投稿を怠けている間に、梅雨入りしてしまいました。
とはいえ、夏日があったり、大雨があったりで季節感が狂いそうです。
さて、法テラスという名前を聞いたことがあるでしょうか?
正式には、日本司法支援センターという名前で、国が設立した法的トラブルの解決を助ける機関です。
法テラスという愛称は「法で社会を明るく照らしたい」「みんながくつろげる陽当たりのよいテラスのような場所にしたい」という理由でつけたとのことです。
民事事件での法テラスの大事な役割として、民事法律扶助という制度があります。
つまり、お金がなくて弁護士を依頼できない人のために、無利息で弁護士費用を貸してくれるという制度です。
借りた費用は、月々5000円を最低額として分割払いしていくことができます。
この法テラスを利用した場合、どの弁護士でも選べるわけではありません。
法テラスが決める費用は通常の弁護士費用よりも大分安いため、その安い費用でも引き受けるという弁護士だけが対応することになります。
弁護士は自由業ですから、法テラスへの登録をするかどうかも自由です。
そのため、法テラスを利用したいと考えている方は、
①弁護士を選べないことを前提に法テラスの法律相談を予約するか
②事前に訪問する法律事務所で法テラスに対応しているか確認する
必要があります(私の事務所の弁護士は全員対応しています。)。
これを聞くと、法テラスを利用すれば良いことばかりのように感じますが、難点はいくつかあります。
1つ目は、法テラスが定める条件が厳しいことです。
収入や資産が少ない人を助けるための機関ですから、それなりの収入や資産がある方は利用できません。
例えば、一人でアパートに住んでいる場合、静岡県では、ざっくりと22万3000円以下の手取りでなければなりません。
これは、賞与(ボーナス)も含んでの金額ですから、年間の手取り額が267万6000円以下であることが必要となります。
結婚している方の場合には基準額は上がりますが、配偶者の収入も考慮することになるので、条件はあまり変わりません。
これに対して、お子さんがいる場合には、扶養していることは確実なため、法テラスを利用できる可能性は大きくなります。
他にも考慮する条件は色々ありますが、ひとまずは、手取り収入が相当少ない方のための制度ということになります。
2つ目は、申請に給与明細書や源泉徴収票、世帯全員の住民票など提出書類が色々とあって、手続が大変なことです。
先ほどの、収入に関する条件(資力要件と呼んでいます)をチェックするためには、どうしても必要となるのですね。
3つ目は、弁護士と法テラスと依頼者の三者契約になるので、契約の内容が明確になる反面、依頼した弁護士と柔軟に契約内容を変えることができないことです。
ある事件を法テラスを通じて弁護士に依頼した場合、事件を進めて行くうちに追加で頼みたいことが起きたら、再度、法テラスへ申請する必要があります。
弁護士は法テラスが決めた以上の弁護士費用をもらってはいけないので、勝手に追加費用をいただいて柔軟に対応することはできません。
このような難点はあっても、預貯金がほとんどなくて、収入も本当に少ないけれど、借金や離婚など法的トラブルでお悩みの場合には有効な制度です。
法テラスと契約をしている弁護士を事前に調べて、直接、事務所に訪問すれば、一定の範囲の中で自分で弁護士を選ぶこともできます。
法テラス静岡では、登録している弁護士の名簿を公開しているので、その名簿の中から選んで事務所に連絡すれば確実です。
他の地域でも同様のサービスがあるでしょうから、「法テラス+地名」で検索していただいて、事務所を選んで相談に行かれることも良いかと思います。
「日常生活の法律問題」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。