先週は夏休みをとって、花火を見に行ったり、休養をとりました。
リフレッシュ出来たか思って、月曜日から仕事を始めたら、猛暑の連続ですね。
昨日の静岡市の気温は35℃を超えたようです。
今日も、同じくらい暑いように感じます。
皆様も、水分をしっかり補給するなど、熱中症にはお気を付け下さい。
さて、今回は正当防衛での「防衛行為の相当性」について考えてみましょう。
正当防衛が成立するためには、防衛行為が相当でなければなりません。
例えば、素手で殴りかかってくる相手に対して、ピストルで反撃したら、防衛行為として相当ではないので、正当防衛は認められません。
では、素手で殴ったり、蹴ったりしようとしてくる相手に、包丁で対応する行為は正当防衛になるでしょうか。
通常は、やはり防衛行為としてやりすぎなので、正当防衛にならないことが多いと思います。
ただ、この判例はちょっと事情が違いました。
良くあることですが、自動車の駐車方法でジャマになる停めかたをしていたXさんを、Aさんが怒鳴りつけました。
Xさんは高齢者で、Aさんは39才です。
Xさんは、自動車をジャマにならないように移動したものの、どうも腹の虫がおさまらず、Aさんにむかって「言葉づかいに気をつけろ」と言いました。
すると、Aさんは、自動車を降りて、「お前、殴られたいのか」と言って、拳を前に突き出し、蹴り上げる動作をしてきました。
年齢差から見ても、素手ではとてもかなわないとXさんは怖くなり、自分の自動車に置いてあった刃体の長さ17.7cmの菜切包丁を取り出して「殴れるのならなぐってみい」と言いました。
ちなみに、菜切包丁(なきりぼうちょう)とは、野菜などを切る時に使う、刃が薄くて幅が広く、先のとがっていない包丁です。
Aさんは「刺すんやったら、刺してみい」といって動じないで2~3歩、Xさんに近づいてきました。
そこで、Xさんは「切られたいんか」とAさんにむかって怒鳴りました。
さて、このXさんの行為、犯罪(正確には暴力行為等処罰に関する法律違反)になるのでしょうか?
第1審は、Xさんの攻撃は、先制攻撃であり防衛行為ではないとして、有罪にしました。
第2審(原審)は、防衛行為とは言えるものの、やりすぎであるから過剰防衛にあたるとしました。
過剰防衛になると、情状によっては、刑が減軽されたり、免除されたりします。
これに対して、最高裁は、何と正当防衛を認めて「無罪」としました。
その理由としては次のことがあげられています。
まず、Aさんの方から「お前、殴られたいのか」と良いながら、殴ったり蹴ったりする動作をして威嚇を始めたこと。
これに対して、Xさんは後ずさりをして逃げている途中で、とっさに自分の自動車から菜切包丁をとりだしたものであること。
Xさんは菜切包丁を腰のあたりに構えて「切られたいんか」と怒鳴ったこと(包丁を振り回したりしていないこと)
これらの行為を総合すると、Xさんの行動は、防御的な行動に終始していたと認められること。
Aさんが39才に若くて体力があるのに対し、Xさんは高齢者で体力もなかったこと。
などです。
正当防衛になるかどうかも、個別に様々な事情を考慮しなければ判断できないということですね。
しかし、地方裁判所→高等裁判所→最高裁判所の判断が全て異なり、だんだん刑が軽くなっているというのも面白いですね。
刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。
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