軒を貸して母屋を取られる

私が、仕事に疲れた時に一休みとして、良くやるのが、ネットでの他の読者の本の感想を読んでみることです。

 

小説以外ではアマゾンで本を購入することが多いのですが、他にも興味本位で「○○ランキング」みたいなHPへ飛ぶこともあります。

 

この前、「東野圭吾のおすすめランキング」というサイトを見てみました。

 

1位 容疑者Xの献身

 

「うん、うん。これを読んで泣かない人はいないだろう。」

 

2位 白夜行

 

「確かに、容疑者Xの献身が出る前は、これが最高傑作だと思ってたからな~」

 

3位「手紙」

 

「あれ?この本読んだことない。『秘密』、『赤い指』などを押しのけて上位に来る長編?」

 

さっそく、書店に行って即購入しました。

 

しかし、まだ読んでいません。

 

それは、もし「手紙」が本当に、私にとって面白かった場合、平日の夜に読み始めると読書が止まらなくなり、翌日の仕事に差し支えることが目に見えているからです。

 

小学校高学年から大学生まで、「面白い本に夢中になって、気がつくと午前4時」ということは日常茶飯事でした。

 

そして、その日の授業は爆睡状態で、先生に怒られ続けた人生でした。

 

でも、それは私が悪いのではなく、そんな素晴らしい本を書く作家が悪いのです(キッパリ)。

 

とはいえ、社会人になるとそういう訳にはいきませんよね。

 

そこで、私は社会人になってからは、平日の夜遅い時間に読む本は、ビジネス本か小説なら短編集と決めているのです。

 

ですから、「手紙」を読むのは、今度の日曜日の昼間と決めています。

 

ところが、先日大失敗をしてしまいました。

 

湊かなえの「往復書簡」という本を何となく買って、夜読み始めてしまいました。

 

確かに短編といえば短編ですが・・・

 

この先は、読んでない人のために伏せておきますが、とにかく気がついたら午前3時過ぎでした。

 

もちろん、翌日の仕事は眠くて眠くて。

 

これも、私が悪いのではなく、本屋のポップを貼った人か、湊かなえさんが悪いのです・・・

 

さて、「軒(庇)を貸して母屋を取られる」ということわざがありますよね。

 

「一部を貸したために、その後全部を奪われるようになる。」という意味でしたね。

 

日本の借地借家法の下で、建物を貸すというのはまさに、このことわざの通りとなる危険性があります。

 

まず、連帯保証人をしっかりとつけてもらわないと、借りた人が賃料を支払わなかった時に苦労します。

 

確かに、請求しても賃料を支払わない場合には、賃貸借契約を解除して、「建物から出て行って欲しい」と請求はできます。

 

でも、多くの場合、

 

「出て行く引っ越しのお金もないんです。」

 

「新しく入る所の敷金も払えないし、審査も通らないんです。」

 

などと言って、出て行ってくれません。

 

それが真実の時もありますし、ウソの場合もありますが、いずれにせよ結果は一緒です。

 

こんな時に勤務先がしっかりした連帯保証人をつけておけば、必ず払ってくれますから、そちらから賃料をもらうことで解決できるのです。

 

では、連帯保証人さえつけておけば、安心なのでしょうか?

 

例えば、アパートのように、貸して賃料をもらうのが目的の場合には、原則としては安心といって良いでしょう。

 

しかし、一軒家を貸す場合には、色々と問題が起きます

 

一番多いのは、自分が一軒家を貸したけれども

 

① 自分や身内がそこに住みたくなった

 

② 不動産として持っているよりお金が必要なので、売りたい

 

という動機で、借りている人に出て行って欲しいというケースです。

 

さて、この場合、事情を説明すれば簡単に出て行ってもらえるでしょうか?

 

この場合、先ほどの長期の賃料滞納など、借りている人に重大な問題があれば契約を解除して、最終的には裁判をすれば出て行ってもらえます。

 

しかし、借りている人に問題が無い場合には、出て行ってもらうには「正当の事由」が必要なのです。

 

借地借家法によると、この「正当の事由」は、

 

① 建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情

 

② 建物の賃貸借に関する従前の経緯

 

③ 建物の利用状況

 

④ 建物の現況

 

などを考慮して決められます。

 

例えば

 

①では、ただ、今済んでいる所が狭いから貸している家を返して欲しいなどという理由では弱いです。

 

例えば、火災や震災で済んでいる家が消失してしまったというようなケースであれば認められやすいでしょう。

 

②は、大家さんと借主が非常に険悪な関係で、借主が大家さんに嫌がらせを長期間やってきているという事情があれば、認められやすいでしょう。

 

③は、長期間そこに家族で済んでいるのであれば出て行けの言いにくいでしょうが、単身者が1~2年済んでいただけであれば、認めやすいと思います。

 

④は、建物がどれだけ老朽化して危険な状態かが争われることが多いです。

 

というように、賃借人に問題が無い場合には、でていってもらうのには、相当大きな理由が必要で、また、それにくわえて立退料も支払わなければならないことが多いのです。

 

まさに、大家さんとしては、「軒を貸して母屋を取られる」という気分でしょう。

 

このように、一度貸してしまうとよほどの「正当の事由」がないと返してもらえなくなるという制度だと、大家さんが警戒して建物を貸さないようになります。

 

しかし、それでは、建物の有効活用を害するとともに、「一定期間で良いので借りたい」という人のニーズまで満たせなくなってしまいます。

 

そこで、平成12年から、借地借家法で「定期借家制度」として、契約期間が終了したら正当の事由が無くても出て行ってもらえる契約が作られました。

 

この「定期借家」の要件と次のとおりです。

 

① 必ず契約書(できれば公正証書)を作ること

 

② その契約書面に定期借家であることが明確に記載されていること

 

③ 契約書とは別に、一定期間で終了する契約だということを説明する書面を借主に渡して説明する必要があること

 

④ 期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に、期間満了による終了を通知すること

 

が必要になるのです。

 

結構、面倒ですね。

 

でも、これをしておけば、建物利用に予測が立ちますので、将来、自分や身内が使う可能性があれば、定期借家契約をしておくべきでしょう。

 

逆に、借主の場合には、長期間借りて住みたいと思っているのであれば、普通の賃貸借契約をしている大家さんを捜すべきでしょう。

 

家を借りる時も貸す時も、最初の契約が肝心ということですね。

 

不動産トラブルの基本知識についてはこちらをご参照ください。

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仁川地方裁判所の判決を聞いて

「体においしい魚の便利帳」

 

という本をアマゾンで買いました。

 

「お魚マニア」ではなく、「お魚知らず」を何とかしようと思ったのです。

 

2年ほど前から、漁業関係について継続的に仕事として関わっているのですが、もともと狩猟本能ゼロの私です(原始時代なら飢え死にしていますね。)。

 

釣りなどの趣味も、縁遠い世界で、魚の知識がほとんどありません。

 

でも、仕事で色々な魚の種類や食べ方などを聞いていると、「これは知っておいて損はないな」という気持ちになってきました(魚を食べるのは好きなので)。

 

もちろん、漁師さんと世間話をすることも多いので、漁師さんの最低常識レベルには魚を知っておかなければいけないと痛感したこともあります。

 

さすがに、集中して読書をするというところまでは行きませんが、夕食前などちょっとした時間にパラパラと見るようになり、大分、知識もましになってきました。

 

例えば、カジキが静岡沖でも結構とれて、しかもマグロのような美味しさがあるということを初めて知りました。

 

自分の知らない世界を広げてくれるのも、仕事をやっている良さですね。

 

さて、仁川アジア大会の水泳会場でカメラを盗んだとして、韓国の仁川地方裁判所で窃盗罪で審理されている冨田氏について、28日(木)に有罪判決が下されましたね。

 

求刑通りの100万ウォンの罰金ということですから、裁判所は全面的に犯罪行為を認定したことになります。

 

100万ウォンというと日本円では、11万円程度ですから、日本の窃盗罪で考えてみても、比較的軽い判決です。

 

日本で、日本人が数万円のカメラを盗んで、全面否認すれば、28日の判決の日まで勾留されて、執行猶予付きの懲役刑となるのが普通でしょう。

 

ただ、仮に被告人が韓国のアジア大会の選手だったとすれば、やはり韓国の国民感情に配慮しておそらく、そこまで徹底的に勾留せずに帰国させると思います。

 

判決も罰金刑かもしれません。

 

ですから、仁川地方裁判所も、日本の国民感情を配慮した判断をしたのだと思います。

 

冨田氏は、「納得できない」と改めて無罪を主張した上で、「控訴するかどうかは弁護士と協議して決めたい」ということらしいです。

 

こんな時、被告人と弁護士との間ではどんな打ち合わせがされているでしょうか?

 

「先生、本当は(窃盗を)やっているんだけど、控訴した方がいいでしょうか?」

 

などという打ち合わせがされているのではないかと疑われている方もいるかもしれません。

 

でも、そのようなケースは非常に少ないです(全く無いとは言い切れませんが)。

 

このような私選弁護のケースでは、冨田選手の口から弁護士に説明されることは、やはり

 

「先生、私は本当に窃盗などやっていないんです。」

 

という言葉だと思います。

 

そして、冨田氏が自分で選んだ私選弁護人なのですから、当然、冨田氏の供述を全面的に信じて無罪を勝ち取ろうとします。

 

もっとも、全面否認事件の場合、マスコミで皆さんが聞いている事実関係と被告人が弁護人に言っている事実関係が同じ場合と、ズレがある場合があります。

 

私の経験上だと、弁護人からみて

 

「この被告人本当はやってるとしか思えない。」

 

という場合には、相当言っている事実関係や言い訳の内容がおかしいことが多いです。

 

ですから、弁護人が、被疑者・被告人の言っていることを、そのままマスコミに言ったら、「弁護人グルになっている」と世間から袋だたきにあってしまいます。

 

ただ、そういう事態が起きるのは国選弁護人のケースがほとんどです。

 

なぜなら、私選弁護の場合には、そもそも、自分が非常に疑っている人の弁護については、「私の弁護方針と合わない」と言って断ることができるからです(特別の紹介ルートでない限り)。

 

しかし、国選弁護の場合、選任されて初めて被疑者・被告人に会いに行くことや、自分が勝手に辞めることができないことから、自分の弁護方針と違う事件に当たってしまうことがあるんですね。

 

そのため、国選弁護でそのような事件にあたってしまった場合、私は、徹底的に被疑者・被告人を説得します。

 

おそらく検察官と同じくらいの勢いで、接見室内で被告人・被疑者の供述の不自然な点をついて、場合によっては大喧嘩してきます。

 

良くそれで、被疑者・被告人の親族から

 

「先生が自分を信じてくれない」と子供が言っている!

 

などとお叱りを受けることがあります。

 

それでも、私自身が納得しないと、全力で弁護できないので、裁判の日の1週間くらい前まで説得を続けます(裁判員裁判では、もっとずっと前に説得をあきらめなければ間に合いませんが。)。

 

それでも、被告人が最後の最後まで否認し続けた場合には、やむを得ず、否認の主張をできるだけ不自然に見えないように整理して、法廷で弁護活動をします。

 

法廷だけ見ている人たちには、その前に接見室内で長期間被告人と喧嘩し続けてきた弁護人の姿は見えていません。

 

弁護人は

 

「悪い人を守ろうとする悪役」

 

にしか見えないかもしれません。

 

でも、それは国選弁護ではやむを得ない事態なんですね。

 

被告人の意思に反して弁護人が罪を認めたりしたら、弁護士会からの懲戒処分で弁護士の資格を失いかねません。

 

もっとも、今回の冨田氏のケースは、おそらく私選弁護でしょうから、冨田氏から事実関係を聞いて、

 

「自分の弁護方針上、特に問題はない」

 

と判断して弁護しているはずです。

 

ですから、さすがに冨田氏と弁護人の間の打ち合わせは、冨田氏の無罪主張を軸に行われていると思います。

 

それを不自然と感じるかどうかは、報道されている事実関係だけからは分かりませんので、私自身が評価することはできません。

 

もちろん、日本の代表選手だった訳ですから、無罪を信じたい気持ちはあります。

 

しかし、今まで報道されてきた事実関係や、経緯を見ていると、仁川地方裁判所の判断を批判することもできないという微妙な心理です。

 

皆さんが裁判員になったら、その判断をする立場になりますので、色々な側面から事実を見る習慣をつけておくと、いざという時に良いかもしれませんね。

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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遺産とお墓とは別もの?

最近疲れやすくなっていたことを、友人の医師に世間話でしたところ、私の体ををジーっと見て

 

「外見はそう変わらないけど、ひょとして急に体重増えてないか?お腹周りは?」

 

失礼な!

 

私のウエストが急激に5cmも増えて、はけないズボンが続出していたことは誰にも秘密だったのに・・・

 

どうも私は、外側から見えにくい所(臓器周辺)に脂肪がつきやすい体質のようです。

 

「仕事のパフォーマンスが落ちるのはもちろんだが、食事制限と運動で体重を減らさないと、5年後には相当危険なことになるな。」と言われました。

 

私の好きな運動といえばジョギングですが、どうも忙しいと時間のムダに思えてここ5~6年、まともにはやれていませんでした。

 

そこで思いついたのが、「音楽を聴きながら走る」ということです(「気づくの遅いわ!」というつっこみは、スルーさせていただきます。)。

 

ただ、それを屋外でやると、自分が危険だったり、他の人に迷惑をかける可能性があるので、やむを得ずスポーツジムに通うことにしました。

 

そして、今1ヶ月続いており、体重は第一段階の目標、3kg減量達成です。

 

そこで、事務員や仲の良い友人や弁護士に「3kgも体重をおとした!」と一生懸命自慢して回ってみました。

 

でも、みんな「へ~」とか、「何か変わんないね。」という薄い反応ばかりです。

 

つまり、「太っても太ったように見えない」ということは、「痩せても痩せたように見えない」ということらしいです。

 

何か、内臓脂肪型の太り方って、いいこと一つもありませんね・・・

 

さて、相続で遺産を分ける時に、土地・建物や預金など経済的に価値のあるものをめぐって争いになるケースがあることは皆さんご存じですよね?

 

でも、それとは別に「お墓をめぐった争い」が生じることもあります。

 

つまり、仏教の場合には、仏壇やお墓を誰が受け継ぐか、葬儀以降の初七日・49日・一回忌・3回忌などを誰がやるかという問題です。

 

宗教の種類によって、色々とありますが、亡くなった方の先祖を敬う宗教的行為を民法ではまとめて祭祀(さいし)と読んでいます。

 

そして、そのような祭祀を受け継ぐことを「祭祀の承継」、祭祀を行う人のことを「祭祀の主宰者(しゅさいしゃ)」と呼びます。

 

弁護士に依頼しないで遺産分割調停に出た場合、調停委員から急に

 

「祭祀の承継者を誰にするかは決まっていますか?」

 

などと言われて意味がわからないことがあるのではないかと思います。

 

これは、民法が土地・建物や預金などお金で換算できるものと、宗教的な色が強い先祖を敬う儀式を分けているからなんですね。

 

ですから、遺産分割調停では、土地・建物、預金などお金を一切受け継がない相続人でも祭祀を承継することができますし、その逆でもOKです。

 

では、どうして争いになるのでしょうか?

 

争いのパターンには2つあります。

 

1つは、相続人の間で、「先祖を受け継ぐのは自分が適切だ」といって、祭祀の承継を取り合うケース。

 

もう1つは、「先祖を受け継いで祭祀なんかやっても、お金と手間だけかかって嫌だ」と言って、祭祀の承継を避けるケース。

 

いずれのパターンも私自身は体験していますが、ここは理屈ではないので、第三者である調停委員や弁護士が説得するにも限界があり、簡単に決まらないことが多いです。

 

では、どうやって決めるのでしょう?

 

まず、第1に優先されるのは、「亡くなった方が指定した人」です。

 

これは、遺言のように書面でなければいけないということはなく、口頭でも構いません。

 

ただ、実際に争いになるときのことを考えると、書面に残しておいた方が良いでしょうね。

 

第2に、指定した人がいない場合には、「慣習による」ことになります。

 

先祖を敬う行為は宗教や地域によって異なるので、亡くなった方の宗教や住んでいた地域でのならわしによって決まるということです。

 

一般的に言われる「長男が家をつぐ」というのは、旧民法で長男が家督相続として財産を含む全てを相続することを前提としているので、その理屈は今の民法では認められません。

 

つまり、亡くなった時点で、その宗教や地域のならわしの内容から祭祀の承継者を指定できるのか、しっかりと確認する必要があるでしょう。

 

それでも、慣習が不明で決まらないことも多いでしょう。

 

特に大きな都市になると、そういう「ならわし」自体が存在しないこともあり得ます。

 

そこで、最後に登場するのが家庭裁判所ということです。

 

祭祀の承継者を巡って争っているケースで、指定も慣習もない場合には、争っている当事者や利害関係人が家庭裁判所に調停を申し立てて話しいます。

 

調停での話し合いでも解決できない場合に、最後にやむを得ず裁判官が祭祀の主宰者を指定する審判を下すことになります。

 

ただ、先祖を敬う行為を誰が行うべきかについて、全く先祖の関わりを持たない裁判官が決めることは適切ではありませんので、その前段階で合意をすることが多いです。

 

なお、祭祀の主宰者になったからといって、たくさん財産をもらえる訳ではありません

 

なかなか理解しにくい感覚なので、遺産分割調停を起こそうと思われている方は、申立前に、

 

祭祀の承継者を誰にしたいのか?

 

それに対する反対はないのか?

 

を検討しておいた方が良いでしょうね。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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時効が変わる!

皆さんは、ゴールデンウィークは、どこか行かれましたか?

 

私は、誰が何と言おうとアウトドア派です。

 

わざわざ東京まで混んでいる高速道路を車で走らせて、ショッピングなど目もくれずに、1人で多摩川の河川敷に一直線。

 

の良い天気と水遊びをしている人たちのオープンな雰囲気。

 

「よっこらしょ」と木陰に座って、取り出したのは、iPhne6+と本2冊(ビジネス本とマニアックな海外ミステリ小説)。

 

午前11時頃から午後5時頃まで、iPhoneで音楽を聴いたり、本を読んだり、ボーっとしたり・・・

 

お昼は豪華にバーベキュー・・・ではなく、「ウイダーinゼリー」と「小腹サポート」

 

いや、いや、アウトドア派ですって。

 

ところで、民法改正が今年度中には決まりそうです。

 

実際に、私たちに適用されるには、その後少し知らせる期間を置きそうですが。

 

その中でも消滅時効期間が変わるのは、私たちの生活に大きな影響がありそうです。

 

消滅時効というのは、私たちの権利、例えば「お金を貸したから返して」と請求する権利(債権)が一定の期間放っておくと消えてしまうという制度です。

 

今は、おおまかに言うと、商売でお金を貸した場合には、時効期間は返済の期限から5年(商法)、個人同士の貸し借りでは10年(民法)となっています。

 

ですから、利息を払いすぎた過払金の返還請求権は商売上の権利ではなく、法律で定められた個人の権利なので10年間時効にかかりません。

 

逆に、消費者金融会社が皆さんにお金を貸すのは、商売ですから商法が適用され5年で消滅時効にかかります。

 

これが次のように時効期間が統一されます。

 

① 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間

 

② 権利を行使することができる時から10年間

 

で債権が消滅するということです。

 

これに伴い、商法の5年間という消滅時効の規定が削除されます。

 

ですから、今後は、消費者金融で貸した場合でも、個人間で貸した場合でも、返済期限から5年で貸した人の権利は消えてしまうということになります。

 

返済期限があるということは、貸した人がその期限に「返して欲しい」と言えることを承知しているということです。

 

ですから、「権利を行使することができることを知っている」場合にあたるので、期限から5年で「貸したお金をかえして!」という債権が消えてしまうのです。

 

そういう意味では、個人で貸す場合にも、相手がしっかりと返してくれる人なのか、勤務先は把握しているのか、などを確認して貸す必要が高くなるでしょう。

 

こういうのを、金融機関では「レンダーズ・ライアビリティ(貸し手の責任)」と呼んでいます。

 

今までは、レンダーズ・ライアビリティは、金融機関など貸付を専門に行う側にだけ言われていました。

 

しかし、これからは法律の専門家でない市民も自分の防御を考える必要が高くなります。

 

「レンダーズ・ライアビリティ」の講習会などを、市町村の消費者センターなどで行う必要が出てくるかもしれませんね。

 

「日常生活の法律問題」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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独りぼっちは寂しい・・・

私の生活パターンとして、何となく本屋をぶらつくという行動があります。

 

時間に余裕がある時ばかりではないので、そんなに長居はしていないと思います。

 

ンとくる本を1~2冊見つけた所で、買って帰ります。

 

本屋さんでは、「売り」として、平置きにしたり、本棚に表紙が見えるような贅沢な使い方をしている本を良く見ます。

 

私は、平置きにしてある本は既に読んだ本が多く、本棚に表紙が見えるように置いてある本はほどんど購入しないことが多いです。

 

少し前、本棚に「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」という、写真入りの本が置かれているのを横目で見る機会が多かった記憶があります(映画にもなるらしいですね)。

 

心の中では、

 

① この話が本当だとしたら、彼女は偏差値が40下だった時に持っていた、どれだけのものを捨てて、慶応大学に進学したのだろうか?

 

② もし、これを彼女が自分の「成功体験」として、自分の人生や他人の人生に当てはめようとしたら、難しい人生になるだろうな~

 

と思いながら。

 

本屋さんで、私と全く同じ感想を持った方がいたら、是非、お友達に・・・

 

なりたくないですね(笑)

 

そんな面倒くさい人、こっちから願い下げです(あれ?)

 

さて、先月の24日に出された会社からの嫌がらせに関する大阪地裁の判決が出ました。

 

「大和証券」から関連会社の「日の出証券」に出向した男性従業員Aさん(42才)が、慰謝料200万円を、両方の会社に請求して起こした訴訟です。

 

大阪地裁によると、今から約2年半前に、Aさんは大和証券から日の出証券に出向を命じられました。

 

日の出証券では、約4ヶ月間、Aさんを一人だけの部屋でパソコンだけを利用した顧客の開拓をする仕事をやらせました。

 

その間、営業に関する会議にも呼ばれませんでした。

 

4ヵ月後に、他の同僚が居る部屋に移れたのは、労働組合を通じて抗議したからです。

 

4ヶ月間、独りぼっちでパソコン相手に仕事をさせられるのは、精神的に相当つらかったでしょう。

 

この事案で、大阪地裁は、直接、その仕事を命じた日の出証券だけでなく、出向させた大和証券についても、日の出証券から業務報告を受けていたとして、損害賠償責任を認めました

 

とすると、当時39才だったAさんの出向は、「半沢直樹」風に言えば、「片道切符の出向」(大和証券に戻ることはない出向)だったのでしょう。

 

その年齢での片道切符の出向は若すぎますね。

 

その点、Aさんに問題があったのか、会社に問題があったのかは分かりませんが、会社がAさんに退職してもらいたかったのは、この異動で明らかです。

 

会社側に顧問弁護士がいて相談を受けていたとしたら、余りに杜撰な対応ですね。

 

明らかに、会社ぐるみのパワハラだと言われるのが目に見えており、結果的には会社の社会的信用も失ってしまいます。

 

逆にAさん側においては、少なくとも法廷での本人尋問、証人尋問の後にはAさん有利の心証が裁判官から言われたでしょう。

 

Aさんの弁護士としては、大和証券への復帰を和解条件として要求することも考えられます。

 

もっとも、それを大和証券が承諾するか分かりませんが。

 

もし、大和証券が承諾するのであれば、Aさんが退職するのでない限り、和解での解決もあり得たのでは無いでしょうか。

 

今後の見込みとしては、大和証券は会社の信用もかかっていますから、控訴して東京高裁で和解するという方向性で行くのではないかと思います。

 

この訴訟、200万円の慰謝料請求という形をとっていますが、Aさん側の弁護士本当の狙いはお金ではありません。

 

もし、東京高裁で和解した場合には、Aさん側の弁護士の腕が良いことが、同業者として感じられます。

 

労働問題のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。

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サルでもできる弁護士業?

最近、にコンビニに行って違和感を感じることがあります。

 

レジに行って商品を出すと、

 

「いらしゃいませ。」

 

会計を済ますと

 

「ありがとうございます。またご利用くださいませ。」

 

ここまでは普通です。

 

ところが、その後にレジの前で

 

「いらっしゃいませ」

 

とまた言われることが結構あります。

 

外からお客さんでも入ってきたのかと確認しても、その様子はありません。

 

何故だろう?と考えてみました。

 

私が思ったのは、本部で一括管理されているマニュアルに、相当たくさんの言葉を言うような指示が出ているのではないかということです。

 

マニュアルには、レジ対応の指示や、店内にお客さんが入ってきた時に「いらっしゃいませ」と言うよう指示が入っているのでしょう。

 

その他にも指示されているマニュアル言葉があるかもしれません。

 

そして、忙しい時には、次々と店内にお客が入ってくるので、とりあえず「いらっしゃいませ」といっているうちに、その言葉が機械的に出てしまうようです。

 

私は、こんな時、自動販売機で物を買った時のような無味乾燥な印象を受けます。

 

言い換えると、私を「人間」と認識してもらっていないという感じです。

 

もちろん悪いのはそこで働いている方ではなく、ロボット作業的なマニュアルを指示する本部であることは間違い有りません。

 

「マニュアル化」というのは、簡易な事務作業をする場合には効率的ですが、それをサービス業に盛り込みすぎると、長い目で見ると逆効果だと思います。

 

コンビニのレジ対応でもそう感じるのですが、このマニュアル化の徹底を弁護士業でもやろうとしたケースがあります(現在でも、そのような事務所はあるようですが)。

 

タイトルに書いた「サルでもできる弁護士業」

 

ある程度経験のある弁護士であれば、ほとんどの人が知っている本のタイトルです。

 

なぜならば、執筆した弁護士が、約6年ほど前に、おそらく全国の全ての弁護士に本を無料配布したからです。

 

もちろん、私の所にも頼んでもいないのに送られてきました。

 

その本によると、

 

「弁護士は1年に30件~40件しか仕事をしない。」

 

「そのため、1件あたりの単価が高くなっている。」

 

「依頼者」の「怒りや悲しみなどの喜怒哀楽も聞いてしまっていた。だが、こうした部分は弁護にはまったく不要

 

として、依頼者の感情を理解する時間を「ムダな時間」としています。

 

そして、事務員(パラリーガル)が、5W1Hで答えられるチェックをした後、弁護士は法的に必要な補充の質問を行うということです。

 

その上で弁護士が方針を決めたら、細かく分類されたマニュアルに従い事務員(パラリーガル)が弁護士の指示に従って処理を進めていくそうです。

 

これにより、1年間で受任できる事件数が飛躍的に多くなり、1件の単価を安くした上で、多くの人を救済できるとのことです。

 

単に、弁護士の事件1件あたりの事務負担を減らすということだけを考えれば、この方法は効率的です。

 

現在も、この方針に近い事務所もあるようです。

 

ただ、この考え方には、やはり同業者としては???という面が多々あります。

 

まず、年間30件~40件しか弁護士が仕事をしないというのは、私の場合には当てはまりません。

 

私は、訴訟・調停・破産関係・交渉事件・財産管理だけでも、少なく見積もって50件以上の事件を常に併行して行っています(1件の事件の規模が大きいか小さいかは別ですが)。

 

また、それとは別に、突然の刑事事件、様々な実務研修の講師、大学の講師、法人役員の仕事などが入っています。

 

新しい事件のお引き受けは、今までの事件が終了した隙間に入れていくようにしています。

 

そのため、事件数が多すぎて、かえってお引き受けすると依頼者にご迷惑をかけてしまいそうな時には、ご相談の予約自体をお断りする時期が時折あります(この場を借りてお詫び申し上げます。)。

 

事件解決が年間合計何件になるか公にはできませんが、年間40件程度しか解決をしないということはあり得ません。

 

これは、別に私に限ったことではなく、忙しくしている弁護士であれば誰でも同様のことが言えると思います。

 

そして、お引き受けした事件の全てについて、相談や打ち合わせを、私自身が行っています

 

簡易な電話連絡や事務処理は事務員に頼むことはありますが、訴訟や調停の打ち合わせを事務員にやらせることは一切ありません。

 

ですから、この本の言う前提が、私には当てはまりませんし、私の知っている限りでは、多くのしっかりと仕事をする弁護士には当てはまりません。

 

また、例えば、交通事故の原告代理人として、遺族や重大な後遺障害を負った依頼者の喜怒哀楽を聞かないで、訴訟の慰謝料請求部分に必要な主張や立証ができるとは思えません。

 

決して、事務員=パラリーガルに任せることなどできない業務が、弁護士業務の中には複雑にからまって入っています。

 

この本を書いた著者の事務所に限らず、弁護士ではなく、事務員に事実関係の聞き取りをさせる事務所も、少数ですが有るようです。

 

もし、この本に書いてある方法が正しくて、依頼者にとって良いことであれば、次々と依頼者がその弁護士を紹介してくれるでしょう。

 

何が正しいかは、時間をかけて依頼者が判断していくとになると思います。

 

私が依頼者だったら、判断基準は、「弁護士が自分を対等の人間として扱ってくれているか」、「自分の話に共感をしてくれているか」となると思います。

 

これは、人間であれば本能的に感じることなのではないでしょうか。

 

この本が出されたのが約6年前です。

 

とすると、著者の主張が正しければ、その法律事務所は、依頼者の列ができて、数百人の優秀な弁護士を抱える日本で指折りの事務所となっていても不思議ではありませんね。

 

最後に、私が共感できる経営者の言葉を引用させていただきます。

 

「技術よりもまず第一に大切にしなければならないのは、人間の思想である。金とか技術とかいうものは、あくまで人間に奉仕するひとつの手段なのである。」

~本田宗一郎 「本田宗一郎という生き方」(宝島出版)より

 

「他人(ひと)のことを先に考えた方が、本当は成功につながる」

~松下幸之助 「成功の法則」(江口克彦氏著・wave出版)より

 

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子供の行動は親の責任?

最近、「ビジネスメールのルールが身につく本」というタイトルの本を読みました。

 

私のサラリーマン時代には、メールという連絡手段がなかったので、マナーなどの研修や注意を受けた経験がありませんでした。

 

そこで、「ひょっとしたら、ビジネスで私が知らない社会人のメールのマナーがあるのではないか?」と思いました。

 

依頼者の方とメールでご連絡をとることも多く、失礼があってはいけないと思い、参考になりそうな本を読んでみました。

 

やはり、自分では気づかない細かい作法やちょっとした気遣いなど、多々勉強になることがありました。

 

「個人でやっている弁護士の場合、自主的に時代についていけるように努力しなければいけないな~」と改めて思わされました。

 

さて、最近出た最高裁の判決で、「子供が蹴ったサッカーボールが原因で人が死亡した事件で、親の責任を否定したもの」がありました。

 

事件は、とある小学校で起きました。

 

その小学校は、放課後、生徒たちが遊ぶために校庭を開放していました。そこで、A君は、サッカーのフリーキックの練習をしていました。

 

フリーキックのように、「ボールを置いて蹴る」という技術は、バスケットで言うとスリーポイントと似ていて、練習量が上達に結びつきます。

 

A君も上手くなりたかったのでしょう。

 

ゴールの設置場所の後方10mの場所に、高さ約1.3mの門が閉まっていましたた(門にぶつかってボールが止まれば良かったのですが・・・)。

 

A君が蹴ったボールは、ゴールと門の扉の上を越えて、門の前にかかっていた橋の上を転がり道路に出てしまいました。

 

そこにオートバイに乗って走ってきたのが、当時85才だったBさんです。

 

Bさんは、そのサッカーボールをよけようとして転倒してしまいました。

 

主なけがは、左脛骨(けいこつ)、左腓骨(ひこつ)(両方とも左足のスネのあたりの骨)の骨折です。

 

ただ、Bさんがお年だったこともあり、事故から1年5ヶ月弱後、入院中に肺炎で死亡しました。

 

高齢者の場合、一度寝たきりになると、一気に体調を崩して、特に肺炎などで死亡することが非常に多いです。

 

ですから、「転倒事故によるBさんのケガ」と「Bさんの肺炎での死亡」との間の因果関係を認めることについては、裁判所の判断は一致していたようです。

 

最も争われたのが、A君の両親の監督責任です。

 

民法では、幼い子供などのやったことに対する親の責任について定めた規定があります。

 

より正確には「責任無能力者(幼児など)」を監督する義務のある人(親など)の責任について定めたものです。

 

この「責任無能力者」には、幼児・児童だけでなく、認知症の高齢者も含みます。

 

まとめると「自分が悪いことをしたら損害賠償責任を負うかもしれない」ということまで判断ができない人を言います。

 

子供の年齢でいうと、小学生(12才)くらいまでを「責任無能力者」とすることが多いです。

 

そして、責任無能力者(小学生)が他人に損害を加えた場合には、本人に責任を負わせることはできません。

 

そこで、その代わりにその監督者(両親)が損害賠償責任を負うのというのが民法の規定なんですね。

 

もっとも、その監督者(両親)が、しっかりと監督をしていたことを証明すれば責任を免れることはできます。

 

ただ、多くの過去の裁判では、監督者(両親)が子供の監督責任を果たしていたという判断をすることが少なかったため、この判決が話題になったんですね。

 

この判決では、

 

① A君の行っていたフリーキックの練習は、通常は人に危険が及ぶ行為ではないこと(そのため、それ自体を監督者が禁止することは期待できない)

 

② 親権者の直接的な監視下に無い子の行動についてまで、全て予測して監督するのは難しいこと

 

などを理由に、親の監督責任否定しました

 

ある記事には「監督義務を軽くする判決で、認知症の高齢者の監督者の責任も軽減される可能性がある」というようなことが書かれていました。

 

つまり、例えば「認知症で徘徊する人が道路に出て、オートバイを転倒させたりする場合の介護者の責任が軽くなるのでは無いか」という意味でしょう。

 

ただ、今回の最高裁の判決はそこまでは言っていません。

 

「原則として自由に行動する子供の監督」と「もともと徘徊に注意しなければならない認知症の高齢者の監督」とは、監督義務の内容が異なるので、同一に判断するのは難しいでしょう。

 

また、この判決と同じく、親が子供を監督する場面だったとしても、注意しなければなりません。

 

例えば、親が子供と一緒に公園でサッカーをやっていて、ボールが道路に飛び出して、

 

オートバイを転倒させたとしましょう。このて事故では、親がすぐ側にいて子供の行動を直接監督できる状況にあります。

 

今回の判決の事例のように、子供だけが放課後の校庭で遊んでいる場合とは事情が違います。

 

そのため、上に書いた判決の「直接的な監視下に無い」ということが当てはまらないんですね。

 

ですから、その場合の親の責任までを免除する判決ではないということになります。

 

このように、個別の事例に対する判決が、どこまで他の事案にも適用できるのかは非常に細かい分析と判断が必要です。

 

これを、学者や実務家は「判例の射程」と呼んだりします。

 

なお、この判決は最新の最高裁の判決ではありますが、事件が起きてから11年以上も後に出されたものになります。

 

その間、それぞれ対立するとはいえ、ご遺族も、A君のご両親も、非常に重い精神的負担を抱えてきたでしょう。

 

改めて、「最高裁まで争う」ということの重さを感じますね。

 

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セクハラ発言で出勤停止?

最近は、静岡では暖かい日が続いています。

 

スギ花粉も少し楽になったように思えます。

 

さて、ご依頼者やご相談者の方からアンケートを取り始めたというお話を前回しました。

 

既に、事務所ホームページ上にはアップしています。

 

その中で、ご相談者の方から、良いとも悪いともとれる改善点の指摘をいただきました。

 

要約すると、「相手が強く出た時に、口調が優しすぎて相手に伝わらないのでは無いか?」という声でしょうか(ホームページの「相談者の声」参照)。

 

確かに、私は日常生活でも大声を出して怒ることは全く有りません。

 


そもそも、「頭がカーッとなる」という感覚が理解できないので、冷静過ぎるのかもしれませんね。

 

ですから、初めてお会いした方からは、そのように受け止められることにも、うなずける点はあります(親族や親しい友人の評価は「頑固者!」ですが・・・)。

 

もっとも、、相談室で弁護士と二人きりで、弁護士から大きな声で対応されたら、怖い思いをさせてしまうのではないかと個人的には思っています。

 

他の依頼者の方からは、「穏やかな雰囲気で、自分の意見を言いやすい」「ほっとした」というご意見もいただいているので、長所と短所は一体という所なのでしょうね。

 

私としては、「穏やかさ」と、「きっちりと主張すべきことを主張すること」とは両立できるものだと思っています。

 

さて、「セクハラ」という言葉。

 

定着してきましたが、男性からは非常にあいまいで、不公平な概念に感じられるのではないでしょうか。

 

つまり、AさんとBさんが同じ言葉を女性に言っても、「Aさんなら許容範囲だけど、Bさんだとセクハラ」ということが、起こりうるからなんでしょう。

 

男性としては普段の生活からAさんを目指すしか無いと思います。

 

もっとも、誰が言っても、女性という性に関して、ほとんどの女性が不快感を持つ言葉はあります。

 

それが、最高裁まで争われて、今年の2月26日に判決が出ました。

 

事実関係としてはこうです。

 

舞台はとあるアミューズメント施設でのお話。

 

メインの被害者となった女性は、派遣社員Aさん(当時約30才)です。

 

セクハラを理由に、会社から懲戒されたX1さんとX2さんは、正職員の課長代理でした。

 

懲戒内容は、

X1さんは、出勤停止30日間

X2さんは、出勤停止10日間

です。

 

言葉だけのセクハラにしては相当重い処分です。

 

そこで、X1さんと、X2さんは、懲戒権の濫用で、当該処分は無効だと争いました。

 

しかし、X1さんと、X2さんの発言は、ここに掲載するのも少しはばかられるほどひどいものです。

 

判決書に書かれていたとおりに抜粋して書いていきますね。

 

X1さんは、Aさんが1人で勤務している所に来て、

 

「俺のん、でかくて太いらしいねん。やっぱり若い子はその方がいいんかなあ」

と言ったり、

 

不貞相手が車で迎えに来ていたという話しをする中で、「この前、カー何々してん。」と言い、Aさんに「何々」のところをわざと言わせようとするように話をもちかけました。

 

他にも、いくつか卑猥な発言をAさんの前でしています。

 

さらに、X2さんは、Aさんに対し、

 

「いくつになったん」

「もうそんな歳になったん。結婚もせんでこんな所で何してんの。親泣くで。」

 

「30才は、22~23才の子から見たら、おばさんやで。」

「もうお局さんやで。怖がられてるんちゃうん。」

 

「30才になっても親のすねかじりながらのうのうと生きていけるから、仕事やめられていいなあ。うらやましいわ。」

 

「お給料全部使うやろ。足りんやろ。夜の仕事とかせえへんのか。時給いいで。したらええやん。」

 

などと言いました。

 

その結果、Aさんはその施設での勤務を辞めることになりました。

 

その施設の従業員の過半数は女性で、来所者も約6割が女性という性質上、会社もこのようなX1さんとX2さんの発言を許すことができませんでした。

 

そこで、言葉だけのセクハラにしては、相当重い処分を下したんですね。

 

高等裁判所の判決では、

 

① Aさんから明確な拒否の姿勢が示されないことから、そのような発言も世間

 話として許されていると誤信していたこと

 

② X1さんやX2さんが、懲戒を受ける前に、事前の警告や注意を会社から受けていなかったこと

 

を考慮すると、10日間~30日間の出勤停止までの処分は重すぎるとして、懲戒処分権利濫用として無効としました。

 

しかし、最高裁では

 

① Aさんが内心で著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも、職場の人間関係の悪化を等を心配して、加害者に対する抗議や抵抗、会社への申告を差し控えることも少なくない

 

② 管理職にあるX1、X2は、セクハラの防止やこれに対して会社が厳しく懲戒するという方針を当然に認識すべきであった

 

として、高等裁判所の判断を否定して、懲戒処分有効としました。

 

確かに、「従業員にも、お客さんにも女性の方が多いアミューズメント施設」という会社の性質を考えると、女性へのセクハラに対しては厳しい姿勢をとる必要があるでしょう。

 

また、今回のセクハラ発言は、社会人としての常識的な日常会話の範囲を超えているように思えます。

 

私も、このケースでの最高裁の判断は適切だという考えです。

 

皆さんの感覚では、どうでしょう?

 

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「銀座のホステス」の休業損害とは?

今日は静岡はとても良い天気です。

 

静岡祭りが行われており、街中は賑わっています。

 

私は事務所の中で仕事なので、あまり関係ありませんが・・・

 

交通事故で、被害者が働けなかった期間があった場合、本来得られる収入が得られません。

 

また、有給休暇をとったとすれば、「給与をもらいながら休める日」を失ったことになります。

 

そこで、被害者が会社を休んだり、自営業をやれなかった期間に対応する収入損を補償するのが休業損害です。

 

実務では省略して「休損(きゅうそん)」と言ったりします。

 

給与をもらって働いている方(給与所得者)の場合は、事故で休んだ期間の収入を計算することになります。

 

どのような手当が入るのか、休業による降格はどうか、などの論点はありますが、いずれも計算ができないというものはありません。

 

ところが、自営業者の場合には、本当の収入を明らかにしにくい場合があります。

 

無免許でタクシー営業をしていたり、税務署への確定申告をしていなかったりする場合などです。

 

つまり、自分の所得を主張すること自体、違法行為を主張することになるケースです。

 

被害者が、「休業していなければ月100万円の売り上げがあった」と主張することは、

 

① 無免許での営業を一生懸命頑張っていたこと

 どれだけ多額の脱税をしていたのか

 

を主張することにつながります。

 

このようなケースでも休業損害は認められるのでしょうか。

 

過去の裁判では、売り上げが客観的に認められる場合には、その業界の通常の経費を控除した額を収入と認めたものもあります。

 

逆に、確定申告をしていない以上、雇い主の休業損害証明書では、証明不十分だとして、賃金センサスによるべきだとしたものもあります。

 

賃金センサスとは、性別・年齢・学歴などに応じて、収入の額を私たち国民からアンケートをとって、平均的な収入を算出した統計結果です。

 

賃金センサスによった場合、高収入の自営業者の場合、本当の休業損害よりもだいぶ低くなってしまい、争点となることが多いようです。

 

確定申告をしない以上、銀行預金の入出金など、客観的な資料がないと通常より高い収入を認めてもらうのは難しいでしょう。

 

この争点で、銀座のホステス交通事故被害者になったケースについての裁判例をショートストーリーの形にしてみました。→「綺麗なうそ」

 

やはり、確定申告はしておいた方が良いということでしょうね。

 

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弁護士が一番コワイものとは?

暖かくなってきましたね。

 

静岡では桜も咲き始めて、ようやく春という感じです。

 

Jリーグもプロ野球も始まって、スポーツ観戦も楽しみな季節です。

 

J1では、もちろんエスパルス、J2ではジュビロ、そしてプロ野球では広島カープに20億円のメジャーのオファーを蹴って、4億円の年俸で帰ってきた黒田投手に注目しています。

 

さて、弁護士にとって、仕事をする中で一番怖いものは何だと思いますか?

 

仮に、この問いを弁護士に聞いた場合99%の弁護士は同じ答えを言うのではないでしょうか。

 

色々想像はできると思います。

 

相手がヤクザの場合の報復?

 

犯罪者からの報復?

 

攻撃的な精神病の人やDV夫を相手に戦った場合の報復?

 

判決の結果?

 

腕利きの弁護士が敵になった場合?

 

全部違います。

 

正解は、「依頼者」です。

 

つまり、お金をもらっているお客様であるだけでなく、一番自分の仕事ぶりを近くで見ていて、事件の内容に一番関心を持っている人だからです。

 

弁護士がいい加減な仕事をした際に、いち早く発見して少なくとも心の中では、大きな不満を持つでしょう。

 

ですから、弁護士にとって一番大切なことは、しっかりとした仕事を継続する中で「依頼者」の信頼を得ることです。

 

とはいえ、弁護士の仕事は大きな紛争を対象としていて、安くは無い費用をいただくため、依頼者に簡単に信頼してはいただけません。

 

また、人と人との紛争であるため、結果が明確に出ないケースも多く、完全に満足していたくことが、もともと難しいという性質があります。

 

そのためか、法律事務所のホームページで、事件が終わった後の依頼者の感想を載せている所は比較的少ないようです。

 

載せている所も、アンケートの採り方について、質問の内容が「良かった点は?」「他にご感想は?」という形が多く、改善すべき点を聞いているホームページは極めて少ないと思います。

 

でも、おそらく、これから相談や依頼に行く方が一番知りたいのは、

① 弁護士の口コミ的な情報や評価

② 良かった点があれば、そのできるだけ具体的な内容

③ 不満があった場合の具体的内容とそれが改善されているか?

ではないでしょうか。

 

確かに、自分が評価されるというのは怖いものです。場合によっては、誤解や不当な評価もあり得ます。

 

しかし、良い仕事をするには避けて通れない道だと最近思うようになりました。

 

私は、大学で教えている時には、生徒の答案を採点しますが、採点するだけでは不公平だと思い、生徒からも採点してもらうようにしました。

 

大学の事務局が設けたポストに、一定期間中に無記名の評価書を入れてもらうシステムをお願いしたので、本音が聞けて非常に参考になります。

 

学生と同じように、上から「優(A)→良(B)→可(C)→不可(D)」という順番で評価をもらうとともに、講義の改善点についての意見を聞いています。

 

絶対評価だと要求水準がそれぞれ異なるので、他の教授や講師との相対評価でつけてくれるよう依頼しています。

 

学生からの評価が良ければ嬉しいですし、逆に、改善点の具体的な指摘があれば、非常に参考になります。

 

例えば、

 

「使うマーカーの色がバラバラで、使い分ける意味が分からない」

 

という意見がありました。

 

大学のホワイトボードに備え付けられているマーカーは、その授業によって、濃くでるものと、ほとんど使えないものが混じっています。

 

私は、学生に見えやすいようにと、黒のマーカー以外は、その授業の時に一番濃い色が出るものを適当に使っていました。

 

しかし、初めて法律を学ぶ学生にとっては、視覚的にわかりやすいことは、ある意味生命線です。

 

今期の授業では、黒・赤・青の3色だけは必ず色が出るように準備してもらい、その3色で意味をつけながら講義をしようと思います。

 

というように、改善点の指摘からより良い講義ができるようになりますよね。

 

さて、そうだとすれば、弁護士の業務の方でも、依頼者や相談者からアンケートをとるべきことになります。

 

その上で、良かった点は維持し、改善すべきと指摘された点を改良することが、次の依頼者のためや自分の成長に必要だと思います。

 

そこで、私も依頼者と相談者の方から、成績表(アンケート)をいただくこととしました。

 

分かりやすいように☆を1個~5個で評価いただき、良かった点と改善すべき点の感想を書いていただきました。

 

もちろん、事件の内容がプライベートなことだけに、ご回答いただけた方は限られていますが、現在の所、30通弱の感想をご送付いただきました。

 

「無記名でも構いません」という形で感想をいただいたので、無記名の方もいらっしゃいました。

 

ただ、誰が無記名かも分からないように、全ての感想について、氏名欄に付箋を貼って隠させていただきました。

 

そして、筆跡から依頼者や相談者の方が特定されないように、実際の筆記のアンケートは縮小して分からなくした上で、内容を横に活字で書きました。

 

そのようにして、いただいたご依頼者・ご相談者の感想と評価(☆の数)を、本日からホームページ上にアップしていきます。

 

4月1日ですが、エイプリルフールではありません(笑)

 

今後も、いただける範囲でアップしていきたいと思います。

 

数が多くなればなるほと、見る方に信用していただけると思うので、今後もできるだけ更新して多くの感想をアップしていきたいと思います。

 

「良い仕事をして、良い評価をいただくよう最大限の努力をして、その評価を次の依頼者の方に見ていただき、また仕事をいただく」

 

口コミと同じことで、これから相談しようとされている方にとっては一つの有益な情報提供になるのではないかと思っています。

 

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