こんにちは。弁護士の谷川です。
変人にしてエンターテイメントの天才。
この人を語るにはこんな言葉が適切かもしれません。
「え?リチャード・バックマンって作家は何者?」という方も多いと思います。
私も当時は、すっかり騙されました。
詳しい方は知っているかもしれません。
一つは、リチャード・バックマンが書いた作品のうち「The Running Man」という本が、日本語訳では「バトルランナー」とされており、SF映画化されたこと。
そして、もう一つは、リチャード・バックマンとは仮の顔で、世間に良く知られている顔は、スティーヴン・キングという有名な作家だったということ。
仮にキングの名前は知らなくても、映画化された作品はご存じではないでしょうか?
例えば、①キャリー、②シャイニング、③ミザリー、④ショーシャンクの空に、④スタンド・バイ・ミー、⑤グリーン・マイルなどなどです。
彼は、ホラー小説作家と認識されているかもしれませんが、その枠にとどまりません。
「バトルランナー」のようなSF小説
「スタンド・バイ・ミー」のようなノスタルジックな小説
「刑務所のリタ・ヘイワース(ショーシャンクの空に)」のような人生観とアクションが入り混じったもの
「グリーン・マイル」のようなファンタジーっぽい小説
など、何でもありの小説家です。
キングの話を聞いていると、本を書く時には、構成も考えず頭の中に浮かんできたものを次々と書いていくそうです。
まさに、天から舞い降りた話を紡ぎだす小説家ですね。
それ故に、話が途中からおかしくなってきて、最初は恐ろしかったのにだんだん変な話になってしまうこともあります。
例えば、「It(イット)」という長編ものがそうでした。
とはいえ、私から見てですが、わくわくする本にあたる確立は相当高いので、失敗作に当たった時には変人の気まぐれだと我慢するしかありません。
さて、私は、数あるキングの小説の中から、なぜこの本を選んだかというと、①見事にキングに騙されたこと、②映画とのギャップの二つをお話したかったからです。
まず一つめです。
キングは売れっ子作家で、話が舞い降りてくると、ぶっ続けで小説を書き続け、時には多作になりすぎたようです。
でも、出版社からは本が読者にいきわたってから次の本を出してほしい(その方がたくさん売れる)という理由で、1年に1冊にして欲しいと要望されていました。
そして、キングは、自分の名前が自分を縛っており、実は周りに動かされている人形なのではないかと疑問を持つようになります。
ビートルズも昔、同じ悩みを持って、ポールが別の名前で曲を出したいと要望したことがあるそうです。
でも、私のようなビートルズファンの方であれば、ポールが歌いだしたら声とメロディーで、数十秒で彼だと分かると思います。
そのため、その話は見送られたとのことです。
ところが、作家の場合は、名前を変えれば気が付かない人も多いでしょう。
例えば、宮部みゆきが時代小説をいくつか書いていますが、あれを別名で出されたら、私は同一人物と見破る自信はありません。
リチャード・バックマンの場合にも、キングの大ファンだったくせに、全く無名の作家と信じて本屋で最初の2〜3ページ目を読んで、TVのヴァラエティものを皮肉っている所に共感して買ってみたのです。
読み進めると、そのスピード感たるや半端なものではありません。
「何だ!このリチャード・バックマンという余り知らないSF作家は!」
と驚きながら夕飯も食べずに一気読みしてしましました。
それからは、「良い作家を見つけたぞ〜」とウキウキしながら、リチャード・バックマンのシリーズを買い集めていったのでした。
キングは、私のような読者に釣り針をたらして、引っかかるのを見て、自分の才能を再確認したかったそうです。
後で、真実を発表された時には「・・・・・」と目が点になり、詐欺師にまんまとだまされたことに気付いたのでした。
そして、二つ目は「バトルランナー」の映画だけ見た方へ原作との大きな違いを伝えたいことです。
キングの原作を映画化したものは、非常に出来が良いものが多いです。
その代表が「ショーシャンクの空に」でしょう。
ある意味、原作「刑務所のリタヘイワース」と異なる方向で、原作を超えた魅力があると思います。
また、キャリー、シャイニング、ミザリー、ペット・セメタリー、グリーンマイル、スタンド・バイ・ミーは、原作に追いつきそうな魅力があると思います。
でも、「The Running Man」のすばらしさに比べて、映画「バトル・ランナー」の劣化の差はひどすぎます。
「バトル・ランナー」はB級映画の底辺にあると私は評価していますが、原作「The Running Man」は、私が読んだSF小説の中でもトップクラスの評価です。
「政府とマスコミが手を握って、情報操作をして国民を支配する」というテーマは、人間が永遠に繰り返す愚行でしょう。
今(2015年現在)で言うと、ロシアのプーチン政権あたりが似ているでしょうか。
現在の日本も、たとえば、マイナンバー制度がマスコミの大きな批報道もなく、何となく通ってしまった(2015年現在)ように、その愚行から完全に免れているわけでは無いのは、皆さんもご存じの通りです。
ただ、そういう面倒なテーマまで考えなくても、主人公の魅力と、スピード感あふれる展開、そして細かい人の心理描写、エンターテイメント小説の面白さの全てをつめこんだような本です。
小説好きの方で、「まだ読んだことが無い」という方は、実に幸せです。
是非、私のように、リチャード・バックマン=スティーヴン・キングの世界に振り回されて楽しんでいただければと思います。