雨が降ったり、晴れたり、湿度も高かったり、心地よかったりで、日々の気候の変動が激しいように感じます。
自動車で仕事に出るときにはそれほど気にしないのですが、電車やバスで出張するときには油断せずに折りたたみ傘を持っていくようにしています。
さて、このホームページやブログの原稿は全て私(谷川)が書いているのですが、やはり書くときには世界中に公開されると思って書きます。
「世界中?」ってオーバーに感じるかもしれませんが、それがインターネットの世界ですよね。
しかも、全文が日本語で書かれている私のホームページですら、アメリカだけで毎月50件以上のアクセスがあります。
更に、その他の国も入れると毎月少なくとも100件以上の海外からのアクセスがあります。
ソフトで翻訳して読まれているのか、海外に赴任した日本の方が読まれていると推測していますが、今後ともよろしくお願いいたします。
ということで、ホームページやブログ・SNSについては公開設定していればもちろん、非公開設定でもコピー&ペーストやリツイートなどの機能で世界中に広がる可能性はあります。
そのようなインターネットの性質との関係で問題となるのが、法律で「不特定又は多数人」という定めがある場合です。
このうち、皆さんにとって一番なじみ深い違法行為で言えば「名誉毀損」でしょう。
名誉毀損罪を定めた条文に「公然と」という言葉があります。
この意味は、「不特定又は多数人が認識しうる状態」をいいます。
ここで大切なのは、「認識したこと」ではなく、「認識しうる状態」ということです。
つまり、実際に多くの人や不特定の誰かが見ていなくても、見られる可能性があれば足りるということです。
インターネットが使われる前の時代の最高裁の判例では、公開する相手が特定・少数の場合でも秘匿性が高い状態でなければ噂で伝わってしまうので、「公然と」と言えるとしてきました(伝播性の理論)。
つまり、会社の同僚2~3人に話しただけでも、噂話として会社内に広がる可能性があれば、「公然と」といえるということになります。
この理論をそのままインターネットにあてはめると、ネット上にアップしただけで、不特定又は多数人がアクセスは可能なのですから、「公然と」になりそうです。
実際、名誉毀損に基づく損害賠償請求(民事)の訴訟の場合には、ネット上にアップすれば「公然と」とされることが多いように感じます。
ところが、昨日(平成29年6月30日)に出された大阪高裁の判決は、この幅を制限しました。
これはいわゆる「リベンジポルノ」という犯罪についてです。
リベンジボルノとは、別れた恋人や配偶者に対する報復として、交際していた時に撮影した相手方の裸や性交渉の写真などをインターネット上で公開する行為をいいます。
このような行為が多かったことから、特別に平成26年に「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」(リベンジポルノ被害防止法)を制定して処罰することになりました。
このリベンジポルノ被害防止法の条文は、相手の裸の写真などを「不特定又は多数の者に提供した」という限定で処罰する旨定めてあります。
今回の男性加害者は、元交際相手の女性の裸の写真をインターネット上にアップしました。
その上で、そのURL(ネット上の住所)を元交際相手(被害者)に知らせましたが、それ以外の人には知らせませんでした。
大阪地裁では、おそらく従来の最高裁の考え方から、URLをネット上にアップした以上、不特定又は多数人が認識できる状態に置いたといえると判断したのでしょう。
男性には懲役2年、執行猶予4年の判決が下されました。
執行猶予判決ですから、刑務所に行くわけではありませんが、公務員であれば失職してしまいますし、私たちのような士業も資格を失ってしまいます。
色々と検討したと推測されますが、その被告人男性と弁護人は大阪高裁に控訴しました。
その大阪高裁では、先ほどの大阪地裁の判決をひっくり返して無罪判決を言い渡しました。
その理由は、男性被告が閲覧先のURLを送ったのは元交際相手の女性だけのため、「不特定多数が閲覧できる状態にしたとはいえない」というものです。
確かに、URLが分からなくて、かつ検索エンジンに登録されていなければ、インターネットの世界ではアクセスすることは事実上不可能です。
更に、そのネット上にアップしたこと自体も交際相手の女性にしか知らせていないということになると、画像を探す人すらいないわけです。
そう考えると、ネットにアップしただけでは不特定又は多数人が閲覧できる状態にしたとは言えないでしょう。
この無罪判決は、弁護人か裁判官が、ある程度インターネットの仕組みについて理解していないと出てこないだろうと思います。
進化(変化)が早い現代においては、弁護士も裁判官も「通常の知識」(経験則)として知っていなければならないことは日々増えているように思えます。
私自身も、インターネットに限らず、様々な分野の知識を吸収していかなければならないと改めて思わされました。
インターネットと法律の過去記事はこちらをご参照ください。