ペットは替えがきく?

私が小学生の頃は日本中どこでも野良犬・野良猫があふれていました。

 

犬・猫・鳥などフワフワした毛がある動物が大好きだった私は、小学校への登下校の途中で人なつっこそうな犬や猫をみつけるといつも触っていました。

 

授業中に校庭に野良犬が入ってくるとベランダに飛び出してしまい、先生に怒られた回数は数えきれません。

 

そのため、大学を卒業して自分で世話ができる年齢になると、犬や猫が必ず家にいます。

 

夜中の散歩で目が合って拾ってきた猫、ペットショップで目があった犬、引き取り手がなかった保護猫などなどです。

 

ペットショップでの売買情報を見ていると、よく「購入後3ヶ月以内に死亡した場合には別の子犬(子猫)と交換します。」という保証付きのものをみかけます。

 

この保証に違和感を感じる人と、安心感を感じる人の両方がいると思います。

 

これを法律的な観点から分析すると、違和感を感じる人は、ペットを「特定物」とみていて、安心する人は「不特定物」とみているということになります。

 

「特定物」というのは、当事者がその物の個性に着目している物を言います。

 

これに対して、「不特定物」とは個性には着目せず、同種・同型のものであれば良いとするものです。

 

例えば、中古のトヨタ・プリウスを買うときには、その走行距離やシートの汚れ具合、塗装の色褪せなど色々な観点から決めますから、世界に1台しかない「このプリウス」という特定物です。

 

これに対して、新車で買うときには、どこの工場で作った物でも、同じグレードのプリウスであれば良いので不特定物となります。

 

そして、ペットが不特定物であれば、購入した時に病気を持っていて早期に死亡したときには替わりに同種類のペットを引き渡すよう請求できます。

 

これに対して、特定物であった場合には、替わりのペットは請求できず、売買契約を解除したり、損害賠償請求をしたりできます(2017年7月現在)。

 

ところが、ペットが特殊なのは、保証契約に違和感を感じる人はもちろん、代わりがタダでもらえるなら安心だと思われる人にとっても、買って一緒に生活するうちに不特定物ではなくなることが多いことです。

 

果たして、ペットを購入して3ヶ月近く暮らした後に死亡したとき、代わりの同じ種類のペットがもらえるとしても「新しいペットが来てよかった」と単純に安心する人は少数派なのではないでしょうか。

 

そういう意味では、動物について全く物と同じように取り扱うのは私たちの感覚に合わないように思えます。

 

刑法でも器物損壊罪と動物殺傷罪とが同じ条文に記載されていることに抵抗がある人も多いでしょう。

 

動物の肉を食べながら動物愛護を語るというのも自己矛盾のように感じるかもしれません。

 

しかし、人間同士の間に限って見ても、哺乳類を虐待する人は人間に対しても重大な危害を加える傾向があるように思えます。

 

また、少年院で犬の世話をさせる指導をしたところ、再犯率が大幅に下がったという統計もあります。

 

人類の繁栄のためにも、法律も少なくとも哺乳類については、動物愛護の観点からできる限り単なる「物」で終わらせない方向で制定・改正が必要かもしれません。

 

動物愛護法が何度も改正されて動物虐待が行われないように配慮されてきているのもその傾向でしょう。

 

人も動物もできる限り共存できる世界を目指したいものです。

 

「日常生活の法律問題」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 日常生活の法律問題

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