この秋は荒れた天気や寒暖の差が激しくて厳しいですね。
台風で被害にあわれた方々のご苦労をお察しするとともに、できるだけ早く復興されるようお祈りします。
今回は相続における使途不明金のお話です。
相続のときに、亡くなった方の通帳をみると、何のために使ったのか不明なお金が出金されていることがあります。
これを使途不明金と呼びます。
このお金を遺産を分けるときにどのように取り扱うのかが最近ではよく問題になるようです。
例えば、お母さんが亡くなったときに、お母さん名義の預金からキャッシュカードを使って毎日50万円ずつ出金があったとします。
これが10日続けてあれば、確かにおかしいですよね。
毎日50万円が必要ということは、普通の生活をしているとほとんどないと思います。
また、出金額の500万円を使ったとすれば、家のリフォームとか、何か大きなことがないと不自然です。
そこで、この使い方が不明なお金(使途不明金)が一体どこにあるのか?
どのように取り扱うのかが問題となるのです。
まず、誰がキャッシュカードでおろしたのか分からない場合には、話し合いでは解決できません。
相続する方々の間で「疑いはあっても証拠はない」というような場合です。
この場合には話し合いがつかなければ、引き出した人を民事裁判で訴えるしかありません。
ただ、訴える方が無断引き出しの事実を証明しなければならないので、裁判で勝つには相当ハードルが高いです。
では、引き出したのはお母さんで間違いないけれど、その500万円を相続人の1人にあげていたという場合はどうでしょう?
この場合には、お母さんから遺産の前渡しを受けたという形になるので、特別受益といって、遺産に戻して再計算することになります。
つまり、AさんとBさんの2人が相続人の場合、Aさんだけがお母さんから500万円もらっていた場合には、その500万円をお母さんの遺産に上乗せしてから(持ち戻し)、遺産を分けることになります。
これによって、Aさんだけがトクをするという不公平な状況を直すのですね。
では、お母さんが亡くなった後に引き出しがあった場合はどうでしょう?
この場合には、お母さんの通帳を誰が預かっているかは分かるので、「その人が引き出したお金を自分のために使ったのか?」が問題となります。
例えば、お母さんの入院費や介護施設の使用料の支払に使ったとか、お母さんの借金の返済のために使ったという場合には、正当な使用なので文句を言うことはできません。
問題になるのは、通帳を預かっている人が「自分のためには使っていないが、細かく何に使ったのかは分からない」と言った場合です。
これは二つのパターンに分けることができます。
① お母さんと一緒に住んで世話をしていた子が通帳を預かっていた場合、全てのお金の使い道について帳簿をつけてはいないのが普通ですから、細かく説明できない場合はあるでしょう。
逆に、
② 本当は通帳を預かっている人が自分の遊びやお母さんと関係のない費用のために使ってしまったのに、「分からない」ととぼけている場合です。
よくあるのは、①の主張と②の主張が相続人の間で対立することです。
この場合、相続人の方々で話し合いで和解することは難しいので、民事裁判で解決していくことが多いです。
この裁判でも、どこまで証明できるかという証拠の問題はあります。
ただ、通帳から出金した人が分かっているので、誰が出金したか分からないという場合よりは、証明できる可能性は高まります。
相続で問題が起きたとき、一番事情を知っている人は亡くなったお母さんです。
ですから、お母さんの霊を呼び出せれば最強の証人となるので、相続の問題は半分以下に減ると思います。
でも、法廷で霊に尋問するのは失礼な気もするので、私としては避けたいような・・・
※ なお、死亡後の出金については相続法の改正である程度対応がされました。こちら↓をご覧下さい。
遺産分割前に財産処分があった場合
相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。