中古建物の水漏れの法律上の責任は誰に?

今日は、宅地建物取引士(昔の宅建免許)の資格更新の法定講習に講師として行ってきました。

 

私の講義内容は、不動産売買や賃借のトラブルについてどのような法的な責任が生ずるかということと、トラブル予防策です。

 

受講者は、資格(宅地建物取引士)を持って不動仲介・売買業を営んでいる方々です。

 

一見、不動産トラブルの知識というと、土地・建物の売買や借りる時しか使わないように見えます。

 

でも、実はもっと身近な問題で、例えば相続でも、離婚でも、破産でも、不動産が関係してくることは非常に多いのです。

 

相続では、遺産に土地や建物があることは良くあるため、それを売却する必要があったり、土地や建物の金額について争いになることは多いです。

 

離婚するときに自宅があれば、住宅ローンを返済しつつ、それを誰が取得するのかや売却するのかの問題がおきます。

 

また、破産の場合には、破産する人が土地・建物を持っている場合には、売却する必要が生じます。

 

事業をしている人が破産する場合には、土地や建物の売却だけでなく、借りている場合にも、貸主にどのようにして返すのかをしっかりとした段取りで考えていく必要があります。

 

そんなわけで、土地・建物の知識というのは色々な所で役に立つし、弁護士の仕事としては必須なんですね。

 

良く問題になることとしては、売主仲介業者(不動産業者)説明義務違反です。

 

土地や建物を売買する時には、非常に大きなお金が動くので、買主が契約時に知らなかったことでトラブルになることも多いのです。

 

中古住宅、中古マンションを買った時には、水漏れが良くトラブルになります。

 

裁判例で、中古マンションを買った人が、専有部分(自分だけが使う住居部分)に設置してあった電気温水器に、実は買う前に大量の水漏れがあったことが分かりました。

 

この水漏れが起きないためには、補修が必要だったため、買主は契約の時にしっかりと説明をしなかったとして、売主と仲介をした不動産業者の両方を相手に損害賠償請求をしたのです。

 

このような多額の紛争では、買主に弁護士が代理人としてついています。

 

弁護士としては、依頼者のために確実に損害賠償を勝ち取るには、被告には売主だけでなく、仲介業者も入れた方が良いと判断したのでしょう。

 

この事案の判決では損害賠償責任両方に認めました

 

それぞれの責任は次のようなものです。

 

売主は、水漏れがしていたことを、しっかりと買主に説明すべきだったという説明義務違反を指摘されました。

 

仲介業者の方は、売主から水漏れのことを聞いていたのですが、自分の目で見て大丈夫と判断してしまいました。

 

この点を裁判では、マンションの補修の専門業者などに調査を依頼するなどの調査をしなかったことも、仲介業者の義務違反に入れています。

 

中古の物件の水回りというのは、後々トラブルになりやすいので、売主、買主、仲介業者のいずれかが、契約の時に、専門業者の見解を聞く機会を持った方が良いかと思います。

 

不動産トラブルの基本知識についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 不動産のトラブル |

コンビニ人間と法律

お盆休みに入られた方も多いのではないでしょうか。

 

長めの休みは、いつもはできないことを少し出来て良いですよね。

 

ここでお知らせですが、

生活と仕事のマメ法知識というタイトルで、ブログの更新情報の告知やお役立ち情報をツィートしています。

 

興味がある方は、ご覧いただけると嬉しいです。

 

さて、今回は雑感を少し。

 

ちょっと話題になっている最近の芥川賞受賞作品に、「コンビニ人間」という本があります。

 

著者は、村田沙耶香氏(出版:文藝春秋)です。

 

芥川賞作品というと、難解でとっつきにくい印象がありますが、この本は相当読みやすいです(これから読もうという方は、感想が入るのでここで終わりにしていただければ)。

 

文章自体に難しい言葉がないのに加え、舞台の殆どがコンビニと自宅アパートということもあって、イメージしやすいことが一つかと思います。

 

刑事事件をやっている弁護士であれば、ピンと来るのですが、主人公はいわゆるアスペルガー症候群に分類される特徴を持っています。

 

普通の親子関係なのに母親を毒殺しようとした女子高生、仲の良い友人を殺してしまった女子高生など、時折、世間を騒がせる事件があります。

 

これらの女子高生は、いずれも知能が遅れている訳では無く、むしろ成績は良い方で、ただ「どうなるか興味があった」ということが動機となっています。

 

これらの女子高生を「異常」と決めつけたり、「アスペルガー症候群」と病気のように分類してしまえば、私たちとは違う「普通ではない人」と思って安心かもしれません。

 

この「コンビニ人間」は、そういう普通と異常の境界線が曖昧なことに鋭く切り込んでいます。

 

普通の人のように描かれている主人公の妹、友人、コンビニの同僚の「普通性」を大きくデフォルメ(意識的に変形)することで、読者が主人公に共感しやすいように工夫しています。

 

主人公の発想で、ちょっと背筋が寒くなった部分を抜き出してみます。

 

「赤ん坊が泣き始めている。妹が慌ててあやして静かにさせようとしている。

 

テーブルの上の、ケーキを半分にする時に使ったナイフを見ながら、静かにさせるだけでいいならとても簡単なのに、大変だなあと思った。」

 

まさに、「早く目的地に着くためには、歩くより自動車の方が早い」という理屈を、そのまま「子供を静かにさせる目的のためには・・・」という場面でも使っています。

 

ここで抜け落ちているのは理論的な部分ではなく、むしろ私たちが「常識」と読んでいる非論理的な部分なんでしょうね。

 

そうすると「常識」って何?その常識を規則にした「法律」って何?という疑問にぶちあたります。

 

色々な考え方があるでしょうが、特に考えなくてもコンビニのストーリーとしても楽しめるので、「お盆休みに何を読もうか?」と考えている方にはお勧めです。

 

それでは、良いお盆休みをお過ごしください。

 

「ご報告や雑感」のブログ過去記事についてはこちらへどうぞ。

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婚姻費用(夫婦の生活費)と住宅ローン

暑い日が続きますね。

 

私は、このブログの他にも、ツイッターやフェイスブックのようなSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をやっていますが、どちらかというとブログのように文章を書いていく方式の方が好きです。

 

私がフェイスブックで発信しているのは、どうでも良い日常の情報ですし、ツイッターは読書の趣味に走って本の感想や印象に残った一文などを発信しています。

 

このツイッターでの本の感想は「読書メーター」というアプリとリンクさせています。

 

感想を書くようになって思うのは、読み終わった直後でないと本全体から受けた感動や興味深さは具体的に書けないということです。

 

また、他の人に読んでもらうことを前提で感想を短くまとめることで、分析や理解が深まったり、同じ本を読んだ人の感想を読んで納得したりと、視野を広げられると感じています。

 

さて、今回は、婚姻費用の計算についてのお話です。

 

婚姻費用については、代理人がついている場合にはその額について相当シビアなバトルが行われることが多いです。

 

女性側にしてみれば「離婚までの生活費をできるだけ確保したい」という切実なことですし、

男性側にしてみれば「離婚して他人になるかもしれない人への出費はできるだけ減らしたい」という現実的な性格があるからです。

 

良く問題になるのは、夫が自宅を出て別居したが、その自宅は夫名義住宅ローンも夫が支払っているというケースです。

 

自宅には妻の子供が残っているのですが、夫にしてみれば自分が住んでいないのに住宅ローンを支払った上に、そこに無料で住んでいる妻の生活費を払うのは納得できないところです。

 

でも、妻からすれば、「夫が勝手に出て行ったのだから、それくらは予想できたはずで、今さらそのようなことを言い出すのはおかしい。」という感覚です。

 

お互いに当事者だけではまとまらないので、調停や審判(調停がまとまらなかった場合に裁判官が下す判決のようなもの)で争いになることが多いです。

 

意外に思われるかもしれませんが、「離婚調停夫婦関係調整調停)」以上にこの「婚姻費用分担請求調停」が大切で弁護士に依頼する必要性が高いのです。

 

なぜなら、離婚調停の場合は不服だったら応じなければ不成立(不調)となりますから、自分が不利だと思ったり、分からないときは、応じなければ良いからです。

 

ところが、婚姻費用分担請求調停は、応じないでいると、「審判」という手続に勝手に進んでしまい、お互いに提出した書面(主張や証拠)を基礎に裁判官が決めてしまうのです。

 

審判の中では、お互いに対面して主張しあう場面があります。

 

審判はだいたい30分~1時間程度ですが、普通の人は簡易算定表程度しか知らないでしょうから、その場での主張は中々むずかしいでしょう。

 

相手の弁護士から「基礎収入の計算方法としてこの方法が適切」「特別経費として医療費・住宅ローンを控除すべき」などの言葉が出てきたら混乱してしまうのではないでしょうか。

 

このうち夫が支払っている住宅ローンは、婚姻費用を計算するときに差し引かれるのでしょうか?

 

これについても、裁判官によって計算方法や考え方が違います。

 

裁判官は公務員ですが、憲法で仕事を独立して行うことが認められているので、裁判官によって判断が異なるのは刑事・民事を問わずどのような裁判でも良くあることです。

 

今までの裁判所の判断を整理すると、住宅ローンについては考慮する例が多いようですが、その考慮方法が色々あります。

 

考慮する方法について、大まかには2つに分けられるようです。

 

一つは、住宅ローンの支払額を夫の収入から差し引いて、夫の収入を少なく算出することで婚姻費用の額も減らすという方法です。

 

二つ目は、婚姻費用算定表による婚姻費用額から一定額を差し引いて、婚姻費用を減額するものです。

 

昨年、東京家庭裁判所で出された審判は、二つ目の方法をとりました。

 

つまり、夫名義の住宅に無料で妻が居住しており、その住宅ローンも夫が支払っている場合には、妻が居住費を負担していません。

 

そこで、居住費相当額(通常の家賃より大分安いです)を婚姻費用の額から差し引いたのですね。

 

この審判では、妻の収入が年間約200万円であり、その世帯の通常の居住関係費を2万7,940円だとして、婚姻費用からこの額を差し引いています。

 

妻からしてみれば、勝手に夫が出て行ってやむを得ず自宅にとどまっただけなのに婚姻費用を減らされることには納得できないでしょう。

 

夫から見れば、「1軒家に居住しているのだから、家賃にしたら10万円以上するはずだ」と考えるはずです。

 

裁判所としては、その双方の利益を考慮して間をとったという判断になります。

 

なお、公的機関もサービス業だから、自分が知らないことでも法律で定められていることは調停委員や裁判官から教えてもらえると思ったら誤解です。

 

裁判所での手続というのは、「当事者が努力して自分の権利を守るべき」という考えが原則なのです。

 

ですから、例えばこの住宅ローンの話も主張しなければ調停委員が夫に教えてくれたりしません。

 

逆に、妻に有利な事情でも積極的に妻に教えたりしません。

 

それをやってしまうと裁判所の中立性が疑われてしまうからなんですね。

 

裁判所を利用するときには、徹底的に自分で調べて権利主張するか、そこに不安がある場合には弁護士に依頼するということが前提になっているのです。

 

裁判や調停で、調停委員や裁判官から

「代理人(弁護士)は選ばないのですか?」

と言われたら、自分が有利な事情を主張し忘れているか、相手がごり押ししようとしていると思った方が良いでしょう。

 

自分の権利は自分で守ることは大切ということなんですね。

 

離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。 

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カテゴリー: 離婚のお話 |

死刑って必要なの?

私は機械いじりが昔から大好きで、ラジオを組み立てたり、家庭用電化製品を自分で修理したりしています。

 

ですから、製造業の訴訟や物作りの会社破産事件は、得意な方だと思いますし、事件の件数も多いと思います。

 

ということで、時代に逆行するのですが、自動車のメカニックについても非常に興味があります。

 

先日、一度「トヨタ86」というスポーツカーに試乗してみようと静岡トヨタのディーラーに行ってみました。

 

すると、トヨタのディーラーがレース用にチューンするショップ「エリア86」が併設されていました。

 

その「エリア86」が、本来ターボ仕様が無い「トヨタ86」にターボをつけて、足回り・内装からハンドリングまでレース仕様にしたクルマが展示されていました。

 

もちろん、外観も凄いです(ディーラーの方の了解を得て写真を撮りました)。

車の外観

 

「どんなチューンをしているのだろう?」と、エンジンルームをジーっと眺めていると、「86」というナンバープレートがついているのに気が付きました。 エンジンルーム

 

「ひょとしたら、公道で運転できるのではないか?」と思い、ディーラーの人に試乗できるか確認したところ、なんとOKが出ました。

 

マニュアルシフトの自動車を運転するのは20年ぶりくらいだったのですが、不思議なもので、体が覚えていて問題なく運転できました。

 

内装も助手席の前にまで油温計などズラーっとメーターがついていて、本当にレース車の雰囲気でした。

車の内装

 

ターボの加給音も「ゴーッ!」といういかにもレース車っぽい雰囲気。

 

さて、この自動車いったいいくらだと思いますか?

 

私も興味本位で聞いてみたところ

「だいたい通常仕様の86が2台買えるくらいの価格になります。」

とのこと!

 

通常仕様がおそらく300万円くらいでしょうから、約600万円!になるということです。

 

さすがに、実用的ではなく、試乗だけを楽しむことにしました。

 

さて、今回どうして死刑制度なんてテーマを選んだかというと、弁護士会で「死刑制度を考える」アンケートが配布されてきたからです。

 

私自身の考えは別として、そのアンケートについていた資料で興味深いものがあったのでご案内しようと思います。

 

まず、EU(欧州連合)に加盟する28国の全てで死刑を廃止していて、日本に対しても死刑廃止に加わるよう呼びかけをしてきているそうです。

 

死刑を肯定する考えの根拠とされるものに、①殺人罪など重大な事件が増加するのではないか、②遺族の気持ちとしては死刑を強く求めるのではないかというものがあります。

 

このうち①については、終身刑と死刑とで犯罪抑止力には差は生じないという調査結果が出ています。

 

これは、死刑制度を廃止した国々が、廃止前の犯罪発生率と廃止後の犯罪発生率の統計をとったものです。

 

これに対して、②については、事件で見ているとやはり遺族感情は厳しいものが多いように思えます。

 

自分にとって大切な人を殺人で失った場合には、おそらく犯人には極刑(死刑)を求める遺族の方が多いでしょう。

 

これは日本に限ったことではなく、死刑を廃止した欧州の国々でも廃止当時の死刑支持率は高かったようです。

 

もう一つ、日本の制度で誤解があると思うのが無期懲役刑の仮釈放の運用です。

 

無期懲役刑になった場合、20年もすれば仮釈放で出てこられるという誤ったことを書いてある記事を少し前までは良くみかけました。

 

2005年~2014年の10年間の無期懲役刑の刑務所に入れられている平均期間は30年を超えていて、その仮釈放の確率も4%弱とのことです。

 

最近の運用でも30年を超えないと仮釈放は殆ど認められないようです。

 

成人になってから殺人を犯した場合には、50才を過ぎてから仮釈放の本格的な審査が始まり、その率も非常に低いということです。

 

具体的に想像してみると、30年間以上を刑務所の中で模範囚のような生活をしてきた人だけが仮釈放されているということでしょう。

 

その上、30年以上前というと、PCやスマホ・携帯電話、インターネットも全く無い時代です。

 

出所した時には、日本語が外国語のように感じるでしょうし、人が社会性を育む時期に刑務所にいたのですから、まともに働けるはずがありません。

 

もっと短い刑期の窃盗事件などでも、数年受刑してしまうと履歴書だけで採用を蹴られてしまうのが現実です。

 

説明できない数年の空白期間があるだけでどこの会社も敬遠しますし、その理由を正直に話せばなおさら採用されません。

 

理解のある中小企業の社長などに雇用してもらうか、履歴書すら不要な企業(その過酷さは想像できるとは思いますが)に就職するしかないのです。

 

つまり、無期懲役刑になった時点で、年齢によってはほぼ獄中死することが確定しているか、仮釈放されたとしても、社会的には相当過酷な社会的制裁が待っているのです。

 

そう考えると、ひょっとしたら、苦しまないように絞首刑を実施する日本の制度の下では、無期懲役刑にした方が実際の犯人が長く苦しむことになるのかもしれません。

 

反省しない受刑者は仮釈放されずに獄中死しますし、ごくわずかの反省した模範囚ですら過酷な社会的な制裁を中高年になってから受け続けることになるからです。

 

もちろん、人を殺したのですから、その動機や犯行の背景に特別な事情が無ければ、「死をもって償うべき」という考えも論理的です。

 

アメリカでも50州のうち死刑を廃止した州は23州ということらしいので、考え方は分かれているのでしょう。

 

弁護士という立場だと、死刑廃止を当然に主張するという訳では無く、私はどちらにも与しないようにしています。

 

時間をかけて議論しないといけない問題だと思っています。

 

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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弁護士は怒らせない方がおトク?

最近、TVの警察もので、殺人事件の現場の凄惨さに新人の鑑識職員が現場から飛び出して吐いているシーンがありました。

 

その後、遺体の風景がクローズアップされましたが、

「どうしてこの遺体で吐いたのだろう?」

という印象でした。

 

確かに、見た目はひどそうですが、新鮮な遺体ですし・・・この先は生々しくなるので止めておきますね(笑)

 

グロテスクな内容が平気な方は、私のメールマガジンの11回目で詳しく説明しているので、トップページからご登録ください。

 

「読みたくもない」という方が多数派かもしれませんが・・・

 

さて、本論に入りますね。

 

弁護士の仕事の特殊性としては、やはり常に人の人生の重大なドラブルを何十件も抱えているということでしょうか。

 

ですから、私自身はストレスを余り感じないと思っていても、時々非常に疲れていることに気がついて、やはりストレスがあるのだなと思います。

 

ですから、疲れている時には少し休むようにしています。

 

もっとも、疲れていてもエネルギーが自然に湧いてきてやる気がでる例外的な場合が一つだけあります。

 

相手から理不尽な攻撃をされた時です。

 

私自身、余り感情的になることは無いので、怒鳴られようと,何を言われようと頭に血が上ってしまうことはありません。

 

ただ、理不尽なことをされると、それに対する怒りは仕事へのエネルギーに変わります

 

つまり、それまで疲れて「今日は少しペースを落とそう」と思っていても、理不尽なことをする相手がいると一気にやる気を復活させて、いつも以上の法的手段を考えてやってやろうと頑張ります。

 

感情の入れ方は弁護士それぞれでしょうが、おそらく、ほとんどの弁護士は、怒らせたら普段よりずっと大きなエネルギーを仕事に注ぎ込んで戦ってくるでしょう。

 

ですから、私は極力相手の代理人弁護士の感情を逆なでするような物言いや書面は出さないようにしています。

 

冷静に法律要件を充たした主張立証活動をすれば、別に感情的にならなくても訴訟では良い結果を得られるからです。

 

プロスポーツでも同じ事が言えるように思えます。

 

相手チームを侮辱すると、いつも以上の力を発揮してきて強いチームが負けることは、往々にしてあることです。

 

つまり、弁護士を相手にした時に、侮辱したり、脅したりするような言動をするのは自分にとって大きな損につながる可能性が高いということでしょう。

 

少なくとも、私は自分の依頼者に結果的に不利益になってしまうので、相手弁護士に対してそのような行動は取らないように注意しています。

 

人としてのマナーを守って、戦うべき所は、法的手続に従って戦えば良いだけだと思います。

 

もし、皆さんが依頼した弁護士が、例えばその弁護士より若そうな相手弁護士を怒鳴りつけているのを見たら、「頼れる」などと思わない方が良いです。

 

後で和解が成立しなかったり、裁判所に出される書面での反論や証明活動を一生懸命やられて、しっぺ返しを食らうのがオチだと思いますので。

 

弁護士のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。 

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不倫に悩む方へ

今回は、不倫についてのトラブル解決に役立つ法律の知識をYou Yubeにアップしたので、ご報告します。

 

世の中では「不倫」と言われていますが、裁判所など法的な解決の場になると「不貞(ふてい)」と呼ばれます。

 

これは民法にそのように記載されているからなのですが、日常生活では余り使いませんよね。

 

不貞(ふてい)という言葉にも慣れておくと、法律相談だけでも分かりやすくなると思います。

 

さて、不倫の問題の場合には、被害者は一方配偶者(夫・妻)で、加害者は他方配偶者(妻・夫)と不倫相手ということになります。

 

通常は被害者が1人、加害者が2人という図式なのですが、不倫相手が2人以上いる場合には、その数だけ加害者が増えるということになります。

 

動画では、被害者側からも、加害者側からも約に立つ知識をご説明したつもりですので、興味がある方は是非ご覧ください。

 

 

内容については、動画のホワイトボードに書かれていますが、プリントアウトしやすいように、以下にまとめておきますね。

 

1 不倫をされた人は何ができる?

(1)不倫は法律的に言うと「共同不法行為」

(2)請求できる法的な権利は「慰謝料請求権」

 

2 慰謝料に相場はあるの?
(1)離婚しない場合には、100万円~150万円(2人分)

(2)離婚した場合には、200万円~300万円(2人分)

(3)但し、様々な事情で額は、それより増えたり減ったりするので相場を決めつけるのは危険。

 

不貞により離婚する前であっても、例えば夫以外の男性の子を妊娠したようなケースで、実質的に夫婦が破綻していた場合には、約300万円の判決が出たこともある。

 

また、不貞をした夫の資産・収入が多い場合には、500万円以上慰謝料が認められたケースもある。

 

考慮される事情としては、典型的な例は以下のとおり

① 夫婦の婚姻期間の長さ

② 結婚生活が破綻(離婚)したか

③ 結婚生活が不倫でどのように変わってしまったか

④ 不倫を続けた期間の長さ

⑤ 不倫のやりかたの悪性の程度

⑥ 未成年の子がいるか否か

⑦ 加害者の収入

⑧ 請求者(被害者)側の落ち度の有無や程度

⑨ 訴訟にどのような態度で臨んでいるか

 

3 不倫をした夫(妻)と不倫相手のどちらが悪い?

(1)夫(妻)の方が悪い。

(2)どちらが積極的に不倫に誘ったかは関係あるの?

 

4 不倫で夫婦が離婚する場合としない場合の違い

(1)離婚する方が慰謝料が高くなる

(2)離婚した場合に裁判で争いになる所

(3)離婚しない場合に問題となる「求償権」

 

「不倫と慰謝料」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 不倫と慰謝料 |

父親は母親から親権を取れる?

突然ですが「ノコギリガザミ」と聞いてピンと来る方はいますか?

 

ヒントは「漁業者が海で獲るもの」です。

 

私は、3年前から静岡県内の漁業協同組合(漁協)の連合会の役員を務めるようになったのですが、今一、知識が曖昧でした。

 

その後に調べたところ、カニの一種で、浜名湖産のものは「ドウマンガニ」と呼ばれる高いカニだと知って、やっと捕獲と食べることがつながってきました。

 

他にも似たような形で、法律とは違う専門分野に何カ所か関わらせていただいています。

 

法律論から頭を切り換えるのが大変ですが、他の専門分野の仕事に関われることで自分の視野を広げられるのは、仕事の面でも、人生の面でも有り難いことです。

 

さて、今回は親権者の変更について、母親から父親への変更を認めた珍しい高等裁判所の最近の決定についてお話したいと思います。

 

まず、事例ですが、結婚中に妻(母親)が浮気をして離婚することとなりました。

 

その当時の子供は4才と3才の子が二人です。

 

この場合、法律相談に父親が行った場合、「浮気をしても、母親としての権利は変わらないので、親権をとるのは難しい。」とアドバイスされます。

 

父親もそれを知ってか、協議離婚の時に、母親の主張に応じる形で子供2人の親権者を妻とすることに同意しました。

 

もっとも、離婚当時は妻が夜の仕事をしていて、保育園に預けて子供を育てるのが難しかったので、子供は当面の間、父親の実家で祖父母と一緒に暮らすことになりました。

 

その後、1年以上たっても妻が子供を引き取らなかったことから、父親は親権者変更の申立をしました。

 

ところが、福岡家庭裁判所八女支部は、離婚当時と子供を育てる環境について事情の変更が無いことを理由に父親の申立を認めませんでした。

 

そこで、父親がそれを不服として、福岡高等裁判所に判断を求めることとしました。

 

今までの運用の原則は、離婚の時に子供が自分の意思を言えない年齢(おおざっぱに15才未満くらい)であれば、母親が親権者とされています。

 

そして、離婚後に母親が病気や事故などで倒れて子供を育てられないなど、特別の事情が生じた場合に限って親権者の変更を認めています。

 

この事案でも、離婚後に子供たちを育てる環境は、もともと父親と祖母の所で生活していたので何も変わりません。

 

そうすると、母親が昼間の定職に就いたら子供たちを連れに来ることは共通の認識でしょうから、親権者の変更を認めなくても良いということになりそうです。

 

しかし、福岡高裁の判断は、父親への親権者の変更を認めました。

 

その理由は以下のとおりです。

 子供たちが2年近く父親と祖母の下で安定した暮らしをしていたことから、その実態を重く見るべき。

 結婚中の子供たちの夜のお風呂や寝かせつけを父親がやっていたこと。

 母親は、離婚後、親権者でありながら、子供たちの保育料も支払わず、保育園への行事参加にも消極的だったこと。

 父親には祖父母という子育てを手助けしてくれる人がいるのに対して、母親には誰も補助者がいないこと。

 離婚の時に、必ずしも母親の子供を育てる能力を検討して親権者とした訳 では無いこと。

 母親が、結婚中、子供たちが手のかかる年齢だったのにもかかわらず、男性と浮気を重ねていたことから、子供たちを育てる真剣な気持ちや適格性に疑いがあること。

 

つまり、福岡高裁は、離婚の時と事情が変わらなくても、子供たちが現実に育てられている環境を変えない方が、健やかな成長のために良いと考えたのだと思います。

 

私自信の意見としては、子供の現実の生育環境をしっかりと見て、父親に親権者を変えているので、この事案に限っては親権者変更もやむを得ないのかなと思っています。

 

離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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外国人が日本の家庭裁判所に養育費の請求を申し立てられるの?

訴訟と違って、遺産分割調停や離婚調停の場合には、依頼された弁護士が依頼者の方と一緒に家庭裁判所に行きます。

 

調停では、原則として、持ち時間約2時間のうち、30分ずつ使うことになっています。

 

もっとも、この原則通りだとしても、待ち時間として相手が話している30分×2回=1時間は待合室にいることになります。

 

調停の待つ時間の中では、弁護士は事件の方針の話もしますが、相手方の出方で方針も変わるので、全て事前に決めることはできません。

 

また、待ち時間の間ずっと打ち合わせをする必要もありません。

 

そのため、弁護士の多くは、その間、依頼者の方と雑談をします。

 

弁護士の世界も独特で一般には知られていませんが、意外と依頼者の方の仕事の内容や趣味にも相当の独自性があることが多く、つい色々と質問をして聞いてしまいます。

 

依頼者の方にとっては当たり前のことでも、その仕事を経験していない私にとっては、非常に興味深いものがあったりします。

 

ブログでは書けないようなディープなお話を聞けることもあったりして、結構楽しんでいます。

 

逆に依頼者の方から弁護士の仕事の質問をされたりします。

 

多いご質問としては「人1人殺して、どうしてあんな軽い刑にして良いのか?」でしょうか。

 

弁護士や裁判官であれば、当然、自分なりの考えを持っていますし、ひょっとしたら一人一人が微妙に違うように思えます。

 

ですから、私も「私だけの感覚かもしれませんが・・・」と前置きをしてご説明するようにしています。

 

さて、今回は関係の無い方もいるかもしれませんが、国際結婚を前提としたお話です。

 

別居の夫婦の生活費(婚姻費用)や子供の養育費の請求をする場合に、相手がフィリピン、中国、イギリスなど外国籍の場合に、日本の家庭裁判所で判断できるのかをご説明します。

 

実は、普通の訴訟(民事訴訟)では、法律(民事訴訟法)で、訴訟の当事者の一方が外国籍の場合の裁判所の取り扱いについて定めています。

 

ところが、婚姻費用養育費について適用される法律(家事事件手続法)には国際的な事件について、家庭裁判所がどこまで踏み込めるかについての定めがありません

 

そこで、夫婦の一方が外国籍の場合、婚姻費用や養育費の請求の調停や審判を、日本の家庭裁判所に申立できるのかが問題となるのです。

 

現段階では、平成27年10月9日の法制審議会で採択された「要綱」を参考にする他は無いでしょう。

 

これによると、

① 扶養をする義務がある者(通常が収入が多い夫)の住所が日本国内にあるときには、国籍にかかわらず、日本の家庭裁判所に、養育費や婚姻費用の請求の調停を申し立てることができます。

 

また、

② 扶養権利者となるべき者、つまり収入が少ない配偶者(通常は妻)又は子供の住所のいずれかが日本にあれば、婚姻費用や養育費は夫が外国籍でも日本の家庭裁判所に調停を申し立てることができることになります。

 

もっとも、婚姻費用や養育費を支払う夫が海外に居住してしまっている場合には、夫に責任があると申立をしても、実際にお金を支払ってもらえるのか難しいでしょうから、日本に戻ってくる可能性が高い場合にだけ申し立てるべきでしょう。

 

訴訟や調停で海外と関わる場合に、どこの国の裁判所が判断すべきなのか(「国際裁判管轄」といいます)は、法の整備や条約締結の有無によって変わってくるので、弁護士としても、依頼を受けてから調べることも多いんですね。

 

離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。 

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遺産はいつを基準に評価する?

ゴールデンウィークも終わり通常業務に戻られていると思います。

 

事務所は暦通りに開いていましたが、さすがに飛び石の2日(月)と6日(金)は仕事が入らないから、たまっている書面を作ることができるだろうと予定していました。

 

しかし、突然の刑事事件が2件も入ってしまいました。

 

結局、接見に行ったり、警察署の刑事課の警察官に昼間会いに行ったりと、結局、予定していた仕事は半分も出来ませんでした。

 

「想定外も想定内に」といつも心がけているので驚きでは無いのですが、ちょっとゴールデンウィーク気分は味わえませんでした・・・

 

さて、遺産分割をするにあたって、各相続人が相続する分を実際に定める場合、どの時点を評価の基準時にするのでしょうか。

 

例えば、父親のAさんが死亡して、子Bさんと子Cさんが相続人となったとします。

 

この場合、Bさんが生前に株式をAさんからもらっていて、CさんはAさんから土地・建物をもらっていたとしましょう。

 

そうすると、Bさんのもらった株式、Aさんのもらった土地を特別受益といって、一度遺産に戻さなければなりません(持ち戻し)。

 

では、その戻す時に、BさんとCさんは価格に評価すると、一体幾らもどさなければならないのでしょうか。

 

株式のような有価証券は日々価格が変わりますよね。

 

土地も価格が変動しますし、建物は古くなると価値がどんどん減っていきます。

 

実務では、まず、遺産分割相続開始時(Aさんの死亡した時)に存在した遺産を分配することですから、その時点を基準とします。

 

ですから、BさんとCさんは、父親Aさんが死亡した時の価格を戻すことになります。

 

その上で、BさんとCさんの具体的な相続額を算出できます。

 

では、遺産分割の時にもBさんとCさんは、その額をもらえば相続完了となるのでしょうか?

 

実はマズいことがあります。

 

それは、Aさんが死亡した後、遺産分割まで数年経っていた間に、例えばBさんがもらった株式を発行した会社が破産してしまったらどうでしょう?

 

この場合、株式が無価値となったことで全体として遺産が減ってしまっているので、Aさんが死亡した時点を基準とするとBさんとCさんが相続すべき遺産が不足してしまい、遺産をそもそも分けることができません。

 

そこで、実務では、Aさんが死亡した時点でのBさんとCさんが相続する額の割合で、遺産分割時の遺産を分けることにします。

 

つまり、Bさんの株式はあったこととして、特別受益を戻した上で、BさんとCさんの相続額を決めて、その額の割合で遺産を分けるのですね。

 

このように、価格が変動する財産が遺産に含まれている場合には、どのように分けるのが得なのか、しっかりと計算する必要があるんですね。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。 

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会社が従業員を守る義務はどこまで?~安全配慮義務

ゴールデンウィークの確保できた時間で、本を読んだり、音楽を聴いたり、近場にブラッと出かけたりしています(事務所は暦通りに空けています)。

 

昔の司法試験は、母の日に択一試験をやるという鬼のようなもので、直前期のゴールデンウィークというのは地獄の勉強とプレッシャーの中でした。

 

十数年経った今になっても、その感覚が残っているようで、暗い気持ちがふっとよぎることがあります。

 

そんな中、日本のバンド「バンプ・オブ・チキン」の「ray」という曲に「分かるな~」と思わず聴き入ってしまいました。

 

特に共感したフレーズは

「晴天とはほど遠い 終わらない暗闇にも 

星を思い浮かべたなら すぐ銀河の中だ。」

「大丈夫だ。 あの痛みは忘れたって消えやしない。」

という箇所です。

 

①暗闇をどのように歩いて来られたのか

そして、

②暗闇をくぐり抜けた後の「痛み」は、「大切な人(今ではもう会えない)からもらった光=過去から未来に向かって自分を照らす光線(ray)」と一緒になっている

ことを表現したものだと私は解釈しています。

 

おそらく、藤原基央(作詞・作曲・ボーカル)の体験をもとにした詞なのでしょうね。

 

さて、今日は、会社の従業員の安全を会社がどこまで配慮しなければならないかということについて、大阪高裁の裁判例を参考にご説明したいと思います。

 

まず、会社と従業員の間には「従業員の労務の提供に対して、会社が賃金を支払う」という雇用契約があることには問題ありませんよね。

 

では、会社は従業員の安全を配慮する義務まで負うのでしょうか?

 

本来、雇用契約で会社が負う義務は、賃金の支払義務などのはずですが、労働者は会社が用意した環境で働かざるを得ないので、会社が粗悪な環境で働かせて利益だけを追求することは望ましくありません。

 

そこで、裁判実務では、民法1条2項に定められた信義則の条文を根拠に、会社には「労働者が安全な環境で働けるように配慮する義務」=安全配慮義務を認めています。

 

平成8年の大阪高裁の裁判例でも、ある会社で従業員Aが、他の従業員Cにフォークリフトに衝突して「左頬骨鼻骨骨折等」の大怪我をした事案で、B会社の安全配慮義務違反を認めて、従業員Aへの賠償義務を認めています。

 

B会社は、他の従業員が運転するフォークリフトを早く発見できるように、ライトを設置したり、フォークリフトで運ぶ荷物に目印を付けるように指導する義務を怠ったという判断になります。

 

この事案での大きな問題は、大怪我をした従業員Aが治療後に、自らの申出で復職した後1ヵ月半ほど経過して宿直室で急性心不全で死亡した場合、その死亡についてもB会社の安全配慮義務違反と言えるのかということでした。

 

私の感覚では「難しいのではないか?」というものですが、この大阪高裁はB会社の安全配慮義務違反を認めました。

 

その理由は、次のようなものです。

 

会社は労働者の生命、健康が損なわれることのないよう安全を確保するための措置を講ずべき義務(安全配慮義務)を負っている。

 

そして、従業員Aは、復職した時に従前と同じ作業時間で同じ作業量をこなすだけの健康状態には無かったということです。

 

B会社としては、産業医(会社で従業員の健康のために登録をしている医師)の判断を仰いで、仕事の内容や時間を制限すべきだったということです。

 

そうなると、会社側からすると、事故であろうと、精神的・肉体的な病気だろうと、一定期間会社を休んだ従業員が復帰する時には、必ず産業医(居なければ、従業員自身のかかりつけの医師)の細かい指示を受けておくことが大切になります。

 

また、従業員も重大な症状や死亡の危険があるのですから、理して働かないで、かかりつけの医師の診断を受けて、会社にしっかりと報告しておくことが大切でしょう。

 

この事案では、最も認定が難しそうな「復帰後の労働」と「死亡」との因果関係も認めていますが、1ヵ月半の間の会社以外の場所での過ごし方や生活の規則性など事案によっては争いになる部分が多々ありそうです。

 

ですから、必ずしも、復職して1ヵ月半で死亡した場合の全てに会社の安全配慮義務違反が認められる訳ではないことに注意が必要だと思います。

 

会社にとっては、事案によっては責任を負担する必要はないでしょうし、従業員にとっては、この裁判例だけを根拠にして「勝てる」とまでは思わない方が良いと思われます。

 

労働問題のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。

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