仮釈放とジョン・レノン射殺事件

ジョン・レノンという名前を聞いたことがある方は多いでしょう。

 

ビートルズのメンバーで、解散後も「イマジン」など有名な曲を世に送り出すとともに、戦争反対や世界平和へのメッセージを送り続けていました。

 

彼が1980年に、ファンと称するマーク・チャップマンに射殺されたことは、世界的なニュースになりました。

 

当時、私は高校生で、ビートルズのファンだったため、夢のように考えていた再結成の可能性が断たれたことに呆然としたことは記憶に残っています。

スタジオのイラスト(音楽)

そのマーク・チャップマンは、第2級謀殺の罪で「懲役20年から終身までの無期」を言い渡されました。

 

現在服役しているところ、最近11回目の仮釈放の申請をしていて、それが先月26日(2020年8月26日)に却下されました(8月27日東京新聞・共同通信社)。

 

この仮釈放という制度は、日本にもあります。

 

刑務所に入った者に反省の様子があり、社会に戻すことで立ち直れると判断された場合に、刑期の途中でも仮に釈放するという制度です(刑法28条)。

 

無期懲役の刑を受けた者であれば、10年を経過した後、法務省が所管する地方更生保護委員会が判断することになっています。

 

無期懲役で、たった10年で仮釈放されるの?という疑問もありますが、現実の運用は相当厳しいです。

 

特に,平成16年の刑法改正で有期懲役の最長期間が30年に延長されてからは(刑法14条)、それより短い期間で無期懲役囚を仮釈放することがしにくくなったようです。

 

確かに、無期懲役囚の方が有期懲役囚よりも早く釈放されるという運用は、社会の理解を得られにくいとは思います。

 

そこで、その頃からは、実質的には服役後30年経過してから審理が行われる運用となり、仮釈放が認められるとしても、その率は極めて低いです。

 

更に、数字に表れない部分として、例えば40才以上で服役した無期懲役囚は、仮釈放の審理が行われる前に刑務所内で亡くなってることが多いでしょう。

 

そのため、無期懲役で服役して仮釈放を受けられるのは、多くの監督者の目から30年間以上見て、共通して反省の情が認められる人に限定されているということです。

 

仮釈放を認めて社会内で早期に更正させた方が本人や社会のためというケースもありますし、仮釈放中に重大な犯罪を犯したケースもあります。

 

人の心理や変化が完全には分からないことから、「もしも、仮釈放して重大犯罪を犯してしまったら?」という心配が厳しい判断につながっているのでしょう。

 

なお、無期懲役囚はどこにでも収監されているわけではありません。

 

静岡刑務所は初犯の者など比較的軽い犯罪の受刑者が多いので、無期懲役の仮釈放がされることは余りないようです。

 

いずれにせよ

「仮釈放は甘くない。」

これだけは、厳然たる事実と言えるのでしょう。

 

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カテゴリー: 刑事事件のお話

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