季節は完全に秋になりましたね。
11月の初めは、静岡では大道芸ワールドカップで街は賑やかになります。
街中や港をブラブラしながら大道芸人のパフォーマンスを見ていくことは、楽しいものです。
さて、「お世話になります」という言葉。
社会人としては、「こんにちは」と変わらないただの挨拶ですよね。
私も数十年前になりますが、勤め人だったときにはどのような電話でも「お世話になります」と言っていた記憶があります。
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ところが、私たちの業界では、ちょっと使いにくい場面があります。
その場面とは、法曹同士が仕事で会話をするときです。
何故なら、法曹が仕事で相手の「お世話に」なることはないし、なってはいけないことも多いからです。
刑事弁護を例にすると一番分かりやすいと思います。
被疑者、被告人が無実を主張しているとき、弁護人が検察官に電話をかけたとき、どちらかが「お世話になります」というのは非常に違和感があります。
検察官の主張する事実を被疑者、被告人が認めている事件でも、やはり刑の重さで争うので、検察官から「お世話になります」という言葉を聞いた記憶は余り有りません。
もちろん、私も言いません。
それと同じ事が他のケースにも当てはまるのです。
弁護士と裁判官の関係も同じようなことが当てはまります。
裁判官は中立公正な立場で判断をするので、原告側の弁護士にも被告側の弁護士にも「お世話に」なる関係ではないですよね。
ですから、裁判官から「お世話になります」という言葉を聞いたことはほとんどありません。
私が司法修習生(研修生)の頃の指導教官から聞いた話で印象に残っていることがあります。
「裁判所にいるときには、裁判官は中立公正を保たなければならないから、弁護士に挨拶をしない方がいいという考えもあるんですよね。」
といいつつも、
「でも、私は、挨拶をしたから中立公正を疑われるとは思わないし、事件の判断には関係ないから、挨拶くらいはしてもいいと思っています。」
とのお話でした。
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弁護士になりたての頃は、実際に事件で何度も当たっていても、裁判所では一切挨拶をしない裁判官もいました。
最近では、どちらかというと軽く挨拶をしてくれる裁判官の方が多数派のように感じます。
もっとも、挨拶の言葉は「こんにちは」「どうも」とかがほとんどで、やはり「お世話になります」という言葉はほとんど聞きません。
私も弁護士になりたての頃は、検察庁を除いては、むやみやたらと「お世話になります」を連発していた記憶があります(当時は、今よりはるかに検察は弁護士に敵対的だったので)。
途中から、何となく「お世話になります」が宙に浮いているような印象を受けたことから、場面によって使い分けるようにしました。
特に、裁判所の期日では、弁護士も誰の「お世話に」なってはいけないので、裁判官にも相手弁護士にも「こんにちは」と中立的な挨拶をするようにしています。
でも、世間では「お世話になります」って、別に本当にお世話をする意味で使ってはいませんよね。
直接、敵対的な当事者の方に電話をしたときにも、私が「こんにちは」というと「お世話になります」と応える方の方が多いように感じます。
さて、果たして「お世話になります」という言葉の意味にそこまでこだわる必要があるのか?
法曹だけが言葉にこだわりすぎているのか?
それは、皆さんが依頼した弁護士が、敵対相手の弁護士に「お世話になります」と挨拶をしたのを見たらどう感じるのかがヒントになりそうですね。
「弁護士のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。