今週は大寒波が日本を襲うという天気予報が出ていますね。
静岡では考えられない最低気温マイナス3℃という週間予報がされているので、寒さが苦手な私は今から防寒対策を考えています。
東北や北海道の方から見ると「甘い!」と言われそうですが・・・
さて、今日、月曜日から始まる通常国会に、民法の相続の分野についての改正案が提出される予定と報道されています。
いくつかの新聞記事を読んでいると、重要な改正箇所については、今まで私たち実務家が疑問に思っていた点についても改良がされています。
改正案が成立するときには修正が入るでしょうが、大筋での方向は決まっているはずなので、その点について予備知識として考えてみました。
まず、配偶者を保護する方向性が打ち出されています。
その一つとして、配偶者の法定相続分を増やすことが検討されています。
今は、配偶者は遺言がなかった場合には、配偶者と子が相続したときに、配偶者は法定相続分として遺産の2分の1を相続します。
それを、結婚期間が長い配偶者について3分の2に増やすことが検討されています。
離婚する場合に配偶者に2分の1財産分与するのですから、相続する配偶者が3分の2相続するのは自然に思えますよね。
配偶者保護の二つ目として、「配偶者居住権」という権利を新設することが提案されています。
これは、親子の間で相続争いが起きてしまったときに、配偶者に夫(妻)と住んでいた自宅に居住する権利を与えるのが目的です。
そして、色々な理由で親と子の関係が上手くいっていない場合に、親が住んでいる家の相続の居住をめぐって問題がおきます。
例えば、夫婦に長男・長女がいる家庭で考えてみましょう。
父親が死亡したとき、母親と長男・長女との折り合いが悪く(母親が悪いか子供が悪いかは別として)、母親が住んでいる自宅を売却して金銭で分けたいと長男・長女が提案してきたとします。
ここで、母親(配偶者)が自宅を取得するためには、長男・長女に土地・建物の価値の2分の1に相当する金銭を支払うなどしなければなりません。
そこで、土地・建物お金にの価値が4,000万円と評価された場合には、母親(配偶者)は2,000万円を支払うことになります。
でも、母親(配偶者)は、自宅の土地・建物に修正住めれば良いだけで、売却してお金にかえたいとは思っていないことが多いですよね。
そこで、終生住むことができる配偶者居住権という権利を作って、その価値を例えば自宅の価値の40%に設定したとしましょう。
その場合、母親(配偶者)が子供たちに支払わなければならないお金は、
4,000万円×1/2×0.4=800万円
となるため、相続した金銭や母親(配偶者)の預金から支払うことをしやすくするということです。
もっとも、その場合、母親の年齢や健康状態によって配偶者居住権が消滅する時期が大きく変わるので、どう評価するかで争いになるかもしれません。
更に、配偶者保護として、結婚してから20年以上たった夫婦については、夫(妻)が配偶者に自宅を生前贈与したり、遺言で「与える」と書いた場合には、それを遺産分割から外して配偶者のものにするという規定も提案されています。
そして、配偶者保護と同時に不公平だと考えられてきた相続人以外の親族による介護を無視する制度を変えていきます。
簡単に言うと、同居して義父母の介護に苦労したお嫁さんなどに金銭を請求する権利を与えようとするものです。
今までは、嫁いできた妻は、自分の日常生活を犠牲にして義父母を介護しても「あなたは他人だから」と相続で除外されてきました。
それを変えて、相続の中で介護の苦労を金銭で評価しようとするものです。
もっとも、デイサービスの利用状況によっても介護負担に差があったり、他の相続人から見ると「亡くなる直前まで元気でほとんど介護の苦労はしていない」という異論もありそうです。
「どういう場合に、いくらの金銭の請求ができるのか?」を一律に定めるのは難しそうです。
ここも、相続で新たな争点になるのかもしれません。
制度を変えた場合、むしろ争う部分が増えるのかもしれません。
でも、人はそれぞれ別々の生活をして死を迎えますので、相続のことを一律に法律で定めること自体が無理だと思います。
やはりそれぞれの家族の実態にあった公平な相続制度に変えていくことは必要なのでしょう。
相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。