桜が満開をそろそろ終えることですね。
静岡市内では満開だったり、葉桜になりかけたりしています。
静岡祭りと桜がちょうど重なったこともあって、今年は桜を楽しめた方も多かったのではないでしょうか。
さて、自動車の運転中にスマートホンの操作をしてはいけないことはご存じだと思います。
運転中にやってはいけないことは他にもありますね。
脇見、カーナビの操作、TVを観るなどです。
今月の19日に滋賀県の大津地方裁判所で、ながらスマホで事故を起こした事件についての判決が出ました。
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事件の内容は、大型トラックの運転手が、高速道路を運転中に、スマートホンのアプリを操作したり、車内に落としたスマホを拾うなどしました。
スマホを使うときって、うっかり落としたりしますよね?
この運転手も車内に落としたスマホをあわてて拾おうとしたようです。
「スマホをちょっと操作して落として拾う」だけの時間ってどれくらいだと思いますか?
この事件では約10秒間でした。
もし、高速道路を時速100kmで走っていた場合、その自動車は10秒間で約278m走ります。
つまり、普通自動車でも約1トン、大型トラックだったら約8~25トンもの重さのものが、時速100kmで278m無人運転になるということです。
今回の大型トラックの総重量が20トンだとすれば、普通自動車20台がまとめて時速100kmで無人運転をして、追突事故を引き起こしたことになります。
この大型トラックが渋滞中の自動車の列に追突したことで5人が死傷してしまいました。
こう考えると、スマホに限らず、自動車のながら運転というのは恐ろしいことだと感じますよね。
警察や検察官も当然、重く受け止めて、禁錮2年の求刑を求めました。
「禁錮(きんこ)」というのは、「懲役(ちょうえき)」と同じように刑務所に入れられますが、懲役のように刑務所内で働く刑務作業が無い刑を言います。
もっとも、何年も働かないのは人間にとって苦痛のようで、ほとんどの禁固刑を受けた人は志願して刑務作業に加わるようです。
検察官が裁判所に求める刑罰(求刑)は通常は重めにしますので、実際に言い渡される刑は求刑よりも軽いことがほとんどです。
例えば、禁錮2年の求刑だったら、判決は禁錮1年8月などが予想される判決です。
この事件を担当した弁護人も当然そのような判決を予測していたでしょう。
ところが、大津地裁では、検察官の求刑の禁錮2年よりも更に重い禁錮2年8月を言い渡しました。
これは、時々あるとはいえ珍しい判決です。
ちなみに、私が刑事弁護人になった事件では求刑以上に重い判決を受けたことは一度も有りません。
それだけ、この事件で裁判所はながらスマホでの運転を重く見たのでしょう。
これは、昨今の運転状況に裁判所も危機感を持っているのだろうと思います。
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人間の感覚というのは恐ろしいもので、危険だと思うことがやり続けるうちにどんどん鈍っていきます。
・赤信号で止まっているからスマホを操作しても良いだろう。
↓
・運転中でも安全な道路なら良いだろう。
↓
・高速道路は一般道より注意を落としても危険はないだろう。
↓
・10秒間くらいのながらスマホに危険を感じなくなる。
このように危機意識が下がって、自分の中での自動車運転の注意義務を落としていくリスクは、この事件の運転手に限らず誰にでも当てはまりそうです。
そういう意味で、この判決では
「求刑以上の判決を下すことで、マスコミなどに社会問題として取り上げてもらい、今後のながらスマホでの事故を減らして欲しい」
という意識が裁判官にあったのかもしれません。
私たちも気をつけたいですね。
刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。