民法の大改正の施行が来年の4月1日に迫っています。
改正内容から、以前もご説明した債権の消滅時効制度が変わるところを、より詳しくご説明します。
債権というのは,人に対して一定の財産的行為を請求する権利です。
例えば、貸金の返還請求のような「お金を支払う」という財産的行為を請求する場合です。
弁護士としてご相談やご依頼の中で消滅時効が関係する場面は非常に多いです。
貸金や売掛金などの債権を回収したいというご相談には、消滅時効期間は大丈夫か?を必ず確認します。
逆に、忘れていたような請求がなされてしまったというときも、消滅時効を主張して請求を阻止できないか検討します。
消滅時効の期間が過ぎていても、債務者などが時効を主張しなければ、弁済は有効です。
そのため、静岡県内でも、時効にかかった債権を安く譲り受けた業者が督促状を送りつけてくるという事案も珍しくなく、私も良く相談を受けて時効を主張すしています。
この消滅時効の期間は、来年の3月31日までは、営業に関係のない債権については請求をすることができるときから10年間、商売をやっている人の債権は5年間で消滅します。
そして、これとは別に5年よりも短い時効期間が定められています。
例えば、
・病院の診療費は3年
・小売店でお中元を買った代金は2年間
・飲み屋のツケは1年間
・DVDレンタル、成人式などの貸衣装代も1年間
となっています。
でも、これらを区別する理由に説得力が余りありませんでした。
例えば、成人式などの貸衣装代は貸している期間が短いから1年だけれど、営業用の機械を数ヶ月借りる場合には,貸している期間が長いから商売で貸した場合には5年とされていました。
でも、貸している期間が短くても、高額の貸衣装代だってあるでしょうし、機械を数ヶ月貸しても安いときもあるでしょう。
両者を区別する理由が良く分からないという批判は、学者からされていたところです。
そこで、今回の改正で思い切って整理することにしたのです。
① 債権を行使することが可能であることを知った時から5年間
② たとえ知らなくても客観的に債権の行使が可能であればその時から10年間
で債権は時効で消滅することになります。
例えば、貸金債権であれば、返済する期限が決まっていますよね。
その場合には、期限になれば「お金を返して」と請求できることは知っているので、期限から5年間で貸金債権の時効による消滅を主張できます。
仮に、期限が曖昧で、就職が決まったら支払うというような場合には、借りた人の就職が決まっても、それを貸主に教えなければ「お金を返して」と請求できるかは分かりません。
その場合には就職が決まってから5年経っても貸金債権は消滅しません。
もっとも、借りた人の就職が決まっていれば、客観的に見れば「お金を返して」と言える状態です。
そこで、貸主が就職が決まったことを知らなくても、就職が決まってから10年経ったら貸金債権は時効の主張により消滅するということです。
これ以外には、交通事故、犯罪など違法な行為(不法行為)による損害賠償請求については民法は別の消滅時効制度を設けています。
このあたりは、また交通事故を例にしてお話していきたいと思います。
消滅時効については、期間だけでなく、時効の用語も大きく変わっています。
「時効の中断」という言葉も法律用語から姿を消すことになります。
ひとまず、来年の4月からは消滅時効にご注意を。
「日常生活の法律問題」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。