今日の静岡は良い天気で、暖かいというよりも、少し暑いです。
そろそろ初夏の雰囲気が出てきました。
最近、ツイッターとfacebookを始めて、ついつい夜更かしをしてしまっています。
大したことは呟いてはいないのですが、フォローをいただいたり、返信をいただいたりすると嬉しいものですね。
今後も、できる範囲でやっていきたいと思います。
さて、今日は、以前にお話しした派遣のお話の続きです。
「黙示の労働契約」の成否が争われたケースから考えていきたいと思います。
事案としては、派遣社員Xさんと、派遣先Y社との間に黙示の労働契約が締結されたと認められるかが問題となったものです。
まだ、労働者派遣法が施行される前の裁判例(サガテレビ事件)ですが、一つの基準にはなると思います。
印刷会社であるA社に雇われていたXさんは、A社からテレビ放送会社のY社に派遣されていました。
A社(印刷会社)とY社(TV会社)との間には、業務委託契約が結ばれていて、これに基づいて、Xさんは、Y社(TV会社)の放送編成の仕事をしていました。
その後、Xさんたちは、労働組合を結成してストライキや残業拒否、A社(印刷会社)との団体交渉を行うようになりました。
A社(印刷会社)はXさんへの対応に苦労して、事業閉鎖をすることになり、Y社(TV会社)の了承を得て、同社との業務委託契約を合意解約しました。
そして、A社(印刷会社)は事業閉鎖するという理由で、Xさんを含む全従業員を解雇しました。
Xさんらは、事業閉鎖されたA社(印刷会社)に何を言ってもしょうがありません。
かといって、XさんらとY社(TV会社)との間では、労働契約の合意は明示されてはいないです。
そこで、Xさんらは、Y社(TV会社)との間に黙示の労働契約が成立していると主張をしました。
もし、これが認められれば、Xさんたちは、Y社(TV会社)の従業員として働き続けられ、賃金も払ってもらえることになります。
第一審では、Xさんたちの申立を認めましたが、結局、控訴審(福岡高等裁判所)ではひっくり返って、申立は認められませんでした。
そこで黙示の労働契約が成立するための要件として示されたのが以下の内容です。
① 外形上、派遣先企業の正規の従業員とほとんど差異のない形で労務を提供し、
従って、
② 派遣先企業との間に事実上の使用従属関係が存在し、
しかも、
③ 派遣元企業がそもそも企業としての独自性を有しないとか、企業としての独立性を欠いていて、派遣先企業の労務担当の代行機関と同一視しうるものである等その存在が形式的名目的なものに過ぎず、
かつ、
④ 派遣先企業が派遣労働者の賃金額、その他の労働条件を決定していると認めるべき事情があるときには黙示の労働契約が締結されたと認める余地があるという基準です。
事例に則して見ると、
① XさんたちがY社(TV会社)の他の従業員と同じ仕事をしており
② Y社(TV会社)とXさんたちとの間に、使用従属関係が認められ
③ A社がY社(TV会社)の機関の一部になっていて独立性を持たず
④ Xさんたちの賃金などの労働条件をY社(TV会社)が決めている
というような場合には、XさんとY社(TV会社)との間には労働契約が認められます。
しかし、本件では確かに、
① XさんたちはY社(TV会社)の従業員と同様の仕事をしており
② XさんたちとY社(TV会社)との間には、使用従属関係は認められます。
でも、
③ A社(印刷会社)はY社(TV会社)から全く独立した企業であって、
④ Xさんたちの賃金などの労働条件は、A社(印刷会社)が決めていました。
従って、先ほどあげた4つの要件を全てはみたさないので、黙示の労働契約は認められないとしたんです。
現在の派遣の形態から見ると、通常の登録型派遣で、派遣先と黙示の労働契約が成立するのは相当難しそうです。
労働問題のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。