被害者が恐くなくても脅迫罪になる?

静岡では、桜が咲き始めたようですので、ブログの背景もそれにあわせてみました。

 

さて、新聞によると衆議院予算委員長の中井議員(民主党)の事務所に、小指や包丁とともに「天誅(てんちゅう)が降る」などと書かれた文書が届けられたそうです。

 

この事件で右翼団体所属の男が逮捕されました。

 

容疑は「脅迫罪」です。

 

この男が自分の小指を切って送りつけたようですが、自分自身の体を傷つける自傷行為は傷害罪にはなりません。

 

そして、中井議員には目に見える被害は生じていません。

 

とすると、送りつけられて恐い思いをしたことが被害となるので、これを脅迫罪とするしかありません。

 

では、中井議員が肝っ玉の据わった人で、全く恐いと思わなかった脅迫罪は成立するんでしょうか?

 

実は、脅迫罪の成立には、脅迫をされた人が恐いと実際に思う必要はないんです。

 

恐いと思うかどうかは、一般人、つまり普通の人がどう思うかを基準に考えます。

 

ですから、普通の人が恐いと思うような脅す行為をすれば、脅迫罪になんですね。

 

今回の事件でも、中井議員が実際に恐いとは思わなくても、普通の人であれば、人間の小指と包丁が手紙と一緒に送られてくれば「恐い」と思うでしょう。

 

ですから、本当に逮捕された被疑者がそのような行為をしたのであれば、脅迫罪は成立します。

 

もし、被害者が本当に恐いと思った時しか脅迫罪が成立しないとすると、被害者の気持ちについて、検察官に証明を求めることになります。

 

でも、それは人の心の問題ですから、解釈の幅が大きすぎて刑法の解釈方法として不適切です。

 

また、そうまでしなくても、普通の人が怖がるような行為をすれば、何らかの害悪が発生する危険性が生じますから、処罰するだけの必要性や許容性があるんですね。

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 刑事事件のお話

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