静岡では春らしい陽気になってきましたが、昼と夜の気温差が大きく感じられます。
おそらく、全国的にそのような気候だと思いますので、体調には十分お気をつけ下さい。
さて、フッ素というと皆さんどのようなイメージを持たれるでしょうか?
歯磨きに含まれている成分とか、化学記号を連想したりされるかもしれません。
詳しい方は、健康被害を起こすリスクのある有害物質という認識を持たれているかもしれません。
歯磨きに含まれるような微量のフッ素は直接健康被害はないとされていますが、濃度が大きい場合には中毒症状や健康被害が起きることも指摘されています。
そのため、環境省では土壌汚染の原因物質としてフッ素も含めています。
土地の売買では、土壌汚染が問題となることが多いのですが、今回ご紹介する最高裁の判例ではフッ素による土壌汚染が問題となったものです。
買主は、フッ素工場の跡地を買い取りました。
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フッ素工場の跡地ですから、当然、土壌にフッ素が含まれていることは予測できますよね。
ところが、この売買契約をした平成3年当時は、フッ素についての環境基準が公に決められていませんでした。
ですから、買主は特にフッ素の汚染除去などをせずに土地を転売できるつもりで買い受けました。
その後、平成15年2月にフッ素が有害物質として規定されました。
おそらく、専門家でない限り、早い方でも高濃度フッ素を健康被害のリスクと認識し始めたのはその頃からではないでしょうか。
もっとも、フッ素については、PCBや有機リンのように少しでも入っていたら土壌汚染になるのではなく、一定の濃度以上の場合には土壌汚染となるという規制です。
その意味ではフッ素は猛毒というわけではありませんが、一定以上の濃度を持つと汚染が広がるのを防ぐ工事などをしなければなりません。
この事案では、土地の汚染が最もひどい箇所では基準値の1,200倍のフッ素が検出されました。
このような土壌汚染を除去したり、汚染漏れの防止の工事をすると、その費用が莫大になることが多いのです。
そこで、買主は、売主に対して土壌汚染を土地の瑕疵(かし)=欠陥だとして、4億円を超える損害賠償請求をしました。
しかし、売買契約時にはフッ素について人の健康被害を引き起こす危険があるとは一般には認識されていないので、売主は土地に欠陥などないと考えて売ったわけです。
そこで、売買契約後に有害物質であることが分かって法規制された物質についてまで、売主は損害賠償責任を負うかが問題となりました。
最高裁まで争われましたが、結局は否定されました。
その最大の理由は、もし売買契約後に生じた瑕疵=欠陥についてまで売主に責任を負わせると、売主は永遠に責任を免れないことになりかねないということです。
例えば、フッ素以外の物質で健康被害を生ずるものの中には、まだ科学的にも社会的にも明らかになっていないものもあると思います。
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10年後に健康被害が判明する物質についてまで、今の土地を売る人に責任を負わせてしまうと、土地売買自体が成り立ちません。
そのため、土地を売るときに健康被害が判明している物質についてだけ、売主に責任を負わせようとしたものです。
とはいえ、土地を住居として買う場合には、後で健康被害が分かったのではたまらないという気持ちもありますよね。
私の経験から見ると、売主が工場・作業場・廃棄物置場にしていた土地について土壌汚染が問題となるケースが多いようです。
もし、土地を購入されることがあったら、以前、その土地が何に使われていたか確認してから決めた方が良いかもしれませんね。
不動産トラブルの基本知識についてはこちらをご参照ください。