最近、「愛してたって秘密はある」というドラマ(日本テレビ系列)の本当の最終話が、Hulu(フールー)という有料オンデマンドで放映されていると話題になりました。
ちょっとズルい気もしますが、Huluは2週間無料体験ができるので、インターネットから登録さえすれば見ることができるそうです。
私はドラマを観ていなかったのですが、話題になったのでHuluに無料体験で登録して最終話だけ観てみました。
福士蒼汰が演ずる主人公が司法修習生というのは、ミムラが主演だったビギナー以来のように思えます。
実はこのドラマ、私にもメリットがあります。
それは、実務修習で担当している司法修習生を、依頼者や相談者の方に説明するのが少し楽になったことです。
結構、ドラマに助けられている感が大きいですね。
もっとも、ドラマを観ていたという方には「二重人格ではありませんので」と言いわけする必要も生じてしまいましたが 笑
さて、裁判や調停では、土地や建物の価値をめぐって解決が長引くことがあります。
例えば、遺産分割の調停で亡くなった親の土地・建物が遺産に入っていたとします。
その土地・建物に長男家族が住んでいたとすれば、遺産分割で取得したいと考えるでしょう。
長男の子供が小中学校に通っていたり、近所の人と仲良くしていた場合には、引っ越すことはためらわれます。
かといって、長男だけに土地・建物を全て相続させてしまったのでは、他の相続人、例えば二男にとって不公平です。
そこで、長男が実家の土地・建物を全て取得する代わりに、二男に法定相続分(2分の1)に相当するお金を支払うという解決方法がとられます。
このとき長男から二男に支払われるお金のことを「代償金(だいしょうきん)」といいます。
この代償金の額は、結局実家の土地・建物の価値の2分の1になるわけですから、「土地・建物がいったいいくらなのか?」が争いになるのですね。
長男からしてみれば、二男に払うお金は少ない方が良いので、例えば
「土地・建物の固定資産税の評価額は1,000万円の価値だから500万を二男に払う」
と主張したとします。
これに対して、二男としては、
「実家のある場所は、住宅街としだて人気が高い所だから少なく見積もっても2,000万円で売れるはずだ」
「不動産業者の査定でも2,000万円を越えている。だから、自分に払われる代償金は最低でも1,000万円だ」
と主張していきます。
つまり、長男は土地・建物が安い方が得なので出来るだけ安い評価をした資料を提出し、二男は高い方が得なので、高い評価をした資料を提出するわけです。
そこで、裁判所の手続で
「土地・建物の本当の価値はいくらなのか?」
が問題となるのです。
しかし、私が破産管財人として不動産を売却したり、全日本不動産協会の講師や相談の時に不動産業者の方と話しをすると、土地・建物(不動産)には「本当の価値」はないことがわかります。
結局、不動産の価値は需要と供給の関係で決まります。
欲しい人が多いタイミングで得れば高く売れますし、そうでない場合には安くなってしまします。
例えば、東日本大震災が起きる前は、海の近くでも潮風で建物や自動車がさびるほど近くなければ、特に問題なく売れていました。
ところが、あの津波の衝撃的な映像の影響でしょう、それ以降は「海に近い」というだけで売れなかったり、極端に価格が安くなってしまいます。
しかし、裁判所の手続で「不動産の価値は分からない」で終えてしまうと、遺産分割など紛争が解決できません。
そこで、妥協案として「鑑定(かんてい)」という方法がとられます。
これは、当事者(先ほどの例で言うと長男と次男)とは無関係な不動産鑑定士に裁判所から不動産の価値を鑑定してもらって金額を定めます。
もっとも、不動産の評価は水物ですから、この不動産鑑定士の評価が長男に有利になるか?二男に有利になるか?が読めません。
更には、不動産鑑定士の報酬はそれなりの高額になりますが、その負担は当事者がします。
ですから、できれば鑑定には進みたくないのが代理人となった弁護士の本音です。
そのため、長男が1,000万円、二男が2,000万円と譲らないのであれば、やむを得ず1,500万円でお互いに妥協するという方法がとられます。
裁判手続といっても、民事事件は刑事事件と違って真実発見よりも、当事者の紛争解決の方が重視されますので、当事者が価格に合意すれば、裁判所としてもそれを最大限尊重します。
結局、土地・建物(不動産)の価格は、裁判になっても妥協した額になることが多いのです。
不動産トラブルの基本知識についてはこちらをご参照ください。