証人になるのはお嫌ですか?

先ほど、長野県の南部を震源とする地震がありましたね。

 

静岡市内ではそれほど揺れなかったようですが、日曜の朝ということで朝風呂にゆったりとつかっていた私は結構な揺れを感じました。

 

裸のときに地震が起きると飛び出しても行けないので、何となく自分が頼りく感じてしまいます・・・

 

その後、特に大きな被害は報道されていないようなので良かったですね。

 

さて、「裁判」といわれると多くの方が身構えてしまうことが多いですよね。

 

当事者として裁判に出て行くというのは、一生に一度あるかないかですからやむを得ないと思います。

 

現に、私自身も代理人としては週に何回も裁判所に行っていますが、自分が当事者として裁判所に行ったことは一度しかありません。

 

これは、代理人として違法行為を行っていた相手を訴えたところ、相手から逆切れされて、依頼者だけでなく私も一緒に訴えられたケースでした。

 

この相手は裁判官まで訴えていましたから、どうしようもないケースだったのですが、それでも「被告 谷川樹史」として裁判所に行くのは楽しくはありませんでした(もちろん全面勝訴しましたが)。

 

ですから、裁判には行きたくないというのが当たり前の心理であることは十分理解できます。

 

ただ、訴えたり、訴えられたりして裁判の当事者となってしまえば、出て行かなければ負けてしまいますから、やむを得ず裁判所に出頭するでしょう。

 

問題は、証人として裁判所に出てきていただく場合です。

 

例えば、夫が不倫して、妻が不倫の相手女性に損害賠償請求したいと考えたとしましょう。

 

このとき、夫が認めていればそれ自体が証拠になるのですが、離婚を伴う慰謝料請求の場合には、夫は妻と敵対するので不倫を否定することが多いです。

 

夫側の弁護士も依頼者から「やっていない」と言われれば、よほど決定的な証拠が出てこない限り説得できませんので、裁判で否定してきます。

 

そんなとき証人が証言してくれると裁判の大切な証拠となります。

 

では、証人は当事者(妻・夫・不倫相手)以外なら誰でも良いのでしょうか?

 

実はそうではありません。

 

良くあるケースとして
妻の父母や兄弟姉妹が、夫が不倫を認めて謝っていた場面を見ていた」
と言われることがあります。

 

確かに、妻の親族が証人になることはできますが、離婚するときにはたいてい妻の親族と夫との関係は最悪になっています。

 

そのため妻の親族は、裁判所から「妻に有利な証言をする可能性が高い証人」と見られてしまいます。

 

仮に証人が嘘をついていなくても実の受け止め方自体が妻に有利な方向に偏っている可能性があることから、証言としての価値は大分下がるということです。

 

では、どんな人が証人として適切なのでしょうか?

 

最も適切なのは「当事者と利害関係がない人」又は「証人にとって不利益な事実を話してくれる人」です。

 

「利害関係がない人」の例としては、夫と不倫相手がいつも行くラブホテルの前のガソリンスタンドで働いている人などが考えられます。

 

ガソリンを入れるときに、運転手と助手席の人の顔を見ていて、ラブホテルにその自動車が入っていくのを見ていたというようなケースです。

 

「証人にとって不利益な事実を話してくれる人」とは、例えば夫や不倫相手の会社の同僚でしょう。

 

社内不倫というのは良くあるケースなので、社内では不倫の噂を多くの同僚が知っているということも珍しくありません。

 

その証人が、
「不倫相手の女性の部屋から朝夫が出てくるのを見た」
「社内旅行で二人が抱き合っているのを見た」
という証言をしてくれて、それが今までの夫や不倫相手の主張と矛盾すれば、これも大きな証言と言えるでしょう。

 

この証人は夫や不倫相手の同僚ですから、裁判で2人の前で真実を証言すると、恨みを買ってしまうので会社での仕事が極めてやりにくくなります。

 

それでも証言をしてくれるというのであれば、通常は信用できるということでしょう。

 

もっとも、その証人が夫と出世のライバル関係にあったり、派閥で対立していたりすると、いきなり証言の価値が下がってしまいますので呼ぶ場合には注意が必要です。

 

このような信用性が高い証人を呼べれば良いのですが、これには大きな問題があります。

 

自分のことではないのに、裁判所に出て行って証言をして、場合によっては一方の当事者から恨みを買うようなことは誰もしたくないのです。

 

つまり、弁護士が頼んでも来てくれないことがほとんどなのですね。

 

そのため、法廷で真実を証明したいときに、弁護士としては非常に歯がゆい思いをすることになります。

 

最後の手段としては、断られた証人に対して、裁判所から「呼出」という形で出頭を求める方法があります。

 

出頭しないと罰則はあるのですが、それでも出てこない人も珍しくありません。

 

なかなか、法廷で有効な証言を得ることにはハードルが高く、そのため代理人である弁護士も裁判所もまずは書面や画像などの資料で、出来るだけ事実を確認しようとします。

 

裁判手続を初めて経験する方は、おそらく
「どうして、こんなに書面のことや印鑑のことを一生懸命争うのだろう?」と思われるかもしれません。

 

裁判での証言でこちらに有利な判決を得ることは簡単ではないので、それ以外の証拠でまずは固めようとしているのですね。

 

「裁判手続で知っておきたいこと」の過去記事はこちらへどうぞ。

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カテゴリー: 裁判手続きで知っておきたいこと

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