離婚の裁判で、「絶対に離婚したくない」という夫(妻)が勝った場合に、得られる者は何でしょうか?
「離婚したくない!」と裁判で主張して、勝った場合には、「請求棄却(せいきゅうききゃく)」という判決が出されます。
つまり、「相手からの離婚の請求を認めない」という判決が出るんですね。
これには、全面勝訴!という印象を受けられるかもしれません。
しかし、忘れてはいけない点がいくつかあります。
① 決して相手の愛情が戻ってきたわけではなく、同居して暮らす夫婦生活は決して戻っては来ないこと
② 離婚したくない妻が、夫から生活費(婚姻費用)をもらう場合、その金額は同居して生活をしている夫婦のように多くの額には決してならないこと。
逆に、夫にとっては意味の無い負担がずっと続くこと。
③ 出て行ってしまった夫(妻)と別居している期間が長期になってしまうと、それ自体が「結婚生活が壊れている」ことにあたるとして、何年か後にもう一度裁判を起こされると、結局、離婚が認められてしまう場合もあること
などです。
この①~③の点について、見ていきましょう。
まず、①です。
以前、離婚したくない場合の調停として、夫婦関係円満調整の調停があると言いました。
この調停で話をして、お互いにゆずりあえる段階であれば、夫婦関係の修復は可能でしょう。
しかし、全ての調停で合意できずに、裁判になってしまった場合には、そこまで争っている相手(夫・妻)に離婚の意思を変える気持ちがないことは明かです。
そうすると、離婚の裁判で離婚が認められなかったからといって、相手が帰ってきて夫婦として生活していくことは、ほとんど期待できないのです。
次に②についての説明です。
離婚が認められない場合には、夫(妻)は夫婦として子供を含めて他方の生活を助けなければなりませんから、生活費(婚姻費用)を支払う義務があります。
この生活費の金額を、以下の例で考えてみましょう。
・14才以下の二人の子供がいる
・夫の年収(額面)は600万円
・妻の年収は、パート(額面)60万円程度
この場合に、争って、審判になった場合、夫が妻に支払うべき生活費は、月額12万円程度が相場となっています。
(もっとも、高額な医療費・学費などがかかる場合には、加算されるケースはあるので、その主張が必要です。)
とすると、妻は、例えば、幼稚園と小学生の子供二人を、自分のパート収入5万円+12万円=17万円で育てていかなければならないわけです。
家賃や光熱水費など必要経費をはらったら、10万円を切ってしまい、その中から、食費・教育費などを出すので、相当きつい生活となります。
最後に、③についてです。
ここでの裁判例というのは、東京高等裁判所での判決です。
6年以上別居が続いた夫婦(小さな子供がいない場合)で、夫から妻へ相当額の財産をゆずること前提に、夫からの離婚請求を認めています。
このケースは、夫には、裁判の時点で浮気の確定的な証拠がありましたが、妻には過去に浮気の疑惑があったという微妙な夫婦関係でした。
色々な条件で折り合わないために和解できず、離婚事由(離婚事由の回で書いた①~⑤の事由です。)があるのか争いになりました。
結局、「既に夫婦関係は壊れている」(⑤の事由がある)として、浮気をした夫からの離婚請求が認められてしまいました。
こうなると、「絶対に離婚しない!」といって、離婚の裁判で勝訴した場合に得られるものって何でしょうか?
例えば、子供の親権をどうしても譲りたくない父親であれば、お金の問題ではないので、最後まで争うことに意味はあるとは思います。
ただ、そのような特別の事情がない場合には、十分な財産分与・養育費・慰謝料などの支払いを受けて、和解により離婚をして、新生活に踏み出すというのも一つの選択として考えることは必要だと思います。
離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。
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