新年おめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
最近、相続に関する事件の割合が増えてきています。
多くは、自分の知らないうちに相続に関する手続を進められていて納得できない、という気持ちから始まることが多いです。
そのため、相続手続を主導する方は、他の相続人にあたる方々に、しっかりとプロセスとその理由を透明化して説明していくことが、紛争を防ぐ道だということになります。
それでも、遺言で相続人の一人だけに遺産が贈られてしまうと、よほど信頼関係か、何らかの補償がないとモヤモヤすることが多いでしょう。
その場合、相続人が兄弟姉妹でない限り、遺言でも奪えない取り分、つまり遺留分の請求が行われることとなります。
この請求には、①相続の開始及び②遺留分を侵害する事情を知ってから1年間以内に請求しておかないと権利が消えてしまうという厳しい制限があります。
例えば、父親が亡くなって遺言書が書かれていたとすれば、①父親が死亡したこと、②父親の遺言書の内容が自分の遺留分すら残さないものであること、の二つを知ってから1年以内に権利行使をしなければならないのです。
①は通常は知らないということはないでしょうが、②については亡くなって相当経ってから知らされることもあります。
その時には、②から1年間は請求できるのですが、対立する場合に、「遺言の内容はもう知っていたはずだから1年以上経っている」という反論がされることがあります。
そのため、遺留分侵害額請求を行うのは、被相続人(先ほどの例では父親)が亡くなってから1年以内にするのが確実です。
その際には請求を行ったことを証拠として残すため、配達証明付きの内容証明郵便で行うことをお勧めします。
弁護士に依頼して代理人として通知してもらえば、その後の請求手続も全て任せられるので楽ではありますが、どの弁護士に依頼するか決めるのにも時間がかかります。
そのため、自分で遺留分侵害額請求書を送っておいた方が良い場合もあるでしょう。
そこで、皆さんがご自分で通知する場合のひな形を参考までに、以下に書いておきます。
もし、遺言書に書かれた遺言執行者(遺言の内容を実現する権限と責任を持つ者。例えば預金の解約や不動産の登記名義の変更を行う。)と請求する相手が同じだった場合には、どの程度の財産があるのかを照会すると遺留分侵害額の概算がわかります。
そのため、遺言執行者に対する財産の開示請求の文言も末尾に入れておきました。
作成しようと思われた方は作成するときのご参考に、逆に受け取った方は、どういう意味なのかのご参考になれば幸いです。
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通知書
令和〇年〇月〇日
静岡県静岡市葵区●●〇番〇号
〇〇〇〇殿
〒420-〇〇〇〇
静岡市葵区鷹匠〇-〇-〇
甲 野 太 郎
拝啓
私の父親である(亡)●●●●(住所:静岡県静岡市駿河区●●〇番〇号、昭和〇〇年〇月〇日生、以下「被相続人」といいます。)の相続に関して、法定相続人としてご連絡します。
被相続人は、令和〇年〇月日付け公正証書遺言(静岡地方法務局所属 公証人 ●●●●、令和〇〇第〇〇号、以下「本件遺言書」といいます。)により、貴殿に対し、不動産、預貯金、有価証券その他の財産全部を相続させる旨の遺言をなし、令和〇年〇月〇日に亡くなりました。
この本件遺言書の内容は私の遺留分を侵害するものであり、これを認めることはできません。従って、私は貴殿に対し、本通知書をもって、遺留分侵害額請求権を行使いたします(民法1046条)。
なお、遺言執行者には相続財産の目録を作成して遅滞なく相続人に交付する義務がある(1011条1項)ため、お手数ですが、令和〇年〇月〇日までに、私宛てに、前記財産目録及びその根拠となる資料をご送付いただきますようお願いいたします。
敬具