カゴパクと窃盗罪

「カゴパク」という言葉を知っているでしょうか?

 

スーパーの「カゴ」「パク」る(盗む)の通称だそうです。

 

レジ袋が有料化されてから、それに代わる袋、いわゆるエコバッグを持って買物をするようになった方も多いと思います。

 

私もコンパクトなエコバッグをカバンの中に入れているのですが、時々困ることがあります。

 

例えば、容器が大きめのお弁当を買ったときに、水平に入れられず、かといって横向きにすると中の汁が漏れそうなときです。

 

そんなときはエコバッグに入れて、取っ手を持たず、弁当が水平になるようにウェイターのような姿勢で持っていきます。

 

「果たしてエコバッグを使う意味はあるのだろうか?」と自問自答しながら・・・

 

そんなとき、商品をレジで精算した後カゴに入れたまま家まで持って行ければ楽なのでしょう。

 

ちなみに、スーパーの商品の代金を支払わないでカゴごと持って行くのは、以前からある窃盗犯です。

 

今、問題となっているカゴパクは、商品はレジで精算した上で、カゴに入れて持って行くという行動です。

 

私(谷川)が担当の時の当番弁護事件や国選弁護事件でこのような事案の担当になったことはなく、他の弁護士からも聞いてはいないので、静岡県中部地域では少なくとも検挙されてはいないようです。

 

検挙されないとしても、厳密に見た場合、これは窃盗罪になるのでしょうか?

 

まず、スーパーのカゴのような財産的な価値が低いものでも窃盗罪になるのでしょうか?

買い物カゴのイラスト(中身なし)

最高裁(大審院)の判例では、窃盗罪の対象となる「財物」については財産的価値を問わないとして価値がほとんど無いものについても窃盗罪を認めています。

 

例えば、

・無効な手形

・神社内に安置された木造1体と石塊

・消印済の収入印紙

も「財物」として窃盗罪の対象となるとしています。

 

ただし、高等裁判所では,

・メモ用紙1枚

・ちり紙13枚

を盗んだ事件を窃盗未遂としている例もあります。

 

これらと比べると、スーパーのカゴは何度も使えますし、便利だからこそ持って行ってしまうのだから、財産的価値は十分あり「財物」といえます。

 

では、このときスーパーの常連さんがカゴパクするのと、初めて来た人がカゴパクするのとでは法律的に何か違いがあるでしょうか?

 

場合によっては違うことはありえます。

 

「使用窃盗」といって、最初から一時的に借りるつもりで持って行く場合には、返すつもりがあるのだから窃盗にあたりません

 

刑法の解釈では「不法領得の意思がない」と言います。

 

ただ、これを主観的に捉えてしまうと、多くの窃盗犯が「返すつもりだった」と言い出しかねません。

 

そこで、一時使用のつもりだったかどうかは、客観的事情から判断するしかないことになります。

 

そんなとき、近くに住む常連さんで、実際にカゴを返したり持って行ったりしていたような場合には、その行動から使用窃盗として窃盗罪に当たらない可能性もあります。

 

これに対して、遠くに住んでいて、初めて来たようなお客さんの場合には、カゴパクという行動はカゴを遠くへ持ち去る意思しか認められません。

 

従って、窃盗罪にあたることになります。

 

もっとも、常連さんだからといって、必ず窃盗にならないとは言えません。

 

カゴを持って行って、1週間返すのを忘れていれば「返すつもりだった」という言いわけはききません。

 

いずれにせよ、お店にとっては、店内で使用できるカゴが減って困るでしょうから、やはりカゴパクは止めるべき迷惑行為なのでしょうね。

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 刑事事件のお話

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