弁護士に頼んだはずだったのに・・・

ポール・マッカートニーの日本公演が、体調不良で、1回も開かれないで終わってしまいましたね。

 

私も来日前から、「71才にもなるのに大丈夫かな?」と心配していました。

 

私にとってポールは音楽を好きになるきっかけをくれた大切な存在です。

 

小学校6年生の時に友人宅でイエスタデイのドーナッツ版(今で言うCDシングル)を聞かせてもらって衝撃を受けました。

 

そこからビートルズにはまりました。

 

親が気まぐれで買ったボロボロのガットギターを物置の中から引っ張り出して、見よう見まねでビートルズの優しいコードの曲を練習したのを今も覚えています。

 

私に「音楽」を聴いて、弾いて、楽しむことを教えてくれたポールは、恩人であり、勝手に「大好きな先輩」だと思っています。

 

日本公演が中止になった時にも、インタビューで文句を言う人は居なくて、体調を心配する人が多かったのも、私と同じような気持ちをポールに持っていたんでしょう。

 

命にかかわるような病気ではなかったと聞いて、ホッとしました。

 

さて、弁護士選びのチェックリストのお話です。

 

今回は、弁護士と事務員の関係が、ご相談やご依頼される方に及ぼす影響について考えてみたいと思います。

 

以前にチェックリストとして

・初めて相談の予約を入れる電話をかけた時に、弁護士事務所の事務員が自分の都合を全く聞いてくれなかったり、態度が横柄だった。

・法律相談の最中、弁護士だけでなく事務員が、最後まで同席していた。

 

このような場合には、問題がある可能性ありと書きました。

 

弁護士の仕事の中には、①誰でも出来る仕事と②弁護士で無ければできない仕事があります。

 

それを、弁護士と事務員がどのように分担するかというのは、個々の弁護士によって大きく異なり、それによってご依頼される方のニーズに合うかも違ってくるんですね。

 

まず、弁護士に仕事を依頼するということは、定期的に弁護士の事務所に電話連絡したり、弁護士との打合せのために事務所に行く約束をしなければなりません。

 

その時に、いつも皆さんの窓口になるのが弁護士事務所の事務員です。

 

ですから、事務員の反応が悪かったり、横柄だったりすると、連絡したり、訪問したりする度に嫌な気持ちになります。

 

ただでさえ、弁護士にご相談、ご依頼される時には、心に大きな心配事や怒りを抱えているでしょう。

 

そんなストレスの中で、更にストレスを受けることは、結構きついものです。

 

その意味で、依頼する前の事務員の対応がどうかは、とても大切なものとなります。

 

そして、更につっこんで考えてみると、弁護士の仕事は資格という看板があるので、時間単価が比較的高いです。

 

そこで、

依頼者の方の利益を無視して、弁護士が

「自分だけ儲ければ良い」

と考えた場合、給与の安い事務員を沢山雇って、本来、弁護士がやるべき仕事をさせるんですね。

 

究極的には、弁護士は依頼者をつかまえるまでの相談と法廷に出て行くだけで、後は全部事務員にやらせれば、最も儲かることになります。

 

そうすれば、弁護士の数に対して、通常は考えられない数の事件を引き受けて、少なくとも着手金は大量に儲けられるということになります。

 

この方法を使った場合に被害を被るのは、

まず、①依頼者、次に②裁判所、そして③相手方になった弁護士

という順番になります。

 

特に、依頼者の方が受ける被害は、とても大きいです。

 

初期段階では、「弁護士と連絡が取れない」という問題から始まります。

 

次に、担当事務員がつけられ、全て事務員が対応するという問題が生じます。

 

つまり、依頼者の方が法律の専門家に依頼したつもりが、素人に依頼したのと同じことになってくる訳です。

 

そして、依頼者の方には判断がつかないかもしれませんが、裁判所に提出する様々な書面を全て事務員が作成するケースも出てきます。

 

この場合、裁判官、書記官、相手弁護士が見れば、一目瞭然なのですが、普通の方は、書面を見てもその問題点が分からないと思います。

 

ですから、当然、訴訟では、本来主張すべき有利な事実や証拠を落として不利になったりします。

 

依頼者の方がそれを判断するには、「自分の依頼した仕事に事務員がどこまで関与しているか」を見るしか無いと思います。

 

誤解を恐れずに言えば、

最初の法律相談の時に、最初から最後まで事務員が同席していたり、

依頼した後に、直接、弁護士と全く話ができずに事務員だけが対応する

という事情があった場合には赤信号です。

 

確かに、弁護士という仕事は自由業で、事務所経営のためにはお金のことも考えなければなりません。

 

しかし、もともと弁護士の仕事は、いわば全ての事件が「オーダーメイド」なので、規格型の大量処理にはなじみません

 

例えば、皆さんに相続のトラブルが発生した場合、お隣の家で起きた相続のトラブルと同じ処理をすれば解決するのでしょうか。

 

遺産の内容や評価も違いますし、相続人同士の関係の濃淡・過去の歴史・感情的な対立の理由や内容も全く違うので、同じ処理では解決出来ませんよね。

 

ですから、弁護士の仕事の性質を無視して仕事を進めれば、良い結果が得られないのは当然なのです。

 

そのため、まともな事務所では、弁護士が自分の処理しきれる量の仕事を超えたと思ったら、新規のお引き受けはお断りするか、初回相談の日を数ヶ月先にしてもらうなどの対応をせざるを得ないのです。

 

皆様も、自分の人生を法律の素人に委ねたくなければ、十分なご注意をしていただければと思います。

 

「弁護士のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。 

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どんな弁護士がタイプ?

忙しいのを言い訳に、ブログの更新を怠けてしまいすみません。

 

前回、駐車場のご案内をしたばかりなのですが、本日、さくらいパーキングの方が来て、5月一杯で駐車場の営業をやめるそうです。

 

せっかく、ご縁ができたのに、本当に残念です。

 

6月からは代わりの駐車場のご案内をしたいと思っており、今、準備中です。

 

確実になったら、ブログとHPの両方で告知しますね。

 

さて、弁護士の選び方の途中ですが、弁護士のタイプについて、自分も含めてご紹介したいと思います。

 

皆さんは、弁護士を探す時に、料金面以外では、どんな基準で探しているでしょうか?

 

女性に話を聞くと、「話しやすくて、自分の気持ちを分かってくれる弁護士」というご回答が多いようです。

 

これに対して、男性だと、「憎い相手を叩きのめしてくれる頼りがいのある弁護士」というご回答を良く聞きます。

 

感性が豊かな女性は、自分に共感してくれるかどうかは大切なポイントのようです。

 

これに対して、男性は、成果が出せそう=頼りがいがありそう=自分のために闘ってくれる弁護士という点にポイントをつけているような気がします。

 

さて、私がどちらかのタイプかというと、初対面の方から見れば、間違い無く前者でしょうね。

 

自分でも比較的温厚(実は、反論されたことが結構あります・・・)だと自信を持っていますし、感情的になるのを極めて嫌う性格なのは間違い有りません。

 

ですから、男性の方からは、「先生は話しやすいのは良いんだけど、優しすぎて相手に押し切られちゃうんじゃ無いですか?」と聞かれることも多々あります。

 

弁護士になりたての頃は、ムキになって否定していましたが、最近では「う~ん。そう見えますか?」程度の返事をするに止めています。

 

確かに、交渉・調停・訴訟の準備手続などで机をバンバン叩いたり、相手を睨み付けて威嚇したり、大声で怒鳴ったりして闘うという方法を、私は一度も取ったことがありません。

 

もし、弁護士にそのような方法を求める依頼者の方であれば、私より他の弁護士の方が合うのではないかとは思いますね。

 

さて、それではそんな私に事件を頼んでも大丈夫なんでしょうか。

 

それは、もう依頼者の方に判断していただくしかありません。

 

自己分析だと、仕事でのギリギリの勝負は相当しているとは思ってはいるんですが、それが見えやすいかというとそうではないんでしょうね。

 

サッカー日本代表で言うと、長谷部タイプと言えるかもしれません。

 

少なくとも、本田やゴン中山タイプではないことは確かです(笑)。

 

その割には、意外と思われるでしょうが、私の事務所の事務員や20数年来の友人達が口をそろえて言うのは、

「この頑固者!」

「危ないことをやり過ぎ」

ということです。

 

もう、耳タコ状態です。

 

何を指してそんな事を言っているのかと言えば、

例えば、何の保証も無いまま、家族にも友人にも一切相談せず県庁職員を突然辞めて弁護士を目指した時とか

暴力団を脱退したいと訪れた若者と母親の依頼を受けて、さる有名武闘派暴力団の組長の自宅あて、私の個人名で(もちろん「弁護士」の肩書きはつけていますが)、「私の依頼者は、貴組(笑)を脱退するので、一切の接触をしないでいただきたい。」と書面を送りつけた時とか

自分1人しか事務所にいない休日を選んで、ヤミ金の担当者を事務所に呼びつけたりとか

精神疾患が原因で理不尽な言動を繰り返した上、電話口で怒鳴り続けていた相手当事者を「それなら事務所に来て言いなさい」と事務所に呼び出してみたり

などなどです。

 

でも、人生や仕事で勝負するのが好きなことは確かで、事務員や友人の言うことも当たっており、何も言い返せません。

 

この自分でも奇妙だと思う性格を、弁護士としてどう生かしていくかということを、夢の中でも自問自答しながら、生活している毎日です。

 

とにかく、日々勝負することで、少しずつでも、弁護士としても、人間としても、成長していけるよう努力していきたいというのが、私の最大の目標です。

 

こんな弁護士で良かったら、ご相談いただければ幸いです。

 

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弁護士のホームページは信用できない?

ソチ五輪、やはり盛り上がっているようです。

 

4年間もの歳月をかけて挑戦しつづけてきた各国のアスリートたちの活躍は、見ているだけで凄みを感じます。

 

そんな中、「明治天皇のなんとか」という長い名前の方が、選手に命令口調でツィートして、ちょっと話題になっていましたね。

 

私には、厳しい経費の中、殆ど脚光を浴びること無く4年間、私たち通常人の想像を絶するトレーンニングや体調管理をしてきたオリンピック選手について、「頑張ってくれてありがとう」としか言う言葉はありません。

 

為末選手が、十分なコメントをしていただいており、特に議論すべきレベルのものでは無いので、私は何も言いません。

 

是非、6月のワールドカップでは、日本代表の選手の方々には、いつも通り胸に手をあてて堂々と国歌を歌うなり、黙って聴くなり、自由にしていただきたいと思います。

 

さて、今回のご説明は、

ホームページに書いてあることだけを比較・参考にして事務所選びをすることは、非常に危険なので止めた方がよい

ということです。

 

「HP(ホームページ)で、一生懸命ブログを書いている弁護士のどの口が言うのか!」と呆れられそうですね(笑)

 

でも、それは事実なので言わざるを得ません。

 

当たり前のことですが、HPは、弁護士が顧客獲得を図るために作るものです。

 

ですから、弁護士や事務所のことは良いことしか書きません。

 

ほとんどのHPで書いてある

「じっくりとお話をお聞きします。」

「丁寧にご対応いたします。」

ということが、実際に事務所に行ったらビックリってこともあると思います。

 

ですから、HPの抽象的な広告的な表現は全く当てになりません。

 

その意味では、過去の裁判例や弁護士の活躍の様子などが詳しく書かれていても、結果的に上手くいったケースだけ書いているので、これも全く参考になりません。

 

強いて言えば、

① 事件を引き受けたら具体的に何をしてくれるのか書いてある箇所

② 具体的に着手金や成功報酬の金額や%が書いてある箇所

③ 依頼者の直筆の感想が多数アップされている箇所

が比較材料になるでしょう。

 

もし、HPで宣伝をしながら、着手金や成功報酬の金額や%をぼやかして書いている事務所があったとしたら、逆に要注意と言えるでしょう。

 

HPで他の事務所と着手金や成功報酬を比較されると「高い」と思われるから、敢えて掲載していないことがほとんどだからです。

 

また、具体的なお話ではウソはつきにくいですから、弁護士費用を具体的に説明しているホームページは信頼性が高いと思います。

 

そして、「依頼者の直筆の感想」が多数掲載されていれば、これは信用できると思います。

 

4~5通なら、絶対に信頼できる身内に頼んで書いてもらっている可能性もありますが、10通以上になると、それはできません。

 

何故かというと、10人以上も「ウソの宣伝を漏らさないほど絶対に信用できる身内」がいる弁護士など居ないからです。

 

そして、ウソの依頼者の感想がバレた時には、食品の偽装表示と同じか、それ以上にニュースとして、マスコミに大々的に報道される危険性があります。

 

そうなったら、弁護士生命は終わりですよね。

 

多くの数の依頼者の感想を載せているホームページは、信用して良いと思います。

 

ただ、弁護士も依頼者に感想を書いてもらうには、相当の勇気がいるので、実際に掲載している事務所は全国でもそれほど多くありません。

 

私のホームパージも、現時点では掲載していません。

 

やっぱり、誤解や偏った意見が寄せられるのが怖いというのがどの弁護士にもあるのでしょう。

 

そうすると、やはり、ホームページだけでなく、実際に事務所を訪問して、弁護士の対応や今後一緒に自分の人生を賭けた戦いに臨めるかを実感していただくのが最も良い方法ということになります。

 

なお、皆さんが、仮に、色々な事務所を回って比較している場合、そのことは相談する弁護士に決して言わないようにしましょう。

 

弁護士の多くは、「お金がどれだけもらえるか」と同じか、それ以上に「心意気」で仕事を引き受けるものなんですね。

 

ですから、誰もが可愛そうだと思う人が、「先生しか頼る人が居ないんです!」と頼られると、案外、採算度外視で動いちゃったりするんです。

 

「他の事務所も色々回って検討しています」と正直に言ってしまうと、その弁護士は一気にテンションダウンしてしまいます。

 

既に自分を信じてついてきてくれる依頼者が多数いる中、いくつか味見をしている最中の人に対しては真剣に対応する気持ちが薄れるのは、弁護士に限らず、人間ならば当然の感情です。

 

もっとも、委任契約をする時に

「実は、色々と事務所を回っていたのですが、先生の印象が本当に良くて」

というのであれば、引き受ける弁護士は嬉しいと思います。

 

ですから、弁護士を選択中には、不用意にそのことを相談する弁護士に話さないことが大切ということです。

 

もし、弁護士から「他の事務所も回られているんでしょう?」と鎌をかけられても、「いえ、ここしか来ていません。」とシラを切りましょう(笑)

 

私も、ご相談に来られた方が、他の事務所を回っている最中かどうかについては、意識的に聞かないようにしています。

 

「弁護士のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

 

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弁護士事務所を「交通の便」で選んで良いの?

雪で全国は交通が混乱しているようです。

 

突然、雪に見舞われている地域の方々は、歩行時や列車の運行などお気を付け下さい。

 

静岡市内は、やはり例年通り、雪は降らず、雨が降るだけです。

 

豪雪地帯の方々が聞いたら怒られそうですが、静岡市内の子供たちは、雪が積もったら大喜びだと思います。

 

静岡市は、本当に冬暖かくて、10数年に一度くらいしか雪が積もることのない地域なんですね。

 

さて、以前にチェックリストで、「自分にとって交通の便が良いことだけを重視して選ばない方が良い」とアドバイスをさせていただきました。

 

確かに、交通の便が良いに越したことはありません。

 

私の事務所も、静岡鉄道の「新静岡駅」にも、JRの「静岡駅」にも歩いて数分の場所にあり、静岡では交通の便は良い方です。

 

でも、皆さんが月に1回の贅沢のために美味しいものを食べに行く時に、交通の便を気にするでしょうか?

 

せっかく、贅沢をするのだから、多少、交通の便が悪くても、色々と口コミや評判を聞いて、遠出するのではないでしょうか。

 

法律事務所に相談に行く時に、皆さんの抱えているのは一生に1度あるかないかの問題です。

 

そして、最悪、訴訟になるにしても、弁護士との打ち合わせに事務所に出向かなければならないのは、多くて月に1回です。

 

とすると、交通の便を気にするのは、月に1回の贅沢の食事を近場だけで選ぼうとすること以上に、意味の無いことです。

 

例えば、静岡県で言えば、静岡市にお住まいの方なら、静岡市内に限らず、評判が良ければ、浜松市、沼津市の法律事務所も視野に入れるべきでしょう。

 

逆に、沼津市や浜松市にお住まいの方は、静岡市内の法律事務所も視野に入れるべきだと言えます。

 

東京や大阪などの大都市だったら、都内・府内のみならず、交通のアクセスの良い近隣県も視野に入れるべきだと思います。

 

良く、ご相談を受けるのが、例えば、ご自分は東京に住まわれていて、トラブルは静岡で起きていて、裁判所の管轄も静岡のケースです。

 

「東京と静岡、どちらの弁護士に依頼したら良いのでしょうか?」と聞かれることが良くあるんですね。

 

そんな場合は、「どちらも一長一短あるので、やはり事務所に相談に行ってきめるべきでしょう。」と答えています。

 

結局、東京の弁護士に依頼すれば、打ち合わせに行くのが楽ですが、弁護士が静岡の裁判所に行く分、確実に弁護士費用が跳ね上がります。

 

逆に、静岡の弁護士に依頼すれば、通常の弁護士費用で足りますが、打ち合わせの時には、ご自分で静岡の事務所まで行かなければなりません。

 

こんな時、例えば、足の調子が悪い方だったら、迷い無く東京の弁護士を探すべきでしょう。

 

逆に、足腰がしっかりしていて、1~2ヵ月に1回程度の打ち合わせ程度なら、静岡まで行けるという方であれば、むしろ静岡で弁護士を探した方が費用が安くなってお得です。

 

結局、交通の便のみを重視しすぎると、比較・選択する法律事務所の数が極端に少なくなって、結果的に良い弁護士に出会えない可能性が高いのです。

 

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弁護士の選びのチェックリスト

花粉症、イヤですよね。

 

私は花粉症がひどいので、早めに薬を飲むようにしています。

 

法廷で涙と鼻水垂らしながら

「びぎ(異議)あり!」

と言うのも、何かかっこ悪いですもんね。

 

最近では、医師に処方してもらっていた「アレグラ」という薬が薬局でも買えるので、耳鼻科で長時間待たなくて助かっています。

 

さて、弁護士を選ぶ時には、いくつか法律事務所を回って判断した方が良いというのは色々なホームページでも書いているところです。

 

でも、実際に回ってみても、「感じが悪い」印象を受けた場合以外は、中々選ぶのに迷うと思われます。

 

弁護士の訴訟・調停での技術・能力を判断するのなら、裁判所の書記官や裁判官に聞くのが一番ですが、やはり公務員という中立性・守秘義務から、内心思っていることでも教えられない立場にいます。

 

また、性格的な誠実さや、お金の取り方が汚いかなどは、同じ弁護士会の支部の弁護士が一番良く知っていると思います。

 

でも、やはり「同業者の悪口を相談者に言って、顧客獲得をしようとする弁護士にはろくな奴がいない。」という考え(私も同じ考えです。)があるので、教えてもらえません。

 

そこで、私が、

(静岡ではなく)例えば東京で、依頼者として(自分の身分は明かさずに)法律事務所を回った場合、どの弁護士を選ぶか?

という視点でチェックリストを作ってみました。

 

以下のチェックリストの□にチェックを入れていって、チェックマークができるだけ少ない弁護士を選ぶことになると思います。

 

消去法になっているのは本当に自分にとって良い弁護士かどうかは、弁護士の仕事の性質上、事件が全て終わってからでないと分からないからです

 

とりあえず、

 「選んで後悔する弁護士」を事前に避ける

 「選んで後悔した弁護士」を早めに解任する

という方法でリスクを最小限にとどめるしかありません。

 

まず、「相談時→契約時→契約後」の順番で、チェックリストを書いて、次回以降、何回かに分けてその理由についてご説明していきたいと思います。

 

① 自分にとって交通の便が良いことだけを重視すると、この事務所になる。

 

② ホームページに書いてあることだけを比較・参考にすると、この事務所になる。

 

③ 初めて相談の予約を入れる電話をかけた時に、弁護士事務所の事務員が自分の都合を全く聞いてくれなかったり、態度が横柄だった。

 

④ 初めて事務所に行ったら、マンションや持ち家の居住スペースを、自宅兼事務所としていて、部屋の中に事務員用の机やPCが無かった。

 

⑤ 法律相談の最中、弁護士だけでなく事務員が、最後まで同席していた。

 

⑥ 法律相談の時間が30分5,000円の場合、30分や1時間という切りの良い時間になると、弁護士が急に話しをまとめて終わらせ始めた。

 

⑦ 法律相談の時、弁護士が、何の説明も無く、腕時計や壁の時計をやたら気にしていた。

 

⑧ 法律相談の時、自分が話している時間より弁護士が話している時間の方が長かった。

 

⑨ 法律相談の時、自分の考えを言ってみたら、法律や判例の説明もな く、真っ向から否定された。

 

⑩ 法律相談の時、相談内容と関係の無い肩書き(自分の出身高校名や  大学名など)を弁護士が積極的に聞いてきた。

 

⑪ 法律相談の段階で、「この訴訟(調停)勝てますよ!」など、勝訴や金銭の回収について、断定的な意見を弁護士が言った。

 

⑫ 法律相談をして、依頼するかどうかの判断材料として着手金の額や成功報酬の額・割合を聞いたが、弁護士がそれをぼやかしていた。

 

⑬ 相談後、「(頼むかどうかを)少し検討させてください。」と言ったら、自分が帰る時には、その弁護士はさっさと自分の席(部屋)に帰ってしまった。

 

⑭ 相談後、「少し検討させてください。」と言って帰ったら、その後、その弁護士から電話やメールで連絡があって、再相談やその弁護士が引き受けることを前提に訴訟・調停を強く勧められた。

 

⑮ 契約の時に、正式な「委任契約書」を作成しようとしなかった。

 

 ⑯ 「委任契約書」を作成したが、自分が署名とハンコを押す前に、契約書の概要についての説明が無かった。

 

⑰ 契約の時に、着手金の支払時期について、相談して決めるのではなく、一方的に弁護士が○月○日と期限を切って決めてきた(自分に経済的信用を欠く事情があった場合を除く。)。

 

⑱ 相談・契約した時の弁護士と、実際に担当する弁護士が違っていた。

 

⑲ 契約したとたん、急に弁護士と連絡をとるのが困難になった。

 

⑳ 契約後に、事務員に、弁護士からの折り返しの電話を依頼したけれども、何時までたっても折り返しの電話が無かった

 

㉑ 契約後に、弁護士と打ち合わせをしたが、今後の進め方が非常に分   かりにくかったり、自分が納得するまで説明してくれない。

 

㉒ 自分の要望を言うと、弁護士が、どうしてその要望が法的に難しいのか丁寧に説明せず、すぐに怒ったり、「辞任する!」と言う

 

㉓ 契約後に、弁護士が、こちらが裁判所や相手方に送付した書面(内容証明郵便・訴状・答弁書・準備書面など)・証拠や、相手から提出さ  れた書面・証拠コピーを、しっかりと渡してくれない

 


現在、私が思いつくチェックリストは以上です。

 

また気がついたら、随時、追加していきたいと思います。

 

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ドラマの見方と人権

寒い日が続き、風邪やインフルエンザも流行っているようです。

 

皆様もお体にお気を付けください。

 

先日、夕飯を食べながらふと見ていたドラマが色々と話題になっているようでした。

 

放送中止の要請をしている団体もあり、それを受けてCMを降りている会社もいくつかあるとのこと。

 

私は当初「そもそも、何が論点なんだろう?」と分かりませんでした。

 

どうも、色々とニュースなどを見ていくと、例えば、

 

養護施設に入所している子供の主人公のあだ名を(「赤ちゃんポスト」をもじって)「ポスト」としていることに対する抗議

 

施設の職員が子どもに暴言を吐いたり、ペット扱いするような、実際の養護実態とかけ離れた描写に対する批判

 

があるようです。

 

確かに、私も仕事関係で養護施設に行くこともありますので、テレビをつけた時には、違和感は感じました。

 

「昭和の初期~中期の時代をデフォルメしたものかな?」などと思って見ていたら、現代版のようなので、「これは無いな」と思って、チャンネルを変えました。

 

ただ、だからといって、「放送を中止しろ」「内容を変更しろ!」という意見には私は賛同できません。

 

あくまで「作り物」は「作り物」であり、私が見た限りでも、視聴率を狙った演出に過ぎず、別に差別意識や悪意をもって作られたものではないように見えました。

 

あとは、チャンネルを変えるか、変えないか、個人の好みの問題だと思います。

 

そもそも、自分だけの価値観で「差別や偏見を助長する」「子どもたちを傷つける危険がある」と一方的に判断して、「放送を中止しろ!」「内容を変更しろ!」と他人の表現の自由を奪うのはどうか、と感じます。

 

企業がCMから撤退してしまうと、放送内容の修正や中止にの方向に行ってしまいます。

 

本当にあのドラマを見て、養護施設の子供に「ポスト」というあだ名をつける子供がどれだけいるのでしょうか?

 

もし、いたとした場合、それを注意したり、議論させたりする大人は近くには居ないのでしょうか?

 

ドラマや映画を見て、人の過去のトラウマがフラッシュバックする危険のあるのは、今回が史上初のケースなんでしょうか?

 

そのような危険のあるドラマを、全て事前に修正・排除して、「誰一人傷つく危険の無いドラマ」だけが放映されるのが、私たちが望む世界なのでしょうか?

 

明らかに誰かを傷けたり、偏見をあおったりするものを除いて、「物語は物語、現実とは違う」という区別をつけて、フィクションもののドラマや映画を楽しみたいと私は思います。

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ヤミ金に倍返し?

クリスマスも終わり、昨日で仕事納めという方も多かったのではないでしょうか。

 

当事務所も26日から事務員には休みをとらせています。

 

私は、26日、27日でたまった仕事を片付けて、今日からゆっくり休養する予定でした。

 

ところが、仕事納め直前に限って、色々な仕事が入ってしまい、26日、27日と今日の午前中はその対応だけで終わってしまいました。

 

今、本格的に、たまった仕事の処理を始めたところです。

 

毎年、年末になると多いのがヤミ金がらみのご相談です。

 

今年も、例にもれず何件か飛び込んできました。

 

普通、ヤミ金というと、借りる側からは情報をできる限り集める一方、自分の方は携帯電話の番号と返済先の個人名の振込先口座しか知らせません。

 

当然、携帯電話も、振込先口座も、お金がどうしても必要な赤の他人を利用して、その他人名義で契約させて買い取ったものです。

 

そのため、携帯電話の契約をした人や振込先口座の名義人を詐欺罪で逮捕しても、その先にはなかなかたどりつけないんですね。

 

ところが、今回、飛び込んできた相談の一つに、珍しく、お金を貸す時に直接訪ねてきたヤミ金業者がいました。

 

そして、20万円を渡して、依頼者の方の住民票と印鑑証明書だけ持って行ったというのです。

 

訪ねてきたヤミ金業者が「A」と名乗っていたとしましょう。

 

Aは、依頼者の方に、

「また、利息だけ取りに来る。利息は1ヵ月で1割だ。」

と言って帰りました。

 

初めは、資金の必要性に急かされて考えられなかったのですが、その依頼者の方もしばらくたって、

「自分は、相当危険な筋の人からお金を借りてしまったのではないか」

と気がついて、私の事務所に慌てて電話をしてきたようでした。

 

相談を受けて、私が初めに思ったことは、

「自分で利息を取りに来たら、相当、間抜けなヤミ金か、資金力が無くて、飛ばし(無関係な他人名義)の携帯や通帳を手に入れられないヤミ金なんだな~」

ということでした。

 

そこで、本当に訪ねてくるのか試してみようと、私からAの携帯番号へ電話して、本当に来るつもりがあるのか聞いてみることにしました。

 

電話をかけた最初は、何か、脅しめいたことを言っていましたが、私が

「20万円全額は、今、私が預かっている。もし返して欲しいなら、○月○日に事務所に訪ねてきて下さい。静岡駅についたら必ず電話をください。」

と丁寧に言うと、Aは

「それでは、取りに行く」と言いました。

 

月1割の利息は、トイチ(10日で1割)ほどではありませんが、年間で120%となるため、2倍以上の返済を1年間でしなければなりません。

 

もちろん、利息制限法にも違反する利息の約束で無効ですし、貸金業の登録をしないで「業として」貸し付けを行っていれば刑罰ものです。

 

そこで、近くの警察署に連絡をして、事情を説明したところ、もし訪問してきたら刑事事件の捜査として協力してくれるということになりました。

 

当日、Aは本当に私の事務所に来ました。

 

私は半ば呆れながら、警察署に連絡をした上で、Aと話をしました。

 

依頼者は、Aから借りたと言っており、ヤミ金もAと名乗っていますが、刑事事件になるような行為を行う人間が本名を名乗るはずがありません。

 

そこで、私は、依頼者から「Aから借りた」と聞いているので、他の人に返す訳にはいかないので免許証など身分確認証を見せて欲しいと言いました。

 

すると、Aは猛烈にそれを拒否してきました。

 

そこで、「返せ」「返せない」などの押し問答をしているうちに、刑事さんが2人来てくれました。

 

おかげで、生の現場で、刑事による職務質問を見られて、とても興味深かったです。

 

詳しい内容は捜査の秘密に触れるので書けないのですが、さすがに刑事さんもプロだけあって、とうとう免許証を見させることに成功したんですね。

 

すると、免許証の名前は、予測通り「B」となっています。

 

そこで、私はすかさず、

「ごめんね。Aさんから借りたお金を、Bさんには返せないよ。」

と言ってやりました。

 

でも、その時点では、そのA=Bは、警察から逃げることに必死で、20万円の返済のことは頭から全く飛んでいる様子でした。

 

その後、確たる証拠も無いということで、その場での逮捕は無く、A=Bは帰って行きました。

 

その日の夜、そのヤミ金業者のリーダー的な者から、怒りの電話がかかってきました。

 

最後に捨て台詞で、

「20万円なんかいらねえよ。だから、これは民事で、警察は関係ねえからな。」

と吐き捨てました。

 

その時、私が思ったのは、この20万円を私や依頼者がもらってしまうことは、果たして正しいことだろうかということです。

 

もちろん、法律的には、もらってしまっても違法ではなく、何ら問題はありません。

 

むしろ「倍返し」で痛快という考え方もあろうかと思います。

 

しかし、「借りたものは返す」という当然のことを、法律を利用して、逆にA=Bから巻き上げてしまうのは本当に正しいことなのかと疑問を持ちました。

 

また、自分が刑事事件の弁護人の立場でA=Bを見た場合のことを考えました。

 

そうすると、A=Bは、目先の小金欲しさに、暴力団等の金主から金銭を借りて、利息の相当額を吸い上げられている単なる手先に過ぎないだろうなと推測できます。

 

そこで、私はそのリーダー的な男に

「いや、いや、今度は警察呼ばないから、Aと名乗った人が取りに来て下さい。依頼者に同席してもらい貸した本人を確認できたら、20万円全額返しますから。」

と言いました。

 

その後、Aから電話がかかってきて、来所することになりました。

 

依頼者と対面させて、本人だと確認できたので、事前に作成した和解契約書に署名をしてもらって、20万円を返しました。

 

私が朱肉を差し出すと、A=Bは、こちらが何も言わないうちから、慣れた草で指印を押してきました。

 

それを見て、私は、「ああ、前科があるから、よほど刑務所に入りたくなかったんだな。」と、思わず同情してしまいました(捕まって取り調べを受けると、被疑者・被告人は嫌というほど指印を押すので癖になるんですね。)

 

A=Bも、被害を最低限に食い止められたし、依頼者の方お金を受け取ること自体に恐怖を覚えていたようなので、Win-Winの結末でした。

 

もちろん、依頼者の方には、二度とこのような得体の知れない所からお金を借りないように注意しておきました。

 

本当は、たまった訴状をじっくりと作成するはずだった事務所の休日の時間が、これで大分潰れてしまったので、一番損をしたのは私だったのかもしれませんね・・・

 

借金問題ご解決方法についてはこちらをご参照ください。 

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葬儀費用を相続財産から出しても相続放棄できるの?

街もすっかりクリスマスの風景ですね。

 

私の事務所のある鷹匠商店街においても、各店舗で相談しあってポインセチアを置くようにしているようです。

 

私の事務所に入る所の階段にも、大家さんがポインセチアを飾っていただいています。

 

もっとも、私の事務所内は、世間の行事とは余り関係無く、何時もと同じ風景です。

 

仕事の性質上、「世間の行事どころではない」という方からのご相談が多いので、敢えて事務所内は、余り季節感や世間一般の行事の雰囲気を出さないようにしています。

 

さて、今回は相続のお話です。

 

亡くなった方が財産よりも遙かに多い借金を残してしまった場合、本来、相続する方(相続人)が、「一切の財産も借金も相続をしない」という手続をとることができます。

 

相続放棄」という手続です。

 

この相続放棄は、自分のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に手続を行わなければなりません。

 

そして、相続開始を「知った時」を立証するのは大変なので、私は何時も、亡くなられた日から3ヵ月以内に手続をするようアドバイスしています。

 

手続としては、相続放棄申述受理の申立を管轄の家庭裁判所に申し立てていくことになります。

 

ここで時々問題になるのが、相続放棄をするつもりだった相続人が、うっかりと亡くなった方の預金を死亡後に下ろしてしまった場合です。

 

この下ろしたお金を、相続人が自分の生活のために使用していたりした場合には、相続放棄はできなくなります。

 

なぜなら、亡くなった方の借金は相続しないけれども、財産だけは自分の生活費に使わせてもらうというのは虫が良すぎる話だからです。

 

では、相続人が自分のためではなく、亡くなった方の葬儀代を支払うために預金を下ろしてしまった場合はどうでしょうか?

 

これにも争いがありましたが、現時点では、社会通念上妥当な額の範囲であれば、葬儀費用に使用しても相続放棄をすることはできるとされています。

 

裁判例で問題となったケースは、相続人が亡くなった方の名義の預金を死亡後に解約して、亡くなった方の墓石購入費に使用したというものです。

 

確かに、墓石購入を含む葬儀行為は、死亡した方が執り行うものではなく、通常は遺族の誰かが「喪主」となって執り行われます。

 

とすると、被相続人の財産は借金の支払いのために残しておき、「喪主」が全ての費用を負担すべきようにも見えます。

 

しかし、亡くなった方に借金があるかどうかを知らない場合、遺族が亡くなった方の預金を利用して仏壇や墓石を購入することは自然な行動と言えます。

 

また、遺族が購入した仏壇及び墓石が社会的にみて不相当に高額のものと言えない場合には、購入を理由に相続放棄を否定するのは常識的な判断とは言えません。

 

そこで、このような場合には、仮に遺族が、仏壇や墓石の購入のために亡くなった方の預金を解約していても、その後に相続放棄はできるとされています。

 

ただ、無制限に認めると、葬儀費用と偽って、自分の懐にお金を入れようとする相続人が現れる危険があることから、社会通念上妥当な額の範囲にしばりをかけているということなんですね。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。 

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胃薬の処方が得意な医者?~弁護士の得意分野とは

ありがたいことに、最近は非常に忙しい日々を過ごしております。

 

平日は、朝から晩まで、殆ど、裁判所にいるか、ご相談・打ち合わせを入れており、土曜日もご相談が入るので、日曜日に何とかたまった仕事を処理している状態です。

 

お引き受けした事件は、1件、1件、大切にやりたいので、ご相談の予約のお電話をいただいても、対応できる日が2~3週間先になってしまい、ご迷惑をおかけしております。

 

この場を借りて、お詫び申し上げます。

 

さて、最近、近藤誠氏の本を興味深くよんています。

 

近藤氏は、1948年生まれの慶応義塾大学医学部の放射線科講師です。

 

経歴を見ると、慶応義塾大学の医学部を卒業した年に、その医学部の放射線科に入り、その6年後にはアメリカへ留学しています。

 

ここまでを見ると、放射線治療の医師として、エリート街道まっしぐらのように見えます。

 

ところが、1983年、35才の時に慶応義塾大学医学部放射線科講師になり、今年で65才になるのに、「講師」以上の肩書きの記載がありません。

 

本の紹介文には、ガンの専門家で「乳房温存療法のパイオニア」と紹介されているのに、肩書きは「講師」です。

 

慶応大学医学部を卒業と同時にそこの医局に入り、アメリカ留学までさせてもらった人が、65才にもなるのに「教授」でも「助教授」でもなく「講師」です。

 

近藤氏の本を読むと、その理由が何となく分かります。

 

とにかく、患者を食い物にする医師と製薬会社のシステムの問題点やがん治療の誤解について、切りまくっています。

 

しかも、「成人病の真実」という本では、権威ある医師たちの実名をあげて、徹底的に批判しています。

 

おそらく何冊か本を出されており、印税も入っていると思います。

 

しかし、おとなしく医師業界の慣習に従っていれば、地位も名誉も収入も、もっと楽に手に入っただろうと思います。

 

そこまでして、近藤氏を動かしているのは、「放射線の専門家としての矜恃」なのか、「単なる目立ちたがり屋」なのか。

 

近藤氏の持論を支持する医師が極端に少ないので、彼の持論について正しいかどうかの検証は難しいので、読者が自分で判断する余地は大きいでしょう。

 

そういう意味で、医学的な知識に乏しい私たちが、近藤氏の意見を全て盲信してしまうことはできないのかもしれません。

 

ただ、彼が何度も言っている「医師の意見を盲信することなく、患者自身が主体的に治療方法や投薬を選択すべきだ。」という意見には深く賛同できます。

 

というのは、同じ専門家として、弁護士の選択にも同じことが言えるからです。

 

近藤氏が嫌うのは、「患者は文句など言わずに専門家の言うことに全て任せておけば良い。」という医師の姿勢です。

 

弁護士にも同じことが言えると思います。

 

しっかりと依頼者に、法的観点からのメリット・デメリットを、法律用語ではなく、日常用語で分かるように説明し、主体的に選択をしてもらうべきだと私も思っています。

 

もし、弁護士が十分な説明も無く、一方的に方針を決めて、「専門家の判断に従っておけば良い」という姿勢をとっている場合には問題があると思います。

 

逆に、医師と違う部分で、依頼者が弁護士を選ぶ時に気をつけなければならないポイントがあります。

 

それは、ご相談される方が、宣伝にだまされやすい性質があることです。

 

例えば、皆さんは、開業医が

「胃薬の処方は得意なのでお任せ下さい!」

と広告を出していたらどうでしょうか?

 

「え?胃薬の処方しかできない医師なの?」と驚かれるのではないでしょうか。

 

ところが、弁護士業界では違います。

 

弁護士から見ると適正な広告と不適正な広告、その中間的な広告があるように思えます。

 

まず、

医療過誤事件のスペシャリスト!得意です。お任せ下さい。」

建築・不動産紛争のスペシャリスト!得意です。お任せ下さい。」

企業法務のスペシャリスト!得意です。お任せ下さい。」

著作権など知的財産権のスペシャリスト!得意です。お任せ下さい。」

のような広告は、ある程度信じてよいものだと思います。

 

何故なら、いずれの事件も、弁護士であるというだけでは対応が難しく、相当の勉強、経験、他の専門家との人脈などが必要な事件だからです。

 

弁護士になったからといって、一朝一夕に対応できる事件ではありませんので、正にスペシャリストを名乗るのにふさわしいと思います。

 

しかし、

過払金返還請求のスペシャリスト!得意です。お任せ下さい。」

借金問題のスペシャリスト!得意です。お任せ下さい。」

離婚事件のスペシャリスト!得意です。お任せ下さい。」

不貞行為慰謝料のスペシャリスト!得意です。お任せ下さい。」

相続事件のスペシャリスト!得意です。お任せ下さい。」

などという広告は、普通の弁護士なら笑ってしまうような広告です。

 

なぜなら、「私は専門家としては無能です」と言っているのと等しいからです。

 

もし、これらの事件を処理できないような弁護士がいるとしたら、それは熱意の欠如か依頼者の人生を受け止められない弁護士くらいでしょう。

 

スペシャリストを名乗るのは、知識の無い相談者や依頼者を騙してお金をとろうとしているとしか思えません。

 

以上の中間的な位置づけになる広告として

交通事故のスペシャリスト!得意です。お任せ下さい。」

刑事事件のスペシャリスト!得意です。お任せ下さい。」

などがあります。

 

交通事故は、確かに、後遺障害との因果関係が争点となっており、医学的な知識が必要な事案など、限られた事案では専門的知識が豊富な弁護士を選ぶ必要はあるでしょう。

 

ただ、多くの交通事故の争点は、過失割合や損害額の問題など、ちょっと勉強すれば対応できるものが多いので、もし宣伝するのであれば、おおざっぱに「交通事故が得意」などとすることには違和感があります。

 

また、刑事事件も、大きな事件を何件も扱っており、闘うことを得意としている弁護士は数少ないですがいらっしゃいます。

 

でも、そのような弁護士は、「私は刑事事件が得意です!」などという宣伝はしません。

 

なぜなら、別に宣伝などしなくても、そのような弁護士は有名ですから、事件が自然に集まるからです。

 

刑事事件も、交通事故と同じで、無罪を争うようなケースでは、戦い方に慣れている弁護士を選ぶ必要性は高いでしょう。

 

でも、無罪を争うケースは極めて少なく、刑事事件のほとんどは、被告人が自白している事件で、刑をどれだけ軽くするか、保釈を認めてもらうかなどが問題となっています。

 

そこでは、司法試験と司法研修所で習った法的知識さえあれば十分であり、後は、担当弁護士の熱意と行動力、人間性で決まる問題です。

 

ですから、私は、

無罪を争う刑事事件について得意としています!」

という広告があれば、なるほど、多くの無罪事件を争った経験がある弁護士なんだなと納得しますし、尊敬します。

 

しかし、

刑事事件を得意としています!」

という広告を見ると、被疑者・被告人やその親族の不安につけこんで

被疑者被告人への接見の回数で弁護士費用をカウントして、不必要な接見を繰り返して高額の弁護士費用をとっていないのかな?」

とか、

見込みの無い保釈申請被告人の親族に勧めて特別料金をとったりしていないかな?

という疑問がわいてきます。

 

私がこんな勝手な意見を書いて、近藤氏のように干されないかとご心配いただいた方もいるかもしれません。

 

でも、弁護士業界の良い所は、こんなことを書いても、私が弁護士業界から干されるということが無いところです。

 

弁護士は官公庁から監督を受けず、自分たちで監督を行っており、個人個人が自営業主です。

 

他人の営業のやり方に口出しをして干すということは、基本的に無いんですね。

 

皆さんも、弁護士を選ぶ時には広告の中身に十分注意して

「○○が専門!」

「○○が得意!」

という宣伝にご注意の上、主体的にお選び下さい。

 

なお、最後にこのブログでも日弁連の活動に、ちょっとだけ後方支援をさせてもらいます。

 

日弁連が、近日中に成立する可能性のある「特定秘密保護法案」に反対して各地で反対運動を起こしています。

 

ちなみに、私もこの法案には大反対です。

 

公務員の内情を知っている私には、この法案ができると、私たち国民が大切な事実を知る機会を失うことが嫌というほど分かるからです。

 

国民の選んだ議員ではなく、行政官僚の、しかも係長から課長クラスの人が、取り扱う書類にポンポン㊙のハンコを打っているのが現状です。

 

もし、この法案が通ると、私たち国民が選挙で判断をするためには知っていなければならない事実が、全く開示されなくなるおそれがあります。

 

長い目で見ると、それは極めて危険なことだと思います。

 

「弁護士のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。 

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刑事事件での「償い」とは?

以前もお話したかもしれませんが、私の趣味の一つにギターがあります。

 

小学校6年生の時に、ビートルズを聴いて衝撃を受けて、物置に放置されていた古いガットギターを、下手くそながら真似て弾き始めたのがきっかけです。

 

時は、アリスをはじめとした、フォークソング全盛期だったこともあって、色々なミュージシャンの曲を聴きました。

 

その当時から大好きなミュージシャンの一人にさだまさしがいます。

 

メロディーの美しさもさることながら、歌詞の一言一言の使い方や日本語の美しさは、自分が作詞する時にも大きな影響を受けました。

 

彼の作品の中に、「償い」という曲があります。

 

弁護士になってから改めて聞き直すと、本当に身につまされます。

 

月末になると、薄い給料袋の封も切らずに、走って郵便局へ行く「ゆうちゃん」が主人公です。

 

仕事仲間の多くは「貯金だけが趣味のしみったれた奴」と飲んだ勢いで言っています。

 

でも「ゆうちゃん」が郵便局へ行く理由は貯金ではなく、過去に起こしてしまった交通事故で亡くなった男性の妻への送金だったんです。

 

「ゆうちゃん」は、事故直後に、被害者の妻から「人殺し、あんたを許さない!」と言われています。

 

それでも、「ゆうちゃん」は愚直に、事故後、毎月欠かさず送金をしてきました。

 

その「ゆうちゃん」に、事故後7年たった時、突然、被害者の妻から手紙が届きます。

 

それには、こう書かれていました。

 

「ありがとう。あなたの優しい気持ちはとても良く分かりました。」

 

「でも、送金は止めて下さい。あなたの字を見るたびに、主人を思い出してつらいのです。」

 

「それよりも、あなたご自身の人生を元に戻して欲しい」

 

ゆうちゃんは、手紙の内容よりも、許されるはずのない人からの手紙をもらえたことで号泣します。

 

自動車運転過失致死事件の弁護は何度も経験していますが、本当に、つらいものです。

 

悪質な事案でない限り、普通の自動車事故で人を死なせてしまった場合には、一時的に逮捕されることはあっても、加害者(被疑者・被告人)はすぐに釈放されます。

 

いわゆる、「在宅事件」と言って、身体拘束を受けない状態で、取り調べや裁判を受けるんですね。

 

人を死なせているのに、身体を拘束されないのは意外に思われるかもしれません。

 

でも、「故意」に起こした訳では無く「過失」の結果起きた事件であることや、普通に仕事をしている人が加害者になることも多いので、逃亡や証拠隠滅の恐れが少ないとして、拘束されないことが多いんです。

 

そうすると、弁護人は、当然、被害者の人生で最も大切な人を死なせた張本人を連れて、一緒に、謝罪に行く段取りをとらなければならないのです。

 

例えば、窃盗などで被害が弁償できる場合で、被疑者・被告人が身体拘束されていれば、弁護士が代わりに被害の弁償と謝罪に行くこともあります。

 

もっとも、そのような場合には、被害者の方から厳しい言葉を言われることがあっても、加害者張本人ではないし、お金の問題ですから、最後は「まあ、あんたに言ってもしょうがないんだけど」ということで止まります。

 

ところが、被害が深刻な上に、なまじ、在宅事件だけに、被害者の方にとっては、最も神経を逆なでするかもしれないことを弁護人がしなければならないんです。

 

もちろん、被害者の方に、連絡することや、実際に会っていただいて、加害者と一緒に厳しい事を言われるのはつらいです。

 

でも、会っていただけない時にも、とてもつらい気持ちになることもあります。

 

お電話をした時に、疲れた声で「会っても何も変わらないから・・・」と言われてしまうと、遺族の方が本来的に優しい方なんだと推測できます。

 

そして、その優しい方の一番大切な人を死なせてしまうという交通事故の恐ろしさを、ひしひしと感じます。

 

本当に「償い」きれないことが起きてしまったんだと思い知らされます。

 

中には、実際に会っていただいて、謝罪した後に、「その人(被疑者・被告人)にも仕事があるんでしょうから・・・」と言っていただいたことがあります。

 

その時には、本当に涙が出てきそうで、慌てて「失礼します」と言って帰ってきてしまいました。

 

自動車死亡事故の恐ろしい所は、被害者にも、加害者にも、そして遺族にも何時なるか分からず、その確率が相当に高いことです。

 

民事賠償という意味でのお金での「償い」は、任意保険でカバーできるでしょう。

 

しかし、遺族に刻みつけられた傷への「償い」は、いったいどうしたら良いのか分かりません。

 

「ゆうちゃん」みたいに、愚直にお金を送り続けるのが良いのか、黙って月命日に事故現場に花束を置きに行くのが良いのか。

 

そして、加害者自身に刻みつけられた傷への償いは・・・

 

正解はないんでしょうね。

 

ただ、交通死亡・傷害事故が1件でも減ることを祈るのみです。

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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