関越自動車道でのバス事故

G.W.皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

 

私は、プライベート4割仕事6割くらいの日々です。

 

関越自動車道で高速バスが、時速約90kmで道路左側のガードレールに衝突し、そのまま防音壁に突っ込みむという事故が起きました。

 

現時点での報道では、この事故で、7人が死亡14人が重傷を負っているとされています。

 

痛ましい事故でした。

 

この事故の直接の原因は、運転手の居眠りです。

 

高速バスの運転手としては、決してしてはいけないことです。

 

衝突の10分ほど前からバスが左右にふらついていたということですから、運転手は、衝突の危険性は予測できたはずです。

 

運転手としては、本当に危ないと思えば、路側帯に緊急停車してでも乗客の安全を図るべきでしょう。

 

この運転手に自動車運転過失致死傷罪が成立することには問題はないと思います。

 

実は、平成19年5月以前は、自動車事故による人の死傷は、業務上過失致死傷罪が適用されていました。

 

しかし、自動車の事故では、今回のように多数の死傷者が出てしまったり、飲酒運転による死亡事故などの悪質なケースが後を絶ちません。

 

このような事案についても、通常の業務上過失致死傷罪で処罰することについては、国民の処罰感情にも合いません。

 

そこで、業務上過失致死傷罪の条文を改正して、自動車運転過失致死傷罪という罪を、平成19年5月に作ったんです(施行は同年6月)。

 

このような経緯から、業務上過失致死傷罪の上限が「5年以下の懲役」なのに対して、自動車運転過失致死傷罪の上限は「7年以下の懲役」となっています。

※ その後、刑法から独立した「自動車運転死傷行為処罰法」が成立し、「過失運転致死傷罪」と名前が変わりました(2014年現在)。

 

では、この運転手を雇っていた会社の経営者運転を監督する立場の人は、どこまで刑事責任を負うのでしょうか。

 

前回のヒグマの場合と類似して、経営者・監督者が管理者として業務上の安全配慮を欠いていなかったかが問題となります。

 

つまり経営者・監督者について、業務上過失致死傷罪が成立するかが問題となります。

 

運転手の交代要員は無く、一人で運転していたということで、この点では万全の体制ではなかったと言えます。

 

しかし、運転手は前日の28日、東京ディズニーリゾートから金沢のホテルに到着してからホテルに8時間半滞在しています。

 

経営者としては、有効な睡眠時間を取れる程度の運行スケジュールを組んでいたとも言えます。

 

また、運航中も2時間おきに15分~30分の休憩を取るように会社から運転手には指示が出ていたとのことです。

 

これらの事実が真実であれば、会社の経営者や運転監督者について、本件事故の原因となった管理義務違反までは追及できないと思います。

 

ですから、現時点での情報からだけでは、業務上過失致死傷罪で、経営者や運転監督者を処罰するのは難しそうです。

 

なお、民事上の損害賠償責任は、運転手を雇っている会社も負うことになるでしょうし、保険会社から賠償金は支払われるでしょう。

 

でも、失った命や体や心の傷は取り返しがつきません。

 

今後、このような悲惨な事故が起こらないように、運転手だけでなく、運行会社、旅行代理店、国、自動車メーカーなど全体で考えてもらいたいものです。

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ヒグマに襲われて業務上過失致死?

先週20日の金曜日、秋田県鹿角市の「八幡平クマ牧場」で、オリからヒグマ6頭が逃げ出しました。

 

従業員らがエサやりをしていた時に、塀を乗り越えて逃げ出したヒグマが襲いかかり、女性従業員2人が死亡してしまいました。

 

不幸な事故です。

 

この場合誰が、どのような責任を問われるのでしょうか。

 

まず、刑法は人にしか適用されませんから、クマを裁くことはできません。

 

そうすると、クマを監督していた人を処罰するしかありません。

 

この場合、直接クマの面倒をみていた女性従業員が死亡しているので、その牧場を経営していた代表者に責任はないのでしょうか。

 

代表者はクマ牧場を経営して、従業員を使用してクマの飼育をしていますから、業務上の安全を図る義務があると思います。

 

そこで、業務上、クマの飼育の設備などについて不備な点があったことによって、人を死亡させてしまったのではないかが問題になります。

 

つまり、代表者(経営者)に業務上過失致死罪が成立するかが問題となります。

 

今回、クマは、塀の中の運動場の角にできた雪山から塀をよじのぼって脱走した可能性があるそうです。

 

このケースだと、まず、経営者が、①運動場の角に大きな雪山ができること、及び②雪山をからクマが塀をよじ登る可能性を予測できたか(予見可能性)が大きな問題となるでしょう。

 

経営者は、ほとんどクマ牧場には来ないので、①雪山が出来ていたことは知らなかったようです。

 

とはいえ、大雪が降る地域ですし、従業員を通じて管理状況を確認することはできたでしょうから、雪山が出来そうなことは認識可能だと思います。

 

また、②クマがよじ登る可能性については、どうでしょう。

 

塀の高さは4.5m、雪山の高さは3.3mとの報道なので、その差の高さは1.2mしかありません。

 

ヒグマの身長が立ち上がると約2mあることを考えると、3.3m程度の雪山ができることを予測できれば、クマの脱走も通常は予測できるでしょう。

 

また、ヒグマを飼育して、その生育状態を把握している経営者は、3.3mの雪山ができれば塀を乗り越えて脱走することは十分予測できたと言えるでしょう。

 

また、従業員に指示するなどして、雪山を崩すなどの安全管理をしっかりすることでクマが逃げないようにできたか(結果回避可能性)も業務上過失致死の成立の要件となります。

 

たまたま大雪が降った翌日で、雪崩しもする暇がなかったというのであれば、結果を回避できなかったとして、経営者の責任は否定される方向になります。

 

逆に、何日も雪山を放置していたのであれば、いくらでも雪山を崩す機会はあったのですから、結果回避可能性はあったとして、経営者の責任を認める方向になります。

 

以上に対しては、経営者側としては、「従業員がヒグマが登れるような雪山を崩さずに放置しておくことまでは予測できなかった」と主張することが考えられます。

 

しかし、経営者には、そもそも従業員がそのような過失を犯さないように管理監督する義務がありますから、その主張は認められないと思います。

 

ヒグマは危険な動物ですから、これを飼育している経営者にも、安全体制の実現のために、高度の注意義務があると言えます。

 

従って、業務上過失致死罪の責任が認められる可能性も十分あると思います。

 

なお、逃げ出したクマは地元の猟友会によって射殺されました。

 

本来、他人のクマを射殺することは、器物損壊罪と同様に動物傷害(殺害)罪として刑法の規定に反します。

 

でも、クマを放置しておくと、人の命に関わりますから、正当な行為として違法性が無く、処罰されないんですね。

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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パソコン教室へ通っての雑感

今日は朝5時起きで仕事をして、夜になってからパソコン教室に行きました。

 

早起きと一週間の疲れが出て、半分寝てしまいました。

 

各ブースごとにDVDを視聴する形式での講義なので、眠ってしまっても巻き戻せます。

 

それに、全国に配信するためにトレーニングされた専門の講師が講義をしてくれるので、内容は分かりやすくできています。

 

また、簡単についていける人用に、1.4倍速で視聴するという機能もついています。

 

私はそれを使って、2時間で3コマを視聴するようにしています。

 

そういう意味では、DVDやインターネット配信による講義というのは優れているんでしょうね。

 

私が司法試験の勉強をしていた頃は、静岡で生講義をやってくれるような学校はありませんでした。

 

ですから、法律の本を丁寧に読み込むことが最も大切な作業でした。

 

その上で、理解をより深めるために、カセットテープ(時代を感じますね・・・)を通信販売で購入したりしていました。

 

私は、東京で生講義を受けられる受験生を「もうらやましいな~」と思ったものです。

 

でも、逆に、手段が限られているから、本を必死になって読んだり、近くに住む受験仲間と議論したりしました。

 

それはそれで、理解を深めたり、人間関係を広げたりするのには、とっても役立っていたと思います。

 

今のパソコン教室のやり方だと、DVDを見ながらだと簡単についていけますが、いざ自分でやるとなると、機能を忘れているものもあります。

 

本当は、付属のドリルでしっかりと復習した方が良いとは分かっていても、仕事が忙しかったりすると、後回しでできません。

 

便利な社会になってきているのですが、あまり便利さに頼り過ぎると、成長が無いのかもと思う今日この頃です。

 

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うつ病を理由に離婚できる?

今日の静岡は、暖かな春の陽気で気持ちの良い天気でした。

 

私は、法律相談や現地確認などで出張していました。

 

あちらこちらで、桜から新緑に変わる風景が少し心をなごませてくれました。

 

さて、今の社会では、人間関係や色々な問題から心の病を抱えられる方も多いようです。

 

心の病と言っても、統合失調症やうつ病など色々な種類がありますよね。

 

裁判離婚の事由にも精神病を理由とするものが規定されています。

 

それは、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」です。

 

では、例えば、夫がうつ病になってしまい働けなくなった場合、妻からの裁判離婚の請求は認められるのでしょうか。

 

最高裁判所の判例では、この精神病による離婚事由厳しく限定しています。

 

単に精神病にかかったというだけでは離婚事由にはなりません。

 

病者の今後の療養、生活等について、お金の負担をしてあげるなどの出来る限りの手立てをとって、ある程度病者に生活の見込がたったような場合でなければ離婚は認められないとしています。

 

ですから、夫がうつ病になって働けなくなったのであれば、まずは、妻が自ら働いて夫と子どもたちの面倒を看なければなりません。

 

その上で、諸般の事情から離婚を認めるかどうか判断していきます。

 

例えば

① 夫の実家に余裕があって、夫を実家に戻せば夫の生活が困らないとか

② ある程度、妻が夫の療養費を負担していく意思を示している

などの事情があれば、離婚を認める方向に傾くでしょう。

 

結婚後に、配偶者が精神病になってしまったケースは色々ありますが、裁判で激しく争われるのは妻が精神病になってしまったケースが多いようです。

 

そのような場合、夫が子の親権をとるか、妻側(祖父母)が親権をとるかが、離婚自体よりも大きな問題となっているのかもしれません。

 

いずれにせよ、結婚した以上、配偶者がうつ病になって働けなくなったというだけでは、離婚請求認められないようです。

 

離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 離婚のお話 |

「妻の暴言」や「家庭内別居」で離婚がみとめられる?

今回は、離婚のお話をしたいと思います。

 

離婚のご相談を受けていると、配偶者からの暴言や侮辱的な言動を理由に離婚できないか聞かれることが多いです。

 

裁判例としては、色々なものがあり、結局、暴言の内容回数期間、その他の婚姻関係を破綻に至らしめる事情総合的に判断することになります。

 

地方裁判所の裁判例ですが、約20年にわたって、妻が夫やその母親(義母)に侮辱的言動を続けたことを認定して、離婚を認めたものがあります。

 

その妻の侮辱的言動は昭和24年頃に始まり、昭和40年頃には激化します。

 

その内容としては、

「結婚して損をした」

「夫が母親(義母)とべったりだ。」

「威張るな。」

「ばか、何を言いやがる。」

などです。

 

その結果、昭和51年頃からは、食事も寝室も別の家庭内別居状態になりました。

 

このようなケースでは、子供たちは、母親側の味方につくことが多いので、庭内で完全に孤立してしまいました。

 

また、妻は夫がその母親(義母)と話をする度に、

 

「2人で何を相談した。何を悪口を言った。」

 

と夫に一方的にどなりつけてきました。

 

このような夫婦の不仲を心配した夫の母親(義母)が、妻と話し合おうとしたときにも、

「ばばあ、早く死んでしまえ。」

などとののしり、全く話しに応じませんでした。

 

このケースで、横浜地方裁判所は、からへの離婚請求認めました

 

妻の暴言の内容がひどく、それが20年以上もつづいたことや、夫が長期の家庭内別居で孤立していたこと、妻の義母への対応などを考慮したものだと思います。

 

ただ、これはケースバイケースで、必ずしも暴言や精神的虐待が短期的にあったというだけでは、離婚請求は認められないこともあるので注意が必要です。

 

離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。 

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能力は60点で良い? ~ 松下幸之助の本を読んで

昨日は、台風のような強風で、電車の運行にも支障がでたようですね。

 

法律事務所の職員も早めに帰った所が多かったようです。

 

皆様は大丈夫だったでしょうか。

 

さて、今、「松下幸之助 成功の法則」という本を読んでいます。

 

松下幸之助の身近で師事していた江口克彦氏の著によるものです。

 

今回で3回目の読書となります。

 

その中に「60点の能力があると判断したら、その人にどんどん仕事を任せたら良い」という考え方が書かれています。

 

何回聞いても、非常に奥深い言葉に感じます。

 

まず、「能力は60点で良い」という言葉に暖かみを感じます。

 

誰にでもあるほんの少しの得意分野をがんばれば、誰でも成功する可能性を持っていると言ってくれているようです。

 

また、50点でも70点でもなく「60点」という点数を選んだところに、起業家としての逞しさを感じ取れます。

 

五分五分よりも、わずかでも分が良ければどんどんやらせてみた方が、大局的に見れば成功の方が大きいんだという積極的な姿勢が大きな成功を生んだのだと思います。

 

更に、「能力は60点で良い」という判断に、視野の広さが感じられます。

 

「60点」と評価した人の判断は、その人の主観的なものであり、絶対に正しいということはありません。

 

「仕事も人も、やらせてみなければ分からないんだ」という視野の広さがあったからこそ、様々な人材を企業の中で発掘できたのでしょう。

 

私は、仕事をするときには、100点以上をとるつもりでがんばっていますが、結果的に自分の判断では「60点が良いところだな」という事件もあります。

 

それでも、依頼者の方からは「ありがとうございました!」と喜んでいただけることも多いです。

 

逆に、自分では100点近い点数をつけたい事件でも、依頼者の方には、思ったほど喜んでいただけないケースもあります。

 

そんな時は、松下幸之助から、「君の仕事は60点だったかもしれないが、熱意と努力があればそれでええんや」と言ってもらっているような気がします。

 

なお、松下幸之助は、偉人ということで、あえて敬称を抜きにして語らせていただきました。

 

「経営についての法律の問題」の過去記事はこちら 

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被害者が恐くなくても脅迫罪になる?

静岡では、桜が咲き始めたようですので、ブログの背景もそれにあわせてみました。

 

さて、新聞によると衆議院予算委員長の中井議員(民主党)の事務所に、小指や包丁とともに「天誅(てんちゅう)が降る」などと書かれた文書が届けられたそうです。

 

この事件で右翼団体所属の男が逮捕されました。

 

容疑は「脅迫罪」です。

 

この男が自分の小指を切って送りつけたようですが、自分自身の体を傷つける自傷行為は傷害罪にはなりません。

 

そして、中井議員には目に見える被害は生じていません。

 

とすると、送りつけられて恐い思いをしたことが被害となるので、これを脅迫罪とするしかありません。

 

では、中井議員が肝っ玉の据わった人で、全く恐いと思わなかった脅迫罪は成立するんでしょうか?

 

実は、脅迫罪の成立には、脅迫をされた人が恐いと実際に思う必要はないんです。

 

恐いと思うかどうかは、一般人、つまり普通の人がどう思うかを基準に考えます。

 

ですから、普通の人が恐いと思うような脅す行為をすれば、脅迫罪になんですね。

 

今回の事件でも、中井議員が実際に恐いとは思わなくても、普通の人であれば、人間の小指と包丁が手紙と一緒に送られてくれば「恐い」と思うでしょう。

 

ですから、本当に逮捕された被疑者がそのような行為をしたのであれば、脅迫罪は成立します。

 

もし、被害者が本当に恐いと思った時しか脅迫罪が成立しないとすると、被害者の気持ちについて、検察官に証明を求めることになります。

 

でも、それは人の心の問題ですから、解釈の幅が大きすぎて刑法の解釈方法として不適切です。

 

また、そうまでしなくても、普通の人が怖がるような行為をすれば、何らかの害悪が発生する危険性が生じますから、処罰するだけの必要性や許容性があるんですね。

 

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一太郎とワード

昼間暖かくても、夜冷えたり、寒暖の差がある日が続いていますね。

 

皆様も体には気をつけてお過ごしください。

 

さて、ワープロソフトは、皆様何をお使いでしょうか?

 

「ワード」という方が、ほとんどなんでしょうね。

 

私は、「一太郎」というワープロソフトで文書を作成してきました。

 

公務員時代に、官公庁では一太郎を使っているところがほとんどで、それ以来20年以上のユーザーです。

 

私が一太郎を選んだのは、操作方法が、マウスよりもキーボード中心で、ワープロ専用機からの乗り換えがしやすかったことがあります。

 

また、一太郎のATOKという辞書も、ワードのIMEという辞書よりも語彙数や変換能力が高かったのも大きかったと思います。

 

でも、ワードも進化して一太郎に負けない機能を持つようになり、多くの方がワードを使うようになると、ワードも使わざるを得なくなりました。

 

ワードファイルでもらった文書を、手直しをして使うような機会が増えると、基本的な操作方法を知らないことが不便に感じます。

 

パワーポイントとの互換性など色々と考えると、ワードを使えないとも言っておられず、とうとうパソコン教室に通うことにしました。

 

エクセルは一応は使えるので、ワードとパワーポイントを習うことにしました。

 

教室では、各ブースで講師が教えるDVDを見ながら、自分で操作をして覚えるというやり方です。

 

講義の後には、ドリルがあって、覚えたことをマスターしているか、確認することができます。

 

さすがに、講義を受けに出かけるとなると気合いも入りますし、スケジューリングもしていくので、強制的に使えるようになります。

 

私は基本的には休日の午前の時間に講義を聴くことにしました。

 

現在、ワード全講座の1/4程度の進み具合ですが、一太郎では使っていなかった機能もあって、感心しながら受講しています。

 

ただ、辞書だけは、一太郎のATOKの方が自分の登録した単語が多いことや、変換機能に優れているように感じるので、ソフトはワード、辞書はATOKという組み合わせで使っています。

 

両方使えるようにはなりたいのですが、ワードを使うようになると、一太郎の操作方法も忘れてしまうんでしょうね~

 

何か、長年の友達と距離を置くような寂しさを感じつつ、ワードへの移行を進めています。

 

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社内メールにご用心

さて、労働法の裁判例は、関係する会社の名前がついていることが多いです。

 

前にご紹介した新聞社への就労の権利は、「読売新聞社事件」と呼ばれています。

 

今回おもしろいと思った裁判例は、珍しく会社の名前がついていないで、「E-mail閲覧訴訟」と呼ばれています。

 

X1さん(妻)とX2さん(夫)は夫婦で、同じ会社の同じ事業部で働いていました。

 

事業部長Yさんは、その二人の上司でした。

 

Y部長はX1さんに、「一度時間を割いて、事業部の問題点などについて教えて欲しい」と、上司としてのメールを送信しました。

 

これに対して、X1さんはY部長に好感を持っていなかったので、夫のX2宛に次のようなメールを作成しました。

 

「夫へ 日頃のストレスは新事業部長(Y)にある。」

 

「細かい上に、女性同士の人間関係にまで口を出す。」

 

「いかに関わらずして仕事をするかが今後の課題。」

 

「まったく、単なる呑みの誘いじゃんかねー。 胸の痛い嫁」

 

これをX1さんは、何とY部長に誤送信してしまったんですね。

 

Y部長は、これを見た日から、X1さんのメールを監視し始めました。

 

すると、X1さんがY部長をセクシュアルハラスメント行為で告発しようとしていたことが判明しました。

 

途中でX1さんも監視に気づき、パスワードを変更して、Y部長が監視できないようにしました。

 

すると、Y部長は、会社のIT部に対して、X1さんのメールを自動転送するように依頼して監視し続けました。

 

そこで、X1さんとX2さんは、Y部長のメール閲覧行為がプライバシーの侵害にあたるとして損害賠償請求をしていきました。

 

会社内のもめごとが、裁判にまで発展したんですね。

 

結論としては、東京地裁ではX1さんの請求を認めませんでした。

 

まず、社内メールを私的に使用することも、会社に迷惑をかけないで必要かつ合理的な限度の範囲内では認められるとしました。

 

とすると、X1さんのメールのプライバシーも法的に保護はされます。

 

もっとも、メールは社内ネットワークシステムを使うので、会社のサーバーコンピュータなどに、その内容が保存されるという性質があります。

 

ですから、メールを送信する労働者も、自分のメールが会社に管理されることはある程度覚悟しなければなりません。

 

結局、会社経営、管理の観点からの合理的な必要性からのプライバシーの制限があるということです。

 

そこで裁判例は、プライバシー侵害となる基準を緩やかなものとしています。

 

引用すると、

監視の目的手段びその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較衡量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限りプライバシー侵害となる」

としたんですね。

 

まず、監視の目的です。

 

今回のメール内容には、「Y部長をセクシュアルハラスメント行為で告発する」という会社にとっても放置できない問題が含まれていました。

 

ですから、会社の経営、管理上これを監視するという目的は正当化できるでしょう。

 

もっとも、それを監視していたのがY部長自身というのですから、手段及びその態様の適切性には疑問は残ります。

 

でも、裁判例では、Y部長が事業部の最高責任者で他に適切な者もいなかったということで、手段としても相当性は肯定しています。

 

また、途中からIT事業部も一緒に監視していることから、Y部長が個人的理由で監視したとまではいえなそうです。

 

結局、それほどひどい監視ではなく、社会通念上相当な範囲を逸脱下とまでは言えないと判断したんですね。

 

この判決が緩やかな基準を設けているのは、メールが会社のサーバーに一旦残って管理されるという性質を考慮したものです。

 

ですから、そのような性質の無い私用電話については、この基準をそのまま当てはめるのは難しいでしょう。

 

私用電話を会社が盗聴した場合には、メールの場合よりも厳しい基準となる可能性が高いとは思います。

 

いずれにせよ、メールの誤送信というのは、誰でもやりかねないことなので、人間関係を壊さないようにご注意を。

 

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就業規則で労働者に不利益な変更をしても良いの?

とうとう花粉症の症状がひどくなってきました。

 

私の場合には、コンタクトをしていることもあって、眼に大きな影響があります。

 

耳鼻咽喉科で「アレグラ」という薬を処方してもらうと、毎年おさまるので、空いている時間を使って行ってこようと思います。

 

眼の中にチクチクとトゲが入っているような痒さがあって、かといって眼を掻くこともできず、非常につらい症状が続きます。

 

さて、今日は、就業規則を、使用者が労働者の不利益に変更しても有効かという問題です。

 

就業規則というのは、使用者が一方的に定めるものですよね。

 

労働契約というのは、使用者と労働者の合意があって初めて成立するものです。

 

その内容についても、もちろん合意が必要です。

 

ですから、使用者が労働者との契約内容を一方的に不利益に変更することは原則として許されません

 

但し、次の要件を充たす場合には例外的に不利益な変更も認められます

 

① 変更後の就業規則労働者周知していること

 諸般の事情を考慮して、変更内容が合理的であること

です。

 

②の「諸般の事情」は労働契約法10条をみていただくと、基準が定められています。

 

・労働者の受ける不利益の程度 

労働条件の変更の必要性

・変更後の就業規則の内容の相当性

労働組合等との交渉の状況

・その他の就業規則変更に係る事情

です。

 

たとえば、賃金の切り下げというような内容であれば、労働者受ける不利益の程度は大きいといえるでしょう。

 

また、会社が不況に陥って、解雇するよりは、労働者の賃金を下げることで対応使用とせざるを得なければ、変更の必要性はあることになります。

 

更に、たとえば、55才以上の給与上昇を凍結して、手当や賞与も削減した場合には、一部の人だけが不利益を受けるという点で、内容の相当性に問題が生じるとも言えます。

 

そして、事前に労働者の多くが加入する労働組合交渉を重ねて合意を得ていれば、就業規則の変更も有効の方向に傾きそうです。

 

これらの様々な事情総合的に考慮して、就業規則一方的な不利益変更有効かどうか判断していくんですね。

 

従業員の不利益に就業規則を変更するには、色々と検討が必要なので、経営者の方は、最初に定める時に、しっかりしたものを作成しておくことが大切だと思います。

 

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