21匹のネコちゃん~弁護人の仕事はどこまで?

弁護士の日常は、他の人にとっては非日常」

 

これは、よく痛感します。

 

刑事事件で、被疑者やその親族から弁護人になってほしいとの依頼があると、まずは警察署に面会に行きます。

 

これを法律用語で「接見(せっけん)」と言います。

 

事件を特定できないようにちょっと変えて、エピソードをひとつお話したいと思います。

 

ある日、他県にお住まいの被疑者のお父さんから、一人暮らしをしている息子が覚せい剤の使用で逮捕・勾留されてしまったので、急いで面会に行って、弁護人になって欲しいと依頼されました。

 

「覚せい剤ね~はい、はい。」

 

と軽い気持ちで接見にいきました。

 

覚せい剤の使用ははもちろん悪い行為ですが、人を傷つけたり死なせたりしていないし、初犯のようなので、

「簡単な事件の部類だな」

と勝手に予測して接見にいきました。

 

接見をすると、その息子さんである被疑者(仮にS君としましょう。)が泣きながら言います。

 

「ネコたちが死んじゃう、死んじゃう!」

 

よく聞くと、そのS君、ネコのブリーダーをやっていて、一人暮らしの一軒家には成猫から子猫まで20匹以上が放置されているとのこと。

 

私が連絡をもらったのは逮捕されてから3日目ですから、少なくとも、ネコたちはエサも、水もなしで3日間放置です。

 

しかも、そのうちの1匹は妊娠中ですぐにでも子供が生まれる予定とのこと。

 

思わずネコの死骸の山を想像して、寒気が走りました。

 

しかも、そのネコがいる一軒家は私の事務所から相当遠距離にあり、すぐに行ける場所ではありません。

 

気をおちつかせて、誰か頼れる人はいないか、動物病院はどこにかかっているかなどを確認します。

 

家の鍵は開いたままになっているとのことだったので、すぐに近所にいる友人の電話番号を聞き出して、連絡して直行してもらうようにしました。

 

そのご友人から、「ネコたちは無事です。」とのうれしいお知らせがすぐにありました。

 

今後の、水と餌やりもしてくれるとのこと。

 

妊娠しているネコについては、かかりつけの動物病院に連絡しましたが、産気づくまでは預かることはできないとのことでした。

 

そこで、S君が普段から親しくしているペットショップに連絡してみたところ、そちらであずかってくれるとのこと。

 

S君の日頃のネコへの愛情を、ご友人もペットショップの方も理解して、ボランティアでネコの救出作戦に協力してもらいました。

 

私も検察官に事情を説明して、S君の早期の身柄解放を要請しました。

 

刑事事件なのに、一致団結して、ネコの救出作戦を行っている感覚でした。

 

私は、ネコやイヌが大好きなので、非常にやりがいのある事件でした。

 

ただ、初犯の覚せい剤自己使用=簡単な事件という図式になれすぎていたのは大きな反省材料です。

 

前回も書きましたが、事件は人間が起こしたものなので、一人一人の人間が違うように、事件も1件1件が違います。

 

「十分な心構えを持って事件にあたらないといけないな」

 

と私の足下で惰眠をむさぼる愛犬を見ながら思ったのでした。

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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被疑者・被告人の親族の気持ちは?

今日は良い天気でしたね。

 

花粉の方も活発に活動していたようで・・・

 

「最近、刑事事件がないな~」なんて思っていたら、いきなり2件入ってきました。

 

いずれも、自分が犯行を行ったことを認めている事件(自白事件)です。

 

事件があれば、当然被害者もいらっしゃいます。

 

被害者のことを考えると、被疑者・被告人を弁護する心情になりにくいこともあります。

 

こんな時に、弁護人が一生懸命になれる一つの動機は、被疑者・被告人の親族がどれだけ更正を願っているかです。

 

今回、考えさせられたことは、身内でも口で言っていることと、心の内は異なるということです。

 

私が電話をかけた時には、「もう、あんな奴面倒見切れない。迷惑だ!」と怒っていた身内の方が、裁判の直前に、連絡してきます。

 

「この前はすみませんでした。刑を軽くしてやるために、何かやれることはないでしょうか?」

 

当然、情状証人として出ていただくことをお願いして、打ち合わせをします。

 

会ってお話すると、そこでは被告人のことを本当に心配している様子がうかがわれます。

 

私は、初回の電話での言葉を真に受けて、当然、証人になんてなってくれないと決めつけていました。

 

人の心の中というのは、わからないものだと改めて考えさせられました。

 

そして、その身内の方は、刑が決まってからも、お金やお菓子の差し入れをしていました。

 

ですから、刑を軽くするためだけではなく本当に被告人の更正を願っていることがわかりました。

 

「いつもと同じ自白事件だな」という先入観で臨んでいた自分の態度を反省させられました。

 

同じ種類の刑事事件でも1件々が本当に異なるということを改めて考えさせられました。

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。 

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電話会議での裁判

静岡では天気がよい日が続いて、少し暖かくなってきたような気がします。

 

暖かいせいかスギ花粉も大量に飛散しているようで、花粉症の私にとっては苦しい日々が続いています。

 

全国的にも、静岡はスギ花粉が多い地域のようです。

 

ところで、裁判を弁護士に依頼した場合、通常の期日は弁護士が裁判所に出頭し、ご本人は出頭しなくても良いです。

 

でも、遠方での裁判の場合、毎回出頭していると、時間と労力が厳しいです。

 

そこで、裁判手続では電話会議という方法が使われます。

 

電話会議の長所は、裁判所に出頭しなくても、事務所から電話で対応すれば足りるところです。

 

でも、直に裁判官と話ができないのは大きなデメリットです。

 

よく、刑事コロンボや古畑任三郎のドラマで、一番重要な質問を最後に「忘れてましたが、最後に一つ質問良いですか。」という形で聞くことがありますよね。

 

電話会議だと、電話を切った後に、相手の代理人弁護士が、この手法で裁判官に何か言っていないかとても気になります。

 

和解で終わる事件なら良いのですが、判決まで争う場合には、ちょっとした裁判官の心証も気になります。

 

今年から、家事調停でも電話会議システムが使われるようになりましたから、遺産分割調停なんかも電話でできるようになるんですね。

 

私の扱っている事件でも、電話会議を使っているものもありますが、やはり人間対人間なので、本当は、顔を見ながら話をしたいものです。

 

手続を便利にしても、弁護士の扱う仕事は人の大切な問題ですから、できるだけ丁寧に行っていきたいと思っています。

 

「裁判手続で知っておきたいこと」の過去記事はこちらへどうぞ。 

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葬儀費用は交通死亡事故の「損害」に含まれるの?

寒いのに加えて、花粉が飛び始め、花粉症の私にとってはつらい季節です。

 

昨年までは、眠くなりにくいという「アレグラ」という薬を耳鼻科で処方してもらっていました。

 

でも、今年から同じ成分の薬が市販されるようになったので、薬局で購入して飲んでいます。

 

それでも、今年の花粉の量は多いのでしょうか、朝起きた時や外出時に目がかゆくなったりします。

 

何とか克服したいのですが、アレルギーというのはどうしようもないんでしょうね。

 

さて、交通事故のお話の続きです。

 

交通事故で、不幸にも被害者が死亡してしまった場合、普通は葬儀費用がかかりますよね。

 

では、この葬儀代は、被害者の「損害」に含まれるのでしょうか。

 

葬儀をとり行うのは、死亡した被害者ではなく、遺族の中の代表者です。

 

葬儀費用の額も、被害者や遺族の宗派や価値観によって様々です。

 

このように考えると、葬儀費用を全て亡くなった人の「損害」に含めてしまうのは、ちょっと乱暴に思えます。

 

かといって、死者が行うものではないから、「損害」に含めないとバッサリ切ってしまうのも、常識に反します。

 

そこで、実務上では、社会通念上、相当と認められる金額の範囲葬儀費用を「損害」に含めることを認めています。

 

実際の金額としては、150万円前後となることが多いです。

 

もちろん、交友関係が広い方が被害者の場合には、葬儀費用はこれ以上かかることもあるでしょう。

 

その場合には、多生の増額は認められるかもしれませんが、全額が認められるという訳ではありません。

 

また、葬儀を行う人は、お香典をもらうと思いますが、これは損害の額から差し引かれません

 

お香典は、実際に葬儀を行わなければ金額は不明確ですし、死亡者だけでなく、遺族の関係者から支払われることもあるでしょう。

 

ですから、被害者の死亡が原因で当然に生じる利益ではないといえます。

 

このため、被害者の死亡という「損害」から差し引かれるものではないということになります。

 

交通事故の民事事件の基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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交通事故の被害者になって思ったこと

交通事故のお話をしていると、本当に誰にでも起こる怖いものだと実感します。

 

私も以前、交通事故にあったことがあります。

 

道路が工事中で、工事作業員の指示に従って車両を停車させていたところ、後から前方不注意の自動車に衝突されました。

 

相手は、朝の通勤途中で、ボーっとしていたようです。

 

たまたま、その相手が誠実な人で、自分でしっかりと損害賠償をしてくれたので、問題になりませんでした。

 

でも、相手が不誠実な対応しかしてこなかったり、無保険だった場合、相手が通勤途中だったことから、会社の責任を問えないでしょうか

 

これは、ケースバイケースで、会社が自家用車での通勤を認めていたか、会社での仕事に自家用車を使わせていたかなどの事情を考慮して判断されます。

 

平成18年の大阪地裁の判決で、会社が自家用車での通勤を禁止していた場合に、会社の責任否定したものがあります。

 

この事例では、加害者が会社の近くの駐車場を借りており、これに対して会社は厳重に注意などはしていませんでした。

 

でも、それだけでは、自家用車での通勤を認めたり、助長したりしたとまではいえないとしたんですね。

 

これに対して、会社が従業員に自家用車での通勤を認めて仕事でも積極的に使わせていたような場合には、通勤途中での事故でも会社の責任認められる場合もあります。

 

大企業などでは、しっかりと通勤方法を決めているんでしょうが、中小企業だと何となく自家用車での通勤を認めていることも多いので注意が必要です。

 

せめて、自家用車での通勤を認めるのであれば、自賠責保険はもちろん、対人無制限任意自動車保険への加入を義務づけるべきでしょう。

 

交通事故の民事事件の基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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盗難車が事故を起こした場合、所有者にも責任があるの?

今日は、東京では雪になるそうですね。

 

静岡は雨ですが、雪の降る地域の方々は十分お気を付け下さい。

 

さて、自動車損害賠償保障法3条では、「運行供用者」が損害賠償の責任を負うと定めています。

 

この「運行供用者」は、実際に運転している人だけでなく、運行について支配をして利益をあげている人も含みます。

 

例えば、会社の従業員が会社の自動車を仕事で運転中に事故を起こした場合、会社は「運行供用者」としての損害賠償責任を負います。

 

では、自動車が盗まれた場合に、泥棒が事故を起こした場合、被害者は、誰に責任を追及できるのでしょうか。

 

まず、運転をしていた泥棒が責任を負うのは当然です。

 

でも、泥棒はお金が無かったり、逃走して行方不明だったりして、実際に被害者に対する弁償はできないことが多いです。

 

そこで、被害者としては、自動車の所有者に対して、損害賠償の責任を追及したいと思います。

 

でも、自動車が盗まれた場合には、所有者は全く知らない者に運転して事故をおこされているのですから、運行の支配も利益もなく「運行供用者」に含まれないのが原則です。

 

古い最高裁の判例ですが、有名なものをご紹介しましょう。

 

あるタクシー会社(Y会社)のその日の当番運転手Aさんが無断欠勤したため、Aさんの担当する自動車は、朝からドアに鍵がかかっておらず、エンジンキーも差し込まれたままでした。

 

そこで、泥棒Bは駐車場に無断で入り込み、そのタクシーで勝手に営業をした上、事故を起こし、乗せていたお客さんXに怪我を負わせました。

 

泥棒Bに責任があるのは当然ですが、お金が無いので、請求しても無駄です。

 

そこで、そのお客さんXは、Yタクシー会社に「運行供用者」としての責任があるとして、損害賠償の請求をしていきました。

 

確かに、ドアに鍵もかけずに、エンジンキーも差し込んだままの自動車を放置していたのは不注意です。

 

でも、Y会社は、自動車盗まれた場合には、運行の支配失っていまし、泥棒が営業をしても運行の利益を得ることはありません。

 

従って、Y会社は運行の支配も利益も有していないから「運行供用者」にあたらないとしました。

 

もっとも、この事案は、昭和48年の古い判決であるとともに、無断立ち入りの禁止されている会社駐車場に泥棒が入り込んで盗んでいった事案です。

 

その時代よりは、自動車に対する管理責任が重くなっている現在では、違う判断もありうるかもしれません。

 

例えば、道路上に、ドアに鍵をかけずに、エンジンキーも差し込んで自動車を放置して盗難にあった場合には、自動車所有者が責任を負う可能性もあると思います。

 

皆様も自動車の管理には、十分お気をつけください。

 

交通事故の民事事件の基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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交通事故では時効期間にご注意を

相変わらず寒い日が続きますね。

 

皆様も、体調にはお気を付けください。

 

私も仕事を滞らせないように、体調管理には注意していこうと思います。

 

さて、交通事故損害賠償請求をする場合、その根拠はどこにあるのでしょうか?

 

被害者と加害者が予め契約をしているわけではないので、法律の規定によって権利義務が発生することになります。

 

その基本は民法709条、自動車損害賠償保障法3条に定められています。

 

そして、その消滅時効期間は

 「損害および加害者知った時」から「3年

又は

 「不法行為時から20年

です(民法724条)。

 

例えば、ひき逃げの場合、「損害」が生じたことは被害者や遺族は知っていますが、加害者知りません

 

ですから、の3年の時効期間は始まりません。

 

でも、不法行為から20年経過すると、請求権はの要件を満たすことになるので、時効により権利は消滅してしまいます。

 

20年逃げ切れば、加害者が責任を免れるというのも立法的にはどうかとは思いますが・・・法律が定めている以上しょうがありません。

 

ここで、注意したいのは、今ご説明したのは、被害者の加害者に対する損害賠償請求権の時効期間です。

 

加害者や被害者が、保険会社へ保険金の請求をする時の時効期間は、民法とは自動車損害賠償保障法など定められています。

 

以前は、その保険金の請求については、損害賠償の請求の場合と違って2年の時効期間が定められていました。

 

それが近時の法改正により、平成22年4月1日以降に発生した事故については、時効期間が、損害賠償請求権同様3年となりました。

 

いずれにしても、治療や後遺症の治療に専念されたり、親族の死亡の悲しみから立ち直るには、3年間という期間は短いです。

 

被害者の方にとっては、つらいことですが、3年以内に、少なくとも弁護士にご相談されることをお勧めします。

 

交通事故の民事事件の基礎知識についてはこちらをご参照ください。 

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投資詐欺110番

インフルエンザが流行っているようです。

 

マスク・手洗い・うがいなど、皆様お気を付けください。

 

最近の消費者被害として、投資詐欺が多いというようです。

 

2月22日午前10時~投資詐欺110番を行うことになりました。

 

ご連絡の電話番号など、詳しい告知は静岡県弁護士会のHPで追って告知いたしますので、被害にあわれた方はご連絡ください。

http://s-bengoshikai.com/

 

投資詐欺は、劇場型のものが多いです。

 

そこで良く使われるのが、レターパックとレンタルの携帯電話です。

 

ある日、高齢者の方に電話がかかってきます。

 

「審査が通った方限定でのご連絡です。A社の新規事業が非常に有望で、近々上場する予定です。元本保証で、年利5%というとても有利な投資です。投資しませんか?」

 

その後、別の人から次のような電話がかかってきます。

 

「A社に投資したいのだが、審査が通らなかった。100万円の投資証券を120万円で売ってもらえないか。」

 

そして、再度、投資勧誘の電話がかかってきます。

 

ご高齢者の方は、何となく信用できそうな金利であることや、他にも欲しい人がいるという事情から、投資したくなってしまいます。

 

そうすると、相手はこのような指示を出します。

 

「投資金は、レターパックで送付してください。中身は「現金」とは書かず「書類」と書いてください。」

 

ご高齢者の方は、これを信じて、レターパックで現金を送付してしまうんですね。

 

中には、近くの駅までお金を届けに行かれる方もいます。

 

そして、2~3カ月の間は、投資金の利息と称するお金が振り込まれて、更に投資額を増やすように誘ってくるという手法です。

 

ここで、ご注意いただきたいのは、まともな投資の場合、「レターパックで現金を送って欲しい」と言ったり、見知らぬ人がいきなり現金を取りにくることはありえないということです。

 

日頃から付き合いのある金融機関であれば、自宅に来て手続をすることもあるでしょうが、初めての業者でそのような勧誘をする場合はまず怪しいということです。

 

この場合、投資金がレターパックや手渡しで渡されていて、口座振込ではないので、口座を凍結して投資金を回収することができません

 

また、レンタルや他人名義の携帯電話だと、電話から身元が特定できません

 

投資詐欺の方法も、年々進化しているので、事前に知識を入れて予防することがとても大切になります。

 

皆様も、「レターパック」での現金送付や見知らぬ人への現金手渡しという方法が提案されたら、投資詐欺だと思って十分ご注意ください。

 

消費者被害の一般的なご説明についてはこちら

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カテゴリー: 消費者の被害 |

前科があって当たり前?

今日は、弁護士会で刑事事件への対応について研修会がありました。

 

自分が良かれとおもって色々と主張しても、裁判官に届かないと意味がないことを実感しました。

 

また、裁判員裁判で弁護をするにあたっては、大きな声で、ゆっくりと話すことが大切なんだということです。

 

確かに、例えば、私がパソコンの研修会に行った場合に、早口で専門用語を使って説明されたら、聞くのが嫌になってしまいます。

 

また、一般の市民感覚と、法律家の感覚がずれているということも実感しました。

 

皆さんは、「あの人には前科が無い」と言われたら、どの様に思いますか?

 

「だから何?」と聞きたくなるんじゃないでしょうか。

 

日常生活だと、前科が無いのが当然で、改めて言うほどのことではないんですよね。

 

でも、刑事弁護をやっていると、「前科の無い人=初犯」の弁護にあたるよりも、前科がある人にあたることの方が多いです。

 

ですから、初犯の人だと、「この裁判をきっかけに更生する可能性は高い。」と当然に思ってしまうんですね。

 

また、初犯の被疑者・被告人は、逮捕・勾留されることで、相当に落ち込んだり、反省したりする様子がうかがわれるので、当然に反省しているとみてもらえると思ってしまいます。

 

ですから、裁判官も当然に分かってくれると思って、初犯で反省していることを簡単に主張しがちです。

 

裁判官には、それでも伝わるとは思いますが、裁判員の場合には違うようです。

 

裁判員になる方にとっては、「過去に何もやっていないのが普通」という感覚でしょうから、「前科が無い」と抽象的な言葉を言っても伝わらないようです。

 

それよりは、被告人のそれまでの生活態度や周囲のサポート、事件後の被害者への対応、今後の生活設計などを具体的にご説明した方が伝わるようです。

 

専門家だけに麻痺している部分があることを反省しつつ、裁判員裁判を担当した時には注意しようと思いました。

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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交通事故に関連する堕胎費用は損害に含まれるの?

昨日から今日にかけては各地で悪天候だったようですね。

 

静岡はやはり雪はふらず、雨でした。

 

比較的暖かかったと思います。

 

さて、交通事故のお話です。

 

実際にあった裁判例なんですが、妊娠4~5週間の妊婦の方が、乗用車を運転していて停車中に、原付自転車に衝突されてしまいました。

 

この事故により、妊婦さん自身は、大けがというほどではありませんが、頸椎捻挫・腰椎捻挫でした。

 

ただ、怪我の程度について捻挫か、骨折かは、外から見ただけでは分かりません。

 

この症状を確認するためには、レントゲン写真を撮る必要がありました。

 

そこで、レントゲン写真を撮ったのですが、それによって障害を持った子が生まれるという不安を抱いて、その妊婦さんは堕胎をしました

 

では、この堕胎費用交通事故損害含まれるでしょうか

 

堕胎は、妊婦さん自身が決めることですから、交通事故とは直接の因果関係はなさそうにも思えます。

 

また、レントゲン写真を撮影したからといって、障害を持った子が生まれるとは限りませんし、障害を持った子なら堕胎しても良いという理屈も変な気がします。

 

しかし、この裁判例(京都地裁の判決)は、堕胎費用損害含まれるとしました。

 

事故がなければ、レントゲン照射は不要だったことを考慮したものだと思われます。

 

もっとも、これは一地方裁判所の判決ですし、現在の医学知識を前提とすると、必ずしも妥当しない可能性はあるとは思います。

 

おそらく、裁判になった場合には争点にはなるでしょう。

 

なお、交通事故の衝撃で流産してしまったような場合には、当然にその治療費や相当額の慰謝料を請求できるでしょう。

 

もっとも、この事故の場合、妊婦さん自身が堕胎を選択しているので、精神的損害については認められない可能性があります。

 

仮に認められたとしても、過去の裁判例を見る限り、残念ながら、慰謝料は、その妊婦さんが思うほどの金額にはならないことが多いです。

 

私も、慰謝料の請求をする側に立った場合には、過去の裁判例を調べて、がっかりすることも多々あります。

 

被害状況について、間接的な事実であっても、客観的な事実を積み重ねて、目に見えない「精神的な痛み」を詳しく証明していくしかないとは思います。

 

交通事故の民事事件の基礎知識についてはこちらをご参照ください。 

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