金塊窃盗の取り戻し

せっかくの3連休ですが、静岡の今日は雨模様です。

 

驚くことに11日の月曜日に静岡市に雪予報が出ています。何故か最低気温は3度となっていますが・・・

 

さて、今月の初め頃に出た判決で、造幣局の職員(懲戒解雇されて今は元職員)が勤務先から金塊約15kgを盗んだ事件の判決が出ました。

 

私は、まず「造幣局にそんな金塊があるんだ!」と驚きました。

 

どうも、造幣局では、私たち一般国民からの依頼があると金などの貴金属の不純物を取り除いて純度を高くする仕事をしているようです。

 

そのため、お客さんに来てもらうように金塊を博物館コーナーで展示しているようです。

 

造幣局にはお客さんから預かった金塊と博物館コーナーで展示してある金塊があるということですね。

 

金塊なんか盗んでも普通はどうしたらいいのか分かりませんが、その職員は質入れしたそうです。

 

「金塊を質入れ・・・」

 

見るからに怪しそうです。質屋の人は不審に思わなかったのでしょうか?

 

質屋のお客さんは、何とかお金を借りようと色々なものを持ち込むでしょう。

 

身の回りの物、先祖代々相続してきた物、クレジットカードで買ったばかりの物、そして盗品も。

 

お客さんにいちいち「どこから手に入れたのですか?」なんて聞いていたら商売にならないでしょう。

 

判決では、質屋が金塊を質に受け取ったことは、善意無過失(お客が盗んだことを知らず、知らないことについて過失もないこと)だと認めました。

 

これを即時取得といって、ドロボウなどの無権利者から質入れを受けた場合でも質屋は権利を取得できます。

 

では、造幣局はその金塊を取り戻せないのでしょうか?

 

実は、「盗品」の場合には、即時取得にあたるときでも盗難から2年以内なら所有者が被害品を取り戻せるという規定が民法にあります。

 

ここで争いになりました。

 

元職員が行った犯罪は、窃盗なのか?横領なのか?

 

窃盗であれば、金塊は「盗品」ですから先ほどの例外規定が適用されます。まだ2年たっていないので、造幣局は金塊を取り戻せます。

 

しかし、横領となると「盗品」ではないので例外規定が適用されず、質屋の勝ちです。

 

そこで、窃盗横領かが争点となりました。

 

さいたま地方裁判所は、この金塊を「盗品」と認めて、造幣局に軍配を挙げました。

 

窃盗横領の違いって何でしょうか?

 

他人の物を持ち去った場合、占有が被害者にある場合には窃盗、占有が加害者にある場合には横領となります。

 

例えば、職員が私たちから精製するために預かった金塊を持ち去ったとします。

 

この場合、職員に造幣局が金塊の管理をする権限を与えていれば、職員に占有がありますからこれを持ち去る行為は横領になります。

 

横領した金塊は盗まれたものではありませんので「盗品」ではありません

 

しかし、今回、元職員が盗んだのは博物館コーナーで展示されていた金塊でした。

 

博物館は造幣局が訪問者に見せるために展示していて、もともと動かすことは予定していません。そのため、占有が職員にあるとは言えないでしょう。

 

そのため、職員が持ち出す行為を窃盗とみて、金塊を「盗品」と認定したのです。

 

しかし、盗んだ物か、横領した物かは、なにも知らないで質入れや売買で取得した人にとっては関係ないような気もしますね。

 

皆さんの感覚ではどうでしょうか?

 

「契約のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 契約のお話

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