日が暮れるのが大分早くなってきましたね。
静岡市では11月3日前後を中心に毎年、「大道芸ワールドカップin静岡」が開催されています。
静岡市内の繁華街や清水港のショッピングモールなどの路上やフリースペース、そして駿府城公園で、様々な大道芸を楽しむことができます。
世界17ヵ国から104組のアーティストが参加していて、街の中を歩いているとあちらこちらに人だかりができています(ここは事務所の近くです)。
26年目となって観光客の数も年々増えていき、今では静岡市内のお店やホテルにとっては欠かせないイベントになっているようです。
一度、静岡市に観光に行こうと思われている方にはお勧めですが、ホテルの予約を早めにする必要はありそうです。
さて、今週の7日(火)に高齢者を青酸で4人殺した青酸連続変死事件の被告人に対して京都地方裁判所て死刑判決がありました。
複数の新聞記事から事件の経緯を見ていると、
「間接的な証拠しかなく、自白があれだけ揺らいでいる中で、よく4件全部について殺人の既遂を認定できたな」
というのが私の印象です。
もっとも、死刑判決ですから、さすがに大阪高裁に控訴はするのでしょう。
この事件でちょっと話題になったのがNHKの報道の先走りです。
NHKは、この事件の判決で裁判長が主文を言い渡す前に、TVで「筧千佐子被告に死刑」との字幕(テロップ)を流しました。
主文が言い渡されたのは午前11時45分頃でしたが、テロップが流れたのはその10分ほど前だったとのことです。
どうして、そのようなことが起きるのでしょうか?
刑事事件の判決を大きく分けると、①主文と②理由の二つに分けられます。
主文は、言い渡す刑の結論部分です。
例えば
「被告人を死刑に処する」
「被告人を懲役8年に処する」
というような短い結論が主文です(この結論に付け加えて言い渡すこともありますが、ここでは省きます)。
そして結論だけでは、被告人も弁護人もどうしてその刑になったのか分からなくて困ります。
控訴・上告で上の裁判所でもう一度審理してもらうべきか?などを判断するのにも理由は大切です。
そのため、判決ではその主文の結論に至った理由を、
・罪をどのような証拠と判断で認めたのか? → 事実認定
・どうしてその重さの刑にしたのか? → 量刑
の2点から説明していきます。
そして、普通の刑事事件では、まず主文を先に言い渡します。
その後に、どうしてその結論になったのかの理由を言い渡していきます。
その方が被告人にとっても、弁護人・検察官・傍聴人にとっても分かりやすいですよね?
ビジネスでも「結論から先に言うべき」と言われるので、その方法が正確に早く伝わるということなのでしょう。
但し、刑事事件の判決では例外があります。
それは死刑判決です。
被告人の立場に立ってみて下さい。
自分に対して先に「死刑に処する」と言い渡されてしまったら、頭の中が真っ白になって、その後の理由を聞き取れないのではないでしょうか?
そのため、刑事事件の慣行としては、死刑判決を言い渡すときには、理由から先に言い渡して、最後に「死刑」という主文を言い渡すことが多いのです。
逆に言うと、検察官が死刑を求刑している事件で、裁判長が判決を理由から話し始めたら死刑が予想されるということになります。
そのため、4人も人を殺したことが争われている事件で、裁判長が理由から言い始めたら、慣れている記者ほど「死刑だ!」という判断を先行しがちです。
傍聴していたNHKの記者も、裁判長が理由から話し始めた時点で「死刑」というスクープで頭が一杯になっていたでしょう。
そのため、しっかりと主文が言い渡されるまで待っていられなかったのだと思います。
もっとも、私の経験だと、無期懲役を言い渡すときにも理由から言い渡すこともありますので、必ずしも主文が後回しでも死刑とは限りません。
判決の言い渡しが理由から始まると、主文を待たずに記者の人達が傍聴席から何人も飛び出していくのを見たことがありますが、人ごとながら「大丈夫かな?」と思ったことがあります。
よくよく考えると、無期懲役のときだって、被告人が「死刑じゃなかった」と気が緩んで、判決の理由をいいかげんに聞かれても困りますよね。
結局、裁判長としては、被告人に理由をしっかりと聞いてもらいたいときに、主文を後回しにするということなのでしょう。
刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。