板にウソの書き込みをすると大変なことになってしまいますね。

 

それでは、Aさんが書いた事実が本当だったらどうでしょう。

 

つまり、Aさんは、B社の製品をしっかりと分析して、体に悪い物質が混入されていることを確信して、掲示板に書いたという場合や

 

内部者の告発的な書き込みの場合です。

 

まず、信用毀損罪や業務妨害罪は、「事実と異なった内容の噂を不特定又は多数人に伝えること」で成立します。

 

ですから、真実であれば、事実を指摘しただけなので、信用毀損罪や業務妨害罪は成立しません。

 

では、名誉毀損罪はどうでしょうか?

 

条文を見てみましょう。

 

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役・・・に処する(刑法230条1項)。

 

この条文からもわかるとおり、名誉毀損で指摘される事実は、真実か否かは問いません。

 

B社の社会的評価が下がるような事実を指摘すると、それが本当のことでも名誉毀損罪に問われるのが原則なんですね。

 

しかし、それでは、体に有害な食製品が出回っていることが、世の中に知らされず、多くの人がそれを食べてしまうという不都合な結果も生じます。

 

世の中のために、真実であれば、明らかにした方が良いこともありますよね。

 

そこで、刑法は、次の3つの要件をみたせば、名誉毀損罪は成立しないと定めました。

 

① 指摘した事実が公共の利害に関する事実にかかわること

 

② 指摘の目的が、もっぱら公益をはかるものであること

 

③ 指摘した事実が真実であることが証明されたとき

 

今回の例で言えば、

 

① 世の中に多く出回っている職制品に、体に悪い物質が混入しているという事実がわかれば多くの人(公共)の利益となりますから、この要件をみたしそうです。

 

② Aさんが、B社をおとしめるためでなく、世の中のことを考えて、書き込みをしたのであれば、この要件もみたすでしょう。

 

③ そして、本当に有害物質は混入されているのですから、真実性も証明されたことになります。

 

従って、この場合には、名誉毀損罪が成立しないとうことになります。

 

ただ、この判断は非常に微妙なところもありますから、よほど自信がなければ、会社や他人の悪評を書き込まないことをおすすめします。

 

インターネットと法律の過去記事はこちらをご参照ください。

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音楽CDを焼き増ししても良いの?

さて、今回は音楽と著作権のお話です。

 

音楽を聞くのは、私も大好きで、J-POP、ロック、ジャズ、クラッシック、何でも聞きます。

 

昔は、レコードやCDを購入していましたが、最近ではレンタルに頼ることも多くなりました。

 

ただ、余りマイナーなミュージシャンだと、レンタルショップに無くて困ります。

 

自分が好きな音楽は、友達にも教えて聴いてもらいたくなりますよね。

 

そんな時、CDを焼き増しして、友達にあげたりする行為は許されるんでしょうか?

 

音楽CDは著作権(著作隣接権~ここでは著作権に準ずる権利と考えておいてください。)の塊です。

 

作詞者・作曲者・演奏者・歌手・CD製作会社など、多くの著作権(著作隣接権)の対象となっています。

 

これを勝手に複製されてしまうと、CDが売れなくなり、製作をした人たちが経済的損害を被るだけでなく、音楽活動をする気持ちも薄れてしまいます。

 

そこで、著作権法では、著作権の一つとして、複製権という権利を定めていて、勝手にCDの焼き増しをすることは原則として禁止されています。

 

ただ、例外として、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」は許されています

 

ですから、例えば、自分が家と自動車の両方で聴くために音楽CDを焼き増しするなど個人的な利用のためならOKです。

 

では、友達に配るのはどうでしょうか?

 

結局、家庭内に準ずる範囲かどうかという問題になります。

 

親しい友人2~3人に配るのであれば、許されるかもしれませんが、大量に配るのは違法となると思います。

 

また、コピー防止のためのブロックがされているようなCDについて、そのブロックを解除して、CDをコピーすることは、私的利用でも許されませんから注意が必要です。

 

そして、音楽を楽しむのにも、ルールの範囲内でということですね。

 

「日常生活の法律問題」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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出会い系サイト詐欺110番

今回は、電話でのご相談の告知です。

 

静岡県弁護士会では、以下のとおり「出会い系サイト110番」を行います。

 

・日時:2011年12月12日(月曜日)・午前10時~午後5時までの間

・相談電話番号:054-255-1455

 

出会い系サイト詐欺とは、まず、男女が出会えるサイトを作成します。

 

そして、メールの通信や開封の度にお金で買い取ったポイントを使うようなシステムを作ります。

 

その上で、見栄えの良い顔写真をどこかから持ってきて、架空の人物を作り上げて、大量のメールの通信をさせたり、何らかの理由をつけてお金が必要だと言ってお金をだまし取る詐欺です。

 

その他にも、「有名人と話が出来る」といってファン心理を利用して大量のメール通信をさせるとか、「重病を患っている」などと同情を誘ってやはり大量のメール通信を行わせるなど、色々なパターンがあります。

 

被害者の年齢層がティーンエイジャーから70才台の方まで幅広いのも、この詐欺の特徴です。

 

皆さんご本人はもちろん、身近に悩んでいるという方がいらっしゃったら、教えてあげて頂けると助かります。

 

電話は、匿名でも構いませんので、お気楽にお電話下さい。

 

消費者被害の一般的なご説明についてはこちら

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ネット上で本の紹介をしても良いの?

最近、私が本や音楽が好きなこともあって、著作権の問題に個人的に興味を持ち出しました。

 

色々と勉強してみると、インターネットとの関係で、色々な問題も出てきているようです。

 

まずは、身近な所から、著作権やインターネットのお話をしていきたいと思います。

 

今回は、本をホームページやブログで紹介することは、著作権を侵害して違法ではないのについて考えてみましょう。

 

下の3つのパターンに分けて考えてみましょう。

 

いずれも、著作者の同意は得ていないとします。

 

① 読んだ本の簡単なあらすじや感想を記載している場合

 

② 本の表紙をスキャンしたりやデジカメで撮影して掲載している場合

 

③ 本の内容について、そのままの文章を長々と書いたり、スキャンや撮影して掲 

 載している場合

 

まず、基本的に著作物にあたるもの(本はこれにあたります。)については、著作権という権利がありますから、原則的には、著作者の同意なく、多くの人が読むような場へ公開してはいけません。

 

ただ、この原則論を貫きすぎると、怖くて本についてはなにも書けなくなり、憲法で保障された表現の自由や学問の自由が、必要以上に制限されてしまいます。

 

そこで、著作権法では、その目的からみて、正当な範囲内で引用されるものであれば、「引用」しても構わないという規定を設けています。

 

ということは、のように、論評したり、紹介したりするという正当な目的のために、文章のごく一部を掲載する場合には「引用」として、著作権侵害にあたりません。

 

もっとも、著作者名など引用元を、明示しておくことが必要です。

 

では、の本の表紙はどうでしょう?

 

確かに、本の表紙は、その内容それ自体ではありません。

 

本のタイトルも、基本的には著作権の対象にはなりません。

 

しかし、本の表紙は、色々なデザインや写真が使われています。

 

ですから、本の内容とは別に、表紙もそれを作成した人の著作物として、著作権による保護の対象となります。

 

そうすると、「引用」にあたるような場合でなければ、掲載してはいけないことになります。

 

本のデザインが明確に分かるような形での写真だと、批評・批判の内容にもよりますが、本の表紙のデザインそのものを利用したことになる可能性はあります。

 

もっとも、本のデザインが鑑賞の対象にならないくらい縮小して、正当な批評のために用いるのであれば「引用」として許される可能性もあります。

 

いずれにせよ、本の表紙を大きく紹介する場合には、相当の注意が必要です。

 

は、本の内容そのものを掲載するものですから、「違法っぽいな」というのは直感的に分かっていただけると思います。

 

そのとおりで、本の内容をそのまま掲載しているのですから、「引用」とは言えません

 

法律的に言うと、著作権の内容としての自動公衆送信権を侵害するものとして、著作権の侵害となります。

 

サーバに著作物の内容を保管して、自動的に誰もがアクセスして見られる状態に置くことで、著作権の侵害となるんですね。

 

そうすると、本の紹介をする時には、どのような場合に「目的からみて正当な範囲内の引用」にあたるのかというのが重要になってきますよね。

 

この判断は、なかなか難しいので、重要なことについて判断に迷ったら、弁護士に相談されることをお勧めします。

 

「日常生活の法律問題」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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未公開株詐欺やオレオレ詐欺

そろそろ、紅葉も終わりということで、街もクリスマスの雰囲気ですね。

 

今日は、消費者被害防止キャンペーン期間ということで、JR静岡駅でビラまきをしてきました。

 

そこで、ご注意情報として、消費者問題をご案内したいと思います。

 

消費者問題の一つとして、最近増えているのが、未公開株詐欺です。

 

未公開株というのは、世の中に広く売らない株式のことで、市場価格が無いものです。

 

値段の算出方法はいくつかありますが、ある意味、いかようにも価格を決められるものです。

 

その株式が、市場に公開される(店頭公開とか上場とか言います。)予定があり、今の何倍にも値上がりすることが確実だと言って株式を売るわけです。

 

しかし、市場に公開する予定が無いばかりか、その株式自体が、名目だけの会社の株式でほとんど価値がないものなんです。

 

それを、「100万円で購入しておけば、200万以上になる。」などと嘘をついて、売却するのが未公開株詐欺です。

 

素性が良くわからない人、電話や訪問での販売には、絶対に乗らないようにしましょう。

 

それから、最近、オレオレ詐欺パターンが、振り込め式ではなく、実際にお金を受け取りに行くパターンが増えています

 

たとえば、「オレだけど、交通事故を起こして、今日中にお金を被害者に払って示談をしないと、警察につかまってしまう。」などと言ってお金を要求するのがオレオレ詐欺でしたよね。

 

昔は、そのお金の支払い方法が、特定の口座に振り込ませる方法が主流でした。

 

ところが、最近では、行政書士弁護士の○○がお金を受け取りに行くから渡して欲しい」などと言って、お金の授受を現実にさせる方法が多くなっています。

 

振り込み方法だと、被害に気がついて預金を凍結されてお金を出せなかったり、防犯ビデオに顔が写ってしまったりすることが理由のようです。

 

ただ、暴力団などの主犯は、電話をかけることも、お金を受け取りに行くこともなく、指示をするだけです。

 

オレオレ詐欺で一番捕まりやすいのは、口座名義人や実際にお金を受け取りに行く人です。

 

でも、こういう人は、例えば、借金で首が回らなかったり、半分ホームレスで収入が無い人などを、暴力団が使ってやらせるんですね。

 

もちろん、背後にいる暴力団は、お金を受け取りに行く人に、本名や素性をおしえてはいません。

 

ですから、警察がお金を受け取りに来たところを逮捕しても、本当の主犯にはなかなかたどりつけないんですね。

 

私も、オレオレ詐欺の被告人を弁護したことが何回もありますが、そういう被告人はちょっと判断力に欠ける人で、ある意味だまされて使われている人なんです。

 

背後にいる主犯が捕まると本当に良いのですが・・・

 

とにかく、「弁護士がお金を受け取りに行くから」とか「携帯の電話番号が変わったから」とかと言われても信用しないでください。

 

ご自身のお子さんやお孫さん本人に確実に連絡をとるようにしてくださいね。

 

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不倫した夫(妻)と不倫の相手とはどのような責任を負うの? ~ 不真正連帯債務

今週の静岡は天気予報では、良い天気が続きそうです。

 

ウチの事務所は、日当たりがとっても良くて、日中は室内温が30度近くまであがってしまい、冷房が必要だったりします。

 

さて、不倫の慰謝料のお話ですが、AとBとが夫婦でCがAと不倫行為を結んでしまったという事例でした。

 

AとCとでは、Bに対する責任は、貞操義務違反したAの方が重いというお話は前にしたと思います。

 

では、CよりAの方が責任が重いというのは、現実的にはどのような形で現れるんでしょうか?

 

たとえば判決で認められる慰謝料が150万円で、AとCの責任が2:1だったとします。

 

すると、Bは、Aに対して100万円、Cに対して50万円を請求できるということになるのでしょうか。

 

実はそうではありません。

 

共同不法行為といって、複数の加害者違法な行為人の権利を侵害した場合、加害者は「連帯して被害者に対して責任を負います。

 

ですから、AとCが共同して不倫をして、Bの平穏な夫婦生活を送る権利侵害した場合、AとCは「連帯して」Bに責任を負うことになります。

 

この債務の性質は、正確には「不真正連帯債務」と呼びます。

 

つまり、BはAにもCにも150万円を請求することができます。

 

ただ、これは、Bが、AとCに合計300万円請求できるという意味ではありません。

 

たとえばCが夜逃げをしたり、破産したりした場合でも、BはAに150万円請求できるという意味です。

 

では、夜逃げをしたCに代わって、AがBに150万円を支払ったとします。

 

この場合には、AはCに対して、Cの負担すべき部分50万円を請求していくことができます(この権利を「求償権」と呼びます。)

 

つまり、Aの方が責任が重い」という効果は、AとCとの関係で初めて生じてくるということなんですね。

 

被害者であるBについては、確実被害の弁償受けられるよう保護するために、AとCの責任の重さに関係なく全額を請求できるようにしたんですね。

 

実は、地方裁判所の裁判例には、このような考え方と少し違う判決をしているものもありますが、まだ少数の判決なので、原則論をご説明しました。

 

「不倫と慰謝料」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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不倫をした夫(妻)と不倫相手のどちらの方が悪い?

最近は、暖かい日があるかと思うと、急に寒くなったりして、体調を崩しがちです。

 

皆さんも、お体に気をつけてください。

 

さて、不倫慰謝料のお話ですが、AとBとが夫婦でCがAと不倫行為を結んでしまったという事例でした。

 

この事例で、Bが慰謝料請求していく場面で、AとC、どちらが悪いのでしょうか?

 

結婚していながら浮気をしているAが悪いような気もしますし、Cから積極的に誘っていたのであれば、Cが婚姻関係を壊したとも言えそうです。

 

これについては、平成4年と平成17年に東京地方裁判所裁判例があります。

 

その裁判例では、Aの方が専ら重い責任を負うと言っています。

 

やはり、夫婦である以上、第三者と性的関係を持たないことが法律上の義務ですし、それを直接破っているのはAだからです。

 

そこで、その裁判例では、専ら責任を負うのはAであり、Cの責任は副次的とまで言っています。

 

それでは、BはAにたくさん請求できて、Cには少なめにしか請求できないのでしょうか?

 

ちょっと難しいお話になるので、この続きは次回に回します。

 

「不倫と慰謝料」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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弁護士って「先生」なの?

以前、仲の良い友人に言われたことがあります。

 

「学校の教師が「先生」と呼ばれるのは、生徒を教え導く立場という意味でわかる。」

 

「でも、なんで弁護士が「先生」って呼ばれるんだ?専門的知識を売りにして仕事をする人はいくらでもいるのに。」

 

その時は、深く考えずに、「俺は「谷川さん」で十分だけどね。」と答えました。

 

でも、その疑問は、その後も私の頭にこびりついていて、色々と考えてみました。

 

まず、弁護士になるためには、「司法試験」という試験に合格しなければなりません。

 

合格すると「司法研修所」というところに入って、試験勉強での法律と実務との架け橋のような勉強をします。

 

その中で、私たち生徒(司法修習生と呼びます。)は、裁判官になるのか、検察官になるのか、弁護士になるのかを選びます。

 

ですから、弁護士も、裁判官も、検察官法曹という一つのグループで呼ばれたりします。

 

ところが、その中で、弁護士だけが実務に出ると「先生」という称号がつきます。

 

たとえば、法曹で懇親会をする時には、裁判官は名前で「○○さん」と呼びますし、検事も「○○さん」、余り親しくない場合には「○○検事」と呼びます。

 

ところが、弁護士だけは、修習の同期やよほど仲の良い間柄でないと、他の法曹からも、依頼者の方からも「先生」と呼ばれることが多いんです。

 

なんか不思議ですよね。

 

そこで、まず弁護士に「先生」をつけるメリットを考えてみました。

 

第一に、弁護士として実感しているメリットは、弁護士同士で交渉や訴訟を行う時に、相手弁護士の立場を尊重している姿勢を出せることです。

 

紛争の代理人になるのですから、「○○さん」では友達みたいですし、「あなた」では、対決姿勢が強くなりすぎるような気がします。

 

そこで、一定の距離と尊重を持ちながら、年齢・経験の区別なく相手弁護士と対等に接するという意味では、弁護士にとって「先生」という言葉は、結構便利なんですね。

 

次に、弁護士や他の法曹として感じられるメリットとしては、「弁護士の名前を忘れた時に便利」ということがあります。

 

たとえば、皆さんが、総合病院で診察を受けた時に、壁にかかっている名札をしっかりチェックして医師の名前を覚えているでしょうか。

 

私なんか覚えていないので、とりあえず医師を「先生」と呼べるのはとっても便利です。

 

弁護士同士でも、裁判官や検察官が弁護士に接する場合でも、「あっ!顔は見たことはあるけど、名前が・・・」という場合、「先生」と呼んでおけば、ノープロブレムで仕事を進めていくことができます。

 

三つ目のメリットは、弁護士以外の人にとってのメリットですが、弁護士をおだてて、交渉をうまく持っていく手段として使えるということです。

 

消費者金融業者やクレジット会社などと交渉をする時には、「先生」という言葉を耳にタコができるくらい連呼されています。

 

一見低姿勢にしておいて、弁護士の自尊心をくすぐって、自分たちの土俵に引きずり込む言葉として、対応する弁護士によっては有用かもしれません。

 

四つ目のメリットも、弁護士以外の人にとってのものです。

 

たとえば、依頼者の方などが、高度な知識を有する専門家として、自分を助けてくれる弁護士に敬意を持って、その気持ちを伝えられることです。

 

では、逆に弁護士に「先生」をつけるデメリットはどうでしょうか。

 

メリットの裏側になると思うのですが、次の3つの区別が難しくなることでしょうか。

 

① 本当に専門家として尊敬して「先生」と呼んでくれる人

② ただ、世の中の習慣として「○○さん」の「さん」の代わりに「先生」を使う人

③ とりあえず、おだててなんとか自分のメリットのある方に持って行こうとするために「先生」と呼ぶ人

この3つの区別を間違えると、交渉ごとでも、人間としてのつきあいでも失敗したりします。

 

もう一つのデメリットは、「先生」と呼ばれることで、「自分はエラいんだ」と弁護士自身が勘違いしてしまうリスクがあることでしょうか。

 

「先生」と呼ぶ以上、バカにして言うのでない限り、相手は弁護士に対して丁寧な態度で接してくれることになります。

 

そうすると、相手がそのような態度で接してくれることを当然だと思って、つい威張ったり、謝罪すべき所で謝罪できない人間になってしまう危険性があることでしょう。

 

私自身、サラリーマン時代と弁護士になってからとで、社会における扱われ方が余りに違うことに戸惑いを覚えた経験があり、その感覚は常に忘れないでいようと思っています。

 

私の場合で言わせていただくと、依頼者の方々は、「谷川先生」「谷川さん」両方の呼び方をされています。

 

私は、依頼者の方々の好きな呼び方で良いと思うので、どちらの呼び方についても何も訂正をすることはありません。

 

ただ、法曹以外での懇親会、商工会議所でのお付き合い、異業種交流会、フェイスブックなど通常のコミュニケーションをとることが大事な時は、「先生」という呼び方は障害になります

 

ですからできるだけ「谷川さん」と呼んで欲しいと伝えるようにしています。

 

また、仕事のご依頼を受ける場合でも、専門家としての知識・技術について一定の評価をしていただいた上で、「谷川さん」と呼ばれるのも嬉しいですね。

 

敬意と親しみの両方が感じられますので。

 

今後も、私の事務所では、呼び方はご相談者にお任せして、特にこだわらないスタンスでいきますが、ご遠慮なく「谷川さん」と呼んでいただきたいと思います。

 

「しまった!「谷川」だったか、「北川」だったか分からなくなった!」という時には、「先生」でごまかしましょう(笑)。

 

明確な正解というものはないということなので、私なりの考えを書かせていただきました。

 

なお、ここに書いたことは、私だけの考えかもしれないので、私の事務所でだけ通用するお話と思っていただいた方が良いと思います。

 

「弁護士のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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不倫で子供が受けた被害も慰謝料の額に関係するの? ~ 不倫慰謝料算定の基準

最近、アメリカのTVドラマだと思うのですが、「ホワイトカラー」というDVDを借りてきて楽しんで見ています。

 

知能犯で投獄された主人公を、同じ知能犯を逮捕するために、特別に警察に協力するという条件で仮釈放するというものです。

 

「羊たちの沈黙」を連想させますが、そこまで暗くなくて、のんびりした気分で見られるところが気に入っています。

 

さて、不倫慰謝料決めるポイントのお話です。

 

AとBが結婚をしていて、AとCが浮気をしてしまったという例でお話ししていきます。

 

この場合、不貞行為によって、や子供の生活にどのような影響を与えたかです。

 

たとえば、AがCの家に入り浸りになって、自宅に帰らなかったり、その上、生活費もBに渡さない場合には、Bの被害が大きいとして慰謝料の増額事由となります。

 

また、Aが家に帰らないと、子供と会わないことで、子供が寂しい思いをしたりします。

 

ただ、最高裁判所判例では、子供がCに対して慰謝料請求をしても、原則として認められないんですね(昭和54年3月30日判決)。

 

それは、AがCを好きになることで、Bに対する愛情は壊れるけれども、子供に対する愛情は、別だということです。

 

例えば、Cが妨害行為をするなど特別の事情が無い限り、Aの意思で面会したりして子供への愛情交換は実現できるという理屈です。

 

でも、実際に裁判をしていると、子供が一番の被害者という事案もあります。

 

AがCと会うために、小さな子供を一人で放り出して出かけてしまうようなケースです。

 

子供は、寂しさと恐怖で、一人で泣いていることしかできない場合、Aに責任があるのはもちろんです。

 

そして、Cもそのような事情を知りながら加担していれば、Cにも責任が全く無いとは言えないように思えます。

 

やはり、このような事情は、BのAやCに対する慰謝料請求増額事由とならないとおかしいですよね。

 

「不倫と慰謝料」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 不倫と慰謝料 |

きっぱり不倫をやめれば慰謝料は下がる? ~ 不倫慰謝料算定の基準

最近、またご相談やお仕事の依頼が増えてきて、忙しい日々をおくっています。

 

土曜日は夜まで仕事、日曜日も半日仕事でした。

 

今週も土曜日にご相談や書面作成の仕事が入っています。

 

ご依頼をいただけるのは、ありがたいことなので、感謝をしつつがんばっています。

 

さて、不倫の慰謝料額を決めるポイントの続きです。

 

AとBが夫婦ですが、AがCと浮気をしたためBがCに対して慰謝料請求をしていくという事案でしたね。

 

図にするとこんな感じでしょうか。

 

A=B → C

 

まず、慰謝料の減額をする事由として、AとCとが既に別れているかがあります。

 

不倫は、民事上は違法行為ですから、早く解消することが望ましいです。

 

でも、AとCとがダラダラと不倫を続けていて、Bに不倫関係がばれた後も関係を断ち切らないというのでは、Bの傷は大きくなるばかりです。

 

また、AやC不倫行為への反省も見られません。

 

ですから、AとCの関係が続いていることは、慰謝料増額事由となります。

 

もっとも、AとCとが本気で恋愛していて、ABが離婚したら再婚するつもりだというケースもあります。

 

この場合でも、BのAに対する愛情が残っていれば、やはりBを深く傷つけることになりますから、慰謝料増額事由となり得るでしょう。

 

これと関係して、CからBに対する言動一つの判断要素になります。

 

不倫の慰謝料請求の事案の中で、良くあるのですが、CがどうしてもAとBに離婚して欲しくて、CからBに電話や手紙で連絡をしてしまう事案もありました。

 

たとえば、「もうAはBに対する愛情を失って、いつも別れたいと言っている。いい加減に自由にしてやったらどうか。」などという内容の電話・手紙を出すんですね。

 

Bにしてみれば、夫婦の関係を他人に言われるだけでも心外なのに、それを不倫の相手方から言われれば、怒り心頭です。

 

これもやはり、慰謝料の増額事由となるでしょう。

 

慰謝料の額を考慮していくには、本当に色々なポイントがあって、判例を分析すると興味深いところもあります。

 

他にもポイントも、追ってお話していきますね。

 

「不倫と慰謝料」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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