鬼畜の家~「死後離縁」って何?

「鬼畜の家」

 

小説のタイトルなんですが、すごいインパクトがありますよね。

 

私の小説の選び方は、本屋をブラブラして、何となくピンとくるタイトルの本を何冊も最初の部分を読んでみることから始めます。

 

そして、気にいったものを2~3冊買ってくるというスタイルが染みついています。

 

これに対して、購入目的が決まっている時には、アマゾンを利用すると早くて便利ですよね。

 

なので、ビジネス本や新書、ノンフィクションもの、アマゾンで手に入れられる程度の法律実務書などは、良くアマゾンで購入しています。

 

そして、先ほどご紹介した本は小説なので、書店で「ピン」と来て購入したものです。

 

鬼畜の家

 

読み進めているうちに、

 

「どうして、この作者は、こんなに法律実務に詳しいんだろう?」

 

と不思議になりました。

 

特に、「死後離縁」の話が出てきた所で強く感じました。

 

死後離縁とは、文字通り、養子縁組をしたけれど、その後養親又は養子が死亡した後に離縁するという手続です。

 

どちらかが死亡すれば、養子縁組関係は終了します。

 

それなのに、どうして死んだ後まで離縁しようとするのでしょうか?

 

ピンと来た方は相当鋭い方です。

 

実は、相続や親権に関係してくるのです。

 

この本では、鬼のような母親が3人の子のうち末娘を親族に養子縁組に出します。

 

そうすると、親権者は養親である養父母となります。

 

実母は親権を失う訳です。

 

そして、その末娘は、養父母が酒に酔って寝ている間に石油ストーブを転がして火事を起こすように示唆されます。

 

まだ刑事責任能力が問われる14才にも満たない末娘は恐怖にかられて言うとおりにして、養父母は焼け死にます。

 

末娘が一言も話せず、死因が失火と認定された場合、養父母の財産は誰が相続すると思いますか?

 

そう、一人しかいない養子である末娘が単独で全財産を相続する訳です。

 

この場合、普通の感覚だと、養父母が死亡して親権者が居なくなれば、実母の親権が当然に復活すると考えてしまいそうです。

 

しかし、民法ではそうなっていません。

 

実母の親権は復活せず、未成年後見人を家庭裁判所に選任してもらわなければならないんですね。

 

しかし、それで弁護士などが後見人に就いてしまったら、母親は財産を自由に使えません。

 

そこで、考えたのが「死後離縁」という訳です。

 

離縁すれば、養親の親権は喪失され、母親が当然に親権者となるというのが、やはり民法の定める所です。

 

実母は、弁護士に相談した上で、それを狙って、家庭裁判所に死後離縁の審判申立をして、まんまと親権を復活させて末娘の相続した財産を自由に使えるようにしたということです。

 

他にも相続の場面では、死後離縁をしないと後で大変なこともあります。

 

ですから、トラブルを抱える養子縁組をしている方は、片方が死亡したからといって安心しない方が良いと思います。

 

また、事案として、もう一つ深刻な「死後離縁」のケースについて、メールマガジンの第4号で配信をいたしますので、よろしければ、メルマガでご登録いただければ。

 

読後に、「この著者は、どうしてこんなに法律実務に詳しいのだろう?」と疑問に思って、履歴を見たところ「元弁護士」「60才を機に執筆活動を開始」と書いてありました。

 

なるほど、十分な経験を積んだ弁護士が書くだけあると納得でした。

 

もっとも、著者も分かっていて書いているのだと思いますが、この本のような事例で死後離縁が簡単に認められるかには疑問があります。

 

親族が争った場合には、相当紛糾しそうで審判がどのように転ぶのか分からない所はあります。

 

しかし、認められないとも限らないので、小説としてはそこは省略しても良い部分でしょう。

 

60才まで弁護士をやって、そこから執筆活動に入る著者、深木章子(みき・あきこ)氏には舌を巻きました。

 

私も本は大好きで、学生時代は小説も書いていました。

 

が、それ故に、その難しさを痛感しているので、「60才になって弁護士を辞めて小説家になることは、自分には高いハードルだな」と自己分析しています。

 

P.S.

 

なお、著者に申し訳ないのでネタバレにならないように工夫して書きました。

 

ですから、このブログを読んだ後に「鬼畜の家」を読んでも、ドロドロした物語が好きな方は、十分楽しめると思います。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。 

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カテゴリー: 相続のお話

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