11月も終わりさしかかり、街はクリスマスのムードで一杯ですね。
年々、クリスマス商戦が早くなっているような記がします。
ブログもそんな訳で、クリスマスにあわせたものにしてみました。
さて、今回からは、裁判員裁判が憲法の個別の規定に違反していないかという問題について、お話したいと思います。
前回あげた最高裁の判例では、裁判員制度が憲法31条・32条・37条1項・76条1項・80条1項に違反するかが争われました。
条文は沢山ありますが、おおきく2つに分けることが出来ます。
① 一つ目は、憲法31条・32条・37条1項は、国民が適正・公平な裁判を受ける権利を保障しているが、これは裁判官による裁判でなければ実現できないのではないかという問題です。
② 二つ目は、憲法76条1項は司法権は裁判所のみに帰属すると規定しており、その下級裁判所(ここでは各地の地方裁判所だと思って下さい。)の裁判官の選任方法を定めています。
とすると、憲法は裁判官による裁判という制度を予定しているのではないかという問題です。
両方まとめると、結局、裁判官でない裁判員が、裁判をする立場になって、判決を下すことは、憲法の上記①②の問題点から、許されないのではないかとい主張がX(弁護人)からなされたんですね。
最高裁は、国民の司法参加と適正な刑事裁判を実現するための諸原則とは調和和させることは可能だという前提の下に、次のように考えました。
現行法の裁判員制度は、以下の点から、公平性・中立性を確保できるよう配慮よされた手続で裁判員が選任されて運用されていると言えます。
① 裁判員は、くじによって選ばれ、不公平な裁判をするおそれがある者や検察官や被告人(弁護人)が理由を示さないで一定数を排除することができること
② 解任制度があり、判決に至るまでに裁判員の適格性が確保されるように配慮されていること
③ 裁判員が判断するのは事実の認定、法令の適用、刑の量定について合議することとされ、法令の解釈に関する判断は裁判官に委ねられていること
④ 裁判員には法令に従い、公平誠実にその職務を行う義務や守秘義務が課されていること
⑤ 裁判官、検察官、弁護人は、裁判員がしっかりと判断できるように、審理を迅速で分かりやすいものとするように努めなければならないとされていること
⑥ 裁判官と裁判員の評議は対等に行われ、裁判長は必要な法令に関する説明を裁判員にていねいにして評議を分かりやすくするように配慮しなければならないとされていること
⑦ 評決については、裁判官と裁判員の双方の意見を含む合議体の人数の過半数の意見によることとされていること
⑧ 裁判員に対するおどしや刑を重くしたり・軽くしたりするよう頼むことは罰則をもって禁じられていること
などです。
このような裁判員制度の仕組みを考慮すれば、公平な「裁判所」における法と証拠に基づく適正な裁判が行われることは制度的に十分保障されています。
そして、裁判員裁判の制度の中でも、裁判官が刑事裁判の基本的な担い手とされていることに変わりはないと判断しました。
従って、裁判官ではない、一般の方が裁判の判断に参加することは、憲法31条・32条・37条1項・76条1項・80条1項に反しないと考えたんですね。
逆に言えば、裁判員裁判の制度が適切でなければ、憲法のそれらの規定に違反して無効ともなり得るということです。
今後も、裁判員裁判の法律の改正や実際の運用が憲法に違反していないか、しっかりと見ていかなければならないと思います。