新型コロナウィルス感染の影響で、ご苦労されている皆様に心からお見舞い申し上げます。
静岡県は特定警戒都道府県ではありませんが、市内で20人の感染者が出ていることから、私もできる限りの注意をするようにしています。
幸い、静岡の弁護士などの「法曹」には感染者は出ていないようですので、静岡では法律事務所へのご来所は、ご安心いただいて良いかと思います。
さて、ここで「法曹」という言葉ですが、これは裁判官・検察官・弁護士の三者を指します。
全員、同じ「司法試験」を受けて、同じ「司法研修所」で司法修習生として研修を受けて実務家になるので、ひとまとめに「法曹」と呼ぶのでしょう。
その中で、最近、検察官の役職定年について法律改正がされることが話題となっていますね。
分かりやすくするために、ざっくりとご説明します。
内閣(与党)は、検察庁法の一部を改正しようとしていますが、ここには二つの問題点があります。
一つ目の問題は、検察官の役職を政治家(国会議員である大臣)が決めるようになるというところです。
検察官には、えらい人だけがなれる役職(普通の会社で言えば役員クラス)があります。
・社長クラス(検事総長)
・専務・常務クラス(次長検事・検事長)
・普通の取締役クラス(検事正)
この役職に定年制※を設けて、原則として63才(検事総長は65才)になったら役員クラスから降りることとしています。
(※ 検察官の公務員としての「定年」とは別のお話です。)
ただ、今度の法改正では例外を定めていて、63才(65才)を過ぎても、内閣や法務大臣(つまり政治家)が必要と認めれば、最長で3年間、役員クラスのポストにとどまれるというオマケがついているのです。
過去には、検察庁が政治家の汚職事件(政治家がワイロをもらうような事件)を数多く捜査して立件・起訴しています。
例えば、有名どころでは、ロッキード事件、リクルート事件、最近ではIR(カジノなど)に絡んだ汚職事件も摘発しています。
これは、多数派である与党の影響を受けやすい警察組織(内閣をトップとした行政組織に組み込まれているため)ではなく、独立した検察庁が直接捜査をすることで、私たち国民のために政治家を取り締まってもらっているというとです。
「東京地検特捜部による摘発!」なんて言葉をニュースとかで聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
だからこそ、検察官ってカッコいいというイメージがあって、キムタクのドラマなんかも人気があるわけですよね。
この検察庁の捜査に対して大きな力を持つのは、もちろん検察官の役員クラスの人たちです。
その役員クラスの人のポストを延長するかどうかを決めるのが、内閣(大臣によって構成される組織)や法務大臣らの政治家となります。
つまり、「ワイロの事件を捜査する検察庁の首根っこを政治家が握る」という法改正となるのです。
このような制度で、私たちの信じる正しい捜査や政治が行われるのだろうか?というのが一つ目の問題となっているわけです。
二つ目の問題は改正の時期です。
この検察庁法の改正は、表面上は役職定年制度の改正のように見えます。
しかし、その内容は、「検察庁が適切な捜査を行えるか」という、日本の捜査制度、更には憲法が予定している検察庁の独立性という権力分立※に関わる問題を含んでいるのです。
(※ 三権分立とは別に、憲法が権力を分離して濫用を防ごうとする仕組みです。例えば「地方自治」の条項もこれにあたります。)
ですから、賛成であれ、反対であれ、私たち国民が内容を十分に理解して、問題ないかどうか考えたり、話し合って考えを決めた方が良い問題です。
また、検察官の役職定年の改正は、コロナ対策に比べれば緊急性は低いのではないでしょうか。
それを、私たちが身近なコロナの影響に苦しんで、検察官の役職定年なんてことを考える余裕もない時期に、法案を通してしまって良いのか?というのが二つ目の問題です。
様々な人が反対しているのは、主に上の二つの問題点を指摘しているのです。
逆に、賛成するのであれば、上の二つについて「問題がない」ということを説得的に主張する必要があります。
賛成であれ、反対であれ、コロナの問題が収束してから、しっかりと皆で考えたり、話し合ったりしたいものですね。
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