先週の土曜日に、静岡駅ビルのパルシェで民法(債権分野)改正の研修会があったので行ってきました。
実際に改正民法が適用されるのは、東京オリンピック開催の年である2020年の4月からです。
皆さんの生活にも大きく関わってくることもあるので、また機会をみてお話していきたいと思います。
さて、着物販売レンタルの「はれのひ」が、先週の金曜日(26日)に破産申立をして、裁判所で破産手続開始の決定が出されたと報道されています。
多くの人が、成人の日に何も言わずに行方をくらましたやり方に卑怯だとおもっているでしょう。
その点については、私も同感です。
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ただ、それが「詐欺」にあたるか?というと結構高いハードルがあります。
まず、この事件で「詐欺」として責任を追及したいという場合、法律的には2つの意味があります。
一つは、刑法に定めた詐欺罪として逮捕して犯罪として処罰して欲しいという意味です。
仮に詐欺罪にあたると、被害額が数千万になりますので、全額をお客さんに返金しない限り実刑(刑務所いき)でしょう。
二つ目は、破産手続開始決定がされたとしても、債務を免除する決定(免責)を認めないようにして欲しいという意味です。
破産法では、破産手続開始決定(1月26日)から1年以内に、明らかに破産するしかない状態なのに、経営が良いかのように顧客を欺してお金をとったような場合には裁判所が免責を認めません。
さて、「はれのひ」の社長がやったことは、詐欺罪になったり、破産手続で債務の免除が認められないのでしょうか?
まず、「詐欺」というためには、お店でお金を顧客から受け取る時点で、社長がどう見ても破産しかなく、破産したらお金を返せないことを認識しながら、各店舗の従業員に営業の指示を出していなければなりません。
しかし、報道で見ていくと、
①最後の注文を受けて顧客からお金を受け取ったのは昨年12月中旬で、
②破産(閉鎖)を決断したのは成人式の前の日の1月7日の18時~19時
と言っています。
これを「詐欺」に照らし合わせていくと、
→ 最後の顧客からお金を受け取るときには経営破綻までは認識していない
→ お金を受け取った時点では、晴れ着を渡せなくなるとは思っていなかっ
た
→ 晴れ着を渡せると思ってお金を受け取った
→ 顧客を欺すつもり(詐欺行為・詐欺の故意)はなかった
ということになります。
そのため、昨年の12月中旬頃の経営を調べて、誰が見ても破産を前提にしていたはずという証拠がなければ、詐欺罪での立件は難しいのです。
そして、いくら莫大な債務を負っていたとしても、会社の資産の一部を売れば当面の資金はあったと主張されると、詐欺の証拠はないことになります。
もっとも、社長を詐欺だとして、刑罰を下したり、債務の免除(免責)しなかったからといって顧客が救われるわけではありません。
大切な成人の日を台無しにされてしまった事実は消えません。
でも社長を罰するより、顧客が支払った数十万円ものお金を返してもらったり、買った振り袖などを引き渡してもらうことの方が大切でしょう。
実は、破産手続で、このような消費者被害が出て返金などの問題が生じることはときどきあります。
静岡県では、富士ハウスというハウスメーカーが破産した時には、顧客1人あたり数千万円のお金が返ってこないという深刻な被害がでました。
その時には、弁護団の要請もあって、裁判所から選任された破産管財人が顧客をできるだけ救済できるような工夫をしました。
今回、これほど大きな問題となったのは、成人の日という一生に一度の日に振り袖などの晴れ着が来ないこと、そしてそれが当日まで分からなかったことが理由でしょう。
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それを考えれば、被害者に対して何らかの救済があると良いですね。
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