静岡市もコロナウィルスのクラスターが起きたり、新規感染が報告されたりして注意が必要となってきています。
当事務所の弁護士は仕事以外では遠方に出かけないよう注意しており、相談室も窓を開けて換気を良くして、ご相談の度に消毒をするようにしていますので、ご安心ください。
さて、ファクタリングという言葉をご存知でしょうか。
企業から売掛金(未回収の代金債権など)を買い取って、それを管理して回収する金融サービスのことです。
例えば、静岡市の中小企業A会社がトヨタ自動車から注文を受けて自動車の特殊なネジを作っていたとしましょう(意外と静岡市やその隣接する市町付近には優秀な製造業の会社が多いのです)。
A会社が今回のコロナウィルス不況で、自動車が売れずにネジの注文が減ってしまったとしましょう。
それでもA会社は、従業員の給与を支払わなければなりませんし、工場の家賃や高圧電気の電気料、機械や事務機器の維持費などを支払わなければなりません。
しかし、それを支払うための売上が入ってこないのですから、まずは銀行などの金融機関からお金を借りるよう努力するでしょう。
しかし、売上が良い企業には安心して融資ができても、売上が減った企業には融資をしてくれないのが金融機関です。
「雨の日に雨傘を奪い取り、晴れた日に雨傘を貸しに来る」と半沢直樹の原作者の池井戸潤氏が書いていたような記憶も・・・
しかし、A会社には「倍返し」なんかしている余裕はありません。
どこからかお金を調達しなければならないのです。
そこで、A社はトヨタ自動車に納品したネジの代金200万円(売掛金)がまだ支払われていないことに着目します。
このネジの代金の支払い期限は来月なので、トヨタ自動車に請求しても支払ってくれません(信用を失うのが怖いのでそれすら言えないでしょう)。
そこで、この200万円のネジ代金という売掛金をファクタリング会社に売却して現金化するのです。
ファクタリング会社は、利益を得なければならないので、売掛金を回収するための手数料を取ります。
手数料はファクタリング会社によって異なりますが、例えば10%だとすれば手数料20万円を控除した180万円をA会社はファクタリング会社から受け取れます。
よくよく考えれば、1ヶ月早く金銭を得るために10%の手数料を払うのですから、年利に換算すれば120%になり超高金利です。
ですから、ファクタリングをするということは、会社が金融機関で借りられず、代表者が消費者金融からも借りられない状況にあることが多いのです。
そのため、多くは、A会社とファクタリング会社との2社の間で契約がなされ、売掛金の債務者であるトヨタ自動車には秘密にします。
ファクタリング会社が地方の静岡市にあることはないので、A会社はインターネットなどで調べて、首都圏などの会社と契約をするのでしょう。
このように、ファクタリングというのは、これまでは会社の最後の資金調達の方法として使われていました。
ところが、最近、このファクタリングを個人にも使えるようにした給与ファクタリングが問題となっています。
今月の19日(令和2年8月19日)、大阪府警は、給与ファクタリングをしていた業者を逮捕しました(8月19日 日本経済新聞・共同通信社)。
金融庁は、ファクタリングは、売掛金債権の譲渡であり、お金を貸すわけではないので貸金業法や出資法という貸金の厳しい法律の制限を受けないとしています。
ファクタリングの実質は売掛債権を担保とした短期間の融資なのですが、社会の必要性から厳しい制限をかけないようにしているのでしょう。
しかし、これが会社勤めの人の給与を譲り受けて手数料を取るという形になると、勤務先に知られたくないという心理を逆手にとって極めて厳しい条件でのファクタリングや取り立てが行われる危険性が高いです。
現に、今回逮捕されたケースでは、年利に換算すると625%~1660%の利息になっていました。
年利1000%を超えるなど、まさにヤミ金と同じような利息です。
そこで、実質はヤミ金業者と同じ事をしている点に着目して、貸金業法と出資法が適用されるとして、これらの法律違反を理由に逮捕をしたわけです。
ここも法律的にはグレーな部分であり、将来的には「給与ファクタリング」を法律で禁止するか、手数料に上限を定める必要があるように思えます。
働いている人にとっては、給与は生きるための生命線ですから、ファクタリング(給与債権の譲渡)をしてしまうと生活が破綻するリスクが極めて高いからです。
ひとまず、友人や同僚から給与ファクタリングの話を聞くことがあったら、「止めた方がいい」とアドバイスしてやっていただければと思います。
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