春らしい陽気になってきましたね。
桜の花も見頃です。
3月よりは花粉の量も減ったようで、少しは過ごしやすくなりました。
さて、今回は派遣について考えてみたいと思います。
法律的に見て、派遣契約の特別な所ってなんでしょう?
その一つは、実際に働いている企業の事業主と雇用契約(労働契約)を結んでいない所です。
派遣の場合、労働契約は、派遣元(派遣をしている事業主)との間でします。
派遣先(実際に働いている企業の事業主)との間では、労働契約はしていないんですね。
このような派遣という雇用の形は、派遣元が賃金を搾取したり、自社の従業員でないということで、派遣先での労働環境が悪かったりする危険があります。
実際に、過去にはそのような歴史があったので、法律で事業の許可・届出制を定めるなど、様々な規制がなされています。
法律の名前は、次のとおり、ちょっと長いです。
「労働者派遣事業の適性な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」
略して「労働者派遣法」と呼んだりします。
派遣労働者は、原則として正社員ほどの労働は求められない代わりに、その地位は弱いです。
例えば、派遣元のA社と労働契約をしていたXさんが、派遣先のY社で働いていた場合、Y社で仕事が無くなれば、Y社は簡単にXさんをやめさせることができます。
Y社の従業員をやめさせるのであれば、解雇にあたるので、客観的に合理的な理由が必要です。
例えば、
会社の業績が非常に悪くなって、どうしても従業員を減らさなければならないとか、
従業員が会社のお金を横領するなどの悪質な犯罪をした場合などに限られます。
ところが、派遣の場合には、XさんとY社との間には、労働契約はありません。
ですから、Y社がA社との間でした人材派遣契約の期間が経過すれば、Y社は「もう更新しません。」と言うことができるんですね。
このような派遣の形を利用して、派遣社員なのに従業員と全く同じ仕事・ノルマを課したり、残業をさせたりする例もあるようです。
もし、Xさんが正社員と全く同じ労働をするのであれば、Y社と雇用契約を結ぶことが望ましく、Y社も賃金や福利厚生も考慮しなければなりません。
逆に、Xさんが、正社員とは違う一時的な仕事や簡単な仕事をさせるのであれば、賃金が安くて雇用が一時的でもやむを得ないでしょう。
このように、派遣社員と正社員とでは、法律的な契約の形も、実際の勤務内容も違うのですが、その区別が不明確なこともあります。
そこで、そのような場合に、派遣先Y社と派遣社員Xさんとの間には「黙示の労働契約」があったと言えないかが争われることになります。
「黙示の労働契約」の具体例については、また機会をみて、裁判例をひきながらお話できればと思います。
労働問題のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。