暖かくなってきて、静岡市でも桜の花が開き始めました。
年度末になって裁判所の期日が少ないので、弁護士業界は比較的余裕のある時期かもしれません。
さて、今回は従業員の給与、賞与(ボーナス)、退職金の減額について考えてみました。
会社が従業員の給与や退職金の額を下げるなど、従業員に不利益に賃金を変更する場合には、それが契約である以上、個別に従業員の承諾を得るのが原則です。
もっとも、会社が毎年赤字に苦しんでいたり、倒産寸前の場合には、会社を立て直すために、就業規則を変更して一律に賃金の切り下げをすることは必須です。
会社が苦しんでいるときにも同じような支払を強制したら、会社が倒産してしまってかえって従業員の不利益になってしまいます。
そこで、このような「高度の必要性に基づいた合理的なもの」に限って就業規則による一律変更も許されています(最高裁の判例)。
この「高度の必要性」があるかどうかは、裁判で厳しく判断されるので、否定されている裁判例も多いので注意が必要です。
例えば、ある企業で、定年退職後に再雇用された常勤嘱託従業員について退職金が支払われていました。
この企業では、定年退職したときにも退職金を支給していたので、再雇用を止めたときに2回目の退職金を支払うことを止めたかったようです。。
また、この企業では一定期間を限定して雇う従業員については退職金が支払われていませんでした。
再雇用者だけを特別扱いすることも止めたかったのでしょう。
しかし、この事案で裁判所は、 以上の事情だけでは「高度の必要性」は認められないとして退職金を支払うよう命じました。
結局、企業としては、これから契約をする将来の再雇用者についてだけ退職金の廃止が出来るに過ぎないことになります。
一見厳しいようですが、再雇用されたときに退職金が支払われると約束した従業員から見れば、突然、退職金が廃止されたら生活設計が狂うかもしれませんね。
では賞与(ボーナス)の減額はどうでしょう?
賞与は会社の業績や従業員の功績によって支払うものですから、減額もできそうです。
確かに「年2回業績に応じて支給する」というような定めが就業規則や賃金規定にあるのであれば、「業績に応じて」増減することは従業員も折り込み済みですから企業の判断で減らしても構いません。
これに対して、例えば「3か月分賞与として私有する」という定めがある場合に、これを1か月に減らすような場合には不利益変更の問題となります。
この場合に一方的に減らした場合には、裁判で無効とされる可能性があります。
就業規則や賃金規定にも工夫が必要ということですね。
労働問題のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。