相棒は愛猫

こんにちは。弁護士の谷川です。

 

私が動物好きだというお話は以前もしたと思います。

 

特に、一緒に生活ができる、犬・猫・鳥には目がありません。

 

現在も、ラブラドールレトリバー1頭と雑種の猫1匹、アメリカンショートヘア1匹の合計3匹と一緒に暮らしています。

 

生まれつき動物は好きでしたが、更に大好きになったのは素晴らしい動物たちとの出会いからです。

 

小学生の頃の友達の家の柴犬との出会い、とても賢い文鳥との出会い、そして、心から信頼できる相棒だった猫との出会いが私を動物好きへと導いてくれたのです。

 

そのうちでも、特に忘れられないのは、相棒猫との出会いでした。

 

私が大学を卒業して静岡県庁に入庁してわずか3ヵ月で、私の父が突然死してしまいました。

 

52才という若さでした。

 

無くなった年齢の若さや、予測できない死亡という結果からショックも大きかったですし、まだ妹が大学3年生だったので、その将来も考えてやらなければならず、私は仕事から帰ってくると、落ち着いて部屋にいられず、深夜に一人で考え事をしながら散歩するのが日常となっていました。

 

すると、当時あったイチジク畑の脇に拳ほどの大きさの真っ白な塊があるのが目に飛び込んできました。

 

「何だろう」と近寄ってみると、真っ白な毛にブルーグレーの瞳、ピンクの耳をした絵本から抜き出てきたような子猫でした。

 

しばらく、絶句して見ていると、その子猫は一言も鳴かずにジーッと私の目を見ています。

 

私は、その子猫の前にキャンプで使うような紙皿が置いてあり、わずかばかりのドライのキャットフードが置いてあるのに気がつきました。

 

後から調べて分かったのですが、子猫のときは目の中にある虹彩という部分に色がしっかりとついていないため、ほぼすべての子猫は、その目は薄く濁ったような「あい色」になっているそうです。

 

これをキトンブルーと呼び、それは生後20日前後から薄れていき、本来の目の色になっていくそうです。

 

そうすると、その子猫は少なくとも生後1ヵ月以内に捨てられたものだと推測されます。

 

その年齢の子猫がドライのキャットフードを食べられるはずもなく、おそらく捨てられてから全く何も口にせず、全世界を恐怖の対象と見ていたのでは無いかと思います。

 

私が、見つめ合いに負けて、その子猫を両手の平ですくい上げたとたん、私の目をみながら、か細い声で何度も「ニャー、ニャー」と鳴き始めました。

 

よほど心細かったのを我慢していたんだろう」と思わせる鳴き声でした。

 

もう、こうなってしまえば、捨てることはできません。

 

自宅に連れて帰って、母親に説明して飼うこととなりました。

 

キャットミルクなどという上品なものが無かった時代ですので、私が牛乳を生暖かく温めてあげると、嬉しそうに飲んでいました。

 

だんだん、彼(雄猫でした)の目の色はブルーグレーからエメラルド色に変わりましたが、真っ白な美しい毛並みとピンクの耳と肉球はそのままでした。

 

もちろん、捨てられていたのですから、雑種の日本猫なんですが、私が「相棒」として今も忘れられないのは、彼の聡明さと優しさ、そして私だけを特別扱いしてくれたことです。

 

母親も私と同じくらい猫かわいがりをしていたのですが、なぜかいつも私のそばにいました。

 

私が帰ってくるのを待ち構えていて、下駄箱や廊下の影から飛びかかってじゃれてきたのを今でも思い出します。

 

冬は、私が風呂から出てくるのを洗面所で待っていて、「相棒、分かってるだろ、早く座ってくれよ」とばかりに鳴いて要求してきます。

 

私が自分の部屋へ行って座ると、お風呂で私の体が温まっていることを知っているため、すぐに膝の上に寝てゴロゴロ言っていました。

 

何千時間、彼を膝の上にのせて何百冊の本を読んだか数えきれません。

 

また、肩こりの時に、肩に当てて振動させて肩こりを和らげる電動マッサージ器を使っていると、必ずそばに来て、「俺も肩こってるんだけど」とトントンと私の腕を肉球で叩いてきます。

 

「まったく、しょうがないな~」と言って肩に当ててやると、全身を床に伸ばして目を細めてゴロゴロ言っていました。

 

そして、彼は非常に平和主義で、家族の喧嘩を止めに入ってくれました。

 

家族で喧嘩していると、座っている私の肩に両手を乗せ、私の耳の側で「相棒、喧嘩はみっともないぜ」とばかりに、大きな声で鳴いてきます。

 

そして、泣いている人がいると、その涙を舐めに行ってあげていました。

 

私が、「彼は猫だけれども、自分より器が大きいな」と感心した一例です。

 

とにかく、自分で考えて動く猫で、その考え方が優しくて聡明なのです。

 

他にも、交通事故が怖いので、時々ヒモをつけて庭に出してやっていたのですが、自分が出たい時には、そのヒモをくわえて玄関まで持って行って、家族を呼んだりしていました。

 

常に、私に対して、面白くて大切なメッセージを発信してくれていたので、ペットというレベルで考えることは出来ず「相棒」と呼ぶにふさわしい存在でした。

 

「あんなに聡明で優しいネコは見たことがない」というのが家族全員の共通意見でした(母親は実家で5~6匹のネコを飼った経験があります)。

 

これで、私に「ネコ好きになるな」というのが無理な話です。

 

彼を高齢と病気の併発で失った時には、心の一部が死んでしまったような寂しさを覚えましたが、ペットロスに至らなかったのは、彼と会わなければ、あのような暖かくて楽しい時間は持てず、父親の死を乗り越えることが、より大変な作業になっていたからです。

 

彼を失って15年以上たちますが、彼の勇姿は私の心の中にしっかりと残っており、これは一生の宝物として失うことは無いでしょう。

 

P.S.何か懐かしくなって、アルバムを探したら1990年当時の相棒の写真が出てきました。写真を更に撮影したので画像は粗いですが自分の記念のためにアップしておきます。 

出会った時から、人の目をじーっと見るのが癖でした・・・

出会った時から、人の目をじーっと見るのが癖でした・・・

 

 

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不動産のトラブルに要注意

ウインドゥズ10がリリースされましたね。

 

ウィンドウズ8からは、無料でバージョンアップできるとのことらしいです。

 

実は、ウィンドウズ8になって、多くのネコ好きが困っていることがあります。

 

ピンと来た人も多いかと思います。

 

ネコはマウスポインタにじゃれるのが大好きなんですね。

 

ウィンドウズ7までは、キーボードさえネコの攻撃から避難させれば、パソコンを打てましたが、あのタッチパネル!

 

そうです。

 

ネコがデスクトップのマウスポインタを肉球で追っかけてタッチして、次々と違うページへ移動してしまうんです・・・

 

そうまでして、どうしてネコを追い払わないのかですって?

 

それは、もちろん嬉しかいからです(笑)

 

例えて言うなら、30年前の外国車をわざわざ買って、「電装系が弱い」「クラッチが重くて足が痛い」などと文句を言いながら、嬉々として運転している自動車マニアと似た心境のような気がします。

 

それぞれ、とことん好きなものには、その種類の人にしか分からないものがあるのでしょう。

 

さて、私は宅地建物取引主任者(今後「宅地建物取引士」という名称になるそうです。)が、主任者証を更新する際に受講しなければならない法定講習の講師をしています。

 

そこでは、伝統的なものから、最近のものまで、不動産に関するトラブルの裁判例について解説して、主任者の方々にアドバイスをしています。

 

せっかく、講義をするために勉強しているので、これからすこしずつブログやHPにフィードバックしていきたいと思います。

 

気になる不動産に関する裁判例を題材に、分かりやすくご説明していければと思います。

 

不動産の売買で争いになるのは、やはり「隠れた瑕疵」の責任追及の問題でしょう。

 

民法では、購入した一定の物について、通常の注意を払っても発見できない欠陥(隠れた瑕疵)がある場合には、買主は解除して代金の返還を請求したり、損害賠償請求したりできるという制度があります。

 

これが不動産になると、その損害も場合によっては億単位になるので、訴訟まで紛争が長引くことが多いんですね。

 

例えば、皆さんが、家を建てようと思って土地を購入したら、家を建てる際に土壌の検査をしたところ、鉛や体に危険な廃油があることが発覚したとします。

 

この場合に、皆さんが解除できるかどうか、損害賠償する場合の金額は、事前に売主の素性をどの程度知っていたか、不動産業者から検査を進められていたかなど個別の事情によって異なります。

 

売主が機械の解体業を行っている業者で、その作業場を更地にして買い受けたのであれば、それを知っている買主にもある程度の調査義務が生じます。

 

この点を重視すると、皆さんの損害賠償請求金額は一定の減額をされる余地があります。

 

もっとも、仲介業者である不動産業者にも契約書の中の「重要事項」として説明する義務がありますから、皆さんとしては、売主だけでなく、仲介業者に対しても責任を追及することができるケースがあります。

 

結局、不動産を購入する時に、同じ物は世に一つとして無いので、過去の個別の紛争事案を見ながら、新たな紛争の解決を推測していくことになります。

 

どのようなトラブルが起きやすいか、その場合の対処方法を、消費者の視点と不動産業者の視点両方から書いていくようにしたいと思います。

 

「不動産のトラブル」の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 不動産のトラブル |

遺産分割調停でのお約束

襲撃されたフランスの風刺週刊誌シャルリエブド誌の新刊を買うために行列ができたようです。

 

その1面には、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画が書かれているとのこと。

 

偶像崇拝を基本的に禁止するイスラム教にとっては、ムハンマドの絵を描いて出版すること自体、犯罪的な行為と受け止められるようです。

 

これに対して、過去の歴史を見ると、フランスにおける風刺やユーモアの概念は、日本のそれとは大分違うようです。

 

なかなか判断は難しいですが、イスラム教徒全てを敵にまわしかねないやり方は、新たな犠牲を生む危険を増加させるので、個人的には残念に思います。

 

さて、遺産分割調停を申し立てる場合、調停委員の頭の中では、次のような手順ができあがっています

 

この手順を知った上で、調停に臨むのとそうでないのとでは、やりやすさが大きく違うので、参考にしていただければと思います。

 

① 遺産分割調停申立書に記載された当事者が相続人全員と一致しているか 確認する。

 

② 各相続人の相続分(例えば2分の1とか4分の1など)を確定する

 

③ 申立書に記載されている遺産目録が、全て被相続人の権利であるか、漏 れが無いかを、出頭した当事者に確認する。

 

④ 上記③で確認した被相続人の遺産を、金銭でいくらになるのか評価する。

 

⑤ 特別受益(とくべつじゅえき)があるか、あった場合の金額を確定する。

 

⑥ 寄与分(きよぶん)を定める処分の調停申立がなされている場合には、その寄与の有無・程度を確定する。

 

⑦ 上記⑤⑥により、遺産についてプラス・マイナスをして、各相続人の取得する具体的な財産の金額を確定する。

 

⑧ 上記⑦の金額に合うような形での遺産の分け方を決める。

 

以上のような基本的な段取りを、調停委員は予定しています。

 

なお、「特別受益」とは、例えば、相続人の中に、1人だけ被相続人から、家を建てる時に1,000万円の援助を受けている人がいる場合には、その1,000万円を相続分の先払いとして扱おうとする制度です。

 

また、「寄与分」とは、被相続人の生前に、その遺産の維持・増加について、特別の寄与をした人は、その分を余分に相続させようとする制度です。

 

ただ、これは「特別」の寄与でなければいけないので、中々、多くの皆さんが思っているほど調停や審判では認められないのが現実です。

 

①~⑧の内容については、また機会を持って、くわしくご説明していきたいと思います

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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遺産分割調停での中間合意にご用心

「ひざまずいて生きるより、立って死ぬ方がいい」

 

襲撃されたフランスの風刺週刊誌シャルリエブドの編集長の言葉が、献花とともに捧げられたそうです。

 

自分達の手で自由を勝ち取ったという国民の意識は脈々と受け継がれているのでしょう。

 

また、献花に来た市民の声。

 

「ヒステリーを起こしてはならない。」

 

事件後、モスクを襲撃したり、アラブ系の国民の就職をより困難にすることが続けば、事態はなお深刻になってしまいます。

 

テロ行為に屈しないことは、とても大切です。

 

もっとも、それを「イスラム=悪」という集団的な図式でとらえてしまうと、個々の罪なき人々まで「正義」という名の下に断罪することになってしまいます。

 

「テロに屈しない」という姿勢をもちつつ、事件の根底にある社会差別・高い失業率を改善していくことが、これから必要になると思います。

 

現在、立てこもっている被疑者2名についても、決して「殉教者」として死なせることなく、身柄をしっかりと確保して、正式な裁判手続で、本人たちにもしっかりと考える機会をあたえた上で、刑罰を科すべきだと、私は考えます。

 

さて、今回は、遺産分割調停で、時々行われる「中間合意」のお話をしたいと思います。

 

「中間合意」が行われるのは、遺産分割調停が、他の調停と比べて長引くことが多いことが原因です。

 

親族同士でいろいろな思いがあり、それが夫婦のように1対1ではなく、3人以上の親族が複雑に対立しあうので、その性質上、離婚調停より長引きます。

 

そうすると、家庭裁判所としては、一旦、全員が合意したことはその時点で確定させ、それを前提に調停を進めていくことになります。

 

それが後で覆されてしまうのでは、何時までたっても調停が終わらないからです。

 

そのために利用される手続が「中間合意」です。

 

何か、「中間合意」という名前からすると、一時的な合意で拘束力が無いように思えます。

 

しかし、「中間合意」の内容は調停調書という書面で全員が合意した事項として記録されますので、後で意見を変えると、「言うことがころころ変わって手続を遅延させようとしている」と、周囲から怒られます。

 

ですから、調停での「中間合意」にも、事実上、当事者を拘束する力があります

 

また、調停で「中間合意」をしていた場合には、当然調書がある以上、裁判官は審判に移行した後も、全員に「中間合意」に異論が無いことを確認します。

 

そこで、異論を唱えると、一旦合意したことにどうして異論を唱えるのか、厳しく理由の説明を求められます。

 

そこで、合理的な理由が説明できないと、やはりただのクレーマー扱いとなってしまいます。

 

そして、最終的な審判も、調停での「中間合意」を基礎にして行われることがほとんどどです。

 

そうすると、「中間合意」には、審判期日で認めればもちろん、認めなくても当事者を拘束すると考えておいた方が良いでしょう。

 

ですから、調停の途中での合意だとしても、それが最後まで自分が動かすことのできない事実となってしまいますので、調停を成立させる時と同じくらい慎重に判断して、意見を言う必要があります。

 

少なくとも、弁護士をつけないで遺産分割調停を続けてきた方は、中間合意をする前に、有料でも良いので弁護士に時間をとってもらって、じっくりと相談することが必要だと思います。

 

安易に「中間合意」に応じて、後で後悔しないようにご注意ください。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。 

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先生は何が専門ですか?

今年ももう終わりですね。

 

皆さんは、どのような年を過ごされたでしょうか。

 

私は相も変わらず忙しい日々でしたが、「大学や講習などで、役に立つ法律知識を面白く伝えたい」という昔からの目標を一つ達成できた年でした。

 

私のブログも開始から6年目に入りました。

 

ここまで続けてこられたのも、読者の皆様のおかげです。

 

これが、今年最後の更新となりますが、来年も、このブログをよろしくお願い致します。

 

さて、

 

「先生は何が専門ですか?」

 

ご相談される方から良く聞かれる質問です。

 

自分の仕事を見てみると、まず何と言っても

 

① 離婚事件

② 相続が絡む事件(遺産分割・預金の無断引き出しなど)

③ 債務の問題についての事件(債務整理・自己破産・個人再生)

が多いです。

 

次に多いのが

④ 不動産に関する事件

⑤ 中小企業や各種団体の取引に関する問題・労働問題・顧客とのトラブルの対策や交渉・解決

のお引き受けです。

 

おそらく、昔、サラリーマン時代に、会社などの経理調査の仕事を3年間やって、会計帳簿や伝票類を見慣れているのが、会社の問題を扱う時に役に立っているように思えます。

 

このような問題を扱う場合、訴訟前の交渉段階での解決を、私自身は目指していますし、比較的得意な方だと思います。

 

また、私が、宅地建物取引主任者(資格を持つ不動産業者)の方々に法律で義務づけられている講習の講師をしていることから不動産の事件を扱うことは比較的得意としています。

 

そして、

⑥ 金銭に関するトラブル(債権回収など)

⑦ 交通事故

⑧ 刑事事件

が、同じくらいの比率で入ってきます。

 

ですから、これらの事件については、経験も多いし、事件の先を読むことができるので「経験がある弁護士」と言っても良いかもしれません。

 

その他には、子供の頃から機械いじりが好きだったので、産業機械を含む機械のトラブルの事件をよく扱っています。

 

私が中学生の頃の技術の課題で、「何でもいいから機械を作る」というものがありました。

 

トランジスタラジオ(古いですね)のキットを使ってラジオでも作っておけば良いものを、個別に部品を買い集めてきて、50W×2のステレオアンプ作製にチャレンジしたことを覚えています。

 

自分のお小遣いから1万円(現在では3~4万円くらいだと思います)もかけて部品を買い集めました。

 

皆が格好良い完成品を発表する中、私の作品はお菓子の缶の中にトランスや様々な部品がゴチャゴチャ入って、訳の分からない配線が並んでいる不格好なものでした。

 

発表では、皆の注目の中、技術室のスピーカーにつなげて音を出すテストをしました。

 

ところが、どう頑張っても音が全く出ません・・・

 

ガッカリでした。

 

友達たちからは

「1万円も出して鳴らないアンプ!(笑)」

と相当からかわれた記憶があります。

 

ただ、先生が配線と部品を1個1個確認していって、「惜しかったな」と言いながら面白そうにいじっていたのが救いでした。

 

何故か、その学期でも技術は「10」がついてきました(ちなみに、美術は10段階で3でした・・・)。

 

チャレンジ精神を買ってくれたのでしょう。

 

そのような経験を経てきたので、今でも「機械もの」の訴訟をお引き受けすると目が光ります。

 

例えば、中小企業の製作する複雑な装置の構造の欠陥が争いになったり、交通事故で自動車やバイクのメカニズムから様々な推定ができる事件で、色々と調べたり、推論したりすることは、夢中になってやってしまいます。

 

相手の弁護士から、「機械の分野が専門なんですか?」と聞かれたことも何度かあります。

 

そうすると、私に向いている訴訟は、機械の欠陥などが争点となっている訴訟ということになります。

 

主観的には、本・音楽の中毒者なので、著作権侵害が問題となる訴訟をやってみたいという気持ちは強いです。

 

しかし、以前にもお話した通り、「好きなこと」を仕事でしてしまうと、「好きなこと」をやるときにすぐに法律とつなげて考えてしまい、趣味を失うのではないかとの恐怖心があります。

 

音楽を聴いていて、「このパクリは著作権侵害の判例上、まずいんじゃないか」などという発想が出てきたらちょっと残念ですもんね(笑)

 

幸い、機械に関する訴訟は、会社からのご縁が多く、結果的に数多くこなしている反面、著作権侵害訴訟は、静岡ではビジネスとして成り立つのは難しく、ご相談は時折受けるものの、訴訟は1件も経験がありません。

 

冒険はしてみたいのですが、趣味は失いたくないという難しいところです。

 

まずは、機械分野や、経験の多い分野について、更に深く理解したり、新しい制度や判例を勉強したりして、現実的にお役にたてる方法を探していきたいと思っています。 

 

それでは、皆様、良いお年をお迎え下さい。

 

「ご報告や雑感」のブログ過去記事についてはこちらへどうぞ。

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ワンクリック詐欺にご用心

最近、「寄生獣」という日本映画を観に行ってきました。

 

15年ほど前にマンガで読んで、面白かったので、映画化に興味がありました。

 

ストーリーを簡単に言うと、地球外から入ってきた生命体が、人間の体に寄生し、その人の脳を全て食べ尽くしてその人間を支配するというものです。

 

脳まで支配された人間(といって良いかどうか)は、クビから下は人間の構造を保ちますが、頭部は全て寄生生物の支配下にあり、人を殺して食べて生命を維持するというものです。

 

ところが、主人公は右手から寄生されそうになった時に必死に脳への進入をイヤホンコード(マンガではヒモだったような記憶がありますが)で縛って防いだため、右手のみが寄生されることになりました。

 

主人公が寄生された右手(名前は「ミギー」)と話をする場面などは、コミカルな部分や人間と他の知的生命体との会話という部分で非常に楽しいです。

 

主人公がミギーに「悪魔!」とののしると、「悪魔」という言葉を知らなかったミギーは知的好奇心から、大量の過去の文献などから「悪魔」という言葉の意味を理解しようとします。

 

そこで出た結論が、

 

「悪魔という言葉に一番近い生物は、やはり、人間だと思うぞ」

 

というものでした。

 

このように、人間という種の存在を「自分は人間だ」という意識を捨てて、客観的、

 

俯瞰的な目で見ることができるのも、ストーリーの質の高さだと思います。映画の内容も、マンガの良さを損なわないように作られていることや、CG技術の発展で、違和感無く見ることが出来て、良かったです。

 

まだ、前半だけのようですので、後半が楽しみです。

 

さて、年末もおしせまってきましたが、このような時期になると増えるのが、ヤミ金騒動と消費者詐欺事件です。

 

先日も、静岡市消費生活センターと弁護士会、その他の団体と連携して、JR静岡駅前で、消費者事件についてわかりやすいパンフレットを配布して、詐欺などにあわないように呼びかけてきました。

 

最近ご相談を受ける詐欺事件では、やはりインターネットでのワンクリック詐欺も多い案件です。

 

インターネットでの詐欺は、「18才以上の方はここをクリック」のような文字が書かれていて、そこをクリックしただけで、会員登録され高額な料金を請求されるというものです。

 

その下の方に小さな文字で、「クリックした場合には会員登録され年間契約料が発生します」などと書かれています。

 

しかし、まず、インターネットの仕組みとして、クリックしただけでは、相手は皆さんのIPアドレス等が分かるだけで、名前も住所も電話番号も分かりません。

 

これを知るためには、他の情報と併せて、皆さんが契約しているプロバイダ、例えば、BIGLOBE、OCN、So-net、Yahoo!などに情報開示請求をしなければ分かりません。

 

そして、プロバイダは、弁護士からの照会でも簡単には契約者情報を明かさないので、名前も知らないような業者に情報開示することは絶対ありません。

 

スマホの場合にも、同じことが言えますが、違法なアプリをダウンロードしてしまった場合には、携帯の中の個人情報が盗み取られる場合があります。

 

アプリのダウンロードは、信頼できる販売先(アップルのストアやアマゾンなど)だけからするのが無難だと思います。

 

ですから、クリックした後、「料金が発生しました!」というような大きな文字が出たとしても、無視してしまって構いません。

 

法律的にも、何の義務も無いので、大丈夫です。

 

次に、問題は、自分の氏名・住所・電話番号・職業などの個人情報を入力してしまった場合です。

 

この場合には、お近くの消費者センターや弁護士の無料相談を利用しましょう。

 

実際に業者から請求が来ている場合には、特に急いでご相談ください。

 

様々な法律が整備されており、「有料です」という文字が画面のどこかに書かれていたとしても、契約の無効を主張できるケースが多いので、諦めないで下さい。

 

一番良く無いのは、怖くなって相手業者に自分から連絡してしまうことです。

 

海千山千の業者から、無用なお金をむしり取られることは確実です。

 

しかも、そのようなことをすると、皆さんの個人情報には「ガードが甘い、脅せば金になる消費者」というプレミアムがついて譲渡されていく危険性があります。

 

「この消費者からは金をとることができない」

 

と分からせることで、一旦流出してしまった個人情報でも、業者にとって無価値なものとさせて、間接的に情報の拡散を防ぐことができるのです。

 

消費者問題は、お金を支払う前までが勝負です。

 

一度払ったお金は戻ってくる確率が極めて低いです。

 

十分にお気を付けください。

 

消費者被害の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。 

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カテゴリー: 消費者の被害 |

「性格や価値観がイヤ!」で離婚は有り?

「生理的にイヤ」

 

男性としては、女性に最も言われたくない言葉ですよね。

 

ただ、少なくとも離婚訴訟まで来ている夫婦の場合、妻の方はほとんどの方がそのような状態になっています。

 

でも、妻が夫を本当に嫌っていても、

 

「性格の不一致で普通の夫婦喧嘩の範囲で言い争う生活が続いている」

 

というだけでは、裁判まで戦って離婚を勝ち取ることは難しいです。

 

裁判まで争うということは、夫は別れたくない訳です。

 

それを無理矢理別れさせるには、相当の理由が必要なんですね。

 

では、どの程度の性格の不一致があれば、裁判で争って離婚が認められるのでしょうか。

 

これは、「性格の不一致」という離婚事由が法律では定められていないため、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるかどうかで判断します。

 

そこで、夫婦の間にどのような価値観の違いがあったか、別居期間はどれくらいか、別居期間の夫婦の関係などから、「本当に修復不可能な程度に破綻しているか」を客観的事実から判断していくことになります。

 

別居期間が約2年で、性格の不一致での離婚が認められなかった東京地裁の判決には次のようなものがあります。

 

夫も妻も内科研修医の時に知り合い、夫は夫と妻の収入を一つの口座に入れて管理して、二人で相談しながら使っていきたいと思っていました。

 

でも、妻は一々自分の出金をチェックされるのが嫌で応じませんでした。

 

夫は、自分が頑張って稼いでいき、妻は医師をやるものの、夫ほど仕事に専念せずに家庭のことをやって欲しいと考えていました。

 

そのような中、夫は大学院に進学を希望し、合格しました。

 

その後、妻が大学院へ行きたいと言うと夫は、大学院まで行ってしまったら、家事に専念できなくなると考えて反対しました。

 

それでも、妻は夫の反対を押し切って大学院に進学しました。

 

それを見て、夫は、家庭に対する価値観が違うと考え、自分が家を出て行く形で別居しました。

 

夫は、別居後、妻は自分を同じ医師のライバルと見ており、夫婦の関係を取り戻すことは不可能だとして、離婚調停→離婚訴訟を提起しました。

 

これに対して、妻は、夫との結婚生活をまだ望んでおり、「夫が戻るのであれば、大学院を退学しても良い」とまで言いました。

 

これに対して、判決では、

 

夫の言うほど妻に悪い点があったとは言えないし、妻の関係修復への努力の意思を見ると、現段階では婚姻関係が破綻していない

 

と判断して、夫の離婚請求を棄却しました。

 

平成17年の判決ですから、価値観が変わるほど古い判決ではありません。

 

この判決で「現段階では」と留保しているのは、やはりこのまま別居期間が相当期間続けば、修復不可能と判断することになるのでしょう。

 

結局「性格の不一致」を主張する側は、自分の中では修復不可能と思ってはいるのでしょうが、相手が離婚を拒絶する場合には、相当の事情が必要ということです。

 

まだ、別居期間だけで離婚を認めるのが難しい昭和の時代に「性格の不一致」を理由に離婚を認めた東京高裁の判決があります。

 

結婚1週間後の夫婦喧嘩で、口論になったら、妻がヒステリー性発作を起こして失神してしまいました。

 

その後も、2年半の間に、夫婦喧嘩の時に約8回、ヒステリーによる失神をしました。

 

夫としては、高い水準の知的生活を希望していたのに対し、妻は平凡な家庭で良いと考えて、夫からみると低級な趣味に講じていたのが、許せなかったようです。

 

その後、夫が妻と別れたくなって、離婚の話をすると妻はヒステリー性発作を起こし、失神するようになりました。

 

夫は妻との結婚生活に絶望し、完全別居した上で、離婚調停→離婚訴訟を提起しました。

 

しかし、妻は夫に対する愛情を失っていないとして、離婚を拒否しました。

 

こんな事例でも東京地裁は、まだ夫婦関係は破綻していないとして、夫の請求を棄却しました。

 

しかし、夫は東京高裁まで争い、そこで離婚を認めてもらったんですね。

 

夫は東京大学文学部(文Ⅲ)を卒業し、朝日新聞社に優秀な成績で入社したという経歴もあって、クラッシックや文学などについて、対等に議論できる相手を求めていたようです。

 

これに対して、夫から見て低級な妻の趣味というのは、判決書にも具体的に書いていないので、何なのか分かりません。

 

確かに、これを例えば「TVのバラエティ番組ばかり見ている」とか、「マンガしか読まない」とか具体的に書いてしまうと、「低級」とは何だ!と袋たたきに合うのを恐れたのかもしれません(笑)。

 

自分に照らし合わせてみると、TVは見ますが、サッカーの試合とか、特定のドラマを選んで見る程度なので、週に多くて2時間程度です。

 

多分少ない方でしょう。

 

これに対して、本やマンガは良く読みます。

 

純文学・哲学書・法律書・推理小説・その他ミステリ物・SF・経営書など本と名のつくものは、何でも読みます。

 

マンガも相当数読んでいると思います。

 

青年・少年マンガはもちろん、少女マンガまで読んでしまいます。

 

「アオハライド」・「きょうは会社休みます」・「俺物語!!」とか(笑)

 

私にとって「あしたのジョー」は、太宰治の「人間失格」、カフカの「変身」、東野圭吾の「容疑者Xの献身」などなどと同じくらいの衝撃を与えてくれましたので、名作のマンガを生み出す作者を心から尊敬しています。

 

結局、趣味というものは、理屈抜きで好きになってしまうので、これは「低級」とかそういう問題ではなく、合うか、合わないかだと思います。

 

夫婦で趣味が違っても良いとは思うのですが、「これだけは許せない」というポイントを誰しも持っていて、そこにズレが出ると一緒に生活するのは難しいですよね。

 

そこに引っかかってしまうと、結婚生活が地獄になってしまうので、気をつける必要があるのでしょうね。

 

離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。 

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カテゴリー: 離婚のお話 |

私はDVを絶対にしない!?

先週の日曜日は、ジュビロ磐田がJ1に上がるための試合(プレーオフ)が行われて応援に行きました。

 

試合の結果は、ロスタイムに相手チームのゴールキーパーに点を取られて逆転負けするという、私にとってはショッキングなものでした。

 

日本リーグ時代からヤマハのファンで、バイクもヤマハのバイクに乗っていて、楽器もヤマハ製を良く買っていたので、本当に残念で言葉もありません。

 

来期は、今年の湘南にように、ダントツの1位でJ1に昇格して欲しいです。

 

そして、今日は、私にとっては、もう一つ大切な試合があります。

 

清水エスパルスのJ1残留をかけた戦いです。

 

チケットは完売だそうですが、私は「昔からエスパルスは土壇場で弱いから(シルバーコレクターと揶揄された時代もありましたので)、最終節までもつれる可能性は十分にある」と予測していました。

 

相当早めにチケットをファンクラブの先行販売を利用してホーム寄りの良い席を確保しておいたので、こちらの試合も応援に行ってきます。

 

午後の早い時間まで、ギリギリ仕事をしてから、急いで日本平スタジアム(アイスタ)へ駆けつける予定です。

 

こんな緊張感のある試合が続くのは、15年前にエスパルスとジュビロのチャンピオンズシップを観戦して以来です。

 

いつもは冷静な分析を楽しむ私も、今日だけは一人のサポーターとして、声で選手を後押ししようと思います。

 

さて、「DV」という言葉が使われるようになって大分たちますよね。

 

意味をご存じの方も多いと思いますが、

 

omestic iolence (ドメスティック・ヴァイオレンス)

 

の頭文字2つをとった省略語です。

 

一言で言うと「家庭内暴力」で、そのほとんどが、夫から妻に対する暴力的行為です。

 

必ずしも、妻に物理的な暴力を加えることだけでなく、性的行為の強要や大きな声で脅し続けるような行為なども広く含みます。

 

色々な本を読んでいると、DVの加害者になりやすい夫と、逆にDVの被害者になりやすい妻がいるようです。

 

皆さんや皆さんの配偶者・恋人は大丈夫でしょうか?

 

まず、DVの加害者になりやすい男性のタイプです。

 

① ちょっとしたことで、怒鳴ったり、物を壊したりする。

② 喧嘩したことを、いつまでも根に持つ。

③ お酒が入ると、普段の大人しい性格が突然乱暴になる。

④ 実際には才能は無いのに、自分に才能があると信じ込んでいる。

⑤ 何事も慎重にかつ計画的に物事を進める。

⑥ 妻や交際相手の行動を強く束縛する。

⑦ 何気ない日常会話を楽しんでできない。

などが言われています。

 

⑤とか意外ですよね。

 

慎重で計画的なタイプとDVとは、何か結びつかないようにも思えます。

 

私を振り返ると、一見、慎重で計画的なタイプに見えるようです。

 

確かに、仕事では相当綿密に計画をたてて、準備をして動く方だと思います。

 

しかし、私生活を振り返るとと、前にも書きましたが、勝手に小鳥を買ったり子猫を突然拾ってきたり、宿泊場所も予約せずに旅行に行ったり(学生時代)、誰にも相談せずに突然、7年も勤めた県庁を辞めてしまったり、結構、その場の適当な判断で行動することの方が多いですね。

 

そうすると、当てはまるのかどうか良くわからないような気がします。

 

自己分析は難しいかもしれないので、知り合いと分析し合うと興味深いかもしれません。

 

次に、DVの被害者になりやすい女性のタイプです。

 

① 相手の方が悪いと分かっていても、つい先に謝ってしまう。

② 相手が失敗して落ち込んでいると放っておけない(共依存関係)

③ 面白くないと思っても、つい相手男性の話につきあってしまう。

④ 即決・即断ができない。

などが言われるようです。

 

②とか、女性としては優しくて、思いやりがある素晴らしい面もあると思うのですが、それが夫の甘えとつながると、

 

夫を許すことで自分の存在価値を感じる妻と、妻に受け入れてもらうことで自分を肯定できる夫

 

という相互に依存する関係(共依存関係)になって、DVが生じやすいようです。

 

これらのチェックリストが、全て正しい訳では無いとは思いますが、特に女性の方は、結婚前に違和感を感じたら、参考にしていただければと思います。

 

DVの夫としては、

①無意識的に自分の責任を持ちつつ、それを「妻のせいだ」と思いこむことで暴力を振るったり、

②お酒などで自分を止められない夫が、一番自分の感情をぶつけやすい妻に感情をぶつける

というようなケースが多いです。

 

ですから、DVをしている夫には「自分は妻を傷つけている」という自覚が無いことが多いのです。

 

もし、友人として相談されたときに「これはDVの加害者じゃないか?」と思っても、決して本人を責めたりしないでください。

 

話を良く聞いてあげて、より悪い方向へ行かないような配慮をしてもらえれば、殺人や重大な傷害というような最悪の結果まで進む前に改善できるかもしれません。

 

離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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「内定」には法律的に重要な意味が!

「圏外旅行」という旅行プランがあるそうですね。

 


スマートフォンを持つと、SNSやLINE、メールなど便利な反面、常に拘束されている息苦しさがあり、そこから解放されるための旅のプランだとか。

 

何となく分かる気もしますが、私は「携帯電話」というものが出来た時から、反対派で、相当の年数、携帯電話自体を持たないという抵抗活動を一人で地道に(笑)やってきました。

 

その抵抗を打ち砕かれてしまった時から、全て諦めたので「もう今更・・・」と思っています。

 

今では、既にiPhone6+を購入して、スマートフォンを仕事で使い倒していますが、休日には音楽を聴く以外には決して使いません。

 

実は、プライベートでは、すごく旧型のガラケーのままという「ささやかな抵抗」をまだ続けているんです(笑)

 

さて、来年4月就職に向けての採用活動は基本的に既に終わっていますよね。

 

次の再来年4月に向けての就活の選考開始時期について、経団連が政府の要請を受けて後ろ倒しにしたというのはご存じの方も多いと思います。

 

今年までは、採用の正式な選考開始時期が大学4年生の4月~だったのですが、2015年に4年生になる大学生については、選考開始時期が8月~と4ヵ月後ろ倒しになったと言うのです(2016年~は6月となる予定)。

 

経団連に加入している企業についての自主規制なので、表向きはこのルールを守るのでしょうが、実質的には、どうやって優秀な学生をライバル会社に取られないように先取りするか戦略を練っているようです。

 

例えば、インターンシップによる学生の長期囲い込みやOB訪問と称して実質は面接活動を行ったり、採用する側も相当、工夫が必要で大変だと思います。

 

私もサラリーマン時代に、前職が採用人事担当だった係長が上司になった時に、どんな基準で採用しているか聞いたことがあります。

 

その上司は、

「一言で言うと、採用担当者に「この人と一緒に仕事をしたい」と思わせることができるかどうかだね。」

ということでした。

 

では、普通の社会人はどんな場合にその人と一緒に仕事をしたいと思うのでしょうか?

 

これは、明らかで

「その人が入ることによって、他の人の仕事が楽になるような場合」

です。

 

つまり、他の人の仕事が楽になるということは、他の人はその余裕を、新しい分野の開拓だったり、営業の量や質を再検討したりする余裕ができることになり、組織全体の力が強くなるからです。

 

ここ十数年は、就活マニュアル的なものが出てきて、皆採用面接で同じような意見を言うようですが、それは全て「自分が採用されるため」の発言なんですね。

 

それでは、企業の採用担当者は興味を示しません。

 

私は企業の採用担当者の方が「自社のHPを見てこないような学生は要らない」と言っているのを良く聞きます。

 

これも、マニュアルに言われているので、HPを見て、創業者が誰で、創業の理念の内容は何か、現在の代表取締役が誰か、組織はどうなっているかなどの知識を入れてくる学生も多いのかと思います。

 

確かに、何も見てこない学生に比べればアドバンテージでしょうが、採用担当者が言いたいのはそんなことではないと思います。

 

私が思うには、おそらくHPを見て、自主的に分析した上で、その会社や公的機関に入って、自分がどんな貢献ができるのかイメージしてきて欲しいという意味だと思います。

 

そのイメージの内容が実務と異なっていても全く構わないと思います。

 

学生だから、企業や公的機関の仕事内容を正確につかめないのが普通でしょう。

 

その年齢にふさわしい常識さえ備えていれば、私だったらその姿勢を買うと思います。

 

では、学生が頑張って、めでたく採用内定通知をもらったとしましょう。

 

では「内定」とは法的にはどのような意味を持つのでしょうか?

 

言葉の雰囲気からすると、労働契約はまだ成立していないようにも見えます。

 

しかし、これは企業の採用担当者の方にも注意していただきたいのですが、「内定」の通知を出した時点で、企業学生との間に労働契約成立するのです。

 

もっとも、その契約は普通の労働契約と少し異なり、「解約権留保付労働契約」と言われています。

 

では、企業側としてはは、その「解約権」を自由に使って、いわゆる「内定取消」をできるのでしょうか?

 

この「解約権」の行使は相当厳しく制限されることを、企業の採用担当者も学生も知っておく必要があるでしょう。

 

単に、内定を多く出しすぎて余剰が出てしまったとか、内定後に営業状況が悪くなったからなどという会社の都合での内定取消は認められません。

 

内定を取消できる事情(内定取消事由)は、

 採用内定時点で、知ることができず、また知ることが期待できない事実が内定後に判明し、

 それを理由に内定取消をすることが客観的に合理的と認められ、会通念上も相当と認められる場合

に限定されるのです。

 

つまり、企業側の都合としては、単に「営業状況が悪くなった」というのではなく、新規採用を全て中止しなければ、企業の存続が危ういというような場合でなければならないのです。

 

JALの破綻の時に、内定取消が大きな問題となりましたが、あれくらい危険な状況でないと、企業側の都合での内定取消はできないんですね。

 

逆に、学生側の事情で内定取消が認められるケースもあります。

 

内定後に、刑法にあたるような犯罪行為を犯した場合や学歴や成績など採用の重要な判断要素となる事実について、嘘をついていたことが判明した場合などです。

 

学生としては、内定をもらったら、少なくとも飲酒運転(就職後もですが)や学生のノリで悪行がインターネットや新聞で報道されたりしないように注意する必要があるでしょう。

 

せっかく内定が出たのですから、企業側にとっても、学生側にとっても、幸せな本採用になるのが望ましいですよね。

 

労働問題のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。

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弁護士10人から訴えられた!

急に寒くなってきましたね。

 

北海道などでは、雪も相当降っているようです。

 

静岡は、寒いとは言え、まだ薄いコートや上着で対応できる程度なので、やはり暖かいのだと思います。

 

雪も、きっと、今年も一度も積もらないんでしょうね。

 

私の事務所は、窓が全て南向きで、日光を遮る建物も無いので、冬も日中は暖房が要らないほど暖かいです。

 

夏に比べると、事務所内は過ごしやすい感じです。

 

さて、事務所に来られる方が、訴状を持って

弁護士10人から訴えられた

と恐怖と怒りのご相談をされることが良くあります。

 

訴状というのは、訴えを起こす時に、原告が裁判所に提出する書面のことです。

 

そこには、請求する金額や内容、その根拠などが記載されています。

 

訴えを起こす原告は、その訴状を最低でも2通作成し、1部を裁判所分の「正本」として提出し、残りは被告に送ってもらう分(「副本」といいます。)として提出します。

 

裁判所は、その「副本」を裁判所の封筒で、被告に郵送するんですね。

 

訴状には、原告の名前とともに、依頼を受けた弁護士の名前が書かれています。

 

事務所によって、やり方は違うと思いますが、弁護士が複数いる事務所では、依頼者の方から複数弁護士事件を共同してお引き受けする形をとっているところもあります。

 

特に東京など大都市の弁護士事務所では、弁護士の数が多いところがありますので、事務所に10人以上の弁護士がいるところも珍しくありません。

 

そのような事務所が、原告となる依頼者の方から事件を共同受任すれば、訴状にはその事務所の弁護士の名前が全て記載されるのです。

 

そうすると、訴状には原告の名前の上に、「原告訴訟代理人」として、ずらっと10人以上の弁護士の名前とハンコが押されるんですね。

 

それを見て、訴状を受け取った被告の方は、ビックリというわけです。

 

ただ、実際に訴訟に全員が関わることは無く、担当の弁護士1人か、指導役弁護士+新人弁護士の2人が依頼者の方と打ち合わせをしたり裁判所に出す書面を作成することがほとんどです。

 

ですから、訴訟を被告側で引き受ける弁護士にとっては、全く、訴状に記載されいている弁護士の数は気にしません。

 

これに対して、訴状を受け取った被告の方は、訴状が届いたこととのダブルショックで驚く方が多いようです。

 

しかし、本当に注意しなければならないのは、被告ではなく、依頼される原告の方です。

 

つまり、原告の方は10人の弁護士に委任しているという形になっているので、受任後、誰が自分との打ち合わせを継続的にしてくれるのか、誰が自分のために書面を書いてくれるのか、説明してもらわないと分からないということです。

 

私が

複数法律事務所を回って、信頼できる弁護士、自分と相性の良い弁護士を探した方が良い。」

と何度も書いてきています。

 

ただ、それは、相談を受けた弁護士今後も引き続き担当してくれる弁護士同一の場合にしか通用しません。

 

相談の時には、「信頼できる」と思って依頼しても、委任状を複数の弁護士に対して書いてしまうと、いざ訴訟が始まったら、担当が全く違うというケースもあり得るんですね。

 

ですから、複数の弁護士がいる事務所に相談するときに、「この弁護士は良いな」と思ったら、必ず

今後の打ち合わせや相談も先生だけにお願いできるんですよね

という一言で確認しておくことが絶対に必要です。

 

そうしないと、例えば、女性のデリケートな問題を良く分かってくれそうな女性弁護士と相談して契約したのに、「訴訟が始まったら若い男性の弁護士と打ち合わせをすることになっていた。」ということになりかねません。

 

医者に例えれば、事前の診察を手術の経験が豊富な医者に依頼していたのに、いざ手術になると手術経験の浅い医者が自分の身体を切るというようなものです。

 

医者にかかる患者の容態と同じように、弁護士に依頼される方には、一人一人分かってもらいたい個別の細かい事情があります。

 

それは、依頼される方が一番良く分かっていると思います。

 

それを、実際に打ち合わせをしていない弁護士が理解して、担当の弁護士に指導することなど不可能です。

 

ですから、

訴訟結果は1人の事務所であろうと、複数の事務所であろうと、担当弁護士の力量だけで決まる

ということを十分にご理解された上で、原告側で依頼される方は、担当弁護士の確認を忘れないでください。

 

また、訴状や内容証明などを受け取った被告側の方は、弁護士の数に恐怖を感じる必要は全く無いということも覚えておいていただければと思います。

 

「弁護士のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。 

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