涼しくなりはじめて秋に入ったことを実感します。
全国の天気予報でみていると、静岡は最低気温も最高気温も1、2を争うくらいの高さなので、他の都道府県の方々はもっと秋を感じられているかもしれませんね。
さて、弁護士がご依頼を受けるときにどのようなことを意識するでしょうか?
弁護士によって重視する要素のバランスは違うとは思いますが、全員が意識することは
「この依頼者のニーズは何だろう?」
「それに応えられる仕事ができるだろうか?」
です。
そして、民事事件では依頼者のニーズは、結局は物やお金など経済的な価値のあるものにせざるを得ません。
人生においてお金に換えられないものは色々とあると思います。
典型的なのは人の命や体のことでしょう。
刑事訴訟では究極の「死刑」という選択がありますが、それでも亡くなった人が帰ってくるわけではありません。
また、民事訴訟では人の命についても「損害賠償請求」というお金の請求に代えるしかないのです。
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とすると、民事事件での依頼者のニーズは経済的な価値のあるものを取得することにとうしてもなってしまいます。
そのため、全ての弁護士は、お金や物を回収出来るか?を非常に重視します。
例えば、離婚で妻側から依頼された場合に、夫の収入や預貯金などの財産を把握する必要があります。
相手の財産を把握しないと、いくら判決をもらっても相手が支払わない場合に強制的に回収できないからです。
夫がサラリーマンの場合には、給与明細1枚あるだけで、収入だけでなく、財形貯蓄や会社での積立金を把握できます。
また、給料振込口座と別の銀行で大きな額の積立をしていることが少なく、仮にしている場合でも口座の取引履歴を分析すると予測がついたりします。
ところが、自営業の方の財産の調査は、苦労が多くなります。
確かに、事業に使っている口座は必ずあるはずなので提出を求めることはできますし、確定申告書などの資料で把握できる部分はあります。
しかし、プライベートの口座を複数持ったり、現金処理をしていて通帳に載らないお金があることが多いので、全て突き止めることが難しいのです。
それでも、業種ごとに調査方法はありますので、何とかして突き止めるようにします。これも弁護士の腕の差になりますね。
財産がなかったり、把握が難しい人は、たとえ裁判で敗訴判決をもらっても、サラリーマンとくらべて実際の回収が困難になります。
そのため、弁護士が相手の財産をつかみきれないで裁判をするときには、常に判決書がただの紙切れになるリスクを考えて動かなければなりません。
つまり、裁判では、サラリーマンよりも自営業の人の方が強いカードを持っていることになります。
弁護士は、依頼者のために何らかの財産を回収したいのです。
では、裁判における「最強のカード」って何でしょう?
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そうです。
「財産を何も持っていないこと」です。
例えば、
売買契約を解除して数千万円の代金の返還を裁判で請求した場合
離婚にあたって夫や妻から財産を請求された場合
借金のトラブルで債権者から取り立てられた場合
裁判で請求されても「判決がされても現実には払いようがありません」という切り札を持っているのです。
弁護士が、請求する側の代理人になったときには、依頼者の方から、裁判ってそんな意味がないものなのですか?と聞かれることもあります。
私も、財産がないから払わないですむというのは本当は良くないと思うのですが、民事訴訟では強制労働をさせて支払わせることは認められていません。
刑事事件では罰金を支払わないと、拘束されて「労役」という労働をさせられるのですが、刑事事件ほど厳密に真実を追求しない民事事件では難しいでしょう。
今後は、誠実な人が損をしない裁判制度になるよう改善していく必要があるでしょう。
裁判所も法律の要件だけで全て処理するのではなく、市民のニーズに応えていかないと、市民から避けられてしまうかもしれません。
今後、色々と改革の計画が組まれているようなので、より私たち市民や企業が使いやすくなるよう期待ですね。