もうすぐ9月ですが、暑い日が続きますね。
マスクをしている時間が長い夏なので、熱中症にはお気をつけください。
さて、コロナウィルスによる仕事への影響が様々な業種で出ています。
静岡市内のハローワークに行かれた方からも、ソーシャルディスタンスを取りつつ求人票を取得するのが大変だという話をよく聞きます。
おそらく、コロナによる売上激減により従業員の解雇をせざるを得ない企業も増えてきているでしょう。
そんな中、今月の21日(令和2年8月21日)に、コロナを理由とする解雇の有効性について仙台地方裁判所が判断を下しました。
タクシー会社を解雇された従業員(運転手)が、仮処分という緊急の申立をしたものです。
会社を解雇された場合、それを無効として争うことはできますが、本格的な裁判を起こした場合、時間がかかりますよね。
解雇された従業員は、その前に賃金(給料)を支払ってもらわないと生活に困ります。
そこで、従業員が解雇の無効を主張する場合には、本来の裁判を起こす前に、迅速に決定を出してもらえる仮処分という申立をしていくのがセオリーです。
今回も、従業員の解雇が無効であることを前提に、
① 従業員としての地位があることの確認
② 賃金の支払いを求める
仮処分の申立をしました。
裁判所の決定の内容は、まだ裁判データベースにされていないので、新聞記事から推測するしかないのですが、次のとおりだと思われます。
従業員の解雇は自由にできるものではなく、労働契約法16条により解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には無効となります。
そこで、「客観的に合理的な理由」があるのか?が争点となったのだと思います。
今回は、会社がコロナウィルス感染の影響により業績が悪化して、経営を維持していくためには、人件費削減のため従業員の解雇が必要だと判断したのでしょう。
確かに、タクシー業界は、夜の飲み会、イベント、観光がコロナによる打撃を受けると、それがそのまま影響して苦しくなってしまうでしょう。
しかし、コロナ不況で再就職が難しい中で解雇されてしまうと従業員は大きな不利益を被ります。
そこで、裁判所は、解雇という最終手段を回避するだけの措置をタクシー会社が講じていたかを検討しました。
そして、まず、従業員を解雇ではなく、在宅を指示して休業手当を支払う方法があったと考えました。
もっとも、その休業手当を会社が支払う体力がなければ、やはり解雇は避けられません。
そこで、本件ではタクシー会社が雇用調整助成金を受け取ることができるケースであり、これを申請すれば休業手当の大半を補填できるとしました。
ですから、解雇をしなくても、運転手を休業させれば足りるとして「客観的に合理的な理由」がないとしたのだと思われます。
なお、この裁判所の決定から「コロナを理由とする解雇は無効」という一般的な判断をすることはできません。
例えば、雇用調整助成金の申請が認められなかったり、従業員の給与が高くて休業手当の大半を助成金で補填できなければ判断も変わり得ます。
更に、それに加えて、会社が破綻寸前と認められる会計帳簿を証拠として出してきたようなケースであれば、解雇は有効となることもあります。
解雇された従業員から見ると、雇用調整助成金を会社が申請できるか、勤務先の会社の経営がどれだけ危ないかを確認して争うことになるでしょう。
会社側からみると、雇用調整助成金を受給してもマイナスが大きく重なって破綻しかねないような場合であれば、解雇をせざるを得ないことになるでしょう。
いずれにせよ、コロナ感染を抑制できて、人が行き交うようになって、会社も従業員も安心できるようになるのが一番いいことですよね。
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