暑いのか涼しくなったのか良く分からない気候が続いていますね。
台風だけは警戒していますが、できるだけ人がいないところを通って欲しいものです。
さて、最近、「ハラスメント保険」というものがあるようです。
保険の名前からすると被害者になる従業員が加入するものにも見えますが、今急増しているのは企業側が加入する損害保険だそうです。
前年の同期から約1.58倍増加しているとの記事がありました。
保険の内容としては、従業員が上司などからセクシャルハラスメントやパワーハラスメントを受けたとして損害賠償請求をしたときに、企業に代わって保険会社が支払うという形になります。
交通事故でいうと事故がリスクですが、今回の保険では、企業が所属する従業員(上司)のハラスメント行為をリスクと考えていることになります。
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セクハラやパワハラを証明できれば、被害者である従業員が損害賠償請求をすることができます。
この場合、加害者はセクハラやパワハラをした上司自身ですよね。
ただ、弁護士が依頼を受けて裁判を起こす場合には、上司だけでなく、会社に対しても損害賠償請求することが多いでしょう。
これも、会社の使用者責任とか、監督義務違反など一定の条件を充たせば法律的な根拠に基づくものです。
そして、セクハラやパワハラはそれによって生じた被害の程度によって金額が大きく変わります。
基本的には慰謝料の請求なので、日本の裁判では多額の金額にはならないことが多いのですが、仮に数十万円でも中小企業では資金繰りに影響しそうです。
そこで、企業としては、突然、「来月80万円支払え」というようなことになったときに、保険会社に払ってもらうというわけです。
保険会社への保険料は毎月決まっていますから、計算できないリスクを毎月の計算できる経費に変えるという発想ですね。
企業側からすれば、製造業に伴う事故のようにリスクが高いと言い切れないので、保険に入るかどうかは悩むところでしょう。
ただ、仮に企業が保険に入っているからといって、従業員がセクハラ・パワハラにより確実に損害賠償請求できるというものではありません。
裁判まで行くとすると証明が難しいという性質があります。
その理由は二つあります。
一つ目は、企業内のことなので証拠がない場合が多いことです。
同僚は勤務している以上証言してくれないでしょうし、言葉のニュアンスによってセクハラ行為・パワハラ行為の捉え方は大きく変わってしまいます。
暴言の録音データなど動かせない証拠があれば別ですが、客観的証拠が集めにくいので証明が難しい面があります。
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二つ目は、精神的被害になるため、その被害の程度を図る基準がないことです。
結局は、うつ状態になったとか、退職せざるを得なくなったという結果から証明するしかありません。
うつ状態の主張をする場合、仮に過去にうつ状態の病歴があると、会社の業務のせいではなく、もともとの性格から生じたと反論されます。
また、退職した場合でも、職場の人間関係が悪い場合には、もともと辞めるはずだったと反論されます。
いずれも、パワハラ・セクハラと被害との間の因果関係を争うものですが、よく争点になる部分でしょう。
企業としては、仕事はできるけれども厳しすぎる従業員がいるような場合はハラスメント保険への加入を検討しても良いかもしれません。
でも、ハラスメントが起きないような良好な職場環境作りが一番良いのでしょうね。
労働問題のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。