桜の木も紅色と緑色が混じる季節になってきましたね。
全国的にも寒い日と暑い日が予測しにくい日が続いているようですので、体調には十分お気をつけ下さい。
今回は調停手続での対応の心がまえについて考えてみたいと思います。
「調停は話し合いの場ですから、お互いに自由に意見を言っていただいて構いませんよ」
調停手続が始まるときに、家庭裁判所や簡易裁判所の調停委員から最初に説明されるときの言葉です。
これは静岡県の裁判所だけでなく、日本の裁判所のとこでも同じ説明がされているはずです(私が静岡県外の裁判所に行ったときも同じでした)。
これはそのとおりなのですが、だからといって自分が自由に意見を言って上手くまとまるというわけではありません。
離婚であれ、遺産の問題であれ、調停になる場合には申立人と相手方とは感情も利益も対立しています。
例えば、離婚に伴う養育費で考えてみましょう。
金額を決めようとするときに調停委員が出してくるのは養育費算定表です。
縦横の収入額に父親と母親の収入をあてはめて大体の養育費の基準額が分かるということです。
でも、母親は実際に子どもを育てるのにいくらかかるか?という目で養育費を考えます。
その目で見ると、例えば子ども1人1ヶ月3万円、合計6万円とか言われると、「それで育てられるんですか?」という気持ちになります。
逆に父親は、自分の収入から生活や老後の貯蓄に必要な費用を差し引いて、それでも養育費が支払えるか?という目でみます。
そうすると、とても毎月6万円も支払続けられないという気持ちになったりします。
そんなときに調停委員が子どもを可愛そうだと思って少しでも養育費を増やそうとすれば、父親からみると非常に不公平に見えるでしょう。
逆に、父親の収入が不安定だといって減らそうとすれば、母親からは子どもの敵のように見えるでしょう。
養育費の金額は幅のある記載となっているので、調停委員がどちらかに味方しているように感じてしまうことは多いです。
そんなときに「話し合いの場だから自由な意見」を冷静に説得的に説明できるかが調停での結果を左右するのです。
「養育費の幅といっても5,000円から1万円程度でしょ」
って思われた方!
もし、お子さんが6才と3才だとした場合月額5,000円の養育費の差が20才までで合計で幾らになるか計算してみましょう。
2,500円×(14年×12ヶ月+17年×12ヶ月)=93万円
つまり、調停の場で数分検討して5,000円を譲ると、その後長い目で見て合計で93万円を失うことになるのです。
調停に行かれる方はその辺りを十分にご理解の上、十分な情報と心の準備をして自由な話し合いの場に臨む必要があるということを覚えておいていただければと思います。