朝晩は冷え込みが感じられて、秋が深まっていますね。
皆さんも風邪などをひかないように、お気をつけください。
行政法の一般原則として、権利濫用の禁止の原則があげられます。
行政といえども、権利を濫用したと言える場合には、その行為は違法となるという考え方です。
代表的な最高裁の判例として次のようなものがあります。
ある人が、山形県のある町で「個室付浴場」の営業をしようと考えて、公安委員会に許可の申請をしました。
「個室付浴場」とは、あまり聞き慣れない言葉だと思いますが、いわゆる「ソープランド」のことです。
「ソープランドなんか出来たら、好ましくない」と考えた、山形県と町は、何か阻止する方法がないかと考えました。
そこで、次のような手段をとることにしました。
その当時の風俗営業等取締法では、児童福祉施設から周辺200メートル以内では、個室付浴場の営業は禁止されていました。
そこで、町は、X会社の申請の許可が下りる前に、県知事から設置認可をもらって、200メートル以内の場所に、児童遊園施設(公園)を作ったんですね。
そこで、これを受けて、公安委員会は、一旦許可されていたXの営業に対して、営業停止処分を下しました。
更に、検察はXを風俗営業等取締法違反として起訴しました。
そこで、Xは、営業停止処分の取り消しや自分は無罪であると争ったんですね。
第1審・2審ともXは有罪とされましたが、最高裁は逆転判決で無罪としました。
この判例は、個室付浴場を阻止する目的でなされた、県知事の児童福祉施設の設置認可が「行政権の著しい濫用による」ものとして違法としました。
Xにも営業の自由があるため、法律の定める範囲内でなら、個室付浴場の営業をする権利があります。
それを、阻止する目的だけのために、児童福祉施設を作ることはやりすぎだということでしょうね。
しかし、最高裁まで争っている間、Xさんは個室付浴場の営業を維持できたんでしょうか?
結局、営業は廃止しなければならなかったのではないかと思います。
最近、パソコンの遠隔操作で誤認逮捕がされていますが、警察などの行政権が、その権力の行使を誤ると大変なことになることが実感されますね。