秋雨が降り始めて、急に冷え込んでくるようになりましたね。
これからは、着るものにも注意して体調をくずさないように十分お気をつけ下さい。
先週、全国に支店を持つ弁護士法人が、東京弁護士会から業務停止2ヵ月の懲戒処分を受けました。
東京弁護士会の相談ダイヤルには「弁護士法人の本部に電話がつながらない」「支払った着手金や預けたお金は返ってくるのか?」という電話が殺到しているとのことです。
やはり自分が訪問できる距離に事務所の本拠がないと、依頼した後に大変なことに巻き込まれる危険があるということです。
これも、弁護士増員による過当競争の結果、弁護士業務がビジネス化しすぎていることから来るゆがみでしょう。
弁護士を大幅増員してきたことで、相談する方、依頼する方の選択肢は増えましたが、選択するリスクの負担も相談者・依頼者の側に負担してもらうことになってきているという印象を受けました。
さて、「センス」という言葉は、どの分野でも言われますよね。
例えば、絵のセンス、楽器のセンス、野球のセンス、サッカーのセンスなど芸術・スポーツ分野では当然のように言われます。
でも、普通の仕事でもセンスってありますよね。
例えば、営業のセンス(営業方法によって変わりそうですが)、パソコン操作のセンスなどなどです。
そして、法律の分野でもセンスはあるようです。
私の経験だと「法律を学ぶセンス」と「法律を使うセンス」は異なるように感じます。
「法律を学ぶセンス」は、大学の試験や司法試験である程度測ることができるのですが、「法律を使うセンス」は実務修習や実務につかないと判断するのは難しいです。
歌にたとえて言うと、「歌を上手くうたうセンス」と「歌で人を感動させるセンス」の違いというところでしょうか。
サザンオールスターズの桑田佳祐は、上手く歌をうたっているかというと???ですが、歌で人を感動させているか?というと多くの人がYesと答えるでしょう。
私も大好きな曲が沢山ありますが、それは歌が上手いという理由でなく、心に響くという理由からです。
(なお、音楽は好き嫌いが激しいので、桑田佳祐が好みでない方はご自分の好きなミュージシャンを例にしていただければ。)
結局、歌も法律もそれ自体に価値があるものではないですよね。
歌が人の心を動かしたり、法律を使って人を助けられたりして初めて社会的価値が生まれるものです。
ですから、法律において言えば、「法律を学ぶセンス」よりも「法律を使うセンス」の方が社会にとってははるかに有益だということになります。
どうしてそんなことを考えたかというと、民事裁判手続(出版:学陽書房・裁判官と弁護士の共著)という本の中で、裁判官が「法律を使うセンス」について書いていたのを読んだからです。
この裁判官によると、弁護士が裁判所に提出する書面で、法律をどのように適用してきているかで法的センスの差が分かるというものでした。
易しい例でちょっと考えてみます。
AさんがBさんに建物を賃貸していたら、借主が家賃を長期にわたって払わなくなったので契約を解除したとします。
当然、AさんはBさんに「建物を明け渡して返せ」と請求しますよね。
賃貸借契約を解除したので、AさんはBさんに建物を貸す理由がないことになるので「返せ」というわけです。
これを訴訟で行う場合、
① Aさんの所有権に基づいてBさんに明渡請求するか?
② ABの間の賃貸借契約が解除されたことを理由に明渡請求するか?
の2つの方法が理屈では考えられます。
どちらも法律的には間違いではありません。
しかし、その裁判官が言うには、①の訴状を作るのは法的センスに問題がある弁護士だということになるようです。
私自身も、この事案で①は直感的に選択には入れないと思うので、同感です。
よくよく「どうして?」と自分で振り返ると、①で訴状を作ったら私も裁判所も明らかに争点の把握がしづらくなるというのが理由です。
その本では、専門用語でより分析的に説明してありましたが、こういう理屈を法律文献で勉強しないと分からないのではダメで、ここは直感的に分かるようにセンスを磨かなければいけないと説明してありました。
皆さんは、法律というと、勉強をすれば(しかも暗記をすれば)するほどできるようになるかのように勘違いされているかもしれません。
でも、どの分野でも専門家であれば分かると思うのですが、本で勉強したり人に教わっているだけでは良い仕事はできませんよね。
その専門分野でセンスがある人は、センスがない人を短い期間であっさりと追い越してしまうのが、どのプロの分野でもあります。
法律の分野でも、勉強や経験の積み重ねだけでなく、もともと持っているセンスやそれを磨く努力が大切になるのでしょう。
皆さんが弁護士を選ぶときに、法律を使うセンスのある弁護士をうまく選べれば良いのですが、検索エンジンやポータルサイトでは検索できません。
ただ、法律を使うのが上手いということは、法律の使い方を相談者に上手く伝えられるということにもつながります。
やはり、法律相談で分かりやすかったり、弁護士に依頼した経験のある人の口コミ・評判が一番確実と言えるでしょう。
「弁護士のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。